待望のフルバージョン間もなく開幕!ミュージカル『イリュージョニスト』に出演・愛希れいかインタビュー

待望のフルバージョン間もなく開幕!ミュージカル『イリュージョニスト』に出演・愛希れいかインタビュー

2021年コロナ禍のなか僅か5公演のコンサートバージョンで上演されたミュージカル『イリュージョニスト』の待望久しいフルバージョン公演が、3月11日~29日東京・日生劇場、4月8日~20日大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。英国演劇界の鬼才トム・サザーランド演出による19世紀ウィーンを舞台にした「その目に映るは、真実か幻か?」を問いかけ続ける作品のなかで、主人公のイリュージョニスト・アイゼンハイムと幼い頃恋心を寄せ合ったが、長じたいまはオーストリア皇太子レオポルドの婚約者となっている公爵令嬢ソフィを演じる愛希れいかが、トムや共演者とのクリエイティブな稽古の日々に感じる作品への想いを語ってくれた。


──私たちも指折り数えて待っていたフルバージョン上演ですが、決定をお聞きになった時にはいかがでしたか?

「4年前にお客様がとても楽しみにお待ちくださっていたなか、コロナ感染が拡大し続けて、公演そのものも短期間にならざるを得なかったり、チケットをお持ちでも移動そのものが難しく観劇を断念された方々もいらして、私たちも皆様にとても残念な想いをおかけしてしまったという気持ちがありました。でもその時からトムをはじめとした海外のクリエイティブチームのみんなも、日本の関係者も全員が、いつか必ずフルバージョンでの上演を、と言っていましたので、いつか実現するといいなと思い続けてきました。ですから今回メインキャストは全員同じで、という形でのフルバージョン上演が叶うということになって、より一層気合いが入ったと言いますか、絶対に成功させなければいけないという強い思いがありました」

──同じ方々が集まってくださるという第一報は本当に嬉しいことで、もちろん新たに加わられる皆さんも含めて、フルバージョン開幕への期待がますます高まっていますが、トム・サザーランドさんとのお稽古はいかがですか?

「トムが思い描いている、見たい世界というものが、なかなかに難易度の高いものなのですが、私たちはとにかくチャレンジし続けて、トムからもそんなチャレンジを見ながら新たなアイデアがどんどん出てくるし、そのアイデアがものすごくいいなと思います。自分達ではなかなか思いつかないようなこと、成河さんがおっしゃった言葉をお借りすると『思いついても言えないようなこと』を、まずやってみてほしいとおっしゃるので、そのチャレンジはとてもスリリングです。毎日、毎日、それぞれが達成感を持ちながら頑張っています」

──よくお伺いする言葉で「トライ&エラー」ということでしょうか?

まさにそうで、何が最善かというのを見つけていく作業を、とにかく繰り返しています。

──そのなかで、役者さんからの発信もされるのでしょうか?

「トムの中に『こうしたい』というこだわりがありますから、もちろん譲れないものもあるのですが、私たちが演じていて発見したことや、ちょっとやりにくいなと思ったことはどんどん伝えて、話し合ってすり合わせをしていく、その作業には柔軟に対応してくださいます。私たちもトムのやりたいことを一番に、と考えているので、こちらからの意見を言うかどうかについては、迷った時期もあったんです。でも、演じていての発見を伝えたときに、すぐに取りあげてくださって、本当にセッションしながら毎日創っています」

──大変クリエイティブな現場なんですね。そのなかで、愛希さん演じるソフィ役については、コンサートバージョンで演じられた時点とで、捉え方が変わったとか、或いは根本的には変化はないなど、いま感じていることをお話しできる範囲で教えていただけますか?

「前回に関しては、とにかく本に忠実に、本の中で起きていることを表現するという形だったんです。でも今回はフルバージョンということで、舞台を全体的に使えますし、セットも大がかりなものになっているので、トムからも前回とは違った発想が生まれているんですね。私自身もソフィという役がどう人と関わっていき、どんな意思を持ってラストに向かって進んでいるのか、どう考えて行動を起こすのかというところで、少しずつ変化は感じています。もちろん大筋は変わらないのですが、トムは舞台稽古にいった段階でも『やっぱりこっちだと思う』と変更を厭わない演出家ですし、もっと言えば幕が開いてからも変えることがあるので、ラストシーンについてトムがどう表現するか、それも私と一緒に決めたいと言ってくれているのですが、そこによって私の心情もどうなっていくかがわからないところはまだまだあります」

──開幕した時に、どんなドラマと景色が観られるのかがますます楽しみになりますが、ここで一に返るような質問で申し訳ありませんが、この作品ミュージカル『イリュージョニスト』の持つ魅力を言葉にしていただくとすると?

「ミュージカルは、あくまでも私の持っているイメージなのですが、役柄が心情を歌うこともあって、ストーリーやテーマをお客様にわかりやすく提示しているものが多いのかなと思うんです。ストレートプレイですと、お客様が考える余白を残して敢えて全部は伝えないとか、そういうことも結構ありますけれど、ミュージカルにはやっぱり音楽があって、言葉で語らなくても音楽が語っていく。音楽によってこの人悲しんでいるんだな、などがストレートに提示されていきますよね。でもこの作品に関しては、色々なところに仕掛けが隠されていて、コピーにもなっていますし、トム自身も言うのですが『その目に映るは、真実か幻か』というところで、作品自体の真実がなかなか見えてこないんです。その真実を探ろうとするのが栗原英雄さん演じるウール警部で、おそらくお客様に一番近い存在で、ウール警部と一緒に、お客様が作品の真実を見極めていく、そんな作品なのかなと思います。ですからお客様も客席でリラックスした状態で観劇を楽しむというよりは、テーマパークのアトラクションの中に入って、一緒に進んで行くような感覚があるのではと。実際にイリュージョンも出てきてハッとさせられるところもありますし、イリュージョンだけではなく、物語自体に仕掛けがあるので、私がこれまでにたくさん観てきたミュージカルの中でも、かなりお客様との一体感がある、お客様が居てくださらないと完成しない舞台だというのが、見どころであり、魅力かなと思っています。特に物語のなかに劇場が出てきたりもするので、今回東京は日生劇場、大阪は梅田芸術劇場メインホールでやらせていただきますが、その劇場空間全体が物語のなかにある、お客様がその場所にいると感じていただけたらいいなと思っています」

──この作品はこれほどレポートを書くのが難しいと思ったことはない、というくらいの衝撃が次々と起きたので、「その目に映るは、真実か幻か」を観届けたあとで、もう一度観るとまたいくつも発見があるのではないかな?とワクワクしますが、キャストの皆さんと再会されていかがですか?

「以前から私自身がすごくリスペクトしている皆さんですし、私も観客として客席から何度も拝見している方々ばかりです。お一人おひとりが素晴らしいというのは、皆さんの方がよりご存じだと思いますし、個々の方々について語り出すと、もうとても短い時間では言い尽くせないので、控えさせていただきますが、やっぱり皆さんと一緒にこの作品について細かく、色々なことを話し合い共有して、アイデアを出し合って作っていけるということが、とても幸せだなと感じています。本当に皆さんそれぞれの個性がこの作品の役柄のなかで際立っているので、自分自身もそこにちゃんとソフィとしていられるようにしなければと日々思います。改めてご一緒して、皆さんの凄さというのをより感じています」

──ありがとうございます。また楽曲の魅力についてはいかがですか?

「いま、キャストの方々の個性が役に生きているというふうに申し上げましたけれども、楽曲もまた一曲、一曲が本当にそれぞれの役柄にぴったりなんです。曲が流れただけで、あぁこの人のこの役の曲なんだとわかるほどです。よくこんなメロディーを思いつくなと感じることもたくさんあって、とても面白いのですが、ただ歌うのはすごく難しいです。全体的にずっと曲が流れているので、この作品にとって音楽の重要性がわかるだけに、歌い込まなければと強く感じます」

──では、音楽によって役の解釈が深まったりも?

「それはありますね。本当に全ての意味で総合芸術です」

──また今回は大阪・梅田芸術劇場メインホール公演もということで、愛希さんにとっては馴染みの深い劇場でもありますね。

「そうですね。自分にとって関西は第二の故郷だと思っていますし、宝塚時代に梅田芸術劇場は1年に1度は必ず立たせてもらっていた舞台なので、戻るとやっぱりすごくほっとします。今回行けるのが嬉しいです」

──東京はもちろん関西の皆様も楽しみに待たれていると思いますが、愛希さんは更に全国で観られる映像のお仕事も着々とこなされています。舞台と映像のお芝居で、感じる違いやそれぞれの魅力はどうですか?

「基本的には役を作っていくベースは変わらないなと思っているのですが、目の前にお客様がいらっしゃる舞台と、カメラを通すというところで明らかな違いはあります。映像ですと、顔の表情をアップで撮ったりもしますので、本当にちょっとした瞬きひとつでもお芝居ができるんです。でも二階席、三階席もある大劇場でお客様にお芝居を届けるとなると、当然ですが瞬きだけでは伝わらないので、役作りのベースは同じでも、表現の違いというのは確かにあります。しかも今回トムがこの『イリュージョニスト』の芝居について、『これは嘘を届けているので、あまりリアルを求めたくない』と言うんですよね。そのリアルを求めたくないというのが大変で。やっぱり映像ってリアリティが必要になってくるんです。もちろん舞台も映像もお芝居ですし、たとえ実在の人物を、史実に添って演じていたとしても、ドキュメンタリーではありませんからあくまでもお芝居ですよね。でも映像はカメラで捉えるし、ご覧になっている視聴者の方々も、どちらかというと舞台よりはリアルに近いものとして観ていらっしゃるなという感覚があるんです。例えば韓流のスターさんが、まるで夢のようにロマンチックなドラマを繰り広げていたとしても、実際にこの人たちが本当にいるかのように見せると言うか」

──あぁ、わかります。ドラマのロケなどをしていても、見学に来た方たちに俳優さんが役名で呼ばれるとよく聞きますね。

「そうした映像と舞台が追及している“リアリティ”そのものの違いというのはすごく感じます。もちろんひと口に映像と言っても、現代劇なのか時代劇なのかでまた違いがありますし、何より私は映像に関してはまだまだ完全に初心者なので、何かを語るというのもおこがましいのですが、芝居のなかでのリアルとは?については、映像を経験させてもらっているからこそより考えるようになりましたし、勉強になります」

──先ほどトムさんが「リアルを求めたくない」とおっしゃるというお話もありましたが、そう言われると確かに極たまにとんでもなく前の座席が手に入ったりすると、生身の皆さんが演じていらっしゃるのはわかりきっているはずなのに、「あー本当に生きている人たちなんだ」と感じたりすることがあるなと。

「そうなんですよね。舞台はLIVEなのに、やっぱりかなり作りこまれているので、そういう感覚があるのかなと。映像の方がLIVEではないし、確実に遠くでやっているのにカメラを通じて何か近くに感じるというのは、役者と作り手側がそもそも求めているリアリティが違うからだろうなと、一つひとつが勉強です」

──そういう意味でも、何がリアルで真実なのかわからない、その目に映っているのは真実ですか?幻ですか?という問いかけがある『イリュージョニスト』は舞台ならではの作品なのかなと思いますし、いま情報が多すぎて、しかも国のトップの方からさえ都合の悪いことは「フェイクニュースだ」と言われてしまったりするこの時代にとても刺さりますね。

「本当に今の時代に合っていると思います。みんなが真実だと言えば、みんなが信じれば例え嘘だったとしても、“真実”として世に流れて、伝わっていってしまうような時代なので、すごく考えさせられるミュージカルです。私自身もこの作品によってそこはずっと考えています」

──そういう意味でも、本当に多くの方に観て、感じて、考えていただきたい作品なので、心から楽しみにしていますが、是非最後に、開幕を待たれている皆さんにメッセージを。

「前回、私たちにはとにかくこの作品をスタートできた、という安堵の気持ちも正直あったのですが、一方で観たかった、観られなくて残念だったというお声をたくさんいただいて、そうしたお客様の気持ちを考えるととても胸が痛みました。ですから今回こそ、ひと公演も欠けることなく、できるだけ多くのお客様に観ていただきたいなと思いますし、私たちも最後の最後まで、ギリギリまで、トムと一緒にキャスト、スタッフ一丸となって、作品に情熱を注いで創って、本番を迎えたいと思っています。是非楽しみに観にいらして下さい!」

取材・文・撮影/橘涼香
ヘアメイク/青山佑綺子(BOND)
スタイリスト/山本隆司<style³>

公演情報

ミュージカル『イリュージョニスト』
■脚本:ピーター・ドゥシャン
■作詞・作曲:マイケル・ブルース
■原作:ヤーリ・フィルム・グループ制作映画「幻影師アイゼンハイム」
    スティーヴン・ミルハウザー作「幻影師、アイゼンハイム」
■演出:トム・サザーランド

■出演:海宝直人、成河、愛希れいか/栗原英雄/濱田めぐみ ほか

■日程:
<東京公演>3月11日(火)~3月29日(土) 日生劇場
<大阪公演>4月8日(火)~4月20日(日) 梅田芸術劇場メインホール

■お問い合わせ:
梅田芸術劇場【東京】0570-077-039 【大阪】06-6377-3800(10時~18時)

Advertisement

限定インタビューカテゴリの最新記事