アンドロイドに自我が芽生えたら? 14年前の傑作アニメーションが初舞台化 舞台『イヴの時間』瀬戸利樹&赤澤燈、繊細で多感な高校生役を熱演

アンドロイドに自我が芽生えたら? 14年前の傑作アニメーションが初舞台化 舞台『イヴの時間』瀬戸利樹&赤澤燈、繊細で多感な高校生役を熱演

 『イヴの時間』は、2008年に公開された全6話構成のWEBアニメで、アニメーション作家の吉浦康裕が自ら原作・脚本・監督を務めて作った傑作だ。2010年には劇場版が公開され、第9回東京アニメアワード優秀賞OVA部門を受賞し、さらに作品としての知名度を上げた。
 そんな中、アンドロイドという存在がより身近に迫ってきた2022年12月、『イヴの時間』が初めて舞台化される。人々がアンドロイドを“家電”として扱う事が社会常識となっている時代。それぞれアンドロイドに対してのトラウマを持つ高校生のリクオとマサキが、「人間とアンドロイドを区別しない」というルールを掲げる不思議な喫茶店「イヴの時間」と出会うことで動き出す物語。
 思春期真っ盛りである彼らの繊細な心情が描かれるこの作品で、リクオを演じるのは瀬戸利樹、マサキを演じるのは赤澤燈だ。撮影のため初対面となった2人に、今作に出演するにあたっての心境を聞いた。

―――作品の印象はいかがですか?

瀬戸「今回出演させていただくにあたり、作品を拝見しました。公開された当時、2008年時点では、すごく遠い未来の話のように感じながら見ていた方も多かったんじゃないかと思いますが、14年経って、意外とそう遠くない未来の話になっているんじゃないかなと思います。将来的に自分もリクオのような気持ちになることがあるかもしれない、と感じましたし、お客様にも自分の身に今後こういうことが起こりうる話かもしれない、という気持ちで観てもらえる舞台に出来たらなと」

赤澤「いや、本当に……以下同文なんですけども(笑)。瀬戸さんが言う通り、当時に比べてより身近な題材になりましたよね。ロボットに感情移入してしまうジレンマに悩む登場人物たちの気持ちが、僕自身も分かる気がするんです。言ってしまえば、毎日一緒に過ごすアンドロイドって、ペットと変わらないんじゃないかなって。
 僕もペットを飼っていたことがあるのですが、言葉が通じるわけじゃないので本当のところはどう思っているか分からないけど、今まで一緒に過ごした時間や経験則から『今、こういうことを想っているんじゃないかな』って勝手に推測して、行動をするので……。ロボットやアンドロイドも普及するようになったら、『こういうことをしてあげたら喜ぶかな』って人間が良かれと思ってやってあげたことが、食い違ってしまったり、上手くいかなかったりということがありそうだなと思いました」

―――WEBアニメから始まり、劇場版の公開、ノベル版やコミカライズの発売と様々なメディアミックス展開があった中で、今回が初の舞台化となります。生身の人間が演じることで表現できる『イヴの時間』の見所とは?

赤澤「『ロボット三原則』とか『倫理委員会』とか、少し導入部分の世界観は難しく感じられるかもしれませんが、生身の人間が立体的に演じることで、そのあたりがより分かりやすく、柔らかく表現出来たらいいなと思います。
 何より舞台の良さとして、舞台上にいる時間はずっとお客様に観てもらえるということがあるので。アニメや小説・マンガだと、セリフを話しているキャラクターだけがフォーカスされますが、舞台ではその裏で、このキャラクターはこう動いていたんだ、こういうやりとりがあったんだ、というところまで観てもらえる。今まで描写がないところ、いわば“行間”を表現出来るのではないかなと思っています」

瀬戸「いや……以下同文ですね……」

赤澤「以下同文返し(笑)! 助け合っていきましょう!」

瀬戸「(笑)。正直、こうして高校生の役をまだやらせていただけるんだな……ということに制服に腕を通しながらもビックリしていて。リアルな高校生が演じるのも勿論いいと思うんですが、実年齢で言ったら10歳くらい上の僕ら役者が高校生の役を演じる、というのも舞台ならではなのかなと思うので、若い頃の感性を思い出しつつ、今の自分だからこそできるリクオを表現していけるように頑張ります」

―――今日はビジュアル撮影ということで、制服姿での取材となりましたが、高校生時代は学ランとブレザーどちらでしたか?

赤澤「中学はブレザーでしたけど、高校は私服校だったんです。なので他の作品でもそうなんですけど、制服を着させてもらうと常に新鮮な気持ちになります」

瀬戸「僕は中学が学ランで、高校はブレザーが着たくてわざわざちょっと遠いブレザーの学校を選んだんです! まさか大人になってからもこんなにブレザーを着させていただく機会に恵まれるとは当時は思わなくて(笑)」

赤澤「そうですよね(笑)」

――お二人は高校生の役ですが、アンドロイド役もまた難しそうですよね。

瀬戸「確かに!!」

赤澤「なんならそっちの方が難しいかも……。どんな演技プランで来るんだろう?」

瀬戸「稽古に入ってから、そこもきっとディスカッションしていくことになりそうですね」

―――楽しみにしています。では、続いて作品から派生した質問になりますが、将来的に『イヴの時間』に出てくるような高性能なアンドロイドが生まれたら、一緒にどんなことをしてみたいですか?

赤澤「僕はオンラインゲームですね。同業者の友人ともよくやるんですが、お互いに現場が違うのでスケジュールが合わないことも多々あるじゃないですか。相手が『明日早朝から撮影だから』って抜けちゃったり……それは勿論お互い様なんですけど! アンドロイドだったら睡眠時間とかも気にしなくていいので、満足いくまでつきあってくれるかなって」

瀬戸「僕はご飯を一緒に食べてほしいです。ご時世もありますけど、1人でご飯を食べることが多いので……アンドロイドって、消化はどうするのかっていう問題はありますけど、タンクがついていて、一緒にご飯が食べられるアンドロイドが生まれていてもいいんじゃないかなと期待しています。そうしたら、寂しくご飯を食べることがなくなるんじゃないかなと」

赤澤「確かに、それはいいな~! 一緒にご飯食べても、感染症とかウイルスとか気にしなくていいですもんね」

―――コンピューターウイルスの方だけ気を付けていただいて……。

瀬戸「本当に(笑)! その通りですね」

―――続いて、喫茶店「イヴの時間」にちなんで、お二人には行きつけのレストランやカフェなどはありますか?

赤澤「僕はハンバーガーが日本一美味しいと思っている行きつけのお店があります! ある日歩いていたらふと新しく出来ているのを発見したお店で、入って食べてみたらすごく美味しくて。でも開店してすぐの頃はお客さんが少なかったので、『この店は潰してはいけない』と思って、テイクアウトで家族の分も沢山買って、実家まで持って行くぐらい、売り上げに貢献していました(笑)」

――美味しいポイントは?

赤澤「パンが美味しいんです! バンズって言うんですかね。今も通っていますけど、口コミで今はお客さんが入るようになって、良かった~!と思っています」

瀬戸「僕は入ったことのないお店に入るのが好きなので、逆に行きつけはあまりないんですけど……。あ、でも僕もハンバーガー屋さんでよく行くお店があったんです!」

赤澤「おお!」

瀬戸「でも、数カ月前に移転してしまって……。移転先にまで通う熱意が僕にあったらそれは立派な“行きつけ”なのだと思うんですけど、まあまあ遠くて、挫折してしまいました。何か大きな仕事が終わった時や節目のタイミングで、自分へのご褒美としてまた食べに行きたいですね」

―――ぜひ。そして新しい行きつけのお店も見つかったらいいですね。では最後に、舞台『イヴの時間』を楽しみにしてくださっているお客様に、一言ずつお願いします。

赤澤「あらすじなどを見てもまずはSF要素が目を引きますが、僕はコミュニケーションの大切さが伝わる物語だなとも感じました。対面で人と会いづらかったり、距離が遠くなってしまった人がいたり……こんな時代だからこそ、まだ見ぬアンドロイドたちの姿を通して、改めて人と人との関わり方について、色々なことを考えてもらえる作品になるように、丁寧に作っていきたいと思います。イヴだけに、クリスマスの時期の公演になりますので(笑)、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです」

瀬戸「僕も、お客様にとってもこの1年を締めくくる公演になる方が多いのではないかなと思います。機械、無機物に対しても、優しさが芽生える、考え方が変わる作品です……例えばiPhoneでもSiriがついているわけですが……」

赤澤「Alexaもいますしね!」

瀬戸「そうなんですよ! 観終わった後で、人だけでなく、身近なものにも愛着が湧いて優しく出来るようになる、そんな作品になる予感がしています。あとは個人的に、僕、猫を飼っているんですが、名前が『イヴ』なんです」

赤澤「えぇ!? すごい!」

瀬戸「しかも『イブ』じゃなくて本当に同じ『イヴ』なんですよ。すごく運命を感じています。キャストの皆さんと共に、思い出に残る素晴らしい作品に出来るように全力を尽くしたいと思います。ぜひ劇場に足を運んでもらえたら嬉しいです」

(取材・文&撮影:通崎千穂(SrotaStage))

プロフィール

瀬戸利樹(せと・としき)
1995年10月7日生まれ、千葉県出身。近年の主な出演作品として、『仮面ライダーエグゼイド』、TVドラマ『先輩、断じて恋では!』、DisGOONie Presents Vol.11 舞台『Little Fandango』など。

赤澤 燈(あかざわ・ともる)
1990年3月14日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作品として、MANKAI STAGE『A3!』シリーズ、舞台『東京リベンジャーズ -血のハロウィン編-』、ワーキング・ステージ『ビジネスライクプレイ』シリーズなど。

公演情報

舞台『イヴの時間』

日:2022年12月23日(金)~29日(木)
場:博品館劇場
料:9,800(全席指定・税込)
HP:https://worldcode.co.jp/eve2022/
問:World Code
  公式HP内(舞台公演お問い合わせ窓口)より
  お問合せ下さい


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