100年前のSF戯曲をノゾエ征爾が現代の物語として立ち上げる 「この作品が観た人の人生のヒントになれば」

100年前のSF戯曲をノゾエ征爾が現代の物語として立ち上げる 「この作品が観た人の人生のヒントになれば」

 約100年前にチェコの国民的作家・劇作家カレル・チャペックによって創られたSF戯曲の金字塔『ロボット』が、ノゾエ征爾の潤色・演出によって現代の物語として綴られる。舞台は人造人間(ロボット)の製造販売を一手にまかなう工場。ロボットの進化により人間は労働から解放され、労働せずとも生活していけるようになったが、同時に退化していった。やがてロボットたちは団結して反乱を起こし、人類抹殺の計画を始める。反乱後の世界にただ1人残される人間、ロボット研究者・アルキストを水田航生が演じる。

 「最初に戯曲を読んだとき、人間とは何か、労働とは何か、自分は何のために生きているのか、しばらく考え込んでしまいました。100年も前に書かれた作品ですが、『AIに仕事を取られる』という問題が話題になっている現代を予言したような物語です。そうした未来が見えていた作家のカレル・チャペックの凄さにゾクッとしました。
 僕が演じるアルキストは、確固たる思いがあるというよりは、揺らぎのある人物です。1人生き残ったあとはアダムとイブを追放した神のような、神々しさを感じる、どこか遠い存在のように感じる人物ですが、実は不安があったり、責任の所在を気にしていたり、人間の弱さも持っています。そうした弱さが見えたとき、僕はアルキストのことが好きになりました。自分でも分からないうちになぜか生き残ってしまった姿はかわいそうでもある。身近で愛おしい存在です」

 本作を企画制作する世田谷パブリックシアターの芸術監督・白井晃は、水田が敬愛する人物の1人。同劇場で上演された『マーキュリー・ファー Mercury Fur』などを通し、指導を仰いできた。

 「そういう意味でも、思い入れの強い作品です。演出のノゾエさんとは今回、初めてご一緒しますし、共演者のみなさんも初共演の方ばかり。僕にとっては挑戦でもあります。きっと本作をご覧になったお客さまは、〝何のために生きているんだろう。人間の定義とは何だろう〟と疑問を持つことになると思います。でも、そうした疑問を持つことで、生きていることへの感謝や日常のちょっとした幸せを実感できるのではないでしょうか。演劇で人生を変えることはできないけれども、変えるためのヒントやきっかけを与えることはできると僕は考えています。この作品が観た人の人生のヒントになればいいなと思っています」

(取材・文:嶋田真己 撮影:立川賢一 ヘアメイク:菅井彩佳 スタイリスト:山本隆司(style³))

プロフィール

水田航生(みずた・こうき)
1990年生まれ、大阪府出身。2005年「第1回アミューズ王子様オーディション」でグランプリを受賞。長身を活かしたダイナミックなダンスと繊細な演技で、ミュージカル・ストレートプレイと活躍の場を広げている。近年の主な出演に、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、『ボディガード』、『ミア・ファミリア』、『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』、『ダブル・トラブル』、『四月は君の嘘』、a new musica『l ヴァグラント』、舞台『ブレイキング・ザ・コード』、『冬のライオン』など。世田谷パブリックシアター主催公演『お勢登場』、現代能楽集Ⅷ『道玄坂綺譚』、『マーキュリー・ファー Mercury Fur』に出演。

公演情報

舞台『ロボット』

日:2024年11月16日(土)~12月1日(日)
  ※他、兵庫公演あり
場:シアタートラム
料:一般8,500円
  高校生以下4,250円 ※団体のみ取扱/要身分証明書提示
  ※他、各種割引あり。詳細は劇場HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://setagaya-pt.jp/stage/15694/
問:世田谷パブリックシアターチケットセンター
  tel.03-5432-1515(10:00~19:00)

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