シャンソン歌手が一堂に会するシャンソンの祭典『パリ祭』。そこにゲストとして宝塚の男役から舞台女優として活躍してきた鳳蘭が出演する。シャンソンとの出逢いは宝塚音楽学校時代だったと鳳は回想する。
「私が生まれ育ったのは須磨(兵庫県神戸市)のド田舎でね(笑)。宝塚に入ったものの踊りもピアノも日本舞踊も出来なくて、スターになんかならないと思っていました。ある時、私とそれほど実力が変わらない人がいい役を頂いたのを見て発憤して、学校での色々な音楽のレッスンを全部受けたんです。シャンソンは深緑夏代先生が担当で、レッスンで『別離』を明るく歌ったら、先生が『なんでそんな風に(明るく)歌うの?』とおっしゃって歌の意味を教えてくださいました。それで次に歌った時、もう歌い出しで感情が入って涙で歌えなくなっちゃって……。それを見ていた先生が『シャンソン、やりなさいって』とおっしゃった。それが出逢いです。ほら、今でも話しているだけで涙が出ちゃうんだから(笑)」
シャンソンで歌われる言葉一つひとつが鳳の心に刺さるという。
「感情をこめるというか、自然とこもってしまうんです。その感覚をお客さまにも感じてほしい。お客さまと自分とがひとつになる感覚を求めていますね。以前の舞台『ジプシー』(1991年)で歌っていたときに、お客さまとひとつになった感覚があり、それこそがエクスタシーだと思いました」
そんな鳳は今年のパリ祭で『ろくでなし』を歌う予定だ。
「いうまでもなく大先輩の越路吹雪さんのレパートリーで、私の中で越路さんと言えば『愛の讃歌』とこの曲ですね。でも越路さんにお目にかかったのは一度だけです。作詞の岩谷時子先生に連れて行ってもらいました。岩谷先生にはとても良くしていただきました、出会いはもちろん宝塚です。どういうわけだか先生が宝塚にいらっしゃる度にどこかでばったりお目にかかるの。その度に悩みを打ち明けたりしていました。岩谷先生に連れて行ってもらったのが越路さんの舞台で、『愛の讃歌』を聴いて号泣したんです(笑)」
シャンソンに魅せられた鳳だが、以前はなかなか『パリ祭』に参加できなかったという。
「舞台公演のスケジュールがはいるとなかなか抜け出せないんです。大好きなシャンソンを、もっともっと沢山の方にファンになっていただきたいですね」
(取材・文:渡部晋也)
プロフィール
鳳 蘭(おおとり・らん)
兵庫県出身。1964年に宝塚歌劇団に入団。『花のふるさと物語』初舞台を踏む。生来のエキゾチックな美貌と容姿で一際目立つ存在であり、1970年に星組トップスターに就任。『ベルサイユのばら Ⅲ』、『風と共に去りぬ』、『誰がために鐘は鳴る』などに出演。1979年8月に惜しまれながらも退団。その後はミュージカルを中心に数多くの舞台作品に出演し、日本のミュージカル界を代表するエンターテイナーとして活躍。1992年、『ジプシー』で文化庁芸術選奨文部大臣賞 受賞の他、紫綬褒章や旭日小綬章を受章している。また後進の指導にも力を注ぎ、鳳蘭レビューアカデミーの校長として多くのタカラジェンヌや舞台女優を輩出している。
公演情報
シャンソンの祭典『第62回パリ祭』
日:2024年7月11日(木)・12日(金)
場:TOKYO DOME CITY HALL
料:S席12,000円 A席8,000円 B席4,000円
学生席[25歳以下]1,000円
※学生席はジェイステージナビのみ取扱/要身分証明書提示
(全席指定・税込)
HP:http://www.paris-sai.com
問:ジェイステージナビ
tel.03-6672-2421(平日12:00〜18:00)