2024年に結成10周年を迎える無情報(ノーインフォメーション)。偽札を巡る4つの部屋の物語の上演に向け、脚本を務めるガクカワサキ(無情報)、出演の芳賀勇(無情報)、谷真理佳、長谷川かすみにインタビューを行った。
―――まずは無情報10周年の作品に対する意気込みを教えてください。
ガク「僕と芳賀さんは途中から加入したのでまだ8~9年目ですが、劇団を10年やってきて、“これを作るための10年だったんだと思いたい”というのがテーマ。お話を考える最初の段階からメンバーで話していたことです。変な言い方ですが、無駄な10年じゃなかったと思いたいというのがすごくあります」
芳賀「僕は最初、お客さんとして無情報を観に行っていて、次に『コント食堂』に出演しました。『コント食堂』はメンバー3人、お客さん5人くらいのバーを貸し切っての公演。そこから始めて、今回CBGKシブゲキ!!という大きな劇場です。お客さまや周りのスタッフに支えられてきた10年だと思うので、感謝を含めて楽しい作品を届けられたらと思っています」
―――今回の物語について、脚本のこだわりや注目ポイントはどこでしょう。
ガク「あらすじでも出ていますが、4部屋での物語が同時進行し、だんだん関係してくるような感じ。僕自身も、書いている途中で舞台上がどうなっているのかわからなくなる瞬間がありました。ご覧くださる方も目が忙しいと思うし、逆にいうとどこを見ても面白い作品になっていると思います」
―――それぞれの役柄を教えてください。
芳賀「僕は画家で、自分だけ絵が売れていない設定です。描くのを諦めたら楽だけど、諦めきれていないから余計苦しいのかなと。10年間役者をやってきた自分に重なる部分もあるので、置き換えてやれたらと思っています」
谷「私はある日、1億円の宝くじを当てるマリア役です。すごく純粋でいい子で、仲間に恵まれています。宝くじをきっかけに物語が目まぐるしく回っていくので、目が忙しいし、私自身まだ想像できていません。4つの部屋で100分、本当にできるのかなって。ワクワクしかないです」
ガク「まだ暫定稿で、長谷川さんの役については手直ししている最中ですが、マリアと対比させたいと思っています。大変複雑な物語なので、一旦マリアを書いたところ。全体としてはどうでした?」
長谷川「4つの物語があるので、お客さんが次々に各部屋を楽しめると思います。さっきも“100分”というワードがありましたが、舞台上にタイマーがあって、役者はぴったりに終わらせなきゃいけない。結構ハードルが高いことをやらせるなと(笑)」
ガク「何回かうまくいかないんじゃないかと思う。押しちゃうのはどうにかできると思うけど、時間が余ったときが……」
谷「どうするんですか?」
ガク「色々と策はあるんだけどね。この子がこのセリフを言うってことは残り何分だな、みたいな」
長谷川「その子が間違えたら……」
ガク「そしたら終わり(笑)」
谷「でも、そこが生の舞台の面白さですよね」
長谷川「何回か観ると、テンポの違いも楽しめるかもしれませんよね」
ガク「そもそも舞台はチームワークだけど、よりそこが楽しめる作品になりそう」
谷「(芳賀に)頼りにしてるんで」
長谷川「やっぱり無情報のメンバーだから」
芳賀「任せて、俺はストップウォッチだから! ……ここはカットしてください」
一同「(笑)」
―――4つの部屋で繰り広げられるワンシチュエーションコメディということですが、演出について決まっていることはありますか?
ガク「普段のお芝居は“翌日”、“一方その頃”と時間が飛んで、間が描かれないことも多いですよね。しかし、今回はほぼそれができず、2時間の中での変化をお客さんに見られていて、俳優としても珍しい経験になると思います。全体のグラデーションで変化する部分はしっかり描きたいですね」
長谷川「1回はけると次に出るまでのことを考えるけど、今回はそれがほぼ無いんですね。面白い」
ガク「台本ではセリフを言うために出てきているけど、101号室で話が進んでいる中、アドリブで202号室に出てきて何も言わずに帰ってもいいしね」
長谷川「忘れ物を取りに帰ってきたな、みたいな」
ガク「そうそう。やりたい放題の本でもあるし、でも時間を追わなきゃいけない」
長谷川「いろいろと可能性がありますね」
ガク「僕自身もいい意味で完成系がわかっていないです」
―――谷さんは無情報さんに初参加かと思います。
谷「無情報さんについて調べた時に『毎日が唐揚げなら、私達は檸檬になりたい』っていう思いで集まったというのが素敵!と思って!」
一同「(笑)」
谷「青春じゃんと思って」
長谷川「面白いですね」
谷「そこから始まって10年。1つのことを長く続けるって1番大変ですから、そんな団体の10周年に縁があって参加できるのが光栄ですしワクワクしかしないですよね。
仲間が増えて10周年目で、CBGKシブゲキ!!で、S席も1日で完売して。ファンの方の気持ちを考えても絶対に成功させたいと思います」
―――谷さんから、稽古前に聞いておきたいことはありますか?
谷「ルーティンとかありますか? 無情報ルールとか」
ガク「芳賀さんは稽古前にプロテインを飲んで……とかがあるけど、それ以外はあんまりないかも」
谷「たくさん舞台に立ってらっしゃいますが、緊張はしないんですか?」
芳賀「緊張はするし、逆に一番、無情報が緊張するかもしれない」
長谷川「緊張と汗が比例するなら、前川(昂哉)さんが1番緊張していると思います。一発目のシーンでパッと見た瞬間汗だくなので(笑)」
谷「しっかり見たいと思います!」
ガク「かすみん(長谷川)は前も出ているけど、どうですか? 自分たちではルーティンとかわからないから」
長谷川「ルーティンはなさそうですよね(笑)。稽古場は賑やかだし、『今のは面白かった』を笑いで表現してくれます。芝居をしている身としても笑ってくれたら、嬉しいし楽しい。
前回出演してすごく楽しかったですし、完成したものも面白かったので、今回の企画を教えてもらった時に『やりたいです!』とすぐ言いました。それくらい期待できる団体です。今回も絶対にみんな楽しめると思う。プレッシャーを与えています(笑)」
谷「観ている方の期待値も上がっていると思います。それがS席の売り切れにつながっているんでしょうね」
―――記事公開時にはチケットが売り切れているかもしれませんが、初めて観に行こうかと思っている人に伝えたい、推しポイントを教えてください。
谷「絶対に観にきてくださる方の記憶に残ると思うので、絶対観にきてほしいです。友情シーンに関しては無情報さんとリンクしていると私は思いますね。ほっこりしました」
長谷川「“お金”というキーアイテムを通して人間味が出るし、みんながどう変化していくかも見どころだと思います」
谷「お金を巡って人間の本性が出るし、面白いですよね。あと、最後の展開! ゾワゾワしました」
長谷川「10年間も同じメンバーでずっとやってきた無情報メンバーの信頼が稽古場などでも伝わってきます。それも舞台上に現れると思うので、楽しんでいただけたらと思います」
芳賀「無情報って基本的に脇役がいない。全員にちゃんとスポットライトが当たります。推しキャラ、自分に似たキャラクターを見つける楽しみもあると思います。
また、『スリッパ・ウェスタン』以来、市原(一平)さん、藍さん、倉沢(しえり)さんは毎回出ていただいていて、毎回全然違うキャラクターを演じていただいています。今までの公演も観て下さっている方には、今まで出てくださっている方が今回はどんなキャラクターなのかも楽しんでもらえたらと思います」
ガク「僕自身、10年前に無情報に入るまでは演劇が嫌いだった。お客さんとして劇場に足を踏み入れにくいというのが漠然とあったんです。それを払拭したくて始めたのがある。
うちは絶対面白いので、初めて舞台を観る方には絶対におすすめです。もちろんお芝居が大好きな方を置いていくつもりはないですが、『人生で一回も舞台を観たことがない人が観ても面白い』というのをずっと忘れずに考えています」
―――予告映像やHPに載っているみなさんのビジュアルもすごくおしゃれです。
ガク「僕が全部作っています。太字で書いておいてください(笑)」
長谷川「ガクさんは曲も作ってるんですよね」
ガク「そういうのが好きなんですよ」
―――衣装を着てみた感想、撮影時のエピソードはありますか?
谷「衣装合わせで無情報の皆さんに初めてお会いしたんですが、扉を開けたら『うおおお!』って」
一同「(笑)」
長谷川「歓声?」
ガク「怒号(笑)?」
谷「めちゃくちゃ盛り上げてくれました。顔合わせとかって緊張するじゃないですか。でもその前の段階ですごく賑やかに受け入れてくれたので、本当に仲良しでいいなあって」
長谷川「アットホームですよね」
谷「長谷川さんも言ったように、その仲の良さが舞台上でも出ると思います。そこもファンの方にはたまらないと思いますね」
ガク「衣装合わせの時、芳賀がケータリングのお菓子を用意してくれたんですよ。パッと見たらおかきとお煎餅しかなくて。普通はしょっぱいのと甘いのとか用意するじゃないですか。2個とも米菓ってどういう発想で?」
長谷川「鍛えている身としては小麦粉より米ってことですかね」
芳賀「そう! 脂質を摂らないように」
ガク「10年やっていてこれなので、盛り上がらざるを得ないですよね」
一同「(笑)」
長谷川「でも、芝居についてはより良くするためにみんなが意見をぶつけ合っているんじゃないかと思います」
芳賀「それでいうと、ガクさんに脚本の修正をかなりお願いしています。今回も、最初は5パターンくらい出してくれたんですが、いろいろ意見を出して修正をお願いしています。それもあっていいものができていると思いますね」
ガク「僕がやっている現場で1番厳しいかもしれない(笑)。詳しくなってくると、どうしても演劇好き・わかる人向けになりがち。だけど、うちの芳賀や橋詰(龍)はすごくピュアなお客さん心をいまだに持っているんですよ。
逆に前川はお芝居にすごく熱いので前進させてくれるし、リーダーの岸本(学)がバランスを取ってくれる。僕が1人で本を書いていたらここにいないと思う。5人が絶対に面白いというところまで書き続けるのは10年変わっていません」
谷「みんなで作っているんですね」
―――無情報のメンバー揃っての出演は2020年の5th『スリッパ・ウェスタン』以来でしょうか。
ガク「僕、本当に喉が弱いのですぐに声がガサガサになっちゃうんですよ。『これを言ったら面白い』というのがあるけど、自分のセリフを増やしたくない(笑)。緊張していますね。
ただ、岸本は『スリッパ・ウェスタン』もワンシーンだけの出演で、それ以来制作やデザイン面で関わっていました。そんな中、『来年何をしよう』という最初の話し合いで彼から『楽しそうだから出たい』と言われたんです。すごくびっくりしました。そしたら僕も出ないわけにはいかない。10周年をこの5人で迎えられるのは本当に幸せだなと思いつつ、緊張と喜びが同時にありますね」
―――無情報の皆さんから長谷川さん・谷さんに期待していることはありますか?
ガク「長谷川さんは圧倒的に信頼している女優さんです。こんなに困らせがいのある人はいない」
長谷川「ん?」
ガク「舞台上で困っていれば困っているほど嬉しい(笑)。同い年で、会うたびに成長しているし、僕も負けていられないなと思います。一緒に10周年を迎えられる嬉しさもありますし、『10周年が一番良かったね』と言い合えるようなものを作りたいです。
谷さんは大変面白い方。ちゃんとされているし、お芝居や作品への熱量も感じます。せっかくこうして出会って一緒に作品を作るので、ファンの方が見たことのない谷さんを見たいなと。偉そうなことを言えば『これでしょ、谷さんの面白いとこ!』というふうにしたい。すごく楽しみにしています」
谷「ありがとうございます! 楽しみですね」
芳賀「谷さんはテレビで結構拝見していましたが、普段の谷さんを見て『本当はこういう方なんだ』とわかりました。ガクは当て書きをするので、多分そういうところを見ていてキャラクターを作ったんだと思います。
あと、台本を読んでいると長谷川さんの困った顔が脳内再生できる。楽しみです(笑)」
ガク「前に『ガクさんの本に出ると疲れるんですよね』って言われました(笑)」
長谷川「大体私は焦ってますよね」
芳賀「セリフのイントネーションとかを想像できる」
長谷川「想像を上回れるように頑張ります」
ガク「『えっ!?』って言わせたくなる。『ちょっと待って』ってセリフもたくさん書いたと思う」
長谷川「今までセリフで言った『ちょっと待って』はほぼガクさんかもしれないです(笑)」
ガク「芳賀さんもそう。芳賀さんは『ええー!!』って言わせたくなる」
長谷川「今回も台本を読んでいて、これは芳賀さんだなってセリフもあったんですよね」
ガク「わかるわかる」
長谷川「お互いに上回っていきましょう!」
―――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
長谷川「無情報10周年記念公演、ぜひ劇場で、劇場にてお待ちしております!」
谷「初めて参加しますが、この記事でも伝わるように、とても楽しい舞台になると思います。舞台を初めて観る方にも、舞台が好きな人にも観にきてほしいですし、10周年が今までで1番いい作品になると思います」
芳賀「1年前くらいから企画が動いていて、幕が開くまでずっと面白いものを作っていくと思います。今までの作品の中で1番笑いの数が多いと思う。谷さんが言ったように初めての方もファンの方も楽しめると思います」
ガク「ポンコツ5人が集まって一生懸命やったら10年でこうなるという気持ちもありますし、その期待をもっと大きく超えたい気持ちもあります。観てくださる方の人生が変わる100分を作りたいので、どんなもんじゃいと観にきていただければと思います」
(取材・文&撮影:吉田沙奈)
プロフィール
ガクカワサキ
1992年10月1日生まれ、東京都出身。現在はテレビや映画・舞台・アニメなど幅広い作品を執筆。主な作品に、Amazon Original ドラマシリーズ『誰かが、見ている』(監督:三谷幸喜)脚本協力、映画『散歩時間~その日を待ちながら~』脚本、ドラマ『こんなところで裏切り飯』脚本など。日本テレビ「シューイチ」、「笑ってコラえて!」、「ものまねグランプリ」や、テレビ東京「やりすぎ都市伝説」の構成作家も担当している。
芳賀 勇(はが・いさむ)
1989年2月21日生まれ、富山県生まれ。主な出演作に、ドラマ『東京タラレバ娘』、映画『L♡DK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』、Netflix「あいのり Asian Journey SEASON2」など。舞台では無情報の作品以外にも、劇団MIX『星の英雄』、OCA PEPLE企画『どうせ死ぬなら、強火がいい』などに出演している。
谷 真理佳(たに・まりか)
1996年1月5日生まれ、福岡県出身。音楽ユニットBellemuleのメンバーで、SKE48およびHKT48の元メンバー。主な出演作に、ドラマ『マジすか学園』シリーズ、ミュージカル『AKB49~恋愛禁止条例~』、舞台『オオカミの誘惑』、舞台『LIAR GAME murder mystery』など。
長谷川かすみ(はせがわ・かすみ)
1992年10月2日生まれ、福岡県出身。2015年より女優として活動している。主な出演作に、スーパー戦隊シリーズ『王様戦隊キングオージャー』、ドラマ『民宿のかくし味』、映画『米寿の伝言』、『13月の女の子』、舞台『ノラガミ -神と絆-』、『七つの大罪 The STAGE』、『ロマンシング サガ THE STAGE~ロアーヌが燃える日~』、『女王輪舞』など。
公演情報
無情報 結成10周年記念公演
『BILL’S BILLS BUILDS』
日:2024年6月20日(木)~23日(日)
場:CBGKシブゲキ!!
料:欲張りセット[S席+上演台本]9,500円
S席[前方2列確約・特典付]8,000円
台本付前売券7,500円 前売券6,000円
(全席指定・税込)
HP:https://noinformationk.wixsite.com/official/special
問:無情報 mail:noinformation.k@gmail.com