キャストの息遣いまで感じられる、新感覚ミュージカル 愛に飢えた芸者・貞と、愛を振りまく男達 明治に咲いた、日本初の女優、その一代記!

 生の歌と演奏でオリジナルミュージカルを作る劇団ミュの新作は、日本で最初の女優で世界的スターとなった川上貞奴の生涯を描いた『初恋 Sada Yacco: Japan’s first actress』。全役ダブルキャストで上演される本作において、川上貞奴を演じる清水彩花と高槻かなこ、梅チームの川上音二郎役・米原幸佑、福澤桃介役・坂田隆一郎にインタビューを行った。

―――お話をいただいた時の思い、本作に対する意気込みはいかがでしょう。

米原「劇団ミュ主宰で作・演出の岡本(貴也)さんが面白いことを始めていることはSNSを通じて知っていました。劇団ミュの1作目である『Liebe ~シューマンの愛した人~』に出演していた二葉(勇・要)兄弟と共演した時にいろいろ話を聞いて、すごく面白いと聞いたこともあって2作目の『추락 -墜落-』を見に行きました。岡本さんとは15年くらい前に初めてお会いしましたが、相変わらず尖り続けているんだなと思いましたね。刃をずっと磨き続けて切れ味を増しているなと(笑)」

清水「私は岡本さんも含めて皆さん初めましてですが、共演者から劇団ミュさんのお話を聞いて興味を持っていました。初出演で主演のオファーをいただけたことにびっくりしつつ、出演を即答しました。小劇場で、生声でミュージカルをするのはすごく挑戦だと思っています。私自身、カフェで行う『朝ミュージカル』もやっていますが、それも生声でお客様との距離も近い。劇場のサイズ感だとどうなるのか、台本を読んですごくワクワクしています。」

坂田「僕も前作を見ました。生声のミュージカルは見たことがなかったんですが、キャストの息遣いまで集中して見られる没入感が新感覚でした。普段行っているアーティスト活動ではマイクを使うので、地声だけで戦うことや客席との距離感にワクワクしています。あとは、共演したことのある仲間たちもいるし、初めましての皆さんと一緒に歌えるのも楽しみです。」

高槻「5年前くらいに岡本さんの朗読劇でお世話になり、今回久しぶりにご連絡をいただきました。私は2024年に初めてミュージカルに出演し、すごく楽しかったので、25年もミュージカルに挑戦したいと思っていたんです。そんな時にタイミングよくお話をいただいて運命だと思いました。前作『추락 -墜落-』はすごい没入感で、自分もこのステージに立てるのかとワクワクしました。初めての主演に挑戦しつつ、周りの皆さんはミュージカルの先輩たちなので、いろいろなことを学びたいです」

―――台本の感想、それぞれが演じる役について教えてください。

米原「あれ、まだもらってない……(笑)」

岡本「え⁉」

米原「あらすじは読みました! オッペケペーの役です(笑)」

一同「(笑)」

高槻「お話をいただいた時に、貞奴さんの動画を見たり人生について調べたりしました。今回の『初恋』というタイトルがどういう意味か考えた時、(川上貞奴の)人生が壮絶すぎて、恋愛要素をどう入れるのかと。日本で最初の女優という役だけど、恋愛という感情は世代に関係なく伝わると思う。自分の感情をすくって、乙女らしい部分などを出せたらいいなと思いました」

坂田「男としての夢を追いかける部分と、忘れられない人がいる部分など、人生についてすごく考えました。演じることで、学びも共感も気づきもあると思います。見ている方にも共感してもらえるだろうし、この作品を見て人生が変わる方もいるかもしれない。あと、歌詞をどう歌っていくのか気になるし、ダンスもたくさんあると聞いたのでシーンを想像しながら台本を読むのが楽しかったです。個人的には、音楽の鎌田(雅人)さんは以前ご一緒させていただいたことがあり、今回も楽しみだなと思っています」

清水「コメディと聞いていたので、台本を読んで、いい意味で裏切られました。人間が必死に生きている様子が滑稽だったり笑いになったりしている。貞奴の愛を主軸に、いろいろな人のドラマや生き様が絡み合っています。そこがすごく面白いです。楽曲もダンスも多いと聞いて青ざめていますが、頑張らなきゃと思いつつ楽しみです」

―――登場人物はみんな実在の人物ですが、役づくりについて考えていること、大切にしたいことはありますか?

米原「大河ドラマみたいに、1人の人生をずっと追っていく話です。インターネットで調べられる情報からヒントを得つつ、岡本さんに判断してもらい、役者同士が持ち寄ったものを擦り合わせながらお稽古をしていきたいと思います」

清水「歴史物を演じることは多かったんですが、実在の人物を演じた経験はほとんどありません。関係者がご存命な場合もあるので、嘘なく誠実に演じなきゃいけないと思っています。有名な方で様々な情報がありますから、そこから得るものと自分自身の感情を重ねて、この作品ならではの貞奴さんを作っていきたいです」

坂田「残っている史実などをもとにしつつ、今その人が生きていたらどう見えるのかという想像も交えながら。忠実に再現しつつ、エンタメ感も交えられたら面白いのかなと思いますね」

高槻「自分では経験できないような人生なので、お稽古しながら自分の中に役を入れていきたいと思っています。貞奴さんが降りて来てほしいです(笑)。女優としての見せ場も作中にたくさんある。日本舞踊なども入ってくると思うので、動きとかからも当時の背景を作っていきたいです。時代によって感じる人の性格なども変わると思うので、自分の中に取り入れていきたいですね」

―――過去の公演を見たことがある方に、劇団ミュの作品・音楽の魅力をお伺いしたいです。

米原「ミュージカルっていう部分も強いですが、時代背景、歌と歌の間のお芝居もしっかり練られていると感じます。歌によって物語が途切れない。演出家の前で言うのもなんですが、素晴らしいなと思いました。終わった後に岡本さんに『どうやって書いたんですか』と聞いたら現地に取材に行ったと言っていて、だからこのリアリティなのかと。見事だと思いました」

高槻「小劇場だからこそ、お芝居と歌、展開も全部が音に乗ってつながっているのがすごいなと感じました。演じる側としては気が抜けないなと思いました」

坂田「ピアノとカホンと歌だけでいろいろな音楽が奏でられていたことに驚きました。あと、すごくキャッチーで耳に残る歌が多いのも楽しかったです。さっきお話にも出ましたが、転換もワクワクするシーンが多くて。劇場空間の可能性を大きく広げていて、お客さんをワクワクさせていたなと。演出ってすごいなと思いました」

―――マイクもスピーカーもない生演奏のミュージカル、キャパ100程度の劇場での公演について、楽しみなことを教えてください。

米原「アンプラグドな空間で、フットマイクもないそうなんです。そのぶん、お客様も『聞こう』という思いを持って見てくれる。ずっと前のめりで作品に向き合ってくれるので、集中が途切れない。それも生でお客様を惹きつける演出の1つだと思いました」

高槻「音楽活動をするときはイヤモニをしてマイクで歌うのが基本です。でも、自分の中では、生の声の方が伝わるのにと思っていて。だから今回は本領発揮したいなと思っています」

清水「私はさっきお話したように『朝ミュージカル』に出演していて、生声で歌う経験があります。そこで感じたこととして、マイクに頼れないので小さい声だと届かないこともあって、繊細な部分が伝わりにくいところがある。普通のミュージカル以上に、お客さんに届ける意識が大事だと思っています。大きな声量で伝わる感情表現など、難しい反面役者としてはすごくやりがいがある。それを劇場でやることは、私にとっても挑戦になると思います」

坂田「息遣いまで聞こえてくるので、一緒にその世界にいるような気持ちになりました。それは多分簡単なことじゃなく、息遣いが聞こえてくるのも俳優さんの技術だと思う。技術が求められるだろうなという、挑戦に対するワクワクもあります。折れないように頑張りたいと思います」

―――今回の見どころはどこになりそうでしょう。

米原「踊り狂います」

清水「ナンバーが多い印象があります」

岡本「全部で35曲程度かな。前回よりも多いです」

清水「見応えがありそうですね」

坂田「曲数も踊りも多いし、和物ということで振り付けや曲調も、馴染み深いけど斬新さやギャップがあるのかなと。今の時点で楽しみです。あとは早くキャストの皆さんとお会いして、どんなお芝居をされる方々なのか知っていきたいです」

米原「稽古が1ヶ月あるらしいのでゴリゴリに頑張ります。チームはバラバラですが全員で作っていくんだろうと感じるし、ダンスもたくさんあるということで、とても華やかな作品になると思います。その中で1人の女性の人生が描かれる。見ていてバランスがいいだろうなと想像しています」

高槻「面白く人生を知ることができるのが醍醐味かなと思っています。それを彩ることができるよう精一杯頑張ります」

―――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

坂田「今まであまり演じてこなかった役柄で、衣装なども楽しみにしています。まだ想像の段階ですが、歌に関しても今までやってきていない歌詞やメロディがあるだろうし。アーティストとしても役者としても、見たことのない僕を皆さんに見ていただけるのかなと。お芝居をする楽しさや新鮮さを忘れず、より良いものを作っていけるように頑張ります」

高槻「小劇場で、こんなに完成されたミュージカルを見られるのはすごく貴重だと思います。私自身は、皆さんの期待を越えられるように女優魂を込めて頑張っていこうと思います」

米原「生の声を、なんのフィルターも通さずに伝える。演劇の根本みたいなところをやります。人間から人間に与える・人間が発するエネルギーがちゃんとお客様に届いたらいいなと思っています。全力で頑張ります!」

清水「歌あり、踊りあり、笑いあり、涙ありの大満足な作品になることが間違いないと確信しています。お客様に大満足していただける作品になるよう、出演者一同頑張りますので、ぜひ劇場にお越しください」

(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

清水彩花(しみず・あやか)
1988年9月19日生まれ、埼玉県出身。ミュージカル『アニー』で初舞台を踏み、その後ミュージカル『レ・ミゼラブル』ではコゼット役に抜擢される。現在は歌唱力を活かし様々な舞台に出演している。主な出演作に『笑う男』、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『マリー・キュリー』、ミュージカル座『ひめゆり』(主演)など。

高槻かなこ(たかつき・かなこ)
1993年9月25日生まれ、兵庫県出身。2015年、『ラブライブ!サンシャイン!!』の国木田花丸役で声優デビューし、Aqoursとしての活動もスタート。主な出演作にアニメ・ゲーム『ラブライブ!』シリーズ、舞台『SaGa THE STAGE〜再生の絆〜』、『燃ゆる暗闇にて』など。

米原幸佑(よねはら・こうすけ)
1986年3月13日生まれ、大阪府出身。2001年、「RUN&GUN」のメンバーとしてデビュー。以降、舞台を中心に俳優活動を行いながら、シンガーソングライターのサカノウエヨースケと「ヨースケコースケ」を結成しアーティストとしても活動中。主な出演作に、映画『どうしても触れたくない』(主演)、新歌舞伎座開場65周年記念 舞台『だいこん役者』、ミュージカル『ALTAR BOYZ』などがある。

坂田隆一郎(さかた・りゅういちろう)
1994年5月15日生まれ、福岡県出身。オーディション番組で結成された10神ACTORのメンバーとしてデビュー。2021年からは拠点を東京に移し、シンガーソングライター、俳優、声優として活動している。主な出演作に、Live Musical『SHOW BY ROCK!!』-DO根性北学園編-夜と黒のReflection、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage、TVアニメ『UniteUp!』など。

公演情報

劇団ミュ Op.3
『ミュージカル 初恋 Sada Yacco: Japan’s first actress』

日:2025年3月19日(水)〜31日(月) 
場:ウッディシアター中目黒
料:最前列特典付きベンチシート8,500円 一般8,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.gekidanmu.com
問:劇団ミュ
  mail:gekidanmuticket@gmail.com

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