乙女ゲームブランド・オトメイトが2010年に発売した『夏空のモノローグ』がこの度Nintendo Switch版の発売を記念して舞台化する。超高層建築物「ツリー」が存在する土岐島で、「7月29日」を繰り返す不思議なループに巻き込まれる主人公たちが、それぞれ未来への想いを抱えながら、7月30日に廃部になる予定の科学部で青春を過ごす様子が描かれる。
原作だとプレイヤーが動かすキャラクターである主人公・小川葵を、7月よりTVアニメ『菜なれ花なれ』の主人公・美空かなたを演じることが決まっている注目の声優・女優の中川梨花が演じる。そして葵に接触する物語のキーパーソン・綿森楓を演じるのはオトメイトの代表作『薄桜鬼』のミュージカルで斎藤一を演じている大海将一郎だ。
14年の時を経て舞台化する名作乙女ゲーム作品に挑むにあたり、2人の意気込みを聞いた。
―――作品の印象はいかがですか?
中川「乙女ゲーム原作の作品には初めて携わったのですが、ビジュアルも含めて個性豊かだなと思いました。実際にゲームをプレイしてみると、物凄くストーリーが作りこまれていて、舞台になった時にどういう物語としてまとまるのか楽しみになりました。私と同じように舞台からこの作品に触れた方も楽しめる作品に出来たらいいなと思います」
大海「ストーリーが重厚だなというのが第一印象です。僕が演じる綿森楓のバックボーンを知るためには、ストーリーを全てやりこむ必要がありました。タイムループを取り扱った作品は最近でも多くある中、この作品が14年も前に発売されていたというのが驚きです。今でも全く色褪せない魅力があり、男女問わず楽しめる作品だと思います」
―――ご自身が演じるキャラクターの印象を教えてください。
中川「キャラクタービジュアルを見た時は、今にも消えてしまいそうな儚さを感じて……表情を見ても強気というよりは、優しく何でも受け入れてくれるタイプだなと思いました。葵ちゃんは1年前に記憶をなくしているので、それ以前の自分のことが思い出せず、周りと馴染めずにいる子なので……そういったバックボーンゆえかもしれません。柔らかい笑顔も印象的でした。でも、意外と科学部にいる時は積極的で明るい一面もあるので、もしかしたらそっちが素の彼女なのかなとも思います」
大海「綿森楓は他のキャラクターたちと比べても異質な存在感がありますよね。詳しくはネタバレなので言えないのですが、彼の設定ゆえの異質感が、そのままキャラクタービジュアルにも反映されていると思います。綿森のビジュアルは、解禁された当時の現場でも共演者に凄く褒めてもらいました!「オミじゃないみたい!」って……いや、これは褒められているのかどうか分かりませんが(笑)。自分が演じるにあたり、どう解釈してアプローチしていくか、不安と期待がせめぎ合っていますが……ストーリーの根幹を担うキャラクターでもあるので、稽古を通して向き合っていきたいです」
―――ビジュアル撮影の思い出はありますか?
中川「ティザービジュアル用に“過去の小川葵”の姿で撮影をしました。ロングヘアなので、それだけでも現在の彼女とは違いがあるのですが、表情もショートカットの時の撮影より笑顔が多かったように思います。過去と現在の違いを出せるように意識しました。思い出に残ったのは科学部のみんなとの撮影で、2ショットをそれぞれと撮ったのですが、隣にいるキャラクターによって葵としてのリアクションや表情が変わって、稽古より一足先に感覚がつかめた気がしています。例えば部長さんと撮った時は、部長さんが元気すぎて自然とちょっと引いちゃったりして(笑)」
大海「僕は科学部のみんなとは別日の撮影で、キービジュアルの撮影のために中川さんだけが来てくれました。初めて会ったのもその時だったので、少しぎこちない感じから撮影が始まったのをよく覚えています(笑)。爽やかなキービジュアルに仕上がりましたね。綿森は実はもう1パターン、別の衣装でも撮影したので、そちらも新鮮な気持ちでした。解禁を楽しみにお待ちいただけたらと思います」
―――ありがとうございます。ではここからは、作品にちなんだ質問になるのですが、学生時代の部活動の思い出はありますか?
中川「高校時代に弁論部に所属していました。イメージ的にはスピーチコンテストをする部活と思っていただければ分かりやすいかなと思います。私は7時間授業を受けるコースに通っていたのですが、6時間授業のコースの子たちもいたので、授業が終わってから急いで合流して……勉強よりも部活を一生懸命やったかもしれません。その甲斐あって、高校3年生の時に弁論大会で全国1位が獲れたので(※2016年度文部科学大臣旗全国高等学校弁論大会)、それだけは胸を張って話せるエピソードです」
大海「弁論で全国1位を獲るほどの実力があるということは、口喧嘩したら中川さんには勝てないということですか……?」
中川「よく言われるのですが(笑)、口喧嘩が強いのはひろゆきさんのようなディベートに強い人で、弁論とはちょっと違うんですよ! 弁論は相手の考えを受け入れた上で話を展開していくことが多いので」
大海「じゃあ万一稽古場で意見が衝突しても、一方的に言い負かされることはないですか?」
中川「もちろんそんなことはしないです! 話し合って解決していきましょう(笑)」
大海「それを聞いて安心しました(笑)」
―――大海さんはいかがですか?
大海「僕は中学生までバスケット部に所属していたのですが、高校からはクラブチームに入って活動していました。クラブチームで社会人の方々と一緒にプレイするのも楽しかったのですが、大会に出られるのは部活動ならではなので、今になって思えば高校時代は同学年の子たちや先輩後輩と部活でバスケットをすればよかったかも……という心残りがちょっとだけあります。『夏空のモノローグ』の科学部もそうですけど、学生時代の部活の仲間って特別感がありますよね」
―――続いて、もし『夏空のモノローグ』のキャラクターたちのように、同じ1日を記憶を持ったままループできるとしたら、どんなことがしたいですか?
中川「ループしてその日の朝に戻るから、体形が維持できるんですよね! なら……沢山食べたいです(笑)。本当は食べるのが大好きなのですが、体形をキープするためにパーソナルジムに通っているので、たまには羽目を外したいですね」
大海「人生でギャンブルを1度もしたことがないので、競馬をやってみたいです。記憶を持ったままループできるなら、2回目以降は絶対勝てますよね?」
―――でも、ループするので得たお金もなかったことになります。
大海「ああー! そうかぁ(笑)。でもやったことがないので、人生経験としてやってみたいです」
―――ありがとうございます。職業柄、「記憶を持ってループできるなら、ループしている間に台詞を全部覚えたい!」といった意見も出るかと思いましたが……。
中川「すみません(笑)」
大海「目先の欲に負けました(笑)」
―――いえ、ループの楽しい使い方なのでいいと思います!(笑)では最後に、観に来てくださるお客様に一言ずつお願いします。
大海「14年前から愛されている作品が原作ということで、今回の舞台化が発表された時も物凄く沢山の反響を目の当たりにして、気が引き締まる思いでした。これから稽古、本番と始まりますが、皆様が愛している作品を僕らも同じように愛して、大切に作り上げていきたいと思います。お客様にもぜひ一緒に盛り上げていただいて、共に7月29日に素敵な千穐楽を迎えられたら幸いです。応援のほど、よろしくお願いします」
中川「14年って凄いですよね。それだけ長い間、沢山の方々に愛され続けている原作ゲームの舞台化なので、まずは原作ファンの方々に喜んでいただける作品にしたいという気持ちがあります。それと同時に、この作品を舞台から知ってくださったお客様にも同じように楽しんでいただきたいです。小川葵はゲームだとプレイしているお客様が動かすキャラクターなので、お客様一人ひとりが葵ちゃんに感情移入して、もし自分が葵ちゃんだったら……というのを想像できるようなお芝居が出来たらいいなと思っています。科学部のみんなの日常をぜひ劇場に体感しにきていただけたら嬉しいです」
(取材・文:穂高和佳奈 撮影:武田真和)
プロフィール
中川梨花(なかがわ・りか)
4 月21日生まれ、北海道出身。慶應義塾大学卒の学歴を生かし、バラエティ番組や旅番組でも活躍。近年は声優・女優として頭角を現し、舞台「アサルトリリィ」シリーズ 岸本・ルチア・来夢役、『シャインポスト』伊藤紅葉役などを務める。7月より放送開始となるTV アニメ『菜なれ花なれ』にて主人公の美空かなたを演じることが決まっている。
大海将一郎(おおみ・しょういちろう)
10月5日生まれ、東京都出身。2.5次元舞台を中心に、声優としても活躍。近年の主な出演作品として、ミュージカル「薄桜鬼 真改」シリーズ 斎藤一役、舞台「魔法使いの約束」シリーズ ルチル役、歌劇「桜蘭高校ホスト部」シリーズ 猫澤梅人役、アプリ『イケメン王子 美女と野獣の最後の恋』リヒト=クライン役など。
公演情報
舞台『夏空のモノローグ』
日:2024年7月24日(水)~29日(月)
場:シアターサンモール
料:特典付きチケット11,000円
一般チケット9,000円(全席指定・税込)
HP:https://srotastage.jp/natuzora_stage
問:SrotaStage mail:info@srotastage.jp