赤坂RED/THEATERの名物となりつつある“役替わり”朗読劇『5 years after』の13回目の公演が決定。脚本・演出の堤泰之が朗読劇ならではの面白さを追い求めて執筆し、主人公・水川啓人の20歳・25歳・30歳の人生と、彼を取り巻く個性豊かな登場人物たちが描かれる。
主人公の20歳(1章)・25歳(2章)・30歳(3章)を3人のキャストが順番に演じ、さらに各章の脇役全20役も演じる。配役は回替わりで全60役を3人で演じることとなる。今回は前後半2チーム編成で上演し、前半チームに高田翔・結城伽寿也・本間一稀が、後半チームに馬場良馬・高崎翔太・工藤大夢が出演。その中から、高崎・結城・本間・工藤の4人に話を聞いた。
―――『5 years after』初挑戦とのことですが、オファーを受けての感想は?
高崎「プロデューサーの難波さんに『高崎くん観たことあったよね?』って言われたんですけど、申し訳ないことに観たことなかったんです! だから『1人60役やります』と聞いて、全然何言われているか分からないし、率直に『何だそれ!?』って思いました(笑)」
工藤「僕も『60役? どういうこと?』と思ったのが第一印象です。台本を読むまでは、水川啓人役の人はずっと水川啓人を演じて、それ以外の2人が何役も兼ねてやると思っていたのですが、台本を読んだら、20歳・25歳・30歳の水川啓人を別々のキャストが演じるということで、さらにビックリしました。1公演の中で主人公役のキャストが変わるなんて、そんなことがあるんだって」
高崎「そうそう! それがまた難しいよね。6公演ある中で、それぞれの年齢の水川啓人を、2公演ずつ演じる機会があるわけで。しかも僕が同じ20歳の水川啓人を演じていたとしても、他の2人の配役が逆になっているから、つまりは6公演全部違う組合せになるって聞いて。難しいよ!!!」
工藤「すでに1度だけ稽古しましたけど、正直まだ正解は見えていないです……」
―――初演から長らく赤坂RED/THEATERで行われていますが、前回の『vol.12』は新国立劇場で上演されました。その公演には、工藤さんの事務所の先輩でもある伊崎龍二郎さんも出演されましたね。
工藤「そうなんです。出演が決まって、伊崎さんに連絡しました。『どんな舞台ですか?』って聞いたら『めちゃくちゃ大変だけど楽しいよ!』と言ってました」
―――前半チームの結城さん、本間さんはいかがでしょうか。
結城「僕はまだ60役もやるって信じていないです」
他3人「(笑)」
結城「そんなことある!?って(笑)。事前稽古も1度したんですけど、未だに実感がなくて……。これまでの出演者に知り合いもたくさんいるので、どれだけ大変だったのか聞いてみたいような、怖いから聞かないでおきたいような気持ちです。台本上では1行しか台詞がない登場人物もいますが、一瞬しか登場しない人物を“それっぽく”演じるだけでなく、役者としてごく当たり前のことですが1役1役を大事にしないといけないと、いつも以上に感じています。稽古以外の時間も含めて、どれだけ台本と向き合えるか勝負だと思います」
―――これだけたくさんの登場人物がいると、普段の人間観察も大事になりそうですね。
結城「本当に。しかも動物も出てくるんですよ! 演じていて訳が分からなくなりそうですけど、その訳が分からなくなって混沌とした感じも含めて、エンタメとして楽しんでいただける作品にしたいです」
本間「僕は前回公演を新国立劇場で観劇しました! なので、どんな作品かは分かったつもりでいたんですが、自由にやっているようで意外と決め事が多くて。必死に台本を追っていくうちにその決め事をつい忘れちゃいそうで、気をつけなきゃと思っています」
―――台本から目を離してはいけない、椅子からお尻を離してはいけないなど『5 years after』独自のルールがたくさんあるんですよね。
高崎「ルールがたくさん書かれている堤さんからの“演出家メモ”をいただきました。最後に。『決して噛んではならない』って書いてあって、おいおい何を無茶言ってるんだ!?って思っています(笑)」
結城「噛みたくて噛んでる役者なんていないのに!(笑)」
―――ちなみにみなさんは、これまで最大で1人何役までやったことがありますか?
工藤「僕は兼ね役をやったことはないと思います……」
結城「3~4役ですかね」
高崎「僕は4~5役かな」
本間「しっかり覚えてはいないですけど、5役くらいはやったことあります」
―――そんな中、今回は1公演当たり20役、回替わりなので全部で60役を演じることになります。チームワークもかなり大事になってきますが、前半チームのお2人の共演歴は?
結城「同じアイドルものの2.5次元作品に出ていて、そのライブイベントで共演はしたことがあるんですが、所属ユニットが違うので、しっかり話したのは先日のプレ稽古です」
―――写真撮影の様子を見ていましたが、仲が良さそう……というより、本間さんが物凄く距離を詰めているように見えました(笑)。
結城「そうなんですよ! 凄くグイグイ来て……ずっとひっついてきます」
本間「僕、人との距離の詰め方が極端で、0か100かなんですよ。この前のプレ稽古の帰り道も、近くでお祭りがやっているのを見つけて『一緒に行こうよ!』って伽寿也くんについてきてもらいました」
結城「半ば無理やり……(笑)」
本間「帰りたそうだったけど、最終的には付き合ってくれました(笑)。なのでもう1人、前半チームで共演する高田翔さんには、距離感を間違えないようにしないといけないなと思っています……」
結城「僕は高田さんと撮影ではお会いできたんですけど、まだお互い自己紹介程度しか話せてはいなくて。高田さんが出演されていたドラマ『バッテリー』が大好きだったので、緊張しました。共演できて光栄ですし、同い年なので仲良くなれたら嬉しいです。舞台上に3人しかいないので、キャスト同士の仲の良さってどうしたって舞台上から伝わると思うので」
本間「仲良くなりたいです……!!」
―――後半チームの高崎さんと工藤さんはこれまで何度か共演していますが、改めて今回の共演についていかがでしょうか。
工藤「意外とお芝居で絡んだことがないんですよ」
高崎「そうなんだよね! 役としてしっかり会話できるのって実は今回が初めてかも」
―――そこに先輩・馬場良馬さんが加わっての3人になりますね。
高崎「楽しみです! 元々いた事務所の先輩でもあるので、共演者で馬場さんの名前を聞いた時は安心しました」
工藤「僕は先日初めてお会いして……。初対面なのに、コメント動画を撮っている横でたくさんガヤを入れてくださって(笑)。優しくておもしろい先輩だと思いました。ただ、僕が果たして高崎くんと馬場さんと渡り合えるのか……いい意味でちょっと怖いです」
高崎「楽しくやろうよ(笑)! この作品のおもしろさでもあるんだけど、どの役も1度はやることになるから、台本の文字を追いながら『この登場人物、自分ならこういう風に演じるけど、他の2人はどう演じるんだろうなぁ……』って考えるのが楽しくもあり、プレッシャーでもあるよね。台本から目を離しちゃいけないっていうけど、特に“顔の歪んだ男”とか、他の2人がどんな風に演じるのか気になって見たくなっちゃう」
結城「あー、分かります。“暗黒の不思議ちゃん”も他の人はどういう風にやるんだろう?って気になります」
―――同じチームではありませんが、本間さんは舞台『おそ松さん on STAGE』で脚本を書いている大先輩・高崎さんと同じ役を演じることになりますね。
本間「本当に緊張しています……」
高崎「緊張するようなことじゃないって」
本間「薄っぺらいコメントなんですけど……僕、翔太くんのことが大好きなんですよ」
高崎「薄っぺらいな!!!」
他3人「(笑)」
本間「本当ですからね! 『おそ松さん』以外の出演作品もたくさん観てますし、今回は別チームですけど、同じ作品に出演できて凄く嬉しいです。でも僕らが前半なので、先陣を切らないといけないプレッシャーはあります……」
高崎「逆に僕ら後半チームは、前半チームを見届けてから本番に臨めるから、そのアドバンテージはあるよね」
工藤「確かに!」
高崎「自分たちがやる作品を別のキャストがやっている様子を直前に観ることができるって、Wキャストでもない限りはなかなかないですからね」
結城「でも僕ら前半チームは劇場で場当たりできる時間が長いのでありがたいと思います」
本間「反省会『3 actors talk』は場当たりなしですか?」
―――(プロデューサーに確認しつつ)反省会の場当たりはないそうです。
高崎「改めてだけど……反省会って、何?」
他3人「(笑)」
―――公演終了後にある反省会『3 actors talk』では、1幕1場からそれぞれの役作りや演技プランを振り返っていきます。普通なら楽屋でやるような芝居の振り返りをお客さまの前でやるわけですが、みなさんは公演終了後、楽屋で反省というか、振り返りはする方ですか?
高崎「『いや~、今日の芝居も最高だったな! これ以上はないな!』ってお互いを称賛し合ってますよ!」
結城「そうですよね(笑)!」
高崎「なので、今回の反省会もそのテンションで乗り切りたいと思います(笑)」
工藤「僕……、台本の中にあるオリジナルの歌を反省会で改めて歌わせられるって噂で聞いたんですけど……」
高崎「即興ソングを!? 聞いておいて良かった……怖ッ……!!」
本間「準備しておきます!!」
―――どんな本編、そして反省会になるのか、楽しみにしています! では最後に、観に来てくださるお客さまにメッセージをお願いします。
本間「60役に挑むということで、一体どんな作品になるのか、まだ想像がつかないんですけど……。翔太くんが先ほど言っていたように、普段は自分が演じる人物の台詞を追いながら、相手役がどう台詞をかけてくるのかを考えるだけですけど、今回は全部の台詞をやることになるので、他の2人の芝居も気になりつつ、自分ならどう表現するかを常に考えないといけない。困ったときは先輩2人を頼らせていただきながら、高田さんも含めた3人で、反省会も含めてトータルで楽しい舞台に出来たらいいなと思います」
結城「僕は申し訳ないことにオファーをいただくまでこの作品観たことがなくて、もしかしたら今回観に来てくださるお客さまも、公式サイトの説明文やこのインタビューを読むだけでは、よく分からないまま劇場に来てくださる方々もいると思うんです。とにかく今分かることとしては、1公演1公演が確実に違ったものになりますし、それこそが今作の醍醐味だと思っているので、ぜひ楽しみにしていてください。60役を演じ切る僕らの汗と涙と生き様、赤坂RED/THEATERってお客さまとの距離が近い劇場なので、ぜひ観届けていただきつつ、共に最高の空間を作れたらと思います」
工藤「前半チームと後半チームでも全く雰囲気が変わると思いますし、僕ら後半チーム内でも毎公演、配役が変わるので、欲をいうと……全部観てほしいという気持ちです(笑)。そのくらい1公演1公演違うと思うし、例えば、翔太くんが演じていて気になった役を、2回目に来たら次は僕がその役をやっています。そんな風に、何度観てもきっと楽しめると思うので、ぜひ劇場でお待ちしています!」
高崎「全公演、違うものが必然的に出来上がる作品なので、たまたま観ていただいた1回がベストであることを信じて、僕らは頑張っていこうと思います。演じる方も大変な作品ですが、お客さまが入って完成する作品だと思うので、観る方も結構体力使いますよ(笑)!? ぜひ一緒に楽しむ気持ちを忘れずに、劇場に足を運んでいただけたらと思います」
(取材・文:通崎千穂 撮影:間野真由美)
プロフィール
高崎翔太(たかさき・しょうた)
新潟県出身。ミュージカル『テニスの王子様』1stシーズンでデビュー。以後、2.5次元舞台を中心に活躍。長きにわたり主演を務めた、舞台『おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW T IME~』シリーズにて現在、一部脚本を担当している。
結城伽寿也(ゆうき・かずや)
宮城県出身。主な出演に、舞台『東京リベンジャーズ』シリーズ、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageシリーズ、『ワールドトリガー the Stage』シリーズなど。
工藤大夢(くどう・ひろむ)
青森県出身。主な出演に、『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』シリーズ、イマーシヴSTAGE『あやかし恋廻り 暁の章~煌牙編~』、ミュージカル『ピオフィオーレの晩鐘』など。
本間一稀(ほんま・かずき)
北海道出身。主な出演に、舞台『おそ松さん on STAGE ~SIX MEN’S SHOW TIME~ 2nd SEASON』、舞台『アイ★チュウ~』~ La G rande M arche ~、舞台『義民』など。
公演情報
役替わり朗読劇『5 years after』-ver.13- ~enjoy your life!~
日:2025年2月11日(火・祝)~16日(日)
場:赤坂RED/THEATER
料:7,000円(全席指定・税込)
HP:https://no-4.biz/5yearsafter/ver13/
問:エヌオーフォー【No.4】
mail:info@no-4.biz