極寒の“トムラウシ”監獄に、熱い和太鼓が響き渡る! 秦建日子オリジナル舞台『トムラウシ』生演奏×サスペンスの相性やいかに

 TVドラマ『HERO』『アンフェア』シリーズで知られる秦建日子が、脚本・演出を務めるオリジナル舞台『トムラウシ』。北海道の中心に位置する“トムラウシ山”から来ているタイトルで、国民的俳優・大和仁がありえない理由で不当逮捕され、脱獄不可能といわれる雪山の牢獄・“トムラウシ監獄”での100年の強制労働の刑を命じられる――という物語のあらすじが公開されている。
 今作の大きな特徴として和太鼓の生演奏が予告されており、サスペンス要素のあるストレートプレイと和太鼓の融合が、秦の手によって果たしてどのように描かれるのか注目の作品だ。そんな中、トムラウシ監獄の脱獄を企てる囚人たちを演じる石黒英雄・金子昇・日向野祥、そして物語のキーパーソンとなる大湖せしるに話を聞いた。

―――台本を読んでの第一印象はいかがでしょうか。

石黒「“トムラウシ”という場所だけだと冷たい印象にはなるのですが、熱いものを感じました。和太鼓という特性も含めて、お客様の心を溶かすような、熱いエンターテインメントになるぞと」

金子「実は最初にいただいた台本と、最新稿で内容が随分変わっているのですが……どちらにせよ大湖さんが大変だなという印象で(笑)」

大湖「ふふっ(笑)。否定はできません……」

石黒「それだけキーパーソンってことだよね」

金子「そうそう! まだ芝居稽古はこれからですが、今稽古している和太鼓との融合も含めて、どんな風に仕上がるか楽しみです」

―――そんな大湖さんはいかがでしょうか。

大湖「そうですね。秦さんが描く世界観が独特で、まだ文字だけだといい意味で想像ができない部分も多くて……。皆さんと同じですが、最終的にどんな作品に仕上がるかとてもワクワクしています。初めて共演する方が多いので、皆さんのお芝居もすごく楽しみです。
 大変さに関しては本稽古に入ったら実感することになると思いますが……それまでは、太鼓の復習をして、コンディションを整えて、自分に出来ることを精一杯していきたいと思います」

日向野「純粋にオファーをいただいた時に作中で和太鼓をすると聞いて、初めての経験なのでとてもワクワクしました。秦さんの作品はTVドラマも含めていくつか拝見していますが、緻密なプロセスで構成されている印象があるので、キャラクターたちの強烈な個性と、ストーリーと、そして太鼓がどのように合わさるのかなと、楽しみにしています」

―――皆さん、太鼓の経験はありますか?

石黒・金子・日向野「ないです」

大湖「私は宝塚の時に叩いていたのですが、ブランクがあるので、1からまた教わっています」

金子「端から見ていると叩くという動きだけだからもっと簡単に会得できるかななんて思っていたんですが、全然そんなことはなくて……腕が筋肉痛になっています。ただ音の響きのパワーもその分本当にすごい。スタジオで聴いているだけでも、身体中に音が響いてくるので、劇場で披露したら、きっとすごい迫力だろうなと思います」

―――気持ちが鼓舞されるような効果がありそうですね。秦さんの脚本というとTVドラマの印象も強いですが、生のエンターテインメントとして今回観てほしいポイントはいかがでしょうか。

石黒「舞台もドラマも秦さんの作品は色々拝見していますが、シリアスな作品が多いイメージが勝手にあったんですね。ところが、今回の『トムラウシ』の台本はそんなこともなく、ユーモアに溢れたもので、会話劇を楽しんで書いていらっしゃるんだなと思いました。ぜひそんなところに注目していただきたいです」

金子「僕は秦さんの脚本はTVドラマで経験していて、2回ほどプライベートでご飯もご一緒したことがあるのですが、そうはいってももう8年近く前の事なので覚えていらっしゃらないんじゃないかなぁ……。舞台でご一緒するのは初めてで、どのように演出をつけられるのか非常に楽しみにしています」

大湖「私は普段、2.5次元といわれるアニメ・マンガ・ゲームの実写舞台に出演させていただく機会が多いのですが、今作のキャストの皆さんは様々な界隈で活躍されている方が集まっていて、それこそ普段はTVでお見かけする方もいらっしゃいますよね。それだけ色々な引き出しを持っていらっしゃる方が多いと思うので、それぞれの個性が輝く舞台になるのではないかなと勝手ながら思っています」

日向野「秦さんの作品、僕も観たことがありますが、テンポを大事にされている印象です。長台詞も多いのですが、ちゃんと言葉が頭に入ってきやすいというか、心地いいスピードでトントントーン!と話が進むんですよね。今回はそこに和太鼓も加わるわけなので、物語のクライマックスに向けての盛り上がりをぜひ楽しんでいただきたいと思っています」

―――ありがとうございます。ここからは作品にちなんで、少し皆さんのパーソナルな部分に踏み込んだ質問になるのですが……。まず、今作は理不尽かつありえない理由で国民的俳優・大和仁が逮捕されてしまうことから始まりますが、皆さんが本来、逮捕されるようなことではないけれども「2022年に実はこんなことをしてしまって……」というプチ懺悔があったら、お聞かせください。

石黒「2022年で楽しかったこととかを聞かれるかと思ったら、ニコニコしながらとんでもないことを聞いてきますね(笑)!?」

―――すみません(笑)。ちょっとしたことでいいのです……!

石黒「えぇー……うーん……。コロナ禍で仕事が激減して大変だった時に、ファンの方がYouTubeの生配信にスパチャを投げて生活を支えてくれて、すごく感謝しているんですが、最近ありがたいことにまた忙しくなってきて、2022年は全然配信ができず、申し訳なかったなぁっていう……これが1番の懺悔ですかね」

金子「それはずるいよ、ダメダメ、カットで! この機に好感度上げようとしてる(笑)!」

石黒「本音! 本音ですから!」

金子「日向野くんは? 例えばお酒の失敗とか懺悔とか、若いしあるんじゃない?」

日向野「記憶をなくしたことはあります。完全に何にも覚えていない!ということはないんですが、断片的になっちゃうというか……。でも、最近はちゃんとするようになったので、直近でそういう懺悔はないです!」

大湖「偉い! 私はそうだなぁ……何にも面白い話ではないんですが、私、ニンジンがどうしても食べられなくて、2022年もやっぱりありとあらゆるニンジンを残しました、ごめんなさい」

石黒「新人女優さん(笑)?」

金子「アイドルのようなかわいいエピソード(笑)」

大湖「すみません……(笑)」

金子「僕の話が1番懺悔っぽいかもしれないですが……先に言っておくと、俺のおごりで、現場の皆にマクドナルドをごちそうしたのね。その時に、ポテトが1個だけ足りないからお待ちいただけますかってお店で言われて、1個だけ揚げたてのポテトがあったの。僕はそれをいただきました、という懺悔です」

大湖「なんてかわいいエピソード! むしろ素敵ですよ」

日向野「オチとして最高のネタを隠してましたね(笑)?」

石黒「好感度上げてますよ(笑)!」

――それぞれ微笑ましく、素敵なエピソードでした! ではもう1問……作中では、大湖さん演じる梨花が、TVの中の大和の「簡単に諦めてんじゃねぇよ」という台詞に感銘を受けて、行動を起こすわけですが、皆さんの“諦めが悪いエピソード”があれば、教えてください。

4人「うーーーん」

石黒「またニコニコしながら難しい質問しますね……(笑)! 具体的な話じゃないんですが、この人とは仕事の上でフィーリングが合いそう、と思ったら、相手が控えめでも諦めずに何度もアタックする場面はあります。『もっと一緒にやろうよ』って。この人と一緒に芝居がしたいな、仕事がしたいな、と思った人に対しては諦めが悪いかもしれないです」

日向野「僕は掃除ですかね……やり始めたら綺麗にするまで徹底的にやっちゃうんですけど、往々にして深夜に掃除し始めちゃったりするんですよね(笑)。寝る前にホコリが落ちているのを見つけちゃって、それを拾って、床を拭いたら、今度はフローリングの溝が気になっちゃって……キリがないんですけどね」

金子「なるほどねぇ。僕はちょっと重い話に聞こえちゃうかもしれないんですけど、2022年で実は芸能活動を辞めようかと思っていたんですよ。2022年の12月までに仕事が続いていなかったら辞めようって。でもそう思うと、やっぱり辞めたくないみたいで、恥も外聞もなく営業して、一生懸命になるんですよね。
 この『トムラウシ』のお話をいただいて、2023年の2月と聞いて、あ、じゃあ少なくともそれまでは辞められなくなったな、って思って……和太鼓があると聞いていたので、もしかしたら褌姿になるかも!??と思って身体を鍛え始めて……そんなことをしていると、ああ、まだこの世界に自分はいたいんだなって素直に思えますね」

石黒「男前エピソード!」

大湖「ね、素敵なお話……! この後に話すのは気後れしてしまいますが……私は起きた物事に対しては、逆にすぐに諦めちゃうんですよね。悪いことが起きても、じゃあその分頑張ろうってすぐ気持ちをシフトするというか。諦めとはちょっと違うかもしれないんですが……」

―――気持ちの切り替えがお上手なのですかね。

大湖「いい風に受け取ってもらえるならそうかもしれません! ただ、諦めが悪いといえば……お風呂に早く入ればいいのに、なかなか入らずにお部屋でぐたぐたしちゃって、いつも夜遅くにお風呂に入っちゃうので、早く諦めて入ればいいのになって自分でも思っています……良くない方の諦めの悪さですが」

石黒「(小声で)大湖さんは何を言っているんだ……?」

金子「出てくるエピソードがやっぱり新人女優かアイドルっぽいよね(笑)」

大湖「すみません座長(笑)!」

―――それぞれ個性的なエピソードが聞けてよかったです(笑)。ありがとうございました。それでは、改めて舞台『トムラウシ』を観に来てくださるお客様に、最後に一言ずついただけますでしょうか。

日向野「個人的には2023年1発目の舞台になります。あらすじだけを見ると“囚人”であったり“監獄”であったり、石黒さんもおっしゃる通り“トムラウシ”という場所も相まって冷たい印象を受けるかもしれませんが、そこに和太鼓というものがプラスされることで、どんな化学反応が起きるのか、個性豊かなキャラクターたちも含めて注目してもらいたいです。
 まだまだ大変な事ばかりの世の中ですが、観終わった後にスカッとしてもらえるんじゃないかなと思っていますので、ぜひそういった気持ちを感じに劇場にお越しいただけたら幸いです」

大湖「キャストの皆さんと話し合いながら、トムラウシ監獄に収監される人物たち、それぞれの生き様を表現できるように、いい作品を作っていけたらと思います。私も全力で取り組んでいきますので、自由劇場でお待ちしています!」

金子「舞台に立たせていただく時はいつも、こんな舞台になるんじゃないかなというイメージが事前に出来ていることが多いんですが、今作『トムラウシ』に関しては、いい意味で現状それがゼロです。僕自身も予想もできないような舞台に仕上がるかと思います。きっと皆様の想像、期待を越えて素敵な作品をお届けしますので、ぜひ劇場に遊びにきてください」

石黒「和太鼓×ストレートプレイという新しい取り組み、個性豊かなキャスト、熱意のあるスタッフが揃っております。自由劇場という素晴らしい箱で、題材は冷たい印象の『トムラウシ』ですが、僕らがどんどん熱くしていきますので、ぜひその空間を楽しみに足を運んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします!」

(取材・文&撮影:通崎千穂(SrotaStage))

プロフィール

石黒英雄(いしぐろ・ひでお)
1989年1月10日生まれ、栃木県出身。第17回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」グランプリ受賞後、2016年にテレビ東京で放送された『ウルトラマンオーブ』でクレナイ ガイ役(主演)を務める。2012年度 NHK大河ドラマ『平清盛』平宗盛役でも知られる。近年の主な出演作品に、舞台『黒薔薇アリス』、NHK歴史探偵「情報戦 関ヶ原」ほか。

金子 昇(かねこ・のぼる)
1974年10月18日生まれ、長崎県出身。2001年、スーパー戦隊シリーズ『百獣戦隊ガオレンジャー』にて獅子走/ガオレッド役(主演)を務める。「スポーツマンNo.1決定戦」のようなバラエティから、近年ではサスペンス・ミステリーのTVドラマまで数多く出演しており、経験豊富。

大湖せしる(だいご・せしる)
1983年3月8日生まれ、兵庫県出身。宝塚歌劇団(雪組)を卒業後、現在は2.5次元舞台を中心に活躍。近年の主な出演作品に、ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』シリーズ、ミュージカル『憂国のモリアーティ』シリーズ、『Identity V STAGE』Episode3「Cry for the moon」など。

日向野 祥(ひがの・しょう)
1991年1月19日生まれ、神奈川県出身。2.5次元舞台を中心に、TV・映画に出演する機会も増えている。近年の主な出演作品に、2.5次元ダンスライブ『SQ(スケア)』ステージシリーズ、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』シリーズ、舞台『COLOR CROW』シリーズなど。

公演情報

トムラウシ

日:2023年2月4日(土)~12日(日)
場:自由劇場
料:特典付き12,800円 全席指定9,800円(税込)
HP:http://askcoltd.com/tomuraushi-stage/
問:サンライズプロモーション東京
  tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)

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