ロングラン公演だからこそ、四者四様の主人公を見比べて! 大いに笑って大いに泣ける! 誰でも楽しめるエンターテイメント時代劇

 2012年に朝比奈文邃が旗揚げしたエンターテイメント時代劇の一座「ざ☆くりもん」。時代劇をベースとしつつ、幅広い年齢層に分かりやすく、大いに笑って大いに泣けるハートフルコメディを届けているカンパニーだ。
 「ざ☆くりもん」による今作品は『六道追分』(ろくどうおいわけ)。鬼アザミ清吉は子分の粂次郎、伊助、三吉とともに世を騒がせる盗賊だったが、狙うは汚い守銭奴ばかり。さらに奪った宝を庶民に配る痛快な犯行に、一味はいつしか江戸庶民に人気の「義賊」になって――という物語。
 この『六道追分』は、第一期(2025年4月5日〜27日)、第二期(同年4月30日〜5月11日)、第三期(同年5月13日~25日)、第四期(同年5月27日~6月8日)以降、第八期(8月3日 大千穐楽)までロングラン公演が予定されている。今回は第一期~第四期それぞれの期間で、主人公の清吉を演じる山田拓未、瀬戸啓太、きたつとむ、河合健太郎に出演にあたっての思いや、本作の見どころを聞いた。


―――なかなか取材の現場で同じ役を演じる4名が揃うこと自体が珍しいのですが(笑)、今回の出演にあたっての意気込みから教えていただけますか?

山田拓未(以下、山田)「僕は第四期まで出るので、果たして、終演する半年後には生きているのかどうか……(笑)。舞台以外のお仕事で、2〜3ヶ月のロングランという経験はあるんですけど、舞台では初めて。いろいろ大丈夫かなと心配ですが、もう走り切ります!」

河合健太郎(以下、河合)「僕はくりもんさんの『冥途遊山』の稽古中に今回の出演オファーをいただきました。すごく稽古が楽しいな、いい現場だなと思っているときにオファーをいただいたので、二つ返事で出演したいですと言いました。またくりもんさんとご一緒できるのはすごく嬉しいです」

瀬戸啓太(以下、瀬戸)「今回、声をかけていただいたとき、「ざ☆くりもん」の作品が続いていることは知っていたんですけど、観たことがなかったので、正直どんな感じなのかなと思っていたんです。でも今回、前に共演経験のある(山田)拓未さんが僕のことを推薦してくれたみたいで……! 拓未さんともまたご一緒したいという気持ちもあったので、楽しみにしています」

きたつとむ(以下、きた)「僕も今回のお話をいただいたのは、くりもんさんの『冥途遊山』に出演しているときでした。そのときに座長の拓未さんの姿を見ていたから、拓未さんと肩を並べて主演をやるというプレッシャーを一番に感じましたね。もちろん、健ちゃん(※河合さんの愛称)や瀬戸さんも同じ役を演じられるということで、自分なりに届けられるものを全力で届けたいと思いました」

―――みなさんが演じる清吉という役についての印象を教えてください。

山田「セリフにもあるんですけど、生きているのか死んでいるのかがよく分からない役なんですよ。その違和感のようなものを表現するのは結構難しいだろうなと思っています。加えて、貫禄やカリスマ性がある人物なので、それをどう表現しようかなとも考えています。とにかく演じがいがありそうですね」

河合「盗賊の話なので、逃げる道中が結構描かれているんですね。楽しいシーンが多い中で、人に追われていつ捕まるか分からないハラハラ感をどうやって出せばいいのかなと悩んでいまして……それで、僕はちょうど今、脱獄犯のドラマ『プリズン・ブレイク』を見ているので、何か参考になるかなと(笑)。とにかく頑張って逃げたいと思います!」

瀬戸「清吉はカリスマ性があるけれど、少し子どもっぽいというか、頑固だったり、固執したりする部分があると思っています。自分も年齢を重ねてきて、ついつい大人っぽくやってしまいがちなんですが、その辺のバランスは考えていきたいですね」

きた「役の印象は……ちょけられない(ふざけられない)(笑)。まだ稽古をしていないし、僕は第三期目に演じるので、今の印象と全然違うかもしれないですけど、清吉は清吉なりに自分の姿を探している気がするんですよね。盗賊団の前で見せる姿もあれば、ヒロインに対して見せる姿も、自分の本心もある。その辺の見せ方の違いが出せたらいいなと思っています。今まで自分は分かりやすくまっすぐな役が多かったので、今回はちょっとミステリアスな部分も醸し出せるように演じていきたいです」

―――四者四様な清吉になりそうですね! やはり他のキャストの方の演技は影響するのでしょうか?

山田「最初は1人で清吉を演じていますが、第二期から他の皆さんも清吉を演じるとなると、僕自身の演技も変わっていくだろうし、その変化があることはある意味“正解”だと思っていますね」

瀬戸「僕は第二期に、拓未さんと並行して演じるので、他の清吉を見る機会があまりない気がするんですよね。それに、このメンバーの中では唯一くりもんの作品に関わったことがないから、どういう空気感で作られるのかも分かっていない。だから、ちょっと違うものが出来上がる可能性が高いんじゃないかな。もちろん第三期も第四期も見たいですけど、僕としては影響を受けるということはないのかな……?」

河合「僕1人で清吉を作るというよりは、きっと寄せていくと思います。それぞれに絶対にいいところがあると思うから。ロングラン公演ということは、めちゃくちゃ他の人の“正解”を見られるということ。いろいろ見た上で、自分の清吉像を作りたいなと思います」

きた「僕自身も模索しながら役を作っていくと思うので、周りの清吉を見る余裕があるかどうか(笑)。とはいえ、主演って、背中で見せて引っ張っていくタイプも入れば、『みんなで肩並べて一緒に行こうぜ!』というタイプもいるじゃないですか。そのタイプによって、結構座組の雰囲気が変わると思うんですよね。僕は僕なりにうまく座組一同で雰囲気を作って、バトンパスができたらいいなと思っています」

―――改めて「ざ☆くりもん」の魅力を教えてください。

山田「まずは、エンターテイメント時代劇ということですね。いつもはもっとダンサーがいるんですけど、今回は1公演に2人。オープニングもエンディングも劇の途中でも、ダンスシーンがありますし、曲の中で物語を進めていくところはくりもんらしいところかなと思います。
 それから、花魁だったり、火消しだったり、鬼だったり、今回でいえば盗賊だったり。江戸時代だけれど、どこかSFっぽいところがあるのも特徴的ですよね。
 また、8割はコメディだけれど、2割はストレートにいろいろな方の心に響くようなことが書かれているお芝居だということ。脚本家が住職なので、説法というわけではないんですけど、人の心に届くものが組み込まれているのが、くりもんらしさだと思います」

―――脚本家が住職というのは、なかなか珍しいですよね。

山田「そうかもしれませんね。僕も最初は観る側だったんですが、心に刺さるものがあって、出演させてもらいたいなと思って、今に至るんです。やはりやっていても面白いですし、セリフの伝わり方が人それぞれ違うので、その辺りも含めて面白いです」

河合「全部、拓未さんに言われちゃった(笑)。もしかしたら『六道追分』というタイトルを聞いて、『難しいお芝居なのかな?』と構える人もいると思うんですけど、前回のくりもんさんに出演させていただいたときに、すごくお客様から好評をいただいたんですね。分かりやすいし、笑えるし、泣けるし。この「笑えるし、泣けるし」というのは、簡単そうで難しいんですけどね、時代劇だからと構えなくても、分かりやすく皆さんにお届けできるのがくりもんのいいところだなと思っています」

きた「僕が感じるくりもんさんらしさは、稽古場ですね。笑いが絶えない稽古場はよくあって、くりもんさんも笑いが絶えない稽古場だったんですけど、みなさん「仕事人」なんですよ。さっきまでめちゃくちゃ面白いことをやっていたのに、急にパキッと変わって、泣ける芝居をしたりする。
 前回は拓未さんが主演をされていて、やはり拓未さんが先陣を切って雰囲気を作っていたと思います。くだけるときはくだけるけれど、魅せるときは魅せる。すごい現場だな、自分も頑張ってついていかなくてはなと思いました。その良さを自分もバトンパスできたらいいなと思います」

―――瀬戸さんはくりもんに初参加ですよね。

瀬戸「はい。今回の『六道追分』のビジュアルや、過去の作品のキービジュアルを見たときに、『時代劇なんだ!』と構えたんですよ。きっと時代劇が苦手で、エンターテイメントの楽しいショーの方が好きという方もいらっしゃると思うんですけど……台本を読んでみると、割と誰でも楽しめる作品になっていると思いました。
 時代劇っぽくないというか、今の若い世代の人たちでも馴染みのあるワードがたくさん出てきたり、長セリフをあえてちょっとネタにしてみたり。お客さんを笑わせつつ、この世界観に取り込む工夫が散りばめられていたので、タイトルやキービジュアルにとらわれすぎず、気軽に見てもらえたら。時代劇が苦手な方にも楽しんでいただけるのではないかと思いました」

―――お稽古前だとは思うのですが、今回の作品はどんなところが見どころになりそうですか?

瀬戸「まずはやはり四者四様の清吉が見られるところは見どころだと思いますよ。キャストが変われば全然違って見えるでしょうから、いろいろと見比べていただきたいと思います。
 また、さっきもちょっと言いましたけど、時代劇っぽくない、馴染みやすい笑えるシーンも多い一方で、ちょっと甘酸っぱいシーンも結構あるんですよ。ストーリーとしても見応えがある結末だと思っています」

きた「いや、僕、他の皆さんの甘酸っぱいところを早く見たくて……! 特に清吉がヒロインに向かって『悪いが、おめえさんも一緒に盗むぞ』と言って誘拐するシーンがあるんです。そのセリフを客席で聞いてキュンキュンしたい(笑)。その後の掛け合いも可愛いですから、見どころだと思います。あ、もちろん僕もそのセリフでキュンキュンしてもらえるように頑張りますよ!(笑)」

山田「くりもんはテンポが命みたいなところがあるんですよね。だから軽い気持ちで見てもくすっと笑えると思うし、過去には声を出して笑っている方もいらっしゃった。ある種の団体芸のようなところが見どころかなと思います」

河合「ちょっとアホな回答に聞こえるかもしれないですけど(笑)、衣装が派手です! 普段着ないような服を着て走り回るのは、僕らも刺激的ですし、お客さんも“らしさ”を感じていただけると思います。……ただ、コメディって、めちゃくちゃ難しいんですよね。さっき拓未さんがテンポの話をしていましたけど、ちょっとズレただけで笑いが起きたり起きなかったりするのでね。しっかり準備して、集中してお届けしたいと思います!」

―――ロングラン公演ということで、皆さんが体調管理のために気をつけていることを教えてください!

山田「僕はなるべく早く長く寝ようと心がけていますね。それから、水分と栄養はしっかり摂る。……なんか、文字にすると、おじいちゃんみたいですけど(笑)」


瀬戸「僕は毎日湯船に浸かるようにしています。加湿器や空気清浄機をつけたり、健康に気を使って意識して野菜を食べたりもしていますかね。あと毎日筋トレもしている」

山田・河合・きた「偉すぎる……!」

河合「僕は割と考え込んでしまうタイプなので、あまり仕事を家に持ち込まないようにしています。家ではあまり台本も読みません。その分、稽古場ではしっかり稽古をします。オンとオフをはっきりつけるように心がけています。心の健康も大切ですからね!」

きた「僕は芝居に熱が入って、喉を枯らしやすいんです。だからロングラン公演となると、喉のケアはいつも以上にしておきたい。喉に優しい食材を摂ったり、白湯を飲んだり、喉を冷やさないようにしています」


―――観劇を楽しみにされているみなさまに一言お願いします!

きた「くりもんのファンの方や、僕のことを応援してくださるみなさんに観てほしいのはもちろんなんですけど、全然何も知らない人、それこそ池袋をただただ歩いているような人にも見ていただきたいです。時代劇ということで、とっつきにくさを感じる方もいるかもしれませんが、僕は時代劇だからこそ年齢層を問わずに見られると思っていて。歴史的なものは出てこないので、フランクに見ていただければと思います!」

瀬戸「会場はBASE THEATERということで、お客さんと距離が近い劇場です。コメディ要素が強いとお話ししましたけど、やはり笑いの部分はお客さんと一緒に作り上げていくものだと思うんですよね。だから、距離が近いことですし、ぜひこの世界観に混じって楽しんでいただけたらと思います。これだけ華やかな衣装を着た素敵な役者さんたちをこんなに近くで見られる機会はなかなかないので、ぜひ楽しんでいただけたら」

河合「この作品は僕ら主役だけでなくて、すべての役に見どころがあると思うんです。端の役がなくて、全員が活躍する。この劇場にこの人数が出演するということで、だいぶ熱量の高い時間になると思います。現実逃避といいますか、現実と離れてタイムスリップしたような没入感を出せるように頑張りますので、ぜひ見にきてください」

山田「くりもん作品には、だいたいおいしいものが出てくるんですけど、作品を見て『次はあそこ行こう〜』と旅のネタにしていただければ!(笑)
 時代劇ではありますが、いろいろな方に見ていただいて楽しんでもらいたいですし、ちょっとでも元気が出たり、肩の荷が下りたり、明日も頑張ろうと思ったりしていただけるような作品になったら嬉しいです。ぜひぜひ、気楽に楽しみに来てください!」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

山田拓未(やまだ・たくみ)
1986年2月1日生まれ、大阪府出身。テーマパークでダンサー・アクターとして活躍の後、2008年に蜷川幸雄演出の舞台『さらば我が愛覇王別姫』で役者デビュー。主な出演作品に、杉並演劇祭優秀賞 一茶企画『最後の晩酌』(2021)、大統領師匠vol.13『ユナイテッドステイツ』(2021)、ラゾーナ川崎プラザソル周年公演『俺は黙って鍋を振る』(2022)など。

瀬戸啓太(せと・けいた)
1994年12月16日生まれ、兵庫県出身。俳優。主な出演作に舞台『野球』飛行機雲のホームラン(2024)、ミュージカル『悪ノ娘』(2024)、舞台『信長未満-転生光秀が倒せない-』(2023)など。

きたつとむ
1997年1月31日生まれ、フィリピン出身。俳優。近作に舞台『鬼神の影法師』(2024)、獣愛ブースト音楽劇『Lamento -BEYOND THE VOID-』(2024)、ジュエルステージ『オンエア!』(2023)など。

河合健太郎(かわい・けんたろう)
1997年3月7日生まれ、東京都出身。俳優。近作に朗読劇『5分後に意外な結末』(2024)、MUSICAL『追憶のアンブレラ〜VOICE2024〜』(2024)、舞台『商店街グランドリオン』(2024)など。

公演情報

片肌☆倶利伽羅紋紋一座「ざ☆くりもん」第33回ロングラン本公演 
『六道追分』【第一期~第四期】

日:2025年4月5日(土)~6月8日(日)
場:シアターグリーン BASE THEATER
料:SS席8,000円 S席6,000円
  ※他、U23あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://alii-inc.co.jp
問:株式会社アリー・エンターテイメント   
  mail:ticket_kurimon@alii-inc.co.jp

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