台湾・台北市で長きに渡り活動を続けている暁劇場(シャインハウス・シアター)。太陽「暁」をシンボルとし、太陽が世界を照らすように、演劇を通して世界を隈なく表現することを目指している。台湾政府より萬座暁劇場(ワンシアター)の運営も任されている暁劇場と、本多劇場グループの劇場交流事業として、下北沢B1にて『潮來之音』が上演される。
これまで台湾をはじめ、韓国・ベルリン・プラハなど、世界各国で上演されてきた作品で、日本では初となる。脚本・演出、そして劇団の主宰を務める鍾伯淵は「日本の下北沢で上演することは大変誇らしいことだ」と話す。
「昔からずっと下北沢で芝居をしたいと思っていました。下北沢は台湾の演劇人の中でも有名な演劇の街です。そうした場所で上演できることを本当に嬉しく思っています」
本作で描かれるのは、震災前夜の人々の日常だ。パートナー同士、人と動物、人と植物が互いに寄り添い、日々を過ごしていく姿が丁寧に描かれる。そして、物語終盤には街に震災による津波が押し寄せる。
今回の物語は、振付師であり本作に出演もする、舞踏家・我妻惠美子との共同作業によって生まれた。鍾は我妻と共に東北を取材し、東日本大震災について知った。そして青森ではイタコを取材。そこで身体表現で物語を語るというイメージを得たという。
「この作品は、セリフ劇とダンスで物語を表現します。視覚的要素が強い作品です。ぜひ想像力を働かせてご覧下さい。日本は台湾と同じく地震がある国です。なのできっと震災や津波といった悲劇をそれぞれが自分ごとに置き換えて考えられると思います。物語はあくまでも3組の人物たちが織りなす日常がメインですが、その日常が地震によって大きく変わった時、地震を経験している日本の皆さんがこの作品をどのように捉えるのか。そして、どのような思いを抱くのか。非常に楽しみにしています」
さらに鍾は「この物語は特別なものではない」とも語る。
「多くの人に共感して頂ける作品だと思います。台湾をはじめとした各国で、感動し、心が慰められ、泣ける作品だと評価を頂きました。きっと日本のお客さんとも感動を分かち合えると思います。素晴らしいセリフが沢山ある作品になっていますので、ぜひ楽しみにしていて下さい」
11月には萬座暁劇場にてショーGEKI「ダンパチ」公演を本多劇場グループプロデュースとして行うことも決定。この2劇場の交流に注目したい。
(取材・文:嶋田真己 撮影:Terry LIN)
プロフィール
鍾 伯淵(ジョン・ボーユエン)
1985年生まれ、台湾出身。国立台北芸術大学演劇学科演出専攻。2006年に暁劇場を設立。人間性や現代の社会問題に焦点を当てた作品を発表。これまでに30以上の創作・演出の実績を重ねており、『穢土天堂』、『地下女子』などの脚本集を出版。バンコク演劇祭、上海国際現代演劇祭、台北芸術祭、東京芸術祭、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ、テアトリウム国際演劇祭、ウファファブリックなど、多くの演劇祭に招待されている。現在は「Want to Dance Festival」キュレーター、萬座曉劇場(ワンシアター)ディレクターを努めている。
暁劇場(シャインハウスシアター)
2006年設立。台湾・台北市の萬華地区において活動をつづけており、太陽「暁」をシンボルとし、太陽が世界を照らすように演劇を通して世界を隈なく表現することを目指している劇団。200席を備えた「萬座暁劇場(Wan Theatre)」の経営や国際的なダンスフェスティバルである「艋舺国際舞蹈節(Want to Dance Festival)」の企画も行っている。
公演情報
暁劇場×本多劇場グループプロデュース
『潮來之音』The Whisper of the Waves
日:2024年8月9日(金)~11日(日・祝)
場:下北沢 小劇場B1
料:4,000円(全席自由・税込)
HP:https://www.honda-geki.com/b1
問:本多企画 mail:kikaku@honda-geki.com