陥落寸前の東京に生きる母子の姿が「生きるヒントになれば」 T1projectが贈る、家族の再生の物語

 数々の人気ドラマや有名舞台作品の脚本・演出を手掛けてきた、友澤晃一主宰のT1projectによる新作ミュージカル『ココロノカケラ』。「家族の再生」を軸に「個人のアイデンティティ」と「記憶」を追求したエモーショナルな物語が綴られる。

友澤「一生懸命生きていてもうまくいかないことがある。様々な失敗を繰り返したり、逃げたくなったりすることもあるけれども、結局逃げ場はなくて、ただ時間が流れていってしまう。そんなことを年々、感じるようになってきました。それが“生きる”ということなのかもしれません。そうして生きていく人々を描くことで〝生きる〟ヒントになればと思って描いた物語です」

 舞台は軍事侵攻により陥落寸前の東京。家族をバラバラにしてしまったという自責の念を抱え、カルト教団の信者になった女性を貴城けい、その子どもを長江崚行が演じる。

貴城「私の役は家族を愛しているがゆえに、教団に逃げ込んでしまったのですが、どこかで子どもに会いたい気持ちが忘れられなかった女性です。愛があるからこそ、自分の状況や気持ちに気づくことができるというのが物語の軸になっています。人間の脆さや強さ、愛を忘れずに演じたいと思います」

長江「今作には16人も登場人物がいますが、それぞれにしっかりと背景が描かれています。僕が演じる役は、周りの人たちの人生観や葛藤をひたすら見続ける役でもあるので、自分がそこに立っている意味を明確に持ちながら、そこに居続けたいと思っています」

 作品で描かれる登場人物の細やかな心情の変化は歌によって綴られ、観客の心にダイレクトに届ける。

友澤「僕は毎回、これまで観たことがないミュージカルを作りたいと思って作っています。そして毎回、これが最後の作品になるかもしれないと思っているので、妥協せず、可能か不可能かを見極めながらしっかりと作り上げたい。必ず良い作品になります」

長江「今、この作品に巡り会えたことは、僕がこれを演じる意味があるからだと思って全力で務めさせていただきます。まず大事にしたいことは、お客さまを楽しませること。そして、挑戦心を持って挑みたいと思います」

貴城「今までにない新たな自分を発見できる作品だと思います。それを自分でも楽しみつつ、お客さまにも楽しんでいただけるよう、まずは役として生きることを考えて全力でやり切りたいと思います」

(取材・文:嶋田真己 撮影:間野真由美)

プロフィール

貴城けい(たかしろ・けい)
1992年、第78期生として宝塚歌劇団に入団、雪組に配属。1997年、『仮面のロマネスク』で新人公演初主演。2000年、『ささら笹舟』で宝塚バウホール公演初主演。同年、ドイツ・ベルリン公演に参加。2006年5月、宙組に組替え。同年7月、宙組男役トップスターに就任。2007年2月に歌劇団を退団。現在は舞台・テレビを中心に活躍。

長江崚行(ながえ・りょうき)
NHK Eテレ「天才てれびくんMAX/大! 天才てれびくん」のてれび戦士として小学生の頃より活躍。『青山オペレッタ THE STAGE』、ミュージカル『ヘタリア』シリーズ、LIVE STAGE『スケートリーディング☆スターズ』など多くの作品で主演を務める。他の主な出演に、舞台『KING OF PRIS M』シリーズ、舞台『文豪ストレイドッグス』シリーズなど。

友澤晃一(ともざわ・こういち)
ミュージカルの脚本・演出から、ストレートプレイやドラマの脚本まで幅広く手がける。2001年にT1projectをスタートし、現在はプロの俳優たちの演技指導も行う。

公演情報

T1project Musical『ココロノカケラ』

日:2024年9月25日(水)~29日(日)
場:博品館劇場
料:S席9,800円 A席6,800円
  プレビュー公演[9/25] S席8,800円 A席5,800円
  (全席指定・税込)
HP:http://www.t1project.co.jp/t1stage2024-kokoronokakera/
問:T1project tel.03-5301-2708

インタビューカテゴリの最新記事