原作『アキバ冥途戦争』は、CygamesとP.A.WORKSによるオリジナルアニメーション作品として2022年に放送された。秋葉原のメイドカフェ「とんとことん」を舞台に、少女たちの成長を描くメイドお仕事奮闘記としてスタートしたが、そのクレイジーな内容とカオスな展開に視聴者をあ然とさせた。実は、この物語のテーマは「萌えと暴力」――メイド=冥途(死)、メイドがヤ〇ザを兼ねる任侠の世界観を描いていたのだ。
この夏、その大人気問題作が初舞台化。脚本・演出に川尻恵太(SUGARBOY)を迎え、いよいよ本番を迎える。
アニメを知らなくてもOK!男性も女性も楽しんで!
舞台版では「とんとことん」一同が、あることをきっかけに大阪・日本橋に乗り込むオリジナルストーリー。東京VS大阪の冥途戦争が勃発、果たしてどんな戦いが繰り広げられるのか⁉
そんな暴力渦巻く稽古場から作品を代表して、佐藤日向・野本ほたる・上西恵・古賀成美に事情聴取、いや、話を聞いた。
―――出演が決まりアニメや台本を読んだ時の思いと、稽古を経て変化した印象や手応えをお聞かせください。
佐藤「原作のアニメがかなり印象的で、視聴者に衝撃を与えるアニメだったので、これを人が演じるってどうなるんだろうとワクワクしました。実際に脚本を読むと、アニメの世界観が本の中に広がっていたので、この面白さを立体的にするにはどうすればいいかな、と稽古に挑みました。
稽古では川尻さんの演出をつけるテンポがめちゃくちゃ速くて、脚本があらすじだったんだと思うくらい追加ポイントが多く、最初の脚本からの変化が凄い事になっています。川尻さんの作品の世界観を膨らませる力が凄いと思う稽古です」
野本「アニメを観た時、これは理解をした方がいいのか、理解をしないまま突き進んだ方がいいのか、そんなことを思っていたら12話観終わったみたいなスピード感溢れる作品で、それが凄く心地良くて楽しい印象でした。
そして舞台の脚本を読んだ時も、いい意味で意味わかんないと(笑)。稽古をしながらこの巻き込まれていく感覚を楽しむことが『アキバ冥途戦争』なんだなって。川尻さんを信じてやっていくだけという感じです」
上西「私は最初決まった時は、(関西キャラなので)関西人で良かったと心から思いました。関西出身だったからこそ、この作品にお声がけいただいたと思っています。あんまり関西弁でお芝居をすることがないので、ファンの方も久しぶりに関西人役の私を喜んでくれるんじゃないかなと。
稽古が始まってからの印象は、もっとオラ~~みたいな、まくしたてる感じかと思っていたら、ボスなのでどっしり構えている威圧感を出すところが凄く難しいなと今思っているところで、そこを頑張っていけたらと思います」
古賀「もともとアニメを観ていたので、舞台化決定のニュースを聞いた時は、“めっちゃ出たい!”という気持ちがありました。まさかオリジナルキャラクターとして出演できるとは、嬉しいです。
アニメは、かわいい女の子たちがメイド服を着てどんな感じになるんだろうと観てみたら、いい意味で裏切られたので(笑)。これをどう舞台化するんだろうと。そして台本を拝見したら、舞台もいい意味で裏切られる作品になっていました(笑)。私は(上西)ケイちゃん演じる富美代の妹分で、富美代とは真逆のオラオラ系の役なので、ちょっと声を張って頑張っているところです」
―――ではそれぞれの役柄について分析、何を意識して演じようと思っていますか? 佐藤さん演じる和平なごみちゃんは、カワイイメイドを目指して上京してきました。
佐藤「なごみちゃんをアニメで観たときの印象が、憎めないキャラで明るい、周りがしょうがないなと許してしまうような雰囲気がある子、でした。
今回の大阪へ行く発端となるのが、なごみの行動だったりするので、『またなごみ!』と、お客さんが思えるような愛らしさが芝居の中で出たらいいなと思っています。アニメを観ながら、なごみの特徴を捉えて取り入れつつ、舞台ならではの良さが出るように意識して演じています」
―――野本さん演じる万年嵐子さんはちょっと不器用なキャラクターです。
野本「戦いには手を抜かないクールなキャラです。嵐子さんはもう嵐子さんとしての軸をブラさないで一本通すことを1番意識して演じています」
―――上西さんは、舞台版オリジナルキャラクター・富美代を演じます。
上西「富美代は緩急を大切にしていこうと思っています。先ほども触れましたが最初はボスだから、ゆったり静かに役作りをしようと思っていましたが、関西人は早口で話すことも味だと思うので、早いところ遅いところをしっかり変化をつけてボス感を大事にできたらなと思っています」
―――古賀さん演じるキズナも舞台オリジナルキャラクターで、富美代の妹分とのことでした。
古賀「キズナは凄く二面性がある役です。フレンドリーな感じで喋っているかと思えば、戦いになるとドスのきいた声になったり、凄くかわいい部分があるのに、そんなことで怒ってた?みたいな所もあって、ピュアな子でとても気に入っています」
―――古賀さんも大阪出身なので、関西弁の役は楽しいですか?
古賀「それが関西弁でもちょっと前の時代の言葉で、しかもワレとかあまり使わない極道世界の言葉が多いので、ちょっと苦戦しておりますが楽しんで演じています」
日々変化する稽古、セリフが増えました!
―――脚本・演出の川尻さんとのやり取りで印象に残っていることなどお聞かせください。
佐藤「これまでの演出家さんと違うなって思う部分で言うと、コメディでこうした方がもっと面白いんだっていう事を俯瞰して見られているな、と感じます。自分が書いた脚本をベースに、もっとこっちに広げた方が面白いとか、広げ方をわかってらっしゃるので、とても安心して身を任せてやっています。確かにこうやった方が面白いという気づきがあったりするので、凄いなって思います」
野本「ボケもツッコミもどんどん増えていくので面白いですね。役者同士がやり取りしたのを見た上で、これ足してみようかとか、たまたま起きた事故も面白いから取り入れてみよう!みたいな感じで増えていくんです」
佐藤「川尻さんが実際に演じてくださるのでニュアンスをつかみやすく、求めているものがすごく理解しやすいです」
上西「とても丁寧に作ってくださって、面白くなるようなことはどんどん足していってくださるので、キズナもセリフが増えたよね」
古賀「そうなんです。セリフが増えたり変わったりすることはよくありますが、それがめっちゃ面白いんです。あと川尻さんは演出家席でずっと笑っていてくださるので、それが凄く稽古場の雰囲気として良くて」
上西「とても優しい演出家さんで安心します」
時系列は「メイドリアン」と合併することになった7~8話あたりの頃 裏で大阪に行く事件が起きていた!
―――歌や踊り、アクションなど期待してしまう部分がたくさんあります。ご自身の見どころ、見てほしい所をアピールしてください。
上西「アニメの1話で死んでしまう美千代というキャラがいまして、私の姉貴分という設定なんです。アニメと舞台の富美代の関係性が細かく丁寧に描かれるので、その部分は大切に演じていけたらと思っていますし見どころです。美千代への想いを、(野本)ほたるちゃん演じる嵐子にぶつけています。嵐子とのシーンが多いので注目して欲しいですね」
野本「そうなんです。嵐子の過去から持っている彼女との因縁や想いとかが、また新たに見えるものになっているんじゃないかと思うので、背負って生きているという信念、だからこんなに嵐子なりの正義感や強さがあるのではと、ぜひ注目してください」
古賀「私は初めてに近いアクションに注目して見ていただきたいと思うのと、大阪っぽいある物を使って殺陣に挑戦します。はじめは驚きましたがとても面白いので、小道具にも注目して欲しいなって思います」
佐藤「なごみは、物おじせず、誰とでもコミュニケーションが取れたり、良くも悪くも空気が読めない部分がある子です。だからこそ、今作のオリジナルキャラクターのキズナや富美代との独特な絆が生まれる瞬間が見どころだと思います。愛くるしさだったり、人とコミュニケーションをとることに長けているという、なごみの良さが舞台でわかる瞬間です。
あとアニメだとカメラで抜いた所しか見えないですけど、そのキャラの後ろでも誰かは存在して生きていて会話をしています。それが立体的に見えるのが舞台の良さだと思うので、そういう部分の面白いところを細かく川尻さんが演出をつけてくださっています。喋ってない部分でもなごみに注目してもらえると嬉しいです」
―――他のキャラ(共演者)で気になるシーンや全体の見どころなども教えてください。
古賀「いっぱいありますね」
上西「まずは店長さん! もうさすがの鳥居みゆきさんで、毎日稽古で新しいシーンができています。私も鳥居さんと絡むシーンがあるのですごく楽しくて」
古賀「鳥居さんは、いい意味で土下座がハマっていて見どころです。あとはもう本当に皆さんが役にピッタリなんです。早く衣裳を着て皆さんに観ていただきたいです」
佐藤「アニメでは秋葉原から出ていなかった中で、大阪に行くことがまず見どころです。何故大阪に行ったのか、その理由もこの世界観ならではのくだらなさで、なぜそうなってしまったのか、誰も突っ込まないの?みたいな部分が味で、アニメの面白さが舞台にも落としこまれています。
その面白さもありつつ、大阪のメイドはこんなだろうなって思わせる力があるので、見どころはやっぱり各メイドの力強さですね。萌えと任侠が本当に詰まっていると思います」
野本「あとは、アニメであったメイドさんが歌っている中で繰り広げられる闘いが舞台でも起こります。アニメの楽曲に加えて舞台オリジナルソングもあるので、歌✕闘い✕血しぶきを楽しみにしていただけたらと思います。今回グッズでサイリウムがあり、きっと使えるシーンがあるはずなので、ここもお楽しみにしていてください」
疾走感があるので一瞬もお見逃しなく!
―――メイドカフェにちなんで、最近はコンカフェ(※コンセプトカフェの略)が人気の秋葉原ですが、もし自身がオーナーとなるならどんなコンセプトのカフェをオープンしたいですか?
野本「サウナカフェですね! サウナが好きなんですけど、サウナの前にお湯につかりたい派なんです。おしゃれサウナって湯ぶねが無かったりするので、ちゃんと湯ぶねがあるおしゃれサウナカフェ!」
佐藤「それは普通のスパでは!?」
野本「あははは! 上がったらご飯も食べれて、水風呂に入りながらちょっと整っている間にドリンクも飲める、更に景色もいいカフェがいいですね」
佐藤「私は男装カフェでしょうか。ちょっとコスプレに近いですが、大人で紳士的な男装の女の子って魅力的ですよね。オーナーとして設定を作ってメイクなど指導して演出にこだわりたいです」
古賀「私はアニメが大好きなので、すでにあると思いますがコスプレカフェですね。自分が好きなアニメのコスプレをして、お客様もコスプレでただいま~と(笑)そんなコスプレカフェだったら面白そう」
上西「私はツインテールカフェですね。自分は似合わないからしないんですけど、女の子のツインテール姿を見るのがすごく好きなんです。グループにいた時も後輩に今日の髪型を相談されたら『ツインテールして』と言ってたぐらい好きで、ツインテールの女の子が働いている元気なカフェを作りたいですね」
―――「とんとことん」は集客的に厳しいですが、皆さんのカフェは人気になりそうですね! ありがとうございます。では最後にお誘いのメッセージをお願いします。
上西「アニメを知っている方は、アニメでは描かれていない物語としてすごく楽しんでもらえると思います。知らない方ももちろん楽しめますし、舞台を観てアニメをもっと知りたいと思ってもらえるような作品になっていると思うので、舞台ならではの面白さをぜひ劇場に体験しに来てほしいです」
古賀「メイド服を着たかわいい女の子たちが殺し合いをするという、他ではなかなかない作品です。アクション満載で身体をはっている女の子たちが暴れ、きっと心に刺さると思っています。ぜひ観に来てください」
野本「カワイイはもちろんありますが、それを期待してしまうと、ちょっと違う方向になっています。
個性豊かな強い女達が集まっていて、憧れる女性の姿があると感じたので、女性の皆さんはこうやって自分の信念を貫いていいんだとか、強い気持ちになっていただければと思います。そして男性の皆さんは、強い女性たちを観てさらに惚れていただければと思います」
佐藤「女性の強さ・可愛さもありつつ、女性同士の戦いになった時の女性の強さみたいなものは、あまり男性は観たことがないかもしれません。お客さまに観せる顔と、暴力的になったときの顔の変化が、舞台の中でわかりやすく詰め込まれています。
お客さまはメイドカフェに来たような感覚の瞬間もあれば、街中で起きている暴力の瞬間を通りすがりの人のような気持ちで見ちゃうような、そんな瞬間がいっぱいあると思います。とても疾走感があるので一瞬も見逃さず、”萌えと暴力”を体感していただきたいなと思います」
(取材・文&撮影:谷中理音)
プロフィール
佐藤日向(さとう・ひなた)
1998年12月23日生まれ、新潟県出身。女優・声優・アーティストほか、幅広く活躍中。代表作に、メディミックス作品『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』シリーズ 星見純那役、舞台『ウマ娘 プリティーダービー』、舞台『セトウツミ』など。10月には舞台『かげきしょうじょ!!』杉本紗和役が控えている。
野本ほたる(のもと・ほたる)
1997年2月20日生まれ、東京都出身。舞台を中心に活躍中、代表作に、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』シリーズ セーラームーン/月野うさぎ役、舞台『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』シリーズ 雪代晶役など。9月には超次元ミュージカル『ネプテューヌ』が控えている。
上西 恵(じょうにし・けい)
1995年3月18日生まれ、滋賀県出身。NMB48の元メンバー、舞台をはじめ、グラビアなどで活躍中。代表作に、舞台『Cutie Honey Emotional』シリーズ 主演・キューティーハニー役、舞台『真・三國無双』 月英役、舞台『And so this is Xmas』印南綾乃 役など。
古賀成美(こが・なるみ)
1998年3月30日生まれ、大阪府出身。NMB48の元メンバー、舞台やドラマ、映画などで活躍中。近作に、短編映画『絵掻きうた』、舞台『イケメン戦国 THE STAGE』シリーズ 水崎舞役、舞台『キューティーハニー Climax』 ハラジュククロー役などがある。
公演情報
舞台『アキバ冥途戦争』~浪速喰い倒れ狂騒曲~
日:2023年9月6日(水)~10日(日)
場:博品館劇場
料:SS席[グッズ付]12,800円
S席9,800円(全席指定・税込)
HP:https://st-akbmaidwar.com/
問:ハピネット・メディアマーケティング舞台担当
mail:stage_info@hsn.happinet.co.jp