
俳優・佐野瑞樹が主催する、ワンシチュエーションコメディを軸としたプロデュース企画「sitcomLab」の第10弾は、初となる2作品連続上演。
『幻のイントルーダー』は人気小説家・藤澤智彦の自宅リビングが舞台。藤澤に会いたいと言い出す姉に『藤澤に会わせる』と約束する担当編集者・末國は、自分の友達を藤澤に仕立て藤澤夫妻が留守の間に会わせようとするが、急遽藤澤が戻ってきてしまい、ピンチに追い込まれる物語。
『ハッピーハードラック』は、薬物使用疑惑がかかった超人気カリスマバンド「キラードッグス」のボーカル・T2の自宅マンションが舞台。ヤクの売人を追い払うために雇われたギャングの渋谷だが、次々にやってくる怪しげなスタッフ達。そして勘違いとすれ違いの連続で混沌とした事態になってしまう物語。
sitcomLab主宰の佐野瑞樹、『幻のイントルーダー』で担当編集者・末國を演じる佐藤永典、『ハッピーハードラック』でT2のマネージャー・石田を演じる石田隼に話を聞いた。
―――sitcomLab公演も節目となる第10回公演となります。第1回公演からどのぐらい経ちますか?
佐野「コロナ禍になって3年目の時に立ち上げたので、2年半ぐらいですね」
―――相当なハイペースで上演されていますね。
佐野「立ち上げ当初から5年計画でやっていまして、55歳の誕生日までやろうと。そして3,000人動員を果たすという目標に向かって毎回やっているという感じです。なので第10回公演が節目という感覚はあまりないですね」
―――今回は2作品の上演となりますが、決定までの経緯がありましたら教えていただけますか。
佐野「一番は経済的にいいということです。最近はセット費が高騰していて、毎回1週間ぐらいでセットを潰すのがもったいないなと思っていて。前回の『いえないアメイジングファミリー』ではWキャストで2週間ぐらい上演したんですけど、やっぱりこれぐらいやれると、セットを作った意味はあると思ったのと、作品を変えた方がよりお客さんにとって楽しいだろうなというのがあって、今回sitcomLab公演として初めて違う作品を並べるという形になりました」

―――なるほど。それで2作品上演となったわけですが、『幻のイントルーダー』『ハッピーハードラック』をチョイスというのは何か拘りがあったのでしょうか。
佐野「当初は『幻のイントルーダー』のみを考えていて、今回が2回目の上演となるんですけど、どうしてもさとちゃん(佐藤)と神里(優希)でやりたいと思っていて、1年前以上前からオファーをかけ続けて、ようやく念願叶ったわけです。それから2作品やろうとなって、もう1作品は何にしようかなと思った時、『幻のイントルーダー』に一番近い形で上演できるのは『ハッピーハードラック』だなと」
―――ありがとうございます。では2作品に出演する佐藤さんと石田さんに出演が決まった時の感想をお聞きしたいなと思います。
佐藤「嬉しかったですね。これまでも瑞樹さんの作品をいろいろとやらせていただきまして、今回は僕と神里と瑞樹さんの3人がメインになる話を聞いて、大好きな人たちとお芝居すること出来て本当によかったです」
佐野「ただ、返事をもらうのに半年以上かかりました」
一同「(笑)」
佐藤「いやいや、スケジュールがなかなか決まらなかったんですよ(苦笑)。オファーをいただいた後も、瑞樹さんとお会いする機会があって、『本当に出たいんですけど、いつまで待ってもらえますか』ってお願いしたこともありました」
石田「2人が共演するのはいつぶりですか?」
佐野「2021年の『恋するアンチヒーロー』で初めてガッツリ共演したよね」
佐藤「はい、その後すぐ『ウエスタンモード』にも出演したので、今回が約4年ぶりの共演ですね。神里くんとの共演も約4年ぶりで、久々にお2人との共演が決まって嬉しかったです。そしてオファーの返事が遅くなって申し訳ないと思っています(苦笑)」
石田「4年プラス“半年”だね」
一同「(笑)」
石田「僕は『幻のイントルーダー』よりだいぶ後にお話をいただきました。同じ事務所の畠山(遼)や牧田(雄一)さんなど知っている方がいて、『お願いします!』と即決しました。しかも役名が僕と同じ石田で、『これって僕の当て書きじゃないか?』と思ったんですけど、違ったみたいです(笑)。
初めて台本を読んで、2024年にRoute Theaterさんのこけら落とし公演で『ギャングアワー』に渋谷役として出演したんですけど、その渋谷が『ハッピーハードラック』にも登場したり、畠山も『ギャングアワー』に出演したりして、このつながりは面白いと思いました」
佐野「『ハッピーハードラック』の石田を演じるのは本当に難しくて、『石田役は難しいよな……』と思った時、『石田か……石田……石田だ! あのキャラクターなら出来るな!』となって、石田くんに石田役でオファーしました」
石田「たしかに大変そうですけど、楽しいと思える役と認識していたので、お話をいただいた時は嬉しかったです」
―――連動性があるということで、既に『ギャングアワー』をご覧になった方は『ハッピーハードラック』はより観やすくなりそうですね。
石田「『ハッピーハードラック』に限らず、瑞樹さんのシチュエーションコメディはどの作品も観やすいと思います。恥ずかしながら、僕も34歳になって後輩とかも出てくるわけじゃないですか。そんな後輩に僕は『絶対に瑞樹さんの舞台に出た方がいい!』って言うんですよ。瑞樹さんの作品は絶対に学べるものがたくさんあって、時にはパワープレイしなきゃいけない場合もありますが、瑞樹さんのコメディは本当に面白くて、そんな作品に節目節目で出させていただいてるのは、すごく有難いことだなと自分なりに思っていますね」

―――それぞれ台本を読んでの感想を教えていただけますか。
佐藤「実は『幻のイントルーダー』が出来る前のプロット段階の企画会議に参加していたんですよ」
佐野「1人で考えるよりも、何人かで考えた方がアイデアも出やすいので、いつもさとちゃんに参加してもらってもらっています」
佐藤「自分が面白いと思うことや好きなことを案として出しまくったんですけど、ほぼ却下でした」
一同「(笑)」
佐藤「今回の台本を読んでみて、他の作品のシチュエーションコメディは1人を騙すために頑張るという内容が多いですけど、瑞樹さんの作品はいろいろな人が、様々な勘違いを起こしてしまうシチュエーションがメチャメチャ多い印象です。sitcomLabのメンバーは何度も出演されているから、すぐに慣れると思うんですけど、今回久々に瑞樹さんのシチュエーションコメディ出演なので、稽古が始まるまでに早く覚えなきゃというのはありますね」
佐野「2つの作品を比べると、最近書いた『幻のイントルーダー』は緻密で絡み合い方が少し複雑になっているのに対して、だいぶ前に書いた『ハッピーハードラック』は若干ぶっ飛んでいて、かなりパワープレイが必要というのが特徴です」
佐藤「ごく普通の登場人物が普通に騙し合うというシチュエーションコメディを演じるのは、本当に難しくて、きっと始まって序盤から大汗が出そうな気がしますが、なかなか味わえないという意味では、楽しみでもありますね」
石田「僕もさとちゃんと同意見で、瑞樹さんの作品は、巻き込まれる中心となる人物が、とてつもない汗をかくんです。僕も経験しているから言えることですけど、グレーの服が変色するぐらい汗びしょになります。でもそれが楽しいといいますか、騙す騙されるを本気でやるというのがとてつもなく面白い空間で、癖になってしまうくらい好きなんです。とにかく台本自体は間違く面白いので、今回集められたメンバーでできる最高のものにしたいなと思っていますね」
―――先程佐野さんが、佐藤さんと神里さんに半年前からオファーをしていたとおっしゃっていましたが、両作品ともキャスティングに関してはかなり拘りがあったのでしょうか。
佐野「今回はかなり拘りましたね。基本的に僕がキャスティングする理由は2つあって、1つは“お芝居がよくできる”、もう1つは“人間性がいい”。この2つを1番大事にしているんですけど、実は今回それにもう1個プラスしちゃったんです。それは“華やかさ”。人間性が良くて芝居が上手い役者さんはたくさんいますが、華やかさを加えるとかなり絞られてしまうので、今回のキャスティングは一番苦戦したかも」
石田「ということは、瑞樹さんの中で僕らは華やかさがあるということですよね」
佐野「うん。ただ華やかさの中では一番下のランクね」
一同「(笑)」
佐藤「僕ら滑り込みだったんだ!!」
―――インタビュー時点ではまだ稽古前の段階ではありますが、佐藤さんと石田さんにはそれぞれ出演される作品について、佐野さんには初めてsitcomLab公演をご覧になる方と何度もsitcomLab公演を観劇している常連向けに対しての見どころや注目ポイントを教えていただけますか。
石田「瑞樹さんから『幻のイントルーダー』が最近の作品で『ハッピーハードラック』がだいぶ前の作品と話されていましたが、それぞれの時代に作られた台本を同時に楽しめる面白さもありますし、それにプラスして、今の瑞樹さんの演出の面白さも加わって、そしてsitcomLab常連のメンバーやこれまで瑞樹さんに関わり合いのある人たちとの絡み合いの面白さを2つの作品で楽しんでいただきたいというのが、今の率直な思いですね。先程も言いましたが、両作品とも面白いのは間違いないです!」
佐藤「『幻のイントルーダー』の初演は、チケットがすぐに売り切れてしまって、瑞樹さんのファンの方やsitcomLabのファンの方の多くがチケットを取ることが出来なかったと聞いています。それに配信もなく、映像が残っていないこともあって、今回が初見という方がかなり多いと思うんです。物語や結末も知らないまま観に来る人が多いと思うので、それがまず一番の見どころでしょうか。それに『幻のイントルーダー』には瑞樹さんがガッツリと出演されますので、個人的には僕と瑞樹さんが絡んでいる場面を観ていただけると嬉しいです。」
佐野「さとちゃんと対立する役を演じます。是非注目して下さい」
石田「僕、観に行きますね」
一同「(笑)」

佐野「sitcomLab公演は、初めて観に来られる方がいかに観やすくするかを徹底していまして、初見に優しく、別に泣かせようとか一切ない純粋なコメディです。きっと終わった後は“笑った”、“スカッとした”と思ってもらえるはずで、とにかくわかりやすい作品になっています。
常連さんの方向けの見どころとして、シチュエーションコメディは、笑いを取るために、いろんなところに“伏線”を張らなきゃいけないんですけど、その伏線を探しながら観るとより楽しめるんじゃないかなと思います。sitcomLabのファンミーティングでも常連さんが本当に細かいところまで観てくださっているんだというのが僕にも伝わりますし、これからもそういう見方で観ていただけると嬉しいです。
それと『幻のイントルーダー』と『ハッピーハードラック』で棲み分けをしていて、『幻のイントルーダー』は“おしゃれな会話劇コメディ”に、『ハッピーハードラック』は“ド派手にバカバカしく風呂敷を広げまくるコメディ”にしようと思っていますし、衣装もそれぞれ全然違うカラーになります」
石田「『ハッピーハードラック』はド派手キャラクターばかりですけど、カリスマミュージシャン・T2のマネージャーの石田だけ普通の衣装になると思います(笑)」
佐野「1人だけ普通の衣装だから逆に目立つんだよね。『ハッピーハードラック』の緻密に作られているワンシチュエーションのように見えて、後半から急にバカバカしい遊びや立ち回りが入ります。それに毎回ポストクレジットショー(※終演後に行われる、15分程度の有料アフターイベント)があるんですけど、『ハッピーハードラック』の方は間違いなくド派手なものになります。『幻のイントルーダー』と同じセットで繰り広げられるので、それぞれ見比べるというのも見どころの1つだと思います」
―――ちなみに「ポストクレジットショー」は、プラチナ席の特典の1つになりまして、プラチナ席には、最前列確約や作品に応じたキャスト対面イベントに参加出来たりと、かなりお得感満載の特典になっていますね。
佐野「プラチナ席は“体験を売る”ということをメインとしていて、謎に包まれ過ぎて、初見の人はなかなか買いにくいと思うんですけど、一度体験したら病みつきになってしまうチケットで、毎回激戦になるんですよ。最近だと『ギャングアワー』の時はコードネームをお客さん一人ひとりに与えたり、ホテルを舞台にした『トラベルモード』の時は開演前に荷物を席まで運んだり、前回の「いえないアメーイジングファミリー」では、“悪魔の晩餐会にご招待”という企画で、お客さんに衣装を貸し出して、ドレスアップしてもらってみんなで乾杯するとか、プラチナ席のお客さんがキャストと一緒に思い出を作るという企画でやっています。」
佐藤「しかも普通に観劇した目の前でやるということで。凄くいい企画だと思います」
石田「もちろん今回も両公演ともありますよね」
佐野「やります! まだ正式な内容は決定していないので、具体的な企画は言えませんが、『幻のイントルーダー』は、人気小説家と担当編集者を中心に物語が展開するので、本にまつわるあることをやると思いますし、『ハッピーハードラック』は、カリスマミュージシャン・T2をメインにあることをやる予定です。是非プラチナ席で貴重な体験をしていただきたいと思います」
―――では最後に公演を楽しみにされている方に向けて、メッセージを石田さん・佐藤さん・佐野さんの順番でお願いします。
石田「楽しめるポイントはたくさんあります。sitcomLab常連の方々は、キャストが変わることでまた違う作品になると思うので、そういうところを楽しみにしつつ、そしてプラチナ席を楽しみにしていただきたいと思います。
初めてsitcomLabの公演を観劇される方々に向けては、一度ワンシチュエーションコメディを観たら本当に癖になると思います。実際にsitcomLab公演を観たことをきっかけに役者を始めた人もいます。それと学生の方には特に観に来て欲しいです。課外授業で演劇をする学校が増えていると聞いていますし、ワンシチュエーションですから、椅子とテーブルがあればなんとかできます。そういった演劇を学ぶ学生たちに対して、ワンシテーションコメディを通じて、レールを敷いてあげられるような、笑って笑って笑える作品になればいいなと思っておりますので、楽しみにしていてください」
佐藤「きっと2026年最初の舞台観劇という方もいらっしゃると思いますので、笑って2026年をスタートしてもらえるように一生懸命頑張りたいなと思います。sitcomLabさんは、収益の発表や稽古の状況などを配信で全部赤裸々に話したりと、他の団体さんがやっていないことをいっぱいされています。
もちろん作品はいいメンバーと全力で、僕も精一杯届けさせてもらうんですけど、今回も稽古前から本番終了の1か月後ぐらいまで配信する予定なので、本番中だけでなく、1月から2月までずっと楽しんでもらいたいです。よろしくお願いします」
佐野「本編のお芝居が面白いのはマストだと思っていて、それにプラスアルファで“楽しめる”ということが、最近になって大事なんじゃないかと思ってきました。今では劇場に来なくても配信やDVDで観ることが出来ますが、劇場に来る楽しさをもっとアピールしたいんですよね。
“劇場に来ることが楽しい”ということを目指して、今いろいろと試しながら、良いものは残し、悪いものは消す作業をしていて、次回また新しいことを何かプラスしていけたらいいなと思っています。もちろんDVDは出すんですけど、ぜひこの劇場に一度は来ていただければ、他では絶対にできない体験することが出来ます。そこを楽しみにしてもらいたいです。本編は普通に笑えます! マストです!!」
(取材・文&撮影:冨岡弘行)

プロフィール

佐野瑞樹(さの・みずき)
1973年9月26日生まれ、静岡県出身。sitcomLab主宰。1993年にミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で初舞台。その後、 数々の話題の舞台・ミュージカル・ドラマに出演し、高い評価を得る。2011年、弟の大樹と兄弟プロデュースユニット「WBB」を結成。2013年、 舞台『川崎ガリバー』で初演出。その後も、多くの公演で執筆や演出を手掛ける。sitcomLabでは脚本・演出・出演・主宰を務める。

佐藤永典(さとう・ひさのり)
1990年2月14日生まれ、埼玉県出身。主な出演作に、舞台『文豪とアルケミスト』シリーズ 北原白秋役、『ROCK MUSICAL BLEACH』シリーズ 石田雨竜役、ミュージカル『黒執事 ~緑の魔女と人狼の森~』スネーク役など。

石田 隼(いしだ・しゅん)
1991年10月30日生まれ、三重県出身。主な出演作に、ミュージカル『Dr.STONE』THE STAGE シリーズ ドクタロー役、『演劇【推しの子】2.5次元舞台編』みたのりお役、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』中国ツアー 烏養繋心役など。
公演情報

sitcomLab 第10弾
『幻のイントルーダー』
『ハッピーハードラック』
日:2026年2月4日(水)~15日(日)
場:恵比寿・エコー劇場
料:プラチナ席[最前確約・特典付]15,000円
S席[前方確約・特典付]5,000円
A席3,000円(全席指定・税込)
HP:https://lit.link/sitcomLab
問:sitcomLab mail:info.hanipro@gmail.com
