知的障がい者と家族の日常。それぞれの苦悩や幸せを描く、感動作! 5年ぶりの再演は「僕と明夫さんの集大成」

 宅間孝行の代表作『くちづけ』は、知的障がい者とその家族の日常を通し、それぞれが抱える苦しみや悩み、それ以上にかけがえのない“幸せ”を描く。2010年に初演され、映像化もされているが、舞台版では5年ごとに再演が続き、今回で4回目の上演となる。

宅間「実は5年前で、(金田)明夫さんの愛情いっぽんと、私の演じるうーやんは終わりにしようと思っていたのですが、時はコロナ禍。非常に寂しい客席を体験して、またリベンジしようと思ったんです。今回、1つの集大成になればいいなと思います」

金田「僕はありがたいことに、ドラマでも舞台でも同じキャラクターを演じ続ける機会が多くて。そうすると、『この時は、こんなことを思っていたな』なんて、過去の自分と会話できるんです。それがまた面白い。4回目ですが、今回も新鮮な気持ちで取り組めたら」

 舞台は、知的障がい者の自立支援のためのグループホーム「ひまわり荘」。大ヒット作品を一度だけ世に送り出した漫画家の愛情いっぽん(金田)は、娘のマコ(石田亜佑美)を連れて住み込みで働くことに。マコの心の扉を開けたのは、ひときわ明るく元気なうーやん(宅間)で――。

宅間「うーやんの設定より自分が年を重ねてきているので、年を取ったと思われないようにしたいです。姿勢や身体の使い方が独特なところがあって、演じるのにはエネルギーが必要なのですが、この作品は知的障がい者など当事者の方々も多く観に来るんですね。そしてみんな、うーやんのことが大好き。今回もみんなが大好きなうーやんでいたいと思います」

金田「愛情いっぽんは、娘を愛していて、自分の中でしか考えられなくなってしまって……。時代が悪いのか、何が悪いのか分からないけれど、ただただ本当に精いっぱい生きていこうとしたんですよ。頑張っている男を演じられたらと思っています」

 “集大成”の位置付けとなる本作。観客へのメッセージを尋ねると。

宅間「明夫さんと僕の最後の『くちづけ』なので、これから先、生で観たいと思っても観られません。劇場でお金を払う価値がまさにここにあると思うので、ぜひ立ち会っていただけたら」

金田「1回は観ておいた方がいい芝居ですよ。今は色々なジャンルの芝居を観られる時代ですけど、本作を観た方はみなさん『人生の中で、非常に残る芝居だった』と仰る。濃密な演劇空間を作り上げます。ぜひ芝居を楽しんでもらいたいです」

(取材・文:五月女菜穂)

プロフィール

金田明夫(かねだ・あきお)
1954年生まれ、東京都出身。円演劇研究所を経て、1977年に演劇集団円会員に昇格。近年の主な出演に、二兎社公演45『鷗外の怪談』、舞台『エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~』、演劇集団円『グレンギャリー・グレンロス』、『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』、ドラマ『民王R』、『科捜研の女』シリーズなど。

宅間孝行(たくま・たかゆき)
1970年生まれ、東京都出身。1997年、劇団「東京セレソン」を旗揚げ。2001年、「東京セレソンデラックス」と改名するのを機に、主宰・作・演出・主演として活動。2013 年、「タクフェス」を立ち上げる。役者としてドラマや映画に出演する一方、脚本家・演出家としても活躍。劇団作品の映像化として、ドラマ『歌姫』、『間違われちゃった男』、『流れ星』、映画『くちづけ』、『あいあい傘』など。その他、配信連続ドラマ『THE BAD LOSERS』シリーズ、ドラマ『素晴らしき哉、先生』、映画『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』、『THE RIGHTMAN 正義の男』で脚本・監督を務めた。

公演情報

タクフェス第13弾『くちづけ』

日:2025年11月28日(金)~12月7日(日)
  ※他、地方公演あり
場:サンシャイン劇場
料:S席[特典付]12,000円 S席9,800円
  TAKUFESシート[2階後方席・当日引換券]7,800円(全席指定・税込)
HP:https://takufes.jp/kuchiduke2025/
問:サンライズプロモーション
  tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)

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