20周年を迎えた超・個性派集団が贈る年末ギリギリの大エンターテインメント 珠玉のメンバーで描く、過去・現在・未来を繋いだ「魂のリレー」

 俳優である以上見た目のインパクトは大事、だと思っている。一目見たときに強烈な印象を残す“面構え”はどんな美辞麗句よりも力があるし、しかもその俳優が経験を積めば積むほど、深みを増していくものだからだ。そんなことを、エンターテインメント風集団秘密兵器のホームページを見ながら考えていた。そう、強烈なインパクト満載な5人のプロフィール写真を見ながらだ。
 数々の舞台で俳優、脚本家、演出家などとして活躍する岩田有弘、五十嵐和弘、新實啓介、三浦文太郎、野田博史の5人によるこの演劇ユニットは、まだ駆け出しの20代の頃に結成して今年で20周年を迎えた。長く下北沢をホームグラウンドに「ミッション・イン・ポジティヴ」をテーマに作品を発表し続けてきた彼らが、復活した新宿シアタートップスで新作公演を行う。メンバー5人に加えて4人の客演を迎えた作品は、彼らの新しい一面にもなり得る作品だという。今回主軸となってゆく主宰で演出も担当する岩田有弘と、客演する仙石みなみ、新井愛瞳、室たつきの3人に話を聞いた。


―――銀岩塩をはじめ、いろいろなプロジェクトや劇団に関わっている岩田さんにとって、このエンターテインメント風集団秘密兵器はどんな存在でしょう。

岩田「メンバーとはもう20年来の付き合いですが、ここでの岩田有弘は正真正銘の僕らしさが出ている気がします。人間力満載なメンバーが集まり、小さい劇場で細々と、でも絆は年々太々くなっていく、そんな居心地の良い団体なんです。この居心地の良さは客演で出てくださる皆さんも、そしてお客さんにとってもあるんじゃないかと」

―――メンバーは5人ですが、リーダーは岩田さんになるんですね。

岩田「5年程前まではメンバー全員で運営していたんですが、実はそのころに一度解散したんです。でもそれでもやりたいという声が上がってきて。ならば二度と皆が辞めたいという気持ちにならないよう諸々動き始めていたらいつからか僕が主宰の形に。信頼関係はすごいです。長年連れ添った家族なんで(笑)。そうして1年に1本のペースでやってきましたが、これが僕ららしいというか、コロナ禍の中でもむしろ1年に2本ペースでやるようになっちゃって(笑)。「ミッション・イン・ポジティヴ」逆境になればなるほど前向きに頑張るというのが僕等のテーマなのですが、実現できてますね(笑)」

―――8月の前回公演が20周年記念との事ですが、今回もその第2弾とみていいんでしょうか。

岩田「そうですね。20年の集大成という感覚もあり、客演して頂く皆さんも素晴らしいメンバーとなりました。皆さんの力を借りて新しい秘密兵器を観てもらいたいと思っています」

―――9人の役者で挑まれるわけですが、どんな作品になりますか。

岩田「これまでは短編喜劇ワンシチュエーションコント作品を日替わりで3本くらいやって、その後に長めのストーリーを全キャストで紡ぐというのが秘密兵器のスタイルでした。前半の短編でキャラクターを色濃く演出することで、多角的に見えるようにしていたんです。でも今回はその部分をなくして1本のお芝居にまとめています。でも我々らしさも残したいので、なんだか訳がわからないけど、面白いから始まって。時空を越えた魂のリレーをテーマに、コメディありファンタジーありのゴージャスな作品になりますね。」

―――さて、ここの珠玉の客演陣であるお三方が揃われていますが、皆さん秘密兵器の舞台にこれまでも参加されていたのですか。

仙石「アイドルを卒業してからは舞台の仕事を頻繁にやらせてもらってますが、秘密兵器の舞台には3年連続しての参加です。それ以外に銀岩塩の舞台にも一度参加しました。」

新井「私は今年の夏に参加して、2回目ですね」

室「僕は……初めまして、です(笑)。岩田さんとは一度共演してはいるんですが、大所帯だったから直接絡むシーンは全くなくて、それでも舞台裏での存在を認めてもらったようで声をかけてもらいました。楽屋を掃除していただけなのに(笑)」

岩田「でも一緒のシーンがないからこそ、その様子を自分が出ていないときに冷静に観ることができるので、それでいいなあと思ったんです。その作品での室君はイメージとは全く違うことをやっていたんですが、それでいながら彼らしさも残しつつ周りへの気遣いも忘れないという、自分にはない部分を持っていると感じたんです。それでいつか一緒にと思っていたのですが、それから5年くらい経っちゃいました」

室「でも、5年経っても憶えていただいているのは嬉しいですね」」

―――客演の皆さんにとって、秘密兵器の舞台はどんな魅力や特色がありますか。

仙石「ともかくパッションや情熱の熱さといったら! もうどこよりもすごいんです。それぞれ個性的で魅力的な5人のメンバーがパワフルにぶつかってきてくださる。それがすごく楽しいし、自分たちも想いを込めながらできるんです。そして自分自身もパワーをもらえるし、お客さんもみんな秘密兵器のファンになって帰っていくんです」

新井「私は舞台の経験が秘密兵器しか無いものだからこの世界しか知りません。でもアイドル時代の経験で舞台はいろいろなスタッフさんが分担する仕事で成り立っていることは知っていました。それは秘密兵器だと脚本や演出を皆さんでやっちゃうし、スタッフも巻き込んで全員で創り出していく。そこがすごいと思います。岩田さんも企画から演出、更に出演するわけで、公演が終わると翌日までに録画を観直してダメ出しの準備をしている。とてもパワフルなおじさま達ですね。そんなおじさまによって現場は常に賑やかで、静かな時が全然ないんです。これが20年続く秘訣かなと思いますね」

室「こう見えて僕は人見知りなんですが、ビジュアル撮影の日に秘密兵器の皆さんがすごい攻め方してきたんです。それに耐えつつ自分を出さないといけないと思って頑張りましたけど(笑)。もう現場に行った時点でわちゃわちゃしてるんです。むしろ女性陣の方が冷静で、男子の方がアホだと言うことを証明していましたね」

岩田「たしかに僕らいつも暑苦しいですよね(笑)」

―――そんな新作公演ですが、これまで下北沢をホームにしていた印象がありますが、今回は復活する新宿シアタートップスですね。

岩田「シアタートップスは僕等世代の演劇人にとっては特別な場所です。僕も舞台を始めた頃からいつかは立ちたい場所でした。僕は小屋(劇場)の力を信じていて、特にトップスにはきっと強い何かがあると思うんです。様々な人の夢や想いが宿っていて、それが芝居にも影響すると。そんなところでいつかやれたらいいなあ、と思っていました。秘密兵器も20年の区切りになるし。この情勢にも関わらず本多さんが劇場を増やしたことに対して敬意、感謝という気持ちもある。そして今回は客演のキャストが特別ゴージャスで。特別な場所でやってみたかったんです」

仙石「今まで下北沢の劇場は何回か出演させていただき、シアタートップスは今回が初めてです。復活したばかりでご来場される皆さんもほぼ初めてなはずですから、どんなことになるのか私自身すごく楽しみです」

新井「岩田さんが憧れの場所だとおっしゃっていたを聞いて、そういった場所が誰にでもあるんだなあと思いました。アイドル時代の私にとっては武道館であり、ハロプロの聖地、中野サンプラザは特別でした。サンプラザでの単独公演が完売したときは涙しましたから。だからこそ今回トップスでの公演に参加できることは光栄であり、同時にプレッシャーもありますね。ヘマできないですよ」

岩田「でもマナティ(新井)がヘマするなんて考えられないです。パーフェクトなんですもの。見た目もしゃべりもね。その状態から徐々に崩していくとどうなっていくか。そんな逆転の発想で今回役を考えました。上手く変なところが出てくれればと思います(笑)。一方、仙石さんはファンタジスタで。結構いろいろやってくださるからねえ(笑)」

仙石「やりますね(笑)。昨年の(舞台での)コント中もアクシデント起こしまくりでしたし(笑)」

室「トップス復活、という話は僕も知っていたので、すごいところで挑戦するんだなと思いました。そこに僕も立たせてもらうのは嬉しいです。でも下北沢の劇場も僕は一度も出たことがないので……」

岩田「室くんは、小劇場から大きな所までたくさん出ていますから何も心配していません。今回声をかけたのも、彼は相手の芝居に大小関係なく様々なリアクションを瞬時に的確にとれるんです。だから彼がいることで作品に新しい波が生まれると思ったからです。お芝居大好きだし上手だし。演出のしがいがあります」

―――飛切り濃いメンバー、珠玉の客演陣、由緒ある劇場と期待が否が応でも高まる公演ですが、皆さんの意気込みを聞かせてください。

仙石「現在と過去を行き来する物語ですが、私は過去パートのエンドウ・サヤというキャラクターで、巫女さんです。役柄を通して魅せられる姿を楽しみにしてもらいたいですが、今まで参加した秘密兵器さんの舞台とはまた違う、新たな一面を見ていただける作品になっていて、私達自身もこの先どうなっていくのかワクワクしている最中なんです。おそらく一度では足りなくて、また観たくなる作品になっていると思います」

新井「私は未来を生きるアンドロイド役で、まだ名前がなくて“38号機”ということになってます。未来の設定なので、参考にするものがあまりないんですね。だからAIが出てくる映画とか、ゲームが好きなので未来が舞台のゲームを通して役作りを試みています。でも未来だからこそ何でもありだとも思うんです。岩田さんも自分が主役だと思って全員が演じてねといってくれるので、同じパートのキャストの皆さんとどんな会話を繰り広げるかが楽しみです。そして間違いなくもう一回観たくなるので、チケットは早めに手配いただいて。どうしても来場できない方には“おみやげチケット”がありますから。ともかく……どんな手を使ってでも観て頂きたいです!」

岩田「ありがとう。特別な想いを」

室「僕の役は……まだもらった脚本で出てきてません。嘘です(笑)まあ現代パートであることはわかってます。でもどんな位置にいるかは、どうやら重要なところだと思うので話さないでおきます。今の段階で一番楽しいことが、メンバーの三浦(文太郎)さんと絡んでいることですね。もう凄く楽しい(笑)。三浦さんも凄く楽しそうに稽古しているんです。なんだか忘年会みたいですね。きっともう再演できない舞台になるでしょうから」

岩田「これまで秘密兵器は再演したことがないんです。今を生きているメンバーで一所懸命作るのが僕等の「ミッション・イン・ポジティヴ」だし、客演陣も今を輝いてて素敵な方々を呼んでいます。お客さまも今を感じてくれる空間にしたい。特別な「今」を観て欲しいです」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

室たつき(むろ・たつき)
京都府出身。ジャニーズ事務所に所属し、関西ジャニーズJr.のメンバーとして活躍。自称ベテラン勢のメンバーと共に組んだVeteranや、実弟である室龍太、室将也とのユニット・室3兄弟などでも活躍する。2012年にジャニーズ事務所を退所。その後はフリーの俳優として舞台を中心に活躍している。2021年4月に新会社の設立と同時に名前を「室龍規」から「室たつき」に改名する。

仙石みなみ(せんごく・みなみ)
宮城県出身。ハロープロジェクトの研修生、ハロプロエッグでの活躍を経て、音楽ガッタスのメンバーとしてCDデビューするなど、歌手としてのキャリアを積む。2010年に研修課程を修了すると、「アップアップガールズ(仮)」のメンバーとして2017年9月まで活躍。グループとしてだけでなく、個人での活動も展開する。2017年9月16日にアップアップガールズ(仮)を卒業。以降は小劇場から2.5次元、ストレートプレイなど様々な舞台に俳優として参加している。

新井愛瞳(あらい・まなみ)
群馬県出身。幼少の頃からモデルとして活躍し、オーディションを経てハロプロエッグのメンバーとなる。研修課程修了後は「アップアップガールズ(仮)」に最年少メンバーとして参加。日本武道館や中野サンプラザ、さらに全国のツアーに参加して人気を得る。2014年には出身地の群馬県より「ぐんま観光特使」に推薦され委嘱を受ける。2020年一杯でアップアップガールズ(仮)を卒業。秘密兵器の舞台には2回目の参加。

岩田有弘(いわた・ありひろ)
東京都出身。東京農業大学在学中の2002年に演劇ユニット「秘密兵器」を結成し、主宰。本年夏には20周年記念公演を果たした。下北沢を中心に定期公演を続け「下北沢小劇場の申し子」の異名を得る。さらに2013年には劇団「大人の麦茶」にも入団。2015年にはプロデューサーの銀、脚本家で「大人の麦茶」主宰塩田泰造と共に舞台プロデュースユニット「銀岩塩」を結成し代表に。俳優だけでなく『牙狼』初の舞台化をプロデュースするなど、舞台界で活躍の場を広げている。

公演情報

エンターテインメント風集団秘密兵器 2021年暮れの元気なご挨拶
ドラマティックスペシャル MISSION IN POSITIVE Gorgeous Attack

『さやえんどう』

日:2021年12月28日(火)~30日(木)
場:新宿シアタートップス
料:5,000円 学割2,700円
  ※学割チケットは劇団のみ取扱。劇団へメールでお申込みください。/要学生証提示。
 (全席指定・税込)
HP:https://www.himitsuheiki.com/
問:エンターテインメント風集団秘密兵器
  mail:himitsuheiki.swp@gmail.com

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