気晴らしBOYZが贈る、ワンシチュエーションコメディ 笑って泣ける! 結婚式場で巻き起こる、ふたつの家族の物語

 田中大祐が主宰する劇団「気晴らしBOYZ」による舞台『GROOM&GROOM』が、7月3日から上演される。田中が脚本を手がけ、『家族と呼ばないで』のタイトルで大好評を呼んだ作品を、タイトルも装いも一新し、パワーアップして届ける。結婚式場で巻き起こる、ふたつの家族の笑いと涙の物語だ。
 主人公の西田真之介を演じる賀集利樹と、川島健二役の日向野祥に公演への意気込みなどを聞いた。

―――出演が決まり、最初に脚本を読まれたときはどんな感想を持ちましたか?

賀集「とにかく笑いました。田中さんの脚本は、僕にとってドストライクなんですよ。脚本を読んだだけで、涙を流すくらい笑ってしまいました。今回は笑いもあり、涙もある、感動できるハートフルコメディなので、お客さまにも楽しんでお芝居を観ていただけるのではないかと思います」

日向野「LGBTQ+というかなりセンシティブなテーマを扱っていますが、それを笑いに変えて、明るく届けるというメッセージ性の強い作品だなと感じました。深いテーマの中に、コメディ的な要素が巧みなバランスで入っているので、僕も笑いながら読ませてもらいました」

―――なるほど。田中さんとはこれまでもご一緒したことはありましたか?

賀集「僕は1度だけあります。ただ、それは2.5次元作品だったので、オリジナルは今回が初めてです。
 その2.5次元作品の前に一度、田中さんが脚本を書かれた作品に出演予定だったのですが、コロナの影響で中止になってしまって。なので、ずっとオリジナル作品に携わりたいと思っていました。今回はそれが叶うのがとにかく嬉しいです。
 しかも今回はワンシチュエーションコメディです。大変だと思いますが、きっと楽しさもあると思いますし、ワンシチュエーションでしか描けないものが絶対にあると思うので、そこを田中さんとどううまく作っていけるのかなとワクワクしています」

―――ワンシチュエーションコメディの楽しさや難しさを、具体的にはどのようなところに感じていますか?

賀集「単純にしんどいですね(笑)。リアルなことを言ってしまえば、どこで水を飲むのかという間も分からない。ただ、稽古はこれからなので、どう作っていくのか、今から楽しみです」

―――日向野さんはいかがですか?

日向野「僕は今回、田中さんとは初めてです。作品を拝見させていただいたこともあるので、楽しみにしていました。今、賀集さんがワンシチュエーションについてお話しされていましたが、僕は結構、ハケるシーンも多いので、賀集さんには申し訳ないですが、お水は飲ませてもらえるのかなと(笑)。
 とはいえ、やはりワンシチュエーションの難しさも面白さもあると思いますし、そのドタバタ劇で見せる1日を2時間の舞台で届けるというのはそれもまた醍醐味だなと思います」

―――それぞれが演じる役柄については、今はどのようにとらえていらっしゃいますか?

賀集「僕の周りにも主人公たちと同じような悩みを抱えている人がたくさんいるのですが、よくある大げさな色がついたキャラクターとして演じたくはないなと思っています。
 今は多様性が当たり前な時代です。僕たちも自然にそれを表現していければと。周りのキャラクターがみんな濃いので、その中で自然体でいることで真之介が活きることにもつながるのかなと思っています」

日向野「僕も同じです。よくいるデフォルメされたキャラクターではなく、笑いの部分でもラブストーリーの部分でもあくまでも自然体というのが大事かなと思います」

賀集「この作品は何かひとつの価値観が正しいということを押し付けているわけではないので、いかに寄り添うか、考えるひとつのきっかけになればいいなと思います」

―――そうした真之介と健二に共感したり、理解できたりする部分はありますか?

賀集「たくさんあります。結婚式場を舞台に物語の冒頭から、かなりのドタバタ劇が展開するのですが、僕が演じる真之介は周囲に気遣うあまり、振り回され続けます。なので、僕もそのまま振り回されまくればいいのかなと思っています。
 いろいろな立場の人物が出てくるので、観に来た方は、自分に近い状況にある人の目線で物語を楽しめると思います。観に来たお客様も一緒にこの結婚パーティに参加して、その一部始終を目撃してしまったような感覚になれたらいいなと思います」
日向野「劇中では、ささいな勘違いから主人公たちが親族のドタバタに巻き込まれていくのですが、共感できるところはとても多かったです。僕的には台本を読んだときから『そうだよね』という気持ちでした。きっと当人たちは想像もつかないくらい思い悩んでいると思うので、変にコメディを意識しすぎず、センシティブな葛藤の部分を大事に演じられたらと思います」

―――今回、お二人は初共演になりますね。

賀集「初めてです。(取材当時)まだビジュアル撮影の時に絡み合ったくらいです(笑)。なので、まだこれから仲良くなっていければと思います」

日向野「僕は、ずっと賀集さんをテレビなどで観させていただいてきたので、恐れ多いと言いますか……緊張しています。ただ、今回は健二としてガンガン振り回していこうと思っています」

―――ところで、本作は家族の絆を描いた作品ですが、お二人にとって「家族」とはどういう存在ですか?

賀集「それ、答えると何時間もかかりますよ(笑)。語り尽くせない(笑)。本当に家族の絆というものは、目には見えないけどすごく強いものですよね。
 子どもの頃、一緒に生活していると気づかなかったですが、離れて1人で暮らすようになって分かったことがたくさんありました。(家族は自分に)寄り添ってくれる人で、逆に自分が大人になった今は寄り添える。きっと自分のことを1番理解してくれているのが家族なのかなと思います」

日向野「僕は高校を卒業してすぐに親元を離れて地方の劇団に入ったのですが、その時に当たり前のことが当たり前じゃなかったんだなと気づきました。当時は洗濯機の使い方も分からないし、掃除もどうすればいいのか分からない。親がやってくれていたことも全部自分でやらないといけないとなって、改めてありがたさに気づきました。
 今は多様性の時代で、いろいろな家族の形があると思いますが、どんな形であっても無条件で愛せる人が家族なのかなと思います」

―――家族と離れて暮らすようになったことで、絆を感じたエピソードはありますか?

日向野「カレーを食べたいなと思ったときに、親がカレーの材料を送ってくれたことです。僕は何も言っていないのに、『そろそろ食べたい頃でしょう?』って材料を送ってくれたんですよ。野菜とルーと実家で入れていたという隠し味も一緒に。それを使って作れば実家の味になるというので、それで作りました。そのときに親の勘ってすごいなと思いましたね」

賀集「親の勘ということであれば、クリスマスプレゼント。僕の家は、25日の朝に起きたら枕元にプレゼントが置かれていたんですが、特にこれが欲しいと言ったわけではないのに、子どもの頃は必ず欲しいものが届いていました。欲しいと言わなくてもちゃんと見てくれていたんだと思います。
 今は逆に僕が母の日にプレゼントを渡していますが、何が欲しいのか分からないので欲しいものを聞いています(笑)」

―――最後に、改めて公演への意気込みや読者へのメッセージをお願いします。

賀集「今の時代に合った作品だと思います。自分のことだけでなく、家族や周りにいる人たちのことを思える作品になっていると思うので、劇場にお越しいただき、温かい気持ちになっていただけたらと思います」

日向野「センシティブな内容だと最初に言いましたが、あまり固く考えずに観に来ていただければと思います。ワンシチュエーションコメディで気楽に楽しめる作品になると思いますし、その中で受け止めていただきたいメッセージを僕たちは全力でお届けしたいと思っています。1人で来ていただいても楽しめると思いますが、ぜひ家族や恋人、友人たちとお越しいただければと思います」

(取材・文&撮影:嶋田真己)

プロフィール

賀集利樹(かしゅう・としき)
1979年1月16日生まれ、兵庫県出身。『仮面ライダーアギト』の主演で俳優デビュー後、ドラマ『はぐれ刑事純情派』、NHK大河ドラマ『義経』、バラエティー「ラジかる!!」、「朝だ!生です旅サラダ」などに出演。さらに演劇ユニット「かしこみかしこみ」を立ち上げるなど、活躍の幅を広げている。

日向野 祥(ひがの・しょう)
1991年1月19日生まれ、神奈川県出身。舞台を中心に、映画・ドラマなど幅広く活躍。主な出演に、2.5次元ダンスライブ『SQ(スケア)』ステージ シリーズ、舞台『夜明けのうた』、『COLOR CROW』シリーズ、『殺人の告白』、『信長未満- 転生光秀が倒せない-』など。

公演情報

気晴らしBOYZ presents『GROOM&GROOM』

日:2024年7月3日(水)~7日(日)
場:中野 ザ・ポケット
料:S席8,000円 A席6,000円(全席指定・税込)
HP:https://groomandgroom.studio.site
問:気晴らしBOYZ
  mail:info.groomgroom@gmail.com

インタビューカテゴリの最新記事