ダンスのファーストステップは「ホントのワタシ」への第一歩 ティーンエイジャーの揺れる気持ちを、ダンスや歌で綴る感動のミュージカル

 人は誰もが自分の意欲が沸き立つ“何か”との出会いを求めている。しかしながら、そう簡単に見つかるかといえば、これがなかなか難しい。しかも社会に活気がみなぎっていた時代ならまだしも、昨今のように経済も社会も多くの不安を抱えている時期には、さらに簡単にはいかないものだろう。
 何となく鬱々とした毎日を送っている送る高校生が、ダンスをきっかけに“何か”を見つける第一歩を踏み出す。そんなストーリーを歌やダンスとともに綴る『ダンスレボリューション〜ホントのワタシ』は、まさに現代の不透明な時代を生きるティーンエイジャーに向けたミュージカル作品。2012年の初演以来、様々なキャストで上演し続けている作品だが、今回主演として2017年に大きな話題を呼んだ『ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~ 』で主役に選ばれ、その後も多くの舞台で活躍する木村咲哉と、AKB48で活躍する川原美咲を迎えて新装上演される。主役の2人と振付も担当する女優でダンサーの相原愛に話を聞いた。

―――まずは主役の「山川いろは」を演じるお2人から、公演に向けた抱負を伺います。

木村「今回このような大役を任されて緊張しています。でもしっかりと『山川いろは』を演じて、みんなを引っ張っていくような存在になりたいです」

川原「この作品は昨年上演予定だったのがコロナ禍の影響で延期になっていました。そのため前回とはメンバーが結構替わっているんです。だから今回の上演では、替わってしまったメンバーの思いも載せつつ、新たなメンバーで頑張りたいです。それに私と木村君とのWキャストなので「いろは」の性別が変わる。いろは“くん”と“ちゃん”になるわけです。そこが変わるだけでこれだけ違うんだなということも感じて欲しいです」

―――木村さんは2017年の『ビリー・エリオット』で主役のお一人でしたし、川原さんは現役のAKB48のメンバーで、さらにグループの中でもダンススキルの高いチーム8で活躍されています。ダンスは相当やってきているんじゃないですか。

木村「僕はヒップホップやバレエを3~4歳の頃からやっていました。『ビリー・エリオット』のオーディションに向けてタップダンスも習ったことがあります。いまはバレエが1番好きですね」

川原「そうですね。ダンスの上手いメンバーがたくさんいます。私もAKB48に入る前からダンスはやっていたんです。ヒップホップとかね。でもAKB48に入ったら全然通用しないんです。踊り方が違って苦戦しました。あとメンバーもそれぞれに特訓していますから」

―――そんな2人ですが、振付も担当される相原さんの目から見るとどんなダンサーであり、役者でしょう。

相原「2人とも経験は豊富だし、もちろん実力がありますから全く心配していません。さらにそれぞれの良さが出るように振付もだいぶ変えています。2人とも同じ振りにはしないように考えています。一言でダンスといっても色々なジャンルがある訳ですが、そこに拘らずに色々混ぜる方が楽しいかなと思って振り付けしています。そもそもこの作品は、踊れることを前提にキャスティングしていますから、ビシビシやっていきたいです」

―――この『ダンスレボリューション 〜ホントのワタシ〜 』は2012年の初演から何度も上演されているんですね。

相原「企画立ち上げから関わってます(笑)」

―――凄いキャリアをお持ちの相原さんですが、過去に主演された舞台『ダンシング・ゼネレーション』は、ダンスを主題にした槇村さとるさんの漫画を舞台化したものですよね。

相原「ちょうど私が彼らくらいの年の頃で、ヒロインをさせていただきました。それに私の名前もあの作品の主人公からとりましたので、私自身が作品に育てられたようなところがあります。そんな経験から、ダンスが好きな若い子たちが活躍できる作品を作れないかという話を脚本・演出の是枝さんと話していてこの作品が生まれたんです。ちょうどダンスが学校の教科に加わった頃でした」

―――なるほど、それで「腐った魚のドヨ〜ンとした目」をした主人公「山川いろは」が生まれるんですね。因みにいろは役のお二人は「腐った魚の目」になることは無いんですか。

川原「よくありますよ(笑)。私は勉強が苦手で、夏休みの宿題も先延ばしにして最終日に焦るタイプなんです。なかでも数字が苦手で……無理ですね(笑)」

木村「僕も同じですね。特に歴史が苦手で授業中はちょっと失礼して……(笑)。逆にダンスの時間は活き活きしています。さっきも話したとおりバレエが1番ですが、なかでもクラシックバレエが良いですね」

川原「私はやっぱりヒップホップやガールズヒップホップがいいです。それ以外にAKB48らしさいっぱいのアイドルダンスも好きです」

―――確かに、ダンスの話になると活き活きしてる(笑)。長いことダンスの世界に関わっている相原さんから見ると、やはり若い人達のダンススキルは相当上がっているものですか?

相原「スキルは上がっていますし憶えも早いんです。感性が高いから振り付けてもすぐにこなしてきます。だからどんどんレベルが上がっています。舞台ではよりグレードの高いダンスを見せられればと考えています。でもこの作品はミュージカルだから、ただのダンスではなくて感情が加わったダンス。気持ちを表現するダンスにしたいなと思います。テクニックだけでなく、喜怒哀楽を織り込んだダンスに」

川原「相原さんは役者側の気持ちをわかってくださるし、分かり易い振付なので気持ちも入れやすいです」

木村「こうしなさい、というよりも色々提案してくださるし、逆に僕からもいろいろ言える環境を作って下さいますね」

相原「2人それぞれの良さを引き出したいし、得意な部分を伸ばしてあげたいのでそうなりますね。しかも作品の役柄としてはでは彼らのママでもありますから(笑)」

―――では最後に皆さんからのメッセージをお願いします。

川原「いろはちゃんと自分は真逆だと思っていたのですが、周りの友人からは似ているといわれる事もあって。だからまだ周りに見せたことがない自分を出せる気がします。ちょっと悪ガキな感じの自分かな。いずれにしても私なりのいろはちゃんを作りたいです」

木村「本当に授業中や勉強中とかは『腐った魚の目』で、ダンスで生き返る自分ですから、主人公とは共通点がある気がしています。それだけに僕の自然体、日常を魅せられれば良いなと思います」

相原「この数年のコロナ禍で、色々躓いて路頭に迷った子を沢山見てきましたが、そんな風に落ち込んだ人には是非観て欲しい作品です。観た後に元気をもらって未来に希望を与えられたら良いなと凄く思っています」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

木村咲哉(きむら・さくや)
東京都出身。3歳からヒップホップやバレエでダンスに親しみ、2017年にオーディションでミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』の主役、ビリー・エリオット役に選ばれる。その後、DIAMOND☆DOGS、ファンタジック・オーケストラミュージカル『古事記~スサノオと美琴~』、ミュージカル『オン・ユア・フィート』、『THE BOY FROM OZ』など数々の舞台に出演する。

川原美咲(かわはら・みさき)
佐賀県出身。AKB48チーム8およびチーム4のメンバーとして活躍。日本全国の都道府県出身者を集めたチーム8では佐賀県代表として活躍。

相原 愛(あいはら・あい)
神奈川県出身。3歳からクラシックバレエとタップダンスを始め、13歳でミュージカル劇団にスカウトされヒロインとして舞台に立つ。並行してNHK教育TV『おーい!はに丸』で歌のお姉さんすみれちゃんとして6年間レギュラー出演する。その後、人気漫画を原作としたミュージカル『ダンシングゼネレーション』で主役を務め、さらに数々の舞台にも出演する。またロサンゼルスに2年間留学し、スティーヴン・スピルバーグ監督映画にシンガーで出演するなど多彩な活躍を見せる。

公演情報

パン・プランニング
『ダンスレボリューション ~ホントのワタシ~ 』2022

日:2022年8月19日(金)~21日(日)
場:博品館劇場
料:【前売】A席7,500円 B席6,500円
  【当日】A席8,000円 B席7,000円
  (全席指定・税込)
HP:http://www.punplanning.jp
問:パン・プランニング
  tel.03-6915-0823

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