話題作『桜姫東文章』がシネマ歌舞伎に登場 仁左衛門と玉三郎、ふたりの伝説が作る至高の娯楽

 絶賛され演劇界を沸かせた話題作がシネマ歌舞伎として上映される。このニュースに観劇済みの人も未見の人も心踊らせた。

仁左衛門「普通は劇場へおみ足を運んでいただくところを、こちらが出張して全国の皆様に観ていただける。このシステムは有難いことです」

玉三郎「お芝居というのは不思議なもので同じ上演をされてもお客様のその時の気持ちで変わってくる。一日一日消えていってしまう芝居をしている私たちにとっては映像になるという恥ずかしさもあるのですけれど、一番良い形で撮影されたものを楽しんでいただけるのはとても有難いことです」

 『桜姫』は正にこのおふたりのために書かれたのではという声が観客から聞かれた程、本作の評価は高かった。人物像も物語の展開も観客のツボを押さえている。

玉三郎「この『桜姫』は南北にとって特別な作品だと思います。華やかさがありながら、江戸の芝居小屋周りにいる様々な人間模様を描いている。だからこの時代の人々がどのように生きていたかなということをつくづく想像するんです」

仁左衛門「役を掘りさげるというより、理屈にあわなくてもその場その場をいかに楽しく見せるかに重点が置かれていると思います。それでいて理詰めに走る傾向にある現代にも有無を言わせぬ魔力を持っている。それが古典の魅力だと思うんです」

玉三郎「芸術としてというよりは、ご覧になる皆様が楽しめる、部屋の中で良い時間を過ごせるようにお作りになったと思います」

仁左衛門「玉三郎さんとは長年ご一緒して今も昔もがむしゃらに楽しんでいます。玉三郎さんに変わりはないね、不思議な人で(笑)。とにかくご自分に厳しく、お客様の玉三郎像をしっかりと維持していらっしゃる。これは本当に素晴らしいことですよね」

玉三郎「仁左衛門さんと初めてご一緒した頃は “お兄さん”という感じでしたけれど、まさかこんなに長くご一緒できるとは、思っておりませんでした。仁左衛門さんという方は不思議な強い力をお持ちの俳優さん。二枚目も色悪も演じられる、この方のものがシネマ歌舞伎として残ったというのは大きなことだと思います」

 長い間共に演じていらしたおふたりだからこそのぴったり合った呼吸が美しい。大きいスクリーンならば一挙手一投足に嘆息が漏れるだろう。

(文:關 智子)

プロフィール

片岡仁左衛門(かたおか・にざえもん)
人間国宝、歌舞伎俳優。屋号は松嶋屋。1949年、大阪中座『夏祭浪花鑑』の市松で初舞台。1998年、『吉田屋』の伊左衛門、『助六曲輪初花桜』の助六他で十五代目片岡仁左衛門を襲名。紫綬褒章(2006年)、文化功労者(2018年)他受賞多数。

坂東玉三郎(ばんどう・たまさぶろう)
人間国宝、歌舞伎俳優。屋号は大和屋。1957年東横ホール『寺子屋』の小太郎で初舞台。1964年、『心中刃は氷の朔日』のおたま他で五代目坂東玉三郎を襲名。紫綬褒章(2014年)、文化功労者(2019年)他受賞多数。

公演情報

シネマ歌舞伎 桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう) 上の巻・下の巻

日:【上の巻 公開日】2022年4月8日(金)~ ※2021年4月歌舞伎座公演収録
  【下の巻 公開日】2022年4月29日(金・祝)~ ※2021年6月歌舞伎座公演収録
場:東劇 他 ※詳細は公式サイトにて
料:前売券1,900円 一般2,200円 学生・小人1,500円(税込)
HP:https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/
問:シネマ歌舞伎事務局 mail:cinema_kabuki@shochiku.co.jp

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