【Noism×鼓童】初の共演作品『鬼』が待望の再演!

【Noism×鼓童】初の共演作品『鬼』が待望の再演!

りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館の専属舞踊団 Noism Company Niigataと、佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団 鼓童、初の共演作品『鬼』が待望の再演!

日本初の公共劇場専属舞踊団として2004年にりゅーとぴあを拠点に設立されたNoism Company Niigataは、今年で20年目のシーズンを迎える。
記念すべき20年目のシーズンは、2022年夏に初演した、佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団 鼓童との共演作 Noism×鼓童『鬼』で幕を開ける。

作曲家・原田敬子が新潟と佐渡でのリサーチを経て書き下ろした楽曲《「鬼」舞踊と打楽器アンサンブルのための(2020-22)》を鼓童が生演奏し、金森穣の演出振付でNoism0とNoism1の舞踊家が躍動する舞台は、その緊張感と「鬼」が憑依した奏者と舞踊家が互いの共鳴により増幅するエネルギーの強さで高い評価を得た。

新潟・さいたま・京都・名古屋・鶴岡の5都市で上演し、大きな話題をよんだ作品が、早くも再び劇場に戻ってくる。
そして今回は新潟公演の後、横浜・岡山・熊本の3都市にて公演を行う。

◆公演によせて

Noism 国際活動部門芸術監督 井関佐和子

撮影:松崎典樹

この度、2022年夏に世界初演を迎えた「鬼」を再演することを決めました。
前回公演では、鼓童との初共演ということで、チケットが早い段階で完売となってしまい、ご覧頂けなかった方々もたくさんいらっしゃり、再演を嘱望されていましたし、私自身の舞踊家としての経験も踏まえた上で再演を早い段階でしたいという思いもありました。

その理由は、メンバーの入れ替わりが早いNoismでは、「再演」と言っても、メンバーには「初演」という形が近年多くなってきています。初演を経験した者のみが得られる再演の醍醐味をメンバーに経験して欲しいと思いました。
そして再演というと録音音源でのものが通常ですが、今回再び鼓童の生演奏で公演できることを嬉しく思っています。

太鼓の響き。耳だけで聴こえるのではなく、身体の奥の奥に響いて震えてくる音。奏者の秘めた圧倒的なエネルギー。それらを身体化して舞台に表出させる舞踊家。
お互い既に経験した作品であっても、前後際断、緊張感を持って生きることで、新たな響きと新たな身体が生まれ、融合することを信じています。

現代の舞踊界では、「再演」にあまり重きを置かない風潮がある様に感じます。しかし歴史的に見ても、芸術作品が消費社会に属するものではなく、永続可能な存在であることは明白で、Noismとしても受け継がれていくものを残していきたいと常々思っています。

初演をご覧になった方も、鼓童メンバーも、Noism メンバーも、もうあの時と同じではありません。今は記憶の中だけに存在する「作品」を、また舞台上に蘇らせ、初めてご覧になる方達と一緒に「作品」を残していければと思っています。

◆演出ノート(2022年初演時より)

金森穣

撮影:篠山紀信

■Noism×鼓童
新潟佐渡の太鼓芸能集団・鼓童と初めて共演する。過去にはチャリティー公演で同じプログラムに参加したことがあるし、鼓童のCDを買い漁り、聴き込んで、楽曲を用いて創作したこともある。勿論コンサートに赴いたこともあるし、佐渡の鼓童村に宿泊して、ワークショップをさせて頂いたこともある。そしてその都度「いつか共演したいですね」という話は続けてきた。
しかし鼓童もNoismも新潟から世界と勝負しているから多忙であるのは勿論、それぞれの芸術性や活動方針がある。
何より、代表(芸術監督)同士の意志が合致しなければ、有意義な共演など望むべくもない。では有意義な共演とは如何なるものか。それは互いの過去の切り売りや、既知の技能による協調ではなく、共に未知に飛び込むような、互いの未来に繋がるような共演のことである。

■新潟をテーマにした作品
事の発端は2年前、私が“新潟をテーマにした作品”を創作したいと考えたことにある。Noismによる18年の活動の中で、幾度かその構想を抱いたことはあるけれど、今ひとつ自分の中で時宜を得て来なかった(確信を持てずにいた)。そこに浮上したのがNoism活動継続問題である。活動継続が決まっていなければ、本プログラムが新潟におけるNoism最後のプログラムになっていたわけで、上記した時宜がこの身に訪れたのである。
そして同時に、コロナ禍の芸術監督対談ということで、鼓童新代表の船橋氏(彼とは同郷同年代という奇縁もある)と話し合ったことも影響している。鼓童は新代表を迎えて新たな船出の時にある。Noismも来シーズンから新体制となる。
共に過渡期にある、新潟を拠点とする2つの芸術集団による初共演のテーマは、「新潟」以外他にない。

■オリジナル楽曲
今回の初共演にあたり、鼓童の既存楽曲ではなく、鼓童による新曲でもなく、敢えて作曲家、原田敬子氏に“オリジナル楽曲”を委嘱した。原田氏とは2年前、富山県利賀村で開催されたシアター・オリンピックスで初共演している。その時の創作が私に与えた影響は、今も私の精神に深く作用している。それが原田氏の楽曲が宿す精神世界によるものであることは勿論、芸術家としての原田氏が、その創造的挑戦によって私を触発してくれたことによる。
芸術家にとって挑戦とは、創作の別名に他ならない。けれどもそれを、自力で自らに課し続けるのは容易なことではない。そして他の芸術家から受ける触発ほど、己を超える原動力となるものはない。原田氏との本創作がNoismは勿論、鼓童にとっても芸術的な触発となることを確信している。そしてそれが冒頭述べたような、有意義な共演に繋がるであろうことも。

■テーマは鬼
原田氏からの楽曲を待つ間、私なりに妄想を膨らませていた。原田氏の音を奏でる身体(鼓童)、憑依する身体(Noism)。
その空間性(精神性)とは如何なるものだろうか。“漆黒の闇の中、蠢く身体が見える。まるで胎動の様に。すると突如闇が裂けて、眩い光が差し込んでくる。それは陽の光ではなく、岩壁の裂け目に現れた、光り輝く何かである”。念の為に記しておくが、これは私の勝手な妄想であり、この時点で原田氏の音楽は未聴である。そこに原田氏から作曲のテーマが届いた。“テーマは鬼”。
この国における鬼という概念には、驚くほど多様なバリエーションがある。神話や昔話は勿論、能に始まる芸能(鬼太鼓など)、日本画やアニメの題材にもよく用いられる。そして慣用句、接頭語に至っては完全に市民権を得ている。私は鬼を巡る旅に出た。そして程なくある研究書に出会う。それが鬼伝説(鬼という存在)の由来を金工師に求めるものであった。それは必然的に、日本各地の鉱山の歴史へとつながる。
鉱山と聞いて佐渡に思いを馳せない新潟県民はいない。この時点で鬼=鬼太鼓=佐渡=鉱山が繋がり、私の妄想(光のささない洞窟/裂け目に光り輝く何か)は、共時性を得たのである。そして金工師が山師、役行者に至るにおいて、鼓童(鬼太鼓)、新潟(佐渡)、Noism(修験道)、私のインスピレーションは収斂された。空間、音楽、そして身体を深く、深く掘り進めていく。その先(奥底)に、あるかもしれない金(精神の光)を求めて。

■同時上演
本年2022年は、20世紀舞踊史を変えたと言われる天才プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフの生誕150周年にあたる。そこで、なんとなくストラヴィンスキーを聴き始めた。するとまた起きた。共時性である。20年前に帰国してからずっと、私の創作の基本テーマは「東西文化の融合」である。それがここ数年、さらに色濃くなってきていて、読む本、聞く音楽、抱く問題意識が、そのことに収斂されて来ている。その流れの中で入手し、丁度読んでいたのがピエール・ローティの『お菊さん』(1887)、オペラ『蝶々夫人』の基となった小説である。西洋人が見た東洋(日本)が、グロテスクな描写で描かれている。
昔の日本人にとって異邦人とは異形、すなわち鬼であり、神前式で花嫁が身に着けるのは角隠し(鬼隠し)である。そして何より、奇怪なストラヴィンスキーの音色で踊る舞踊家たちが、ロティが描写(蔑視)する日本人にリンクした。まるで人形のようなそれである。そして日本人ならお菊と聞けば、怪談・番町皿屋敷である。誰しも精神の奥深くに抱える愛憎。化けて出るほどの執念。これ以上は言わずもがな。本作品のタイトルは『お菊の結婚』、テーマは勿論、鬼である。

■新潟から世界へ
最後に。新潟の芸術集団による、新潟をテーマに掲げた本作品が、国内各地の劇場との共同製作により、埼玉、京都、愛知、山形とツアーされることを嬉しく思う。しかし敢えて記せば、本作品は“新潟から世界へ”向けて創作される。それこそが、対岸の大陸に背を向け、東京の動向を気にしながら活動するのではなく、敢えて東京に背を向け、越後の寒風に屹立し、大陸に果敢に挑まんとする、新潟の芸術家の野心だからである。そしてそれこそが、鼓童とNoismが共有する、新潟の芸術家の志だからである。

◆公演概要

Noism Company Niigata 2023 冬公演
Noism×鼓童「鬼」再演

■『お菊の結婚』
音楽:I.ストラヴィンスキー(録音を使用)
演出振付:金森穣
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1
※熊本公演のみ、『お菊の結婚』の上演はありません。
鼓童による特別コンサートを予定しています。

■Noism×鼓童『鬼』
音楽:原田敬子
演奏:太鼓芸能集団 鼓童
演出振付:金森穣
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1


《新潟公演》

2023年 12月15日(金)~12月17日(日)
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
※各公演終了後、アフタートークあり

《横浜公演》
2024年 1月13日(土)~1月14日(日)
KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉

《岡山公演》
2024年 1月20日(土)
岡山芸術創造劇場 ハレノワ〈大劇場〉

《熊本公演》
2024年 1月25日(木)
市民会館シアーズホーム夢ホール〈大ホール〉

【各種公式】
Noism オフィシャルウェブサイト:https://noism.jp/
X(旧 Twitter):@NoismPR
You Tube:https://www.youtube.com/@noismpr4793

【お問い合わせ】
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
TEL:025-224-5627(平日 10:00-18:00 / 休館日除く)
FAX:025-224-5626
E-mail:info-noism@ryutopia.or.jp

新着ニュースカテゴリの最新記事