2023年6月PARCO劇場にて、「新ハムレット」の上演が決定した!
PARCO 劇場開場 50 周年記念シリーズ
シェイクスピア × 太宰治
「新ハムレット」
演出:五戸真理枝
あの太宰治が、あの「ハムレット」を語り直した怪作!
ハムレットもクローディアスもオフィーリアも何か違う、
日本人的で、お茶の間を感じる新しい世界観。
まさしく“新”ハムレット!
始末に困る青年をめぐって、一家庭のたった三日間の出来事
-太宰治
2023 年 6月 PARCO劇場、7月各地にて上演
企画・制作 株式会社パルコ
太宰治が上演を目的としていないレーゼドラマとして書いた小説を、演劇界注目の新鋭五戸真理枝が戯曲化。かの日本の文豪がシェイクスピアを語りなおしたら・・・。
誰もが知っている“生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ”に象徴される、人間の本質を問うた名作『ハムレット』。古典ゆえに王位の争奪や国家の存亡、欧州的な価値観など、我々日本人にはすっきり馴染めない部分もあります。しかし、太宰治が語りなおした本作は、設定は同じながらも、太宰治というレンズで、自身のテーマである生への不安や強者へ批判にフォーカスし、シェイクスピアの世界観と見事に融合させました。真骨頂ともいえる繊細な心理を語る日本語の力で物語の本質を手繰り寄せ、原作『ハムレット』だけでなく、自身が私小説とも話す太宰作品としての魅力を、古典の新解釈に定評がある演出家五戸真理枝が舞台化することで立体的に立ち上げます。
日本的、現代人的で身近に感じるお馴染みの登場人物たちとの新たな出会いにご期待ください。
太宰治はしがきより
この作品が、シェイクスピアの「ハムレット」の注釈書でもなし、また新解釈の書でも決してないという事である。これは、やはり作者勝手な、創造の遊戯に過ぎないのである。人物の名前と、だいたいの環境だけをシェイクスピアの「ハムレット」から拝借して、一つの不幸な家庭を書いた。それ以上の、学問的、または政治的な意味はみじんも無い。狭い、心理の実験である。
過去の或る時代に於ける、一群の青年の、典型を書いた、とは言えるかも知れない。その、始末に困る青年をめぐって、一家庭の、(厳密に言えば、二家庭の、)たった三日間の出来事を書いたのである。
上演台本 五戸真理枝コメント
『新ハムレット』は太宰治によって書かれた、戯曲の体裁で書かれた小説で、太宰本人は、レーゼドラマだと後書きで弁明している作品です。そのままでは演劇としての上演は難しいのですが、長すぎる独白や、構造がねじれていてまわりくどい会話を適切にカットしていくと、日本の文豪によって翻案された『ハムレット』が姿をあらわし、客観性と諧謔と愛情を感じる戯曲になります。本家の『ハムレット』は、シェイクスピアが、現存していない作者不明の『原ハムレット』と呼ばれるテキストを下敷きにして書いたという説があります。つまり、多くの人が知る昔話を面白く書き直した、というわけで。シェイクスピアの生きていた当時の観客の中には、『原ハムレット』と『ハムレット』を比べ、違いを楽しみ、“シェイクスピアは天才だ!“なんて言ったりしながら観劇を楽しんだ人もいるのかもしれません。
では、この物語を太宰治が語り直すと、どうなるのか。『新ハムレット』には原作と比べる楽しみもあります。比べながら見れば、パロディとして滑稽に見えてきたり、また、太宰治という作家の作風や思想、人柄までもがくっきり見えてくるのが、この作品の奥深いところです。シェイクスピアの作品群は、スケールが大きく、詩的で感情の起伏も激しく、世界が自由自在に描かれていくダイナミックな魅力があります。と同時に、我々日本人には肌感覚で理解することが容易ではない、外国の古い時代の物語です。太宰はそんな魅力的でありながら、少し遠くにあるシェイクスピアの世界を、日本人の感覚で 100 パーセント共感できる、お茶の間の世界に引っ張り込んできてくれました。あまりにも身近な人物になったハムレットと、ハムレットを取り巻く王家の人々の生々しい存在感は、痒いところに手が届き、スカッとするほど鮮明です。この身近に引き寄せ、ある意味でスケールを落とした翻案には、日本人の視野の狭さや、決断力のなさ、湿っぽいところなど、日本人によくある短所がありありと現れているとも言えるかもしれません。でもその湿っぽさや、頼りなく矮小な日本人の姿が、太宰治の的確で詩的なセリフによって表現されていくことで、魅力的に感じられてきもします。世界的名作に憧れるのも大事なことですが、現代演劇の充実のためには、日本の名作作りに挑み続けることも大事なことだと思います。
今の時代、日本人のダメなところ、おバカな国民性も積極的に、おおらかに認めていくこと、愛していくことは、大切なことだと思います。自分を大切にできない人間には他人を大切にすることが難しいとよく言われますが、自国を愛せない人間たちもまた、本当の意味で世界を深く愛することは難しいんじゃないかと思うのです。卑小な日本人を愛することから始めてみようぜ!!くよくよしてたっていいじゃない!ジメジメしてたってイイじゃない!優柔不断すぎたっていいじゃない!優しすぎたってイイじゃない!そんな風に、太宰治の作風を生かした上で、欠点を肯定する視点で演出プランをくみたてていけば、普遍的でもあり今日的でもあるメッセージ性をはらむ、面白くてカッコイイ演劇にできるのではないかと考えております。
<プロフィール> 五戸真理枝(ごのへ・まりえ)
2005 年、文学座付属演劇研究所に 45 期生として入所 10 年、座員に昇格。演出助手などとして座内の多数の公演に関わる。16 年、文学座アトリエの会、久保田万太郎作『舵』で初演出。以降演出作品は『桜の園』『阿修羅のごとく』『三人姉妹』『年あらそい』『コーヒーと恋愛』外部では『どん底』『貴婦人の来訪』(新国劇場)『毛皮のヴィーナス』(シアタートラム)『人間ぎらい』(川崎市アートセンター)など。戯曲や童話の執筆も手掛ける。 ※第 30 回読売演劇大賞最優秀演出家賞受賞
あらすじ
デンマーク王が崩御、王位を引き継いだのは王子ハムレットではなく、王妃ガーツルードと結婚した先王の弟クローヂヤスだった。遊学地から王宮にもどったハムレットは、母であるガーツルード、叔父であり義父であるクローヂヤスとの新たな関係に戸惑いながらも、友人ホレーショーと再会を喜び、幼馴染のオフィリアとの未来を考える、しかし、先王の亡霊の噂が流れ、「誰かが先王を殺した」という新たな疑念が生まれていく。
登場人物
ハムレット(先王の子にして現王の甥) :木村達成
クローヂヤス(デンマーク国王) :平田満
ポローニヤス(侍従長) :池田成志
レアチーズ(ポローニヤスの息子) :駒井健介
ホレーショー(ハムレットの学友) :加藤諒
ガーツルード(デンマーク王妃。ハムレットの母) :松下由樹
オフィリヤ(ポローニヤスの娘) :島崎遥香
スタッフ
作:太宰治
演出・上演台本:五戸真理枝
音楽:斎藤ネコ
美術:松生紘子
照明:小沢淳
音響:けんのき敦
衣裳:加納豊美
ヘアメイク:鎌田直樹
演出助手:橋本佳奈
舞台監督:幸光順平・鈴木拓
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