東京バレエ団の『白鳥の湖』は、名演出で名高いブルメイステル版で贈る同団の名レパートリー。チャイコフスキーの原曲に立ち返ったドラマティックな演出が特徴で、オデットの悲劇を物語性豊かに描き出す。
「個々のキャラクターやシーンがわかりやすく明確に描写されているのがブルメイステル版の魅力。ただ私自身この版の出演は初めてで、姫は他の版にはない役なので役作りに苦戦しました」というのはアーティストの中島映理子。昨年秋の公演に出演し、第1 幕でアダージオ(姫)を踊っている。
「姫は若さと同時に大人の色気が求められる。手先や足の運び方まで一つひとつに意味を込めて動くよう意識しました。一緒に踊った王子役の柄本弾さんはとても頼もしく、力強くサポートしてくださいました」
入団は昨年3月。16歳で渡欧し、パリ・オペラ座契約団員、オーストラリアのクイーンズランド・バレエを経て東京バレエ団の門を叩いた。
「歴史あるバレエ団であり、ベジャール作品にも憧れがあって。HPのお問い合せフォームから連絡してオーディションを受けました(笑)」
7月の『ギリシャの踊り』でベジャール作品に初出演。次いで『白鳥の湖』で全幕出演を果たすも、一糸乱れぬ群舞は同団の誇りであり、その過酷さを身を以て体感したという。
「入団前『ジゼル』を観て群舞の美しさに感動し、この一員になるんだという喜びと期待を抱いていました。けれどいざ踊ると大変で、足の動きに音の取り方まで全てを意識しないと揃わない。芸術監督も“『白鳥の湖』は群舞が命。一人ひとりが主役だと思いなさい”と言っていて、全員が白鳥になりきる必要がある。舞台では想像以上の緊張感がありました」
今回は姫役のほか、三羽と四羽の白鳥役で出演を予定。入団2年目を迎え、より一層の飛躍が期待される。
「前回は肩に力が入りすぎ、自分らしい踊りを追求できずに終わってしまった気がします。柄本さんには“もっと僕を頼っていいよ”と言って頂いていて、今回改めてコミュニケーションを研究し、力強い表現を目指したいと考えています。役の大小に関わらず、どんな役にも全力で取り組むのが課題。綺麗なだけでなく、何かメッセージを伝えられるダンサーになれたらと思っています」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)
『個性』
「『白鳥の湖』は群舞が命ですが、ロボットのように機械的に動きを揃えるのではなく、群舞の白鳥たちにも一人ひとりの個性があり、それが1つになることで初めて美しく揃えることができます。コール・ド(群舞)でもソロでも、どんな役でも個性を活かしながら、ダンサー同士お互いに尊重し、高めあいながら良い舞台をめざしていきたいです。」
プロフィール
中島映理子(なかじま・えりこ)
埼玉県出身。4歳よりエプリバレエスタジオで学ぶ。2015年ローザンヌ国際バレエコンクールのセミファイナリスト。同年パリ国立コンセルヴァトワールに留学。2016年オーディションによりパリ・オペラ座バレエの短期契約ダンサーに、2019 年オーストラリアのクイーンズランド・バレエに移籍。2021年3月東京バレエ団にアーティストとして入団した。
公演情報
東京バレエ団 白鳥の湖
日:2022年2月18日(金)~20日(日)
場:東京文化会館 大ホール
料:S席13,000円 A席11,000円 B席9,000円
※他、各種席種あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp/
問:NBSチケットセンター tel.03-3791-8888(平日10:00~16:00)