片目片腕の無敵な男・黒田伸介のファンタジーストーリー 芝居×歌×ダンス×生バンドで「全く新しいエンタメ」作品に

 原口勝が作・演出を務めるLOVE&ROCK☆SHOW 『新月』New World Order は、ファンタジーな世界観の芝居をベースに、歌やダンス、生バンド演奏が加わる総合エンターテインメント。原口のほか、出演する賀集利樹、ダンドイ舞莉花、ラリソン彩華、鈴木凌平に役どころや見どころを聞いた。


―――『新月』New World Order とはどんなお話なのでしょうか?

原口「まず『新月』というタイトルは、新たにゼロに立って、満月へ向かっていく。そんなイメージから名付けました。
 主人公は黒田伸介という片目片腕の無敵な男。彼は鬼の一族なんですね。前回のミュージカル『遥かなる空』で復讐を成し遂げた人物です。
 伸介は、人間と鬼のハーフである飛鳥という女性に恋していたのですが、飛鳥は兄を助けるために戦いに飛び込んだ際に、斬られて、死んでしまうんです。伸介はその怒りの矛先を人間に向けて、復讐劇をする……というのが前回までのストーリー。
 今回は、復讐劇がすべて終わって、憎しみも何もなくなった後のお話。“オルメカ”という架空の国を舞台に展開するのですが、伸介はそこで飛鳥にそっくりな王女リサと出会って――。思いっきりファンタジーな作品です」

―――出演されるみなさんに伺います。脚本を読まれた感想や、演じられる役についての印象を教えてください。

賀集「僕は、ブックマンというストーリーテラー役を演じます。自分の所だけを読むとよく分からないのですが、全体を読むと、なるほど、こんな人間関係があるのかと物語が浮かび上がってきましたね。
 僕はファンタジーが好きなんです。小説でも、ドラマでも、映画でも結構観るんですけど、ファンタジー作品に出演したことがないんです。ストーリーテラーのポジションも、ファンタジー作品も初めて。デビューしてちょうど20年になるんですけど、この年になっても、何かに初挑戦できるのは嬉しいです。とはいえ、稽古もまだ序盤ですが、結構大変だなと思っています(笑)。ほとんどすべてのシーンに携わっているので、体力的にも技術的にも心配な要素はあるのですが、頑張りたいです」

ラリソン「私も脚本を開いて、漢字がいっぱいあって、やばいと思いました(笑)。読むことがそこまで得意ではないので、いつも何度もページを戻ったりしながら読んでいるんですけど、みんなで読み合わせをして、ようやく世界観が描けた気がします。
 お稽古が始まったばかりで、想像しきれていないところはあるんですけど、お話はすごく面白い! 今まで殺陣があるような作品に出たことがなかったので――私が直接闘うことはないと思うんですけど――迫力ある殺陣を観るのが楽しみですね。
 それからプライベートでもお仕事でもいつも(ダンドイ)舞莉花と一緒なので、舞莉花の付き人役というのが面白いんですけど(笑)、真面目に演じて、楽しみたいと思います」

ダンドイ「別の舞台に出演している最中なので、まだ100%『新月』モードに入りきれていないのですが、今回、リサという王女役をやらせていただきます。
 私自身、お姫様役を今までやったことはなくて。撮影のときに、フリフリの可愛らしい衣装を着ました。正直、リサは自分とは真逆のタイプなのかなと思っているのですが、全然違うタイプの人間を演じることがすごく楽しみです。
 お城の外を見たくて仕方がない好奇心あふれる女の子の役なので、これからどうやって深めていこうか考えています」

鈴木「僕も賀集さんと一緒で、ファンタジーが好きなんです。この『新月』は、愛と憎しみという両極端のものがあると同時に、貧富の差というギャップも描かれていると思うんですね。
 僕は今回、リチャードとサムという2役を演じさせていただくのですが、リチャードが〈支配する側〉、サムが〈虐げられる側〉なので、僕自身の中でもギャップを作っていけたらいいなと思っています。
 ちなみに、リチャード・J・アレキサンドラという役名なんですけど、僕は仲間内でよくジャルと呼ばれているので、イニシャルが被って親近感を感じています」

原口「そこからとったわけではないけどね(笑)」

鈴木「ですよね(笑)。ともかく、王子様ということで、観ている人がはっとときめくような立ち姿で臨めたらいいかなと思います」

―――原口さんご自身、黒田伸介という役には相当な思い入れがあるのではないでしょうか。これまで過去作品にも何回も登場してきましたが。

原口「今回で8作目ですね。『遥かなる空』という作品で生まれた役なんですね。最初は部下の1人にすぎなかったんですが、戦いの中で、一度爆死をしたはずだったんです。ところが、次作の『蒼天の光』という作品では生きていた。片目と片腕の負傷に止まって、なぜ死ななかったのか。そして、伸介が鬼だったら――。どんどん話が広がっていきましたね。気がつけば、ものすごい役に成長してしまいました」

―――出演者のみなさんが今回、演出面で楽しみな場面はありますか? 好きなセリフなどがあれば、あわせて教えてください。

鈴木「後半、リチャードが突撃するシーンがあるんですね。そこで『愚民どもが』と言うんです。そもそも愚民なんて言ったことがないので、楽しみです(笑)」

ラリソン「今回、初めて子役さんとお芝居をします。私自身、小さい頃からミュージカルの経験があって、いつもは子ども側だったから、大人になったなと思いながら(笑)。何回かもうお会いしているんですけど、可愛いですね。子役さんとの絡みが楽しみです」

ダンドイ「有馬(芳彦)さんとの共演です。先日ビジュアル撮影でご一緒した時は、あまりお話できなかったのですが、原口さん曰く『とっても良い声』とのことなので、そんな良い声の有馬さんと一緒に歌えるのが楽しみです」

賀集「僕の役は、孤独で、誰ともお芝居での掛け合いがないので、どう絡んでいければいいのか、悩みどころです。でも、1人では舞台はできないじゃないですか。他のみんなが入って、その動きをしているのを見て、それに合わせるところもあったり、僕のセリフにみなさんがあわせてくれたり。そういうのがあってもいいのかなと思っています。どんどんこれから楽しくなっていくでしょうね。
 ビジュアル撮影で、衣装を着ましたが、ああいう形の衣装は初めて! 正直、『誰だこいつ』というぐらい変身しています(笑)」

原口「あはは。ハットを被って、素敵でしたよ」

賀集「あの衣装を着て、あのメイクをすると、やはり普段の自分とは全く違う者になれる感覚で。スイッチが入りますよね。だんだんと僕もイメージができてきたので、これから稽古を重ねていって、最高の作品になるなと思いました。すべてがとても楽しみです」

原口「生バンド――キーボード、ドラム、ギター、バイオリンの4ピースなんですけど――も大きな特徴だと思います。そこで、賀集さん演じるブックマンがバンドを紹介する仕草するのもいいかもしれませんね。そもそもブックマンが読む世界を具現化しているという設定なので、ブックマンが読み間違えたら世界が変わるとかね。そこで遊んだら、それも面白そう」

賀集「遊べるところまで、持っていきたいですね」

―――「ミュージカルという先入観を持って頂きたくない」とTwitterで発信されていましたが、それはどういう想いからですか?

原口「前々からずっと疑問に思っていたのですが、ストレートプレイが好きなお客さんと、ミュージカルが好きなお客さんは結構はっきり分かれるんですよ。それは演者もそうで、ストレートプレイに出ている役者と、ミュージカルに出ている演者は分かれている。
 “ミュージカル”という看板を掲げると、『ミュージカルなら観なくていいや』というお客さんが生まれてしまう。そこであえて先入観を持たずに、まずは観て欲しい。そんな気持ちから原口勝がつくるオリジナルのLOVE&ROCK☆SHOWです、と」

―――なるほど。演出としてはどんな見どころがありますか? 明かせる範囲で教えてください。

原口「3.5メートルの巨大な○○が出てきます……! それから、生バンドはもちろん、巨大スクリーンで映像を流すのですが、それも見どころだと思いますね」

―――最後に観客の皆様に一言ずつお願いします!

鈴木「続き物のストーリーではあるんですけど、『新月』1作品だけを観ても、楽しめる作品だと思います。作中にはいろいろなギャップがあって、お客様一人ひとりがいろいろな解釈をできると思います。残り1ヶ月、僕らなりの『新月』を創っていけたら。楽しみにしていてください」


ダンドイ「愛の物語でもあって、革命の物語でもある。多分観ているお客様にも、それぞれに共感できる所がたくさんあると思います。今の日本社会でも向き合うべき要素がたくさん詰まっています。そういう物語の側面も観ていただけたらなと思います」

ラリソン「きっといろいろな人に共感していただけるような作品だなと思いますが、イケメンがいっぱい出てくることも、見どころです(笑)。賀集さん演じるブックマンさんとか、相当格好良いですよ(笑)。また、生バンドという事でなかなか貴重な機会だと思いますし、迫力満点だと思います。こういう世の中なので、来ていただけるだけで、本当に感謝です。楽しんでいただけたら幸いです」

賀集「エンターテインメントとして、全く新しいものになるのかなと思っていて。僕自身初めての経験もありますし、エンターテインメントとして必要なもの、面白いものがすべて詰まっている作品です。このタイミングで逃すと損をしますよ!(笑)。こういう状況下ですけど、楽しい世界にみなさんを誘えるように、僕らも一生懸命頑張るので、是非みなさん観に来てください」

原口「芝居、歌、ダンス、アクション、生バンドが凝縮されたエンターテインメントですが、8回しか生では観れません。そして、席数もこのコロナ禍といことで半分しかないんです。緩和が進むならば、追加販売を予定していますが、満席でも少ない。配信もやりますけど、芝居、歌、ダンス、アクション、生バンド、すべてのライブを楽しみに来てください」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

原口 勝(はらぐち・まさる)
鹿児島県出身。東宝芸能を経て、2006年、劇団Nine☆Starsを旗揚げ。2009年よりエンターテイメントBAR・Starsをオープン。BARの運営を行いながら、主宰、脚本家、演出家、俳優として活動している。

賀集利樹(かしゅう・としき)
兵庫県出身。2001年に『仮面ライダーアギト』で主役に抜擢され、俳優デビュー。その後『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)、NHK大河ドラマ『義経』に出演。ドラマだけでなく、舞台やバラエティー番組などにも精力的に出演している。

ダンドイ舞莉花(だんどい・まりか)
アメリカ・ニューヨーク州出身。早稲田大学卒業。ディズニーチャンネル『マイ・ディズニージュニア』マリカとして2015年まで活躍。その後ミュージカル『LITTLE WOMEN〜若草物語〜』(主演・ジョー役)、『プリシラ』(DIVA役)など、舞台を中心に幅広く活躍している。

ラリソン彩華(らりそん・あやか)
東京都出身。6歳の時に帝国劇場『サウンド・オブ・ミュージック』で初舞台を踏む。2011年にはマリアとしてユニバーサルミュージックからメジャーデビュー、アルバム『Will』、『MERCI VOX』などをリリース。主な出演作として、帝国劇場『Beautiful』、『ひめゆり』、『REEFER MADNESS』など。

鈴木凌平(すずき・りょうへい)
兵庫県出身。俳優、ダンサーとして舞台やイベントなどで活躍。主な出演作にミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage(都忍役)、ミュージカル『エリザベート』(トートダンサー)、ミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』(ヴァンパイアダンサー)、劇団☆新感線『メタルマクベス disc3』などがある。

公演情報

LOVE&ROCK☆SHOW
『新月』New World Order

日:2021年11月17日(水)~21日(日) 
場:六行会ホール
料:S席8,500円 A席7,500円 
  B席6,500円(全席指定・税込)
HP:http://www.loverockstars.net
問:公式HP内よりお問合せください

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