岸田敏志の隠れた名曲に、元アイドルのド根性俳優・惣田紗莉渚が挑む! 「女優志願」40年ぶり再リリース 東京・名古屋で記念コンサートを開催!

岸田敏志の隠れた名曲に、元アイドルのド根性俳優・惣田紗莉渚が挑む! 「女優志願」40年ぶり再リリース 東京・名古屋で記念コンサートを開催!

 “ミュージカルをもっと身近に、ミュージカルに関わる人を幸せに”というビジョンで活動する「Protopia」。そんなProtopiaのプロデュースで、歌手・俳優の岸田敏志の隠れた名曲「女優志願」が40年ぶりに音楽カードとして再リリースされた。岸田の歌は勿論、岸田が楽曲提供したミュージカルなどで活躍中の若手俳優・惣田紗莉渚によるカバーバージョンの「女優志願」と、それぞれのオリジナル朗読も同時収録され、聴き応えのある1枚に仕上がっている。
 さらに音楽カードのリリースを記念して、10月27日(日)に名古屋・LIVE HOUSE CIRCUSにて『岸田敏志・惣田紗莉渚スペシャルコンサート』が開催される。コンサートを前に、改めて今回の音楽カードリリースおよびコンサート実施について、“師弟関係”ともいえる岸田・惣田の両名に話を聞いた。


―――「女優志願」は岸田さんの実体験をもとに作詞された楽曲とのことですが、これはいつ頃の出来事なのでしょうか?

岸田「デビューして間もない頃、僕は代々木の小さいマンション……とは名ばかりで、実質アパートの3階に住んでいたんですけど、1階に協栄ボクシングジムが入っていたんです。そのボクシングジムの女性スタッフがいつもアパートの周りを掃除してくれていて、普段は『こんにちは』と挨拶をする程度だったんですが、ある時『今度この作品に出るんです』と僕にチラシを1枚手渡してくれて……。
 とある映画のチラシだったんですけど、部屋でじっくり見たら、キャスト欄の1番下に手書きで自分の名前を書き足していたんです。名前がクレジットされるような役ではなかったけれど、知ってほしかったんでしょうね。それが凄く印象的で、それからしばらくして曲を作っていた時にふとそのことを思い出し、『女優志願』という楽曲が生まれました」

―――そんな「女優志願」を、たまたま惣田さんがいらしたライブで披露したところ、彼女に物凄く刺さったと……! そこから、Protopia企画・製作でカバーをすることになったと伺いました。

岸田「泣きすぎて真っ赤になった目で『あの楽曲、とても好きです』と力説してくれたんです(笑)。それから会う度にそう言ってくれるものだから、嬉しかったですね」

惣田「私は岸田さんが楽曲提供された舞台(※)に何度も立たせていただいていて、『サラリーマンナイトフィーバー』では『子供扱いしないで』という劇中挿入歌も作っていただきました。その楽曲を編曲してくださったのも、Protopiaの稲田しんたろうさんで……。
 今回もProtopiaさんから、ご縁のある岸田さんの楽曲をカバーさせていただく機会を頂戴して、本当にありがたいです」
(※『トリッパー遊園地』、『未来記の番人』、『サラリーマンナイトフィーバー』、『毒薬と老嬢』、『カルメン故郷へ帰る』)

岸田「『女優志望』は『子供扱いしないで』とはまた違うテイストの楽曲なので、どんな風に歌ってもらえるのか楽しみにしていましたが、凄くいい仕上がりになりましたね」

惣田「スタッフの皆さんのおかげです……!」

―――惣田さんはこの楽曲のどんなところに惹かれたのでしょうか?

惣田「どうしても自分に重ね合わせてしまったんですよね。私も舞台に立てるようになるまで紆余曲折があったので、歌の中の少女に凄く感情移入をしてしまって、涙が止まりませんでした。
 岸田さんの歌声がより一層、楽曲に込められたストーリーを連想させてくれるというか、心にスッと入ってきて情景が浮かぶようで、本当に素晴らしくて……」

岸田「僕がデビューした頃のフォークソングや、いわゆるニューミュージックは、男性が女性の心情を歌い上げる曲が多かったんですよ」

―――最近だと、それこそ惣田さんが以前所属していらしたような女性アイドルグループが男性目線の楽曲を歌うことも多いですが、その逆のような感じで面白いですね。惣田さんはこれだけ思い入れがある楽曲をご自身がカバーするとなると、プレッシャーもあったのでは?

惣田「そうなんです。まずお話をいただいた時に凄く嬉しかった反面、『本当に私でいいんですか⁉』と思ってしまい……。岸田さんにお付き合いいただいて何度もレッスンを重ねて、レコーディングの日を迎えました。
 レコーディングも文字通り朝から晩までかけてやらせていただいたんですよ。大人数のアイドルグループだと4人一緒にレコーディングルームに入って、30分くらいで終えることが多かったので、こんなに時間をかけさせていただいて、曲に込められた意味や想いをじっくり考えながら、細かいところまでこだわってレコーディングさせていただくというのは初めてのことでした。スタッフさんの熱意と温かさに感化されて、私もつい熱が入ってしまいました」

岸田「1度、歌詞だけを朗読してみよう、というレッスンをしたのですが、2~3行読んだところで、ボロボロと泣き始めてしまったよね」

惣田「すみません……! 歌詞が本当に自分に刺さるんです。何度読んでもグッときてしまって」

岸田「今や“一億総タレント時代”というか、芸能人になるというハードル自体は昔ほど高いものではなくなってきているけれど、大勢の芸能人がいる分、その中で勝ち上がっていく、自分の望んでいる仕事を掴めるようになるまでのハードルがまた一段と高くなっていると思うんだよね。
 紗莉渚ちゃんはその中で一生懸命上がってきたんだと思うし、それまでには相当な苦労もあったんだろうなというのは想像に難くないので、僕が『女優志願』を歌っていた当時とは状況は違えども、感情移入してしまうんだろうね」

惣田「そうですね。この曲を聴くとオーディションを受け続けていた時のこと、初めて芝居のお仕事をもらった時のことを思い出すんです。
 まだまだ道半ばで、悔しいことも沢山あるのですが、少しずつ夢見ていた自分に近づけている“今”だからこそ、素直な気持ちでこの曲を受け入れて、涙を流せるというのもあるかもしれません」

―――もし夢が全く叶っていない状態で聴いてしまったら、悔しくて苦しくて、もしかしたら何度も聴くことはできないかもしれないですね。

惣田「ああ、そうかもしれません……! 頑張って良かったなと思える今だからこそ、胸に刺さったのかなと思います。
 それと同時に、初心を思い出させてくれる曲なんです。今の状況に感謝しつつも、満足してはいけないな、という気持ちにもなります」

―――ちなみに、岸田さんがデビューするまでにはどのような道のりがあったのでしょう?

岸田「僕らの時代はオーディションが沢山あったわけじゃないからね。大きなデビューの機会といったら中島みゆきさんらを輩出したヤマハのポプコン(ヤマハポピュラーソングコンテスト)くらいじゃないかな……。
 僕は『きみの朝』がヒットするまでは、ガムシャラにいろいろなところで演奏させてもらっていました。渋谷の喫茶店を毎週火曜日の夜に1時間半だけ借りて『この時間に、この店に来れば、僕の歌が聴けます!』というのを宣伝して、聴きに来てもらって……」

―――現代のようにSNSで宣伝ということもできなかったと思うのですが、どのように宣伝を?

岸田「それこそ『女優志願』のモデルの子じゃないですけどチラシを配ったり、口コミで広めてもらったりですね。所属していたヤングジャパングループの仲間、バンバンのばんばひろふみさん、やしきたかじんさん……みんなギター1本で一生懸命やっていたから、それに励まされて自分も頑張れたなと思います。
 バンバンでいうと高山厳さんは今や演歌を歌っていますが、当時ボサノバをやっていてオシャレでカッコよくてね、『厳さんのいいところを盗もう!』なんて思いながら見ていました(笑)」

―――時代を感じますね! ただ、生で歌を聴いてもらえる機会というのは時代に関係なく大事なのだなと実感しました。そんな中で、今回は『女優志願』の音楽カードリリースを記念したコンサートが東京・名古屋の2都市で行われますね。

岸田「このインタビュー段階ではこれからセットリストを決めるところなのですが、紗莉渚ちゃんは『女優志願』以外に、AKB48グループの楽曲もやるんだよね」

惣田「そのつもりです!」

岸田「あとはせっかくだから、何かデュエットも出来たらいいよね」

惣田「恐れ多いですが、ぜひ! 邪魔にならないように歌うので……」

岸田「いやいや、僕がコーラスを受け持ちましょう」

惣田「とんでもないです!! でも本当に、何かご一緒に歌えたらとても嬉しいです。
 せっかくいただいた機会なので、昭和の名曲もいいなと思いますし、名古屋公演もあるので先ほどご紹介いただいた通りAKB48グループの楽曲も歌いたいですし、とても楽しみにしていています。久しぶりにちょっと踊ったりも……。あ、岸田さんも一緒にどうでしょう?」

岸田「いや、僕は流石に……。昔、ミュージカルで物凄く激しいダンスがあった時に、観劇したうちの娘が、声に出して大笑いしたくらいだから(笑)。ダンスは紗莉渚ちゃんに任せます!」

―――幅広い客層がいらっしゃるのかなと思いますが、改めて若い世代の惣田さんが思う、岸田さんの楽曲の魅力・昭和の歌謡曲の魅力とは?

惣田「色々ありますが、最近の楽曲はメロディがアップテンポで、歌詞も聞き取れないことが多いので……」

岸田「え、若い人が聞いてもそう思うの? 僕が歳をとったからだと思っていたよ」

惣田「そんなことはないですよ! 私も歌詞カードを見て初めて、ああこういうフレーズだったんだ、と思うことが沢山あります。それに対して昭和の楽曲は歌詞が聞き取りやすくて、曲を聴きながら目の前に情景が浮かんでくるような感覚があります。
 岸田さんの楽曲はそういった曲調や歌詞の良さは勿論、岸田さんの演技力、それに加えて温かいお人柄がにじみ出ているからこそ、心に染みわたるように感じるのだと思います。あと、歌声に凄く艶があってセクシーですよね!」

岸田「そうかな⁉ 高音が印象的だね、というのは昔からよく言われますが」

惣田「よく家族で車移動しながら聴いているのですが、特に高音の部分がとてもセクシーで、色気のある歌声だねって話題になります」

岸田「ありがたい……。高い音がいつまで出せるか分からないけど、これからも頑張ります(笑)」

―――続いては岸田さんに伺いたいのですが、名古屋公演もあるということで、惣田さんのSKE48時代からのファンも沢山いらっしゃるかと思います。アイドルとしての惣田さんの魅力を知っている皆さんに、俳優として歌う惣田さんの魅力をお伝えいただけますでしょうか?

岸田「うーん……、俳優さんとしてというか、これはきっとアイドル時代からそうだったのだろうけど、とにかく頑張り屋です。初めてご一緒した時から、自分の歌パートが終わると必ず僕に『今日はどうでしたか⁉』と聞いてくれるので、そのうち、多分今日も聞きに来るからちゃんとチェックしないと……と意識的に思うようになって(笑)」

惣田「すみません……!」

岸田「謝ることじゃないよ! とてもいいことです。研究熱心な俳優さんだなと現場のスタッフが皆で感心しているし、そのスタンスは凄くいいと思うので、これからも続けてほしいな」

惣田「頑張ります!」

―――それぞれアイドルや歌手としての一面がありつつ、俳優でもあるおふたり。今回のコンサートでは音楽カードに収録されているオリジナルストーリーの生朗読もあるのだそうで、コンサートと銘打ちつつも、お芝居も堪能できると聞いています。そちらの意気込みはいかがでしょうか?

岸田「朗読は観に行くことはありましたが、実はなかなかやらせていただく機会がなかったので、緊張しますが楽しみにしています。朗読劇の内容も踏まえて『女優志願』をぜひ聴いてもらえたらと思います」

―――惣田さんは先輩女優役と新人女優役、2役を演じ分けていらっしゃいますね。

惣田「初めての朗読で、上手くできるか不安だったのですが、挑戦させてもらいました。先輩女優役には実はモデルにした方がいるんですよ……! 1人で収録した時は緊張しましたが、私は意外とお客様の前に立った時の方が緊張しないタイプでして、コンサート本番では楽しんで演じられたらいいなと思います」

―――では改めて、『岸田敏志・惣田紗莉渚スペシャルコンサート』にご来場される皆様にメッセージをお願いします!

惣田「ソロになってからファンミーティングなどは行っていましたが、コンサートという形式で出演するのは初めてで、まさか岸田さんと一緒にやらせていただけるとは夢にも思わなかったので、本当に光栄で嬉しく思います。お仕事で大好きな名古屋に行くことができるのも凄く楽しみで、久しぶりの方にもぜひ会いに来てほしいです。
 最近は舞台に立たせていただく機会が多いのですが、歌とお芝居は近いものがあるというか、繋がっていると思っているので、1つひとつの楽曲の世界観を大事に歌えたらと思います。あとは岸田さんとデュエットをさせていただける機会なんて今後あるかどうか分からないので……自分自身も楽しんで過ごしたいです! お待ちしております」

岸田「娘というよりはもはや孫に近い年齢の紗莉渚ちゃん、つい見守る親戚のような気持ちになってしまいますが、2人だからこそできるコンサートをと、色々な企画をしています。僕の歌を初めて聴く方にも、僕が普段どんなコンサートをしているか、どんな楽曲をリリースしてきたかをぜひじっくり聴いていただけたら幸いです。
 デュエット、朗読などさまざまなバリエーションを僕ら自身も楽しみつつ、皆さんも楽しんでいただけたらと思います。東京・名古屋の2都市のみにはなりますが、ぜひお待ちしております」

コンサートでは会場限定の音楽カードを販売!
なんと全てにおふたりの直筆サインが入っているそうです。そちらもぜひチェックを!

(取材・文&撮影:通崎千穂)

プロフィール

岸田敏志(きしだ・さとし)
1953年4月18日生まれ、岡山県出身。「蒼い旅」で歌手デビュー後、シンガーソングライターとして「黄昏」、「きみの朝」、「重いつばさ」などの代表曲を残す。役者としてもテレビドラマ『1年B組新八先生』新八先生役、『渡る世間は鬼ばかり』シリーズ 山下健治役、ミュージカル『ミス・サイゴン』、『回転木馬』、『屋根の上のヴァイオリン弾き』などに出演。2000年に岸田智史から岸田敏志に改名し、現在は楽曲制作・音楽監督も務めている。2024年8月からは音楽制作を手掛けた舞台『カルメン故郷へ帰る』が開演するとともに、自身のライブツアー『アコースティックパーティーにようこそ』が横浜を皮切りに、名古屋・大阪・岡山・東京で開催された。

惣田紗莉渚(そうだ・さりな)
1993年1月18日生まれ、埼玉県出身。青山学院大学文学部卒。2013年AKB48第1回ドラフト会議でSKE48チームKⅡメンバーに選ばれ、AKB48 49thシングル選抜総選挙では8位を獲得。2021年にグループを卒業し、現在は舞台を中心に活動。主な出演作品に、舞台『トリッパー遊園地』ハル役、『未来記の番人』紅羽役、『毒薬と老嬢』エレーン役、ミュージカル『クランベリー・ムーン』リリー役、舞台『カルメン故郷へ帰る』田口光子役など。2020年より毎年公演された『サラリーマンナイトフィーバー』には4年連続で出演した。2024年には神宮前商店会を中心とした「ウラハラフェス」のサポーターに就任。

公演情報

岸田敏志・惣田紗莉渚 スペシャルコンサート♪

日:2024年10月27日(日)
  ①13:00開演(12:30開場)
  ②17:00開演(16:30開場)
場:栄 LIVE HOUSE CIRCUS
料:7,500円(全席自由・1ドリンク代別・税込)
HP:https://www.kissy21.com/jyoyushigan
問:Protopia mail:protopia.musical@gmail.com

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