2013年に東京印主宰の長戸勝彦により「全ての年代の人が楽しめる作品を」と生まれた本作。借金による経営危機と豊かな源泉を狙う〝何者〞かによって、窮地に立たされた老舗温泉旅館「宝や」。若社長と個性豊かな従業員達は“ご当地ヒーローで盛り上げる”という奇策に打って出るが…… 不器用で真っすぐな男たちが巻き起こすこのヒューマンコメディは、様々なキャストで幾度も上演され愛されてきた。
長戸「コロナ禍の現状でも、細心の感染対策をおこなったうえで途切れずに上演できるというのは舞台人として幸せなこと。初演以降は毎年脚本に手を入れて、その時代を反映した新要素を加えてきましたが、今年は敢えてシンプルにしてみようと思いました。どれだけ初演に近づけることができるか。僕にとっても挑戦です」
その長戸が「物語をけん引する2人」と期待を寄せるのが若社長を演じる上遠野太洸と、その幼馴染「ゲンセンレッド」に扮する鷲尾修斗。各々の〝色〞を大切に、舞台に立つ。
上遠野「最初はワチャワチャしてどこか突飛なイメージがありましたが、読み込むと日々を生きる僕達の姿を重ねることが出来ました。傍からみれば『そんなにこだわること?』と映るものでも、プライドであったり、代々受け継いできたものであったり、人それぞれに手放せないものがある。
宝やの人達はそれぞれに悩みを抱えていて、一見すると向いている方向はバラバラですが、目指す目的地は一緒ということに気がつきました。過程は違うけど、最終的にたどり着く場所は同じ。その流れが本当に美しい作品です」
鷲尾「登場人物1人ひとりを細かく描き、観る人が感情移入しやすい情景を生み出すのが長戸さんの作品ですよね。その分、役者の力も求められますが(笑)。僕はシリアスとコメディは一見正反対のように見えて、共存できると思っています。宝やの人達が真剣に悩んで全力で壁にぶつかる様子が観る方の笑いを生み、涙を誘うのではないでしょうか。
以前の様に気軽に劇場にお誘いできない状況ですが、僕ら役者は1つひとつの芝居に200%の力を注いで“来ていただいた方に絶対に後悔はさせない”という気持ちで挑みたいと思います」
宝やの、そして自身の未来のため奮闘する男たちの姿に、きっと心が重なる瞬間があるはず。その時を楽しみに待ちたい。
(取材・文:小笠原大介 撮影:佐藤雄哉)
プロフィール
長戸勝彦(ながと・かつひこ)
1963年8月30日生まれ、愛媛県出身。20歳で東由多加率いる「東京キッドブラザース」のオーディションに合格。入団後すぐに頭角を現し、看板俳優であった柴田恭兵とWキャストで主演を務める。退団までの12年間、東京キッドブラザースの作品で主演を務めた。1998年に演劇ユニット「東京印」を旗揚げ。役者・ナレーター・作家・演出・プロデューサーとして多岐にわたり活動中。
上遠野太洸(かとおの・たいこう)
1992年10 月27日生まれ、宮城県出身。第23回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを受賞し、CDアルバム「東京RAGGA LOVERS2」のジャケットモデルで芸能界デビュー。2014年『仮面ライダードライブ』出演以降、映像作品にも多数出演。近年の舞台主演作に『かげぜん』、『みく×ぶれ』、GORIZO STAGE Vol.4『天才的脱兎』など。
鷲尾修斗(わしお・しゅうと)
1987 年12 月27 日生まれ、東京都出身。劇団GEKIIKEメンバー。ミュージカル『忍たま乱太郎』中在家長次役で注目を集める。劇団公演には第3回以来出演し、『ポセイドンの孫とYシャツと私』、『光芒のマスカレード-月光仮面異聞-』、『HIT LIST』では主演を務める。主な外部出演作に、2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』ステージ、舞台『剣が君-残桜の舞-』ほか。映画『さそりとかゑる』などにも出演。
公演情報
東京印 vol.21
『 げんせんじゃ~! ~宝や旅館~2021』
日:2021年8月11 日(水) ~15日(日)
場:CBGKシブゲキ!!
料:8,000円※観劇記念品付(全席指定・税込)
HP:http://gen-sen.com/
問:東京印 mail:2021gensen@gmail.com