観客参加型の“演劇フェス”が12年ぶりに幕を開ける “シェイクスピア”を題材とした6団体による総当たり戦

 複数の劇団が共通のテーマで作品を創るコンペ形式の演劇フェスティバル『ガチゲキ‼』の第3回『ガチゲキ!! Part3』が2026年3月より上演される。この度実施されるのは“シェイクスピア”をテーマとした、6団体による総当たり戦。さらに前回の開催から約12年ぶりということもあり、注目しているファンも多いだろう。
 今回は「劇団だるめしあん」の代表であり、『ガチゲキ‼』のプロデューサーでもある劇作家・演出家の坂本鈴にインタビューを実施。開催を決めたきっかけや、彼女が考える演劇の魅力について話を聞いた。


―――『ガチゲキ!!』は2011年・2014年にも実施されており、今回が3回目の開催となります。公演が決定した時の気持ちを教えてください。

 「前回の3倍近く大きな会場になったことに加えて、参加してくれる団体が本当に強い方々ばかりで。『よし、行くぞ!』という気持ちと、『いや本当にこの人たちと戦うの? 大丈夫?』というプレッシャーが一気に来ました(笑)」

―――坂本さんは『ガチゲキ!!』のプロデュースもされていると聞いています。前回(2014年)の開催から12年とかなり間が空いているかと思いますが、この度開催を決めたきっかけは?

 「小さな劇団にとっては、劇場の規模にかかわらず“自分たちにとって背伸びが必要な会場”を借りるのはリスクが高いんですよね。初回の『ガチゲキ!!』で使った王子小劇場(現:インディペンデントシアターOji)も大劇場というわけではないんですが、当時の私たちには料金面でも規模感でもちょっとハードルが高くて。だから、1団体で抱えるよりも”みんなで対バン形式でやろう”と始まったのが『ガチゲキ!!』なんです。
 今回開催しようと思ったきっかけとしては、コロナ禍で劇団が潰れていってしまったり、観客が減ってしまったりした時期があって。その時に“劇団同士の横の繋がり”の大切さに気づいたんですよね。あとは劇団自体も縮小して、小さい会場やカフェ公演をやっていこうという雰囲気があったんですけど、大きな会場で大掛かりなセットを組み立てた方が良い作品もあると思うんですよ。なので、今までよりも規模感が大きい小屋でやろうかなと思いました」

―――12年ぶりの開催ということで、周りからの反響はいかがでしたか?

 「1回目や2回目の頃は、“自分たちでフェスを企画する”ことがまだ一般的ではなくて、『本当にできるの?』と驚かれることも多かったんです。でも今回は過去2回の実績もあるので、『またやるんだね!』、『今こそやったらいいよね、すごくいいイベントだし』と、むしろ背中を押されることが多くて。『実現できるの?』という空気はなく、期待を込めた『いまやるべきだよね』という声が多かったのが嬉しかったですね」

―――『ガチゲキ!!』では、複数の団体が共通のテーマで作品を披露しています。このような形式にしている理由を教えてください。

 「ショーケース形式の公演も良いと思ったんですけど、それだと他のチームが何をやっているか興味を持ちにくいなと思って。でも総当たり戦というバトル形式にすると、他の公演も気になるじゃないですか。勝敗を決めるのが重要なのではなく、決めることによってお互いが相手に関心を持ってくれたらいいなと思っています」

―――確かに。同じテーマだと、自分たちの反省点や改善点も見えてくるような気がします。

 「そうですね。『ガチゲキ!!』を2回開催して思ったのは、“自分は自分でしかいられない”ということを、それぞれ発見していく機会ではないかと感じていて。他のチームと関わることで、自分たちのチームについて再発見していく大会だと認識していただけたらうれしいですね。
 あと総当たり戦だと、観客も他のチームのことが気になってくるじゃないですか。実際に観劇して投票することで、演者だけでなく観客自身も参加できるので、この形式にしています」

―――『ガチゲキ!! Part3』のテーマは、“シェイクスピア”だと聞いています。

 「そうなんです。シェイクスピアは悲劇から喜劇まで、とにかく作品がたくさんあるので、それぞれの劇団に合うものを選びたい放題なんですよね。あとシェイクスピアって実際のところ詳しく知らない人が多い気がするんですけど、ロミオが登場したら『ロミオとジュリエット』だし、妖精のパックが出てきたら『夏の夜の夢』みたいに、断片的に理解していると思うんですよ。しっかりパロディしなくても、1つのセリフだけ、一部のシチュエーションのみでも使いやすいのが共通テーマとして取り入れた理由でもありますね」

―――2024年8月に開催された「復活前年祭」では、“月9”がテーマだったのも印象的でした。

 「もともと『ガチゲキ!! Part3』は、こまばアゴラ劇場で“シェイクスピアをお題に、6団体総当たり戦”という企画で進んでいたんです。でもアゴラが閉館してしまって……。ただ、アトリエ春風舎なら使えるという話になり、『それなら、まず前年祭をやろう』という流れになりました。本開催とは違うお祭り感を出したかったこと、ポップなチームが多かったこともあって、共通テーマは“月9”に。
 前年祭には、くによし組さん、松森モヘーの小竹向原ボンバーズさん、そして私たち劇団だるめしあんの3団体が参加したんですが、どの作品も本当に良くて。その中で、くによし組さんと劇団だるめしあんの作品が新人戯曲賞の一次審査を通過し、私は最終候補にも残りました。“月9”という共通テーマは、3団体それぞれの個性が際立つ良い題材だったなと感じています。」

―――『ガチゲキ!! Part3』について、坂本さんはX(旧Twitter)で「本当に戦いたくない団体ばかりが集まった」と話していたのも覚えています。

 「皆さん、本当に“つよつよ(強強)”なんです(笑)。劇団鋼鉄村松さんは、黄金のコメディフェスティバルで最優秀脚本賞・最優秀演出賞・最優秀作品賞・観客賞を受賞した実力派で、『ガチゲキ!! Part2』の雪辱を誓っての参戦です。そして、あとの4団体は初めましてですが、プロフィールを見るだけで“絶対強い……”と感じる方々ばかりで。
 エンニュイさんは、CoRich舞台芸術まつり!グランプリや、関西演劇祭の最優秀作品賞・最優秀脚本賞など、ここ数年受賞が続いている勢いのある団体。ZURULABOの小野寺ずるさんはPARCO劇場など大きな劇場にも出演されている俳優さんで、団体としては過去に『15 Minutes Made in 本多劇場』に出場されるなど、キャリアのある団体です。
 露と枕さんは、シアターグリーン学生芸術祭の最優秀賞を受賞していて、“弱さの愛おしさ”を描く力が光る劇団です。ほしぷろさんは、せんがわ劇場演劇コンクールで演出家賞を受賞されていて、即興性の高い独自のスタイルが魅力です。
 こんな“本当に戦いたくないほど強い”団体ばかりに、『でもご一緒できたら最高だな』と声をかけさせていただきました」

―――『ガチゲキ!! Part3』を企画する上で大変だったことや、思ったよりも苦労したことは?

 「初めましての人たちに企画を伝えて、賛同してもらうのは大変でしたが、思ったより楽しかったですね。『今回は参加できないけど、絶対応援するから』という方々にたくさん出会えたし、演劇の話やコロナ禍の大変さなどを共有したりと、この企画を通じてさまざまな話ができたのはすごく良かったです」

―――坂本さんが考える『ガチゲキ!!』の面白さ、そして演劇の魅力は?

 「『ガチゲキ!!』は総当たり戦なので、『劇団だるめしあん』VS『劇団鋼鉄村松』の次は『劇団だるめしあん』VS『ZURULABO』といったように、全ての組み合わせが見られるんですよ。なので同じチームでも対決する相手によっては勝ったり負けたりするところが面白いんじゃないかな。連勝しているけど、このチームにはなぜか負けてしまう……といった予想できない展開は、他にない魅力だと思います。
 そして演劇の魅力は“同時性(その時間を一緒に過ごすこと)”ですね。皆で同じところに集まって、稽古して、観客が劇場に来て上演して……ということって効率は悪いけど贅沢すぎるし、その同時性をより強くするのがフェス(お祭り)だと思っていて。皆が集まって1つのことをやる、それを観て体験するということは楽しいですし、演劇の良さじゃないかなと感じています」

(取材・文&撮影:渡辺美咲)

プロフィール

坂本 鈴(さかもと・りん)
1982年生まれ、熊本県出身。劇作家・演出家。「劇団だるめしあん」主宰、「劇作家女子会。」リーダー、「劇団劇作家」所属。2014年、『女2』で第2回せんだい短編戯曲賞 最終候補に選ばれる。2023年、『あの子の飴玉』にて第49回部落解放文学賞 戯曲部門 佳作を受賞。2025年、『ラブイデオロギーは突然に』にて第31回日本劇作家協会 新人戯曲賞 最終候補に選ばれる。大学で劇作を教えるほか、全国各地の高校演劇や文化事業で審査員・講師としても活動。最近の合言葉は「えっちでポップで社会派」。

公演情報

『ガチゲキ!! Part3』

日:2026年3月6日(金)〜14日(土)
場:座・高円寺1
料:一般4,000円 U-22[22歳以下]3,500円
  ※リピーター割は各500円引
  ※他、応援チケット・3回セット券あり。
   詳細は下記HPにて(指定席・税込)
HP:https://gachigeki.com
問:『ガチゲキ‼』実行委員会 tel.090-6046-7456

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