あの草月ホールが、みんな大好きな“ 銭湯”に? 足立区に実在する銭湯・若松湯をめぐるコメディ作品! 

 代々続く足立区五反野の銭湯・若松湯。名物親父・山田が病に倒れたことで、息子・来人が代わりに店を切り盛りするも、来人は超がつくほどの風呂嫌い。廃業が頭によぎる中、病院を抜け出し戻ってき父が浴場で足を滑らせ湯の中に落ちてしまう。来人が慌てて引き上げるが、その姿は青年になっていて……。

―――今回の舞台は、足立区五反野に実在する銭湯・若松湯がもとになっているそうですが、それぞれどのような役を演じられるのか教えてください。

中川「山田家の長男・山田来人(やまだ・らいと)を演じます。来人はクールな現代っ子という感じですが、タイムスリップしてきた父親との絡みの中で、心境がどう変化していくのか……そんなところが見どころになりそうです。来人を演じることを自分自身とても楽しみにしてますし、お客さまに、来人の細かいところまで届けられたらいいなと思っています」

柾木「来人の父・山田湯隆(やまだ・ゆたか)を演じます。下町の銭湯屋の頑固親父が、若い頃にタイムスリップするんですけど、現代だと凄く頑固親父なのに、過去にいくとバブル期真っ只中で結構チャラチャラしている(笑)。ただ、チャラチャラしつつも、昭和の人情味溢れる人物です」

水原「来人の幼なじみ・川上翔音(かわかみ・しょおん)を巧巳くんとWキャストで演じます。来人がちょっとツンツンしていて、思春期っぽい感じなんですが、それを翔音がコントロールする役だなと思っていて。僕自身はアホなんですけど(笑)、そのアホさが出ないように頑張りたいです!」

吉川「僕も来人の幼なじみ・翔音を演じます。翔音は“若干”しっかり者ですが、僕も“若干”しっかり者。翔音がおちゃらけキャラだったら、僕と真逆なので難しいかなと思っていたので、ちょうどよかったです(笑)」

あやかんぬ「わたしは山田家の長女で来人の妹・山田千(やまだ・せん)を演じます。まず企画のことからお話ししますと……実際に足立区五反野に商店街があるんですね。50軒ぐらいお店があります。中には数軒、シャッターを下ろしています。そこに若松湯は実在していて、山田さんも実在する人物です。山田さんはまちを盛り上げようと活動されているんです。
 五反野のまちを歩くと、『山田さん!』とみんなに声を掛けられるほど、地元では有名人。とても人情溢れるお方なんです。例えば、若松湯はビルの1階にあって、その上に下宿している方々がいるんですね。それぞれのお部屋にお風呂はあるのですが、山田さんは『うちに入りに来なよ。でかい風呂はいいぞ』と声を掛ける。昨今のサウナブームも相まって、どんどん輪が広がって。山田さんの若松湯は新しい風を吹かせようと頑張っている、まち銭湯なんです」

―――では、基本的に登場人物はモデルとなる方がいらっしゃるのですね。

あやかんぬ「そうです。わたしが“あだちの銭湯広報隊長”として取材をさせていただいたことを原案に、今回のストーリーは展開します。空想上の人は翔音ぐらいですね」

―――なるほど。では今のお話も踏まえつつ、脚本を読まれた感想を教えてください。

中川「あやかんぬさんの熱い思いと、湯、そこにコメディとタイムスリップという要素が加わって……こんなことが起こっているんだと知ってもらう機会にもなるでしょうし、それがまちの活性化に繋がれば、よりいいなと思います。いい化学反応を起こせたらいいですよね。また、舞台を観たことがない人もフランクに観劇できる作品になっていると思うので、色々な方に観てもらえたら嬉しいです」

柾木「基本的にすべてが会話でコミカルに描かれていました。個人的には、湯から出てきたり、商店街に行ったり、喫茶店に行ったりと、場面の転換が多いので、それをどういう舞台装置でやるのだろうと、純粋に楽しみです」

水原「まだしっかりと読み込めていないんですが、わちゃわちゃ感があって、掛け合いがおもしろくて。舞台は初めてですが、お芝居を通じてお客さんに銭湯の良さをうまく伝えられたらと思います」

吉川「実際に若松湯に行ってみたら色々と見えてくるものも多そうだなと思いました。稽古の前でも、稽古がある程度進んだ時でも、1回は足を運んでみたいな」

―――最近はサウナがブームとなっていますが、みなさんの銭湯愛を語っていただきたいです。

あやかんぬ「わたしは多い時で、週に5回ぐらいまち銭湯に行っております。足立区の銭湯に行くことが多いですが、実は私自身、高校生から21歳まで、今は無きお台場の大江戸温泉物語でアルバイトをしていました。その賄いが食事ではなく、お風呂だったんですよ。私わたしのお風呂好きのルーツはそこだったかなと思います。
 大江戸温泉物語はスーパー銭湯のパイオニア的な存在だったと思うのですが、大きい湯船で全然見ず知らずの人とちょっと会話をしたり、小さなお子さんから外国人の方までがみんなでお風呂に入って時間を過ごしたり。普段家のお風呂に入る時は“個”の時間ですけど、こういう銭湯はちょっと違って、パブリックなエンタメなのかもしれないなとぼんやり思っていたんです。
 色々とご縁があって、まち銭湯のPRをするようになったこともありますが、スーパー銭湯やサウナがたくさんある中でも、やはりまち銭湯でしか味わえない良さがございまして。それは地域の方との繋がり。コロナ禍以前は色々な場所できっとみなさん知らない人とも一歩踏み込んで交流できていたと思うのですが、振り返ってみれば、ここ3、4年はちょっと拒まれるし、拒んでいたし、拒まざるを得ない状況が続いていたと思うんですね。でも銭湯は“お湯を共にする”ということも、店主の溢れる人柄もあって、繋がることができるんです。それが魅力だなぁと思います」

中川「銭湯って、自分1人で行っても、友達と行ってもそうですけど、なんか深いことを考えやすいなと思っていて。普段は身も蓋もない話をばかりするような大学生だったんですが、温泉や銭湯に行って、湯に入ったり、風を感じたりしていると、将来の話も含めて、いつもより深く、踏み込んだ話ができる気がする。自分たちの枷を1つ外してくれるような、本当に素敵な場所ですよね。
 そして、身体も心も休まって、明日からまた頑張るぞと思える。自分は銭湯ではないんですけど、絶対湯船には毎日入るので、そういう意味でも、お風呂は自分のスイッチを入れ替えてくれる大切な存在だし、僕の人生に欠かせない1つのものやなと思います」

柾木「僕は地方に仕事などで行くと、必ずと言っていいほど銭湯に行くんです。それは何故かなと考えたら……大阪の銭湯に行ったことがあって。身体に入れ墨があったり、小指がなかったりする人がいて、それがいいとか悪いとかそういう話ではなくて、銭湯ってやはり昔から地域に根付いてるものなんだなぁと改めて思って。お客さんだけではなく、番頭さんの人柄もそれぞれですし、色々おもしろいんですよね。
 あと、銭湯の方が静かじゃないですか? 年配の方が多いからかもしれないですけど、みんな風呂に入りに来ている感じがして、そこも自分としては心地よいんです。自分のホーム銭湯が池尻にあるんですけど、リニューアルしてからめっちゃくちゃ人が多くて。サウナに力を入れるようになって嬉しい反面、昔から入りに来ている地元の人はどう思っているのかな?と思ったりもして。ブームになることはいいことなのか悪いことなのか分からないです。……と語れるぐらいには、銭湯が好きです(笑)」

水原「僕はお風呂自体は好きなんですけど、銭湯にあんまり行かないんですよね。行くとしたら、友達とふらっと遊びに行く感覚で行くんですけど、外にカプセルトイが置いてあったりするじゃないですか。そういうのが楽しくて(笑) なんか少年時代を思い出させてくれるから。まぁ、友達と身体の付き合い……いや、裸の付き合いか(笑)。裸の付き合いができるのはいいですし、踏み込んだ話ができるのも好きなところです」

吉川「僕もあんまり銭湯に行かないんですけど、中学校を卒業する前に、友達数人と一緒に銭湯に行ったことがあって。山を越えた場所にある、こじんまりとした場所だったんですが、中学卒業を前に『将来どうする?』なんていう話をして思い出に残っているんですよね。
 自分から主体的に行く場所ではないんですが、この年になって久しぶりにその銭湯に行ってみるのも楽しいかもしれませんね。その頃の記憶が蘇るだろうし、ちょっと行ってみたいです」

―――初舞台の方、たくさん舞台に立たれている方など、経験はバラバラだと思うのですが、みなさんの舞台に対する思いを伺いたいです。

中川「僕は正直、今からめちゃくちゃ緊張してます。でも、僕が踏み込んだことのないジャンルだからこそ、新しく経験することもたくさんあるだろうし、逆に僕が音楽などでやってたことが生きる場面もあるかもしれないという楽しみもあって! まだ稽古が始まる前ですが、緊張8割、ワクワク2割で色々な感情が入り混じっています」

柾木「稽古に関しては、一つひとつ階段を昇って作り上げている感じがするのが楽しいです。本番に関しては、毎回お客さんの反応も違うし、役者のコンディションも違うし、毎回何かが生まれるのが楽しいですね。もちろん、初日から全力でやるんですけど、本番を通して成長していくこともあって。それは舞台ならではだなと思いますね。
 ただ、いつも稽古も本番時も『うわ! 超楽しい!』と思っているわけではなくて、すべてが終わった時に『楽しかったな、まだやりたかったな』と思う。だから、結局舞台が楽しいと思っているんだと思います」

水原「僕は今回が初舞台なので凄く心配です。めちゃめちゃ噛んだらどうしよう……どうやって次に繋げよう……と挙げたらキリがないんですけど、うまくカバーできる能力を身につけて、成長できればいいなと思います。
 今、僕はアイドルをやっているので、きっと観にきてくれるお客さんの中には、自分のファンもいてくれると思うんですけど、『水原くん、こういうこともできるんだ! 成長した!』と思ってもらえるように頑張ります」

吉川「僕も基本はアイドルをやっていて、ステージに立つ時は自分のグループのメンバーに囲まれているので、初めて1人でお仕事をさせてもらうんです。この舞台の稽古や本番を経て、グループのメンバーに『成長したね』と言われるように、ちょっと自慢できる自分になっていたい。成長した自分を見せるのが楽しみですね」

あやかんぬ「まず、私は大山晃一郎監督とご一緒できることが嬉しくて。というのも、私が初めて大山監督にお会いしたのは、8年前の新宿の小劇場。50人入るか入らないかぐらいの劇場で、大山監督の劇団公演に客演として参加したことでした。
 大山監督は稽古の時に、キャストの芝居を机に座って見るのではなく、キャストと同じ視点に立って、体育座りで芝居をご覧になる。時には涙を流すほどに、とても熱い稽古をなさるんです。大山監督の滾るような思いに心を動かされました。
 映像の現場でご一緒した時も大山監督は情熱的で、その情熱はキャストにもスタッフにも伝わって。だからこそ、今回の作品を上演するにあたって、誰と一緒にやりたいかと考えた時に、大山監督の顔が浮かびました。大山監督もご快諾してくださって、今こうして本番に向けて動いていることに感謝しています。
 そして、出演者のみなさんはこちらの作品への出演を決めてくださって、ありがとうございます」

中川・柾木・水原・吉川「ありがとうございます!」

あやかんぬ「特に初舞台は誰にとっても1回きりですし、経歴の中で残り続けるものですから。みなさんの応援団やファンの方に喜んでいただくことはもちろんなんですが、この作品を通して、誰かを案じたり、『最近連絡をとっていなかった友達に連絡をとってみようかな』と思ってもらったり、墓参りに行こうかなと思ってもらえたり、そういう風にちょっとでも心が動いてもらえたら嬉しいです」

―――最後に観客のみなさんへメッセージをお願いします!

中川「山田来人として観てほしいし、インパクトをしっかりと残せたらいいなと思っています。あわよくば、自分のグループに帰っても『来人の人だよね?』と言ってもらえるぐらいに頑張りたいなと思います。
 中川のファンだから……というのを抜きにして、純粋にフラットに作品を楽しんで観てもらえるようにすることが大事だと思います。ぜひ劇場でお待ちしています」

柾木「みなさん“初舞台”とか“本業がアイドル”とか不安げにお話しされていますが、板の上では関係ないと思っています。それはつまり僕が今までやってきたことも関係ない。みんな同じ土俵でやっていく仲間なわけなので、負けないように頑張りたいと思っています。
 自分も芝居なんて右も左も分からなかった頃がありましたけど、その時の方が良かったこともあるなと思うんですよね。何も知らないからこそできたというか。最近、色んな意味で役者という仕事に染まってきているので、みなさんとご一緒する中で初心を思い出しつつ、稽古も本番も楽しみたいなと思います」

水原「僕はライブでもあんまり喋らない方なんですよ、話が下手なので。今回の舞台で会話が上手くなって、MCなんかができるようになったらいいなと思っています。
 僕のファンのみなさんには、お母さんのような気持ちで観に来てほしい。格好悪いところは絶対に見せたくないし、みなさんの期待にちゃんと応えられるように、成長したんだなと思ってもらえるように、頑張ります」

吉川「柾木さんがお話してくださったように、舞台に立つと、経歴も何も関係ないと思うので、吉川巧巳ではなく、普通に役者として観ていただけたら嬉しいなと思います」

あやかんぬ「特に初舞台のみなさんは不安な気持ちもあるかもしれませんが、わたしも舞台経験がない時に全力で周りに甘えさせてもらいましたし、大山監督もそのほかの共演者さんも安心してダイブできるメンバーですから、飛び込んでくださいね。私も存分に、飛び込ませて貰います!
 とはいえ、個人的には1年半ぶりくらいの舞台になります。舞台って『今日なんか良かったよね』という理屈では語れない瞬間があるんです。いつも素敵なものをお客さんに届けることはもちろんなんですけど、100点が130点になる瞬間があると思っていて。その瞬間をつくるためには、稽古場から丁寧にコミュニケーションを積み上げていくことが必要かなと思うので、そういった理屈ではない瞬間に立ち会えるように、一つひとつ粛々と向き合いたいなとと思います」

(取材・文:五月女菜穂 撮影:間野真由美 ヘアメイク:久木山千尋 林 美由紀 スタイリスト:髙橋梨花 衣装協力:MUZE Shelluits VATSURICA)

プロフィール

中川勝就(なかがわ・かつなり)
1997年3月16日生まれ、兵庫県出身。2019年、視聴者投票でメンバーを決めるサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」の練習生となり、現在は4人組ボーイズ・OWVのメンバー。

柾木玲弥(まさき・れいや)
1995年3月24日生まれ、北海道出身。2009年、第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞を受賞。ドラマ・映画を中心に活躍中。主な舞台の出演作に、『インヘリタンス-継承-』、『パンドラの鐘』などがある。

水原匡也(みずはら・きょうや)
2001年3月25日生まれ、福島県出身。メンズグループ・7m!nのメンバー。YouTubeチャンネル「ナナトイチセイ」でも活躍中。夏には全国5都市でのライブツアーも控えている。

吉川巧巳(よしかわ・たくみ)
2001年11月9日生まれ、東京都出身。メンズグループ・8iperのメンバー。YouTubeチャンネル「はいぱーおくたん」でも活躍中。

あやかんぬ
1997 年5月22日生まれ、千葉県出身。俳優活動の傍ら、《あだちの銭湯広報隊長》として足立区浴場組合内のSNS企画立案・プロデュースを手掛ける。最近の出演に、ドラマ『となりのナースエイド』、映画『炎上する君』など。

公演情報

舞台『銭湯来人』

日:2024年7月20日(土)~28日(日)
場:草月ホール
料:SS席特典付き12,500円
  S席8,800円
  U25[25歳以下]7,800円 ※要身分証明書提示
  親子ペア割[6歳~中学3年生まで]10,000円
  見切れ席3,000円(全席指定・税込)
HP:https://wondervillage.jp/sento/
問:ワンダーヴィレッジ
  mail:wondervillage.stage@gmail.com

インタビューカテゴリの最新記事