次々にアイデアが湧き、楽しみながらものづくりができている すべてにこだわりぬいた宝箱のような作品を、自信をもって届けたい

 谷佳樹と新朋子がタッグを組んで贈る、朗読劇『星今宵』。七夕をテーマにした感動のラブストーリーで、谷佳樹、中島礼貴、富田麻帆、飯塚麻結、澁木稜、今川碧海、生田輝、星波らが出演する。公演の構想や見どころについて、自身初のプロデュース・演出として携わる谷佳樹、脚本の若杉栞南、衣装の新朋子に話を聞いた。

―――まず、今回の企画に至った経緯からお聞かせください。

谷「去年僕がフリーになったタイミングで新さんとお仕事をさせていただきました。僕自身アパレルブランドをやっているということから始まり、様々なお話をしました。『楽しいね、もっといろんなことをやっていこうよ』と言っていただいて、新さんも色々やりたいことがあるという話を聞き、共感できる部分がたくさんありました。
 フリーになり、一緒にやっていける仲間を探している状況でそういった言葉をいただき、個展でご一緒させてもらった時に話していると、次々にアイデアが溢れてくる。さらに『脚本家で若杉栞南という人がいて』と紹介していただいたのがきっかけです」

―――今回は七夕をテーマにした物語だということです。このテーマはどなたのアイデアから決まったんでしょう。

谷「これもみんなで話しているうちに決まりました。僕は純愛物が好きなので、やりたかったんです。それを栞南さんにお伝えして、ふと“七夕”というワードを出したら、いいですねと言っていただけて」

若杉「純愛と七夕はすごく結びつきますし、星空と七夕というフィクションやファンタジーを書いてみたいという思いがあったんです。『織姫と彦星が7月7日にしか会えない』という誰もが知る七夕のストーリーを活かしつつ、『怠惰な2人を働かせるために父親が引き離した』というものとは違う、もう1つのおとぎ話があったらというものを書いています。
 実は織姫と彦星の星は14光年離れていて、星から星に移動するには14年半かかるそうなんです。本当は1年に1度すら会えないというのを前提に、2人の純愛を組み立てました。皆さんが知っている七夕の物語から2層ほど奥にいき、彼らが14年ごとにぶち当たる壁をどう乗り越えていくのか。なぜ彼らの運命がそうなったのかが解き明かされるお話です。その中で2人のドラマを見ていただけたらと思っています」

―――衣装についても打ち合わせは進んでいますか?

新「通常の朗読劇はあまり“The・衣装”というものがないイメージですが、今回はストーリーに合わせてデザインしました。衣装も含めて、お客様をファンタジーの世界に連れて行きたいなと思っています。ベースは皆さん同じですが、そこから着るキャストさんに似合わせようかなと。何回か観る方はその違いも楽しんでいただけると思います」

―――お互いに、クリエイターとしての印象や魅力に感じる部分を教えてください。

谷「新さんは今まで積み上げてきたものを持ちつつ、自分の世界をまたゼロから創るというタイミングでこのお話に乗ってくれました。みんなタイミングともの創りに対する熱量が素晴らしく合致している。誰一人妥協する気はないと感じられて、打ち合わせをする度に“良いものができる”という確信を得られます。エンタメにおける使命や熱意をみんなが持っているのが魅力ですね」

新「私は数年前、谷くんの衣装だけ担当したことがあるんです。その時の印象は“寡黙なイケメン”だったけど、改めて話してみたら発想や視点がすごく面白かった。
 私も新しいことが大好きで、元々はコレクションブランドのパタンナーだったこともあって何かを作り込むことが大好き。作り込む時に“こうあるべき・今まではこうだった”ということにとらわれたくない気持ちがあるんです。
 その考え方が谷くんと一緒で、そこが“一緒にやりたい”と思った1番の理由です。打ち合わせをしているとアイデアが無限に広がっていくんです。今回の朗読劇には収まりきらなくて、次の宝箱に詰めておこうという感じです。仲良くなったのは2023年なのに、長いこと同じ思いでもの創りをしている感覚になれるのが魅力ですね」

若杉「谷さんとは初めてご一緒させていただいたんですが、企画を出す段階から“純愛”という大きなテーマを掲げ、物語を書くときにどんな要素をピックアップしようかと話し合う中で本当に色々なアイデアをいただきました。1人で考えるよりは色々な人の意見があった方がいいということを実感できた打ち合わせが何度もありました。
 谷さんからは演者・プロデューサーという視点で色々な提案をいただけますし、新さんも惜しみなく意見を出してくれるので、『星今宵』という作品を全員で創っているとすごく感じます。皆さんにお届けする頃には“朗読劇”の枠に収まらないものになっているんじゃないかというワクワクがあります」

―――谷さんは2023年にフリーになり、約1年というタイミングでのプロデュース公演です。個展やアパレルなど様々な挑戦をされてきましたが、この1年を振り返ってみて、役者・表現者としての成長や変化についてどう感じますか?

谷「僕は“表現者”って何してもいいと思っています。自由だからこそ責任もあるし、今までは自分で制限をかけていたと感じました。事務所に所属していると『これはやらなくてもいい』と言われることもあったけど、フリーになって全部自分でやらなきゃとなったら、やりたいことやアイデアがどんどん出てきたんです。
 そのタイミングで一緒にやってくれる仲間がいることに気付けて幸せだし楽しいです。結果、役者としてもっと表現したいというサイクルができている。谷佳樹として生きられている、すごく濃い1年でした」

―――今回、ヴァイオリンの生演奏もあり、キャストは日替わり、50席のみということで、かなりプレミア感のある贅沢な公演だと思います。プロデュース兼キャスト、脚本、衣装というそれぞれの立場から、見どころや注目ポイントを教えてください。

谷「言ってしまえば全部です(笑)。正直、チケット料金は攻めていますが、50席の方しかその空間を味わえません。上質な脚本と生演奏とお芝居、衣装、映像を全身で浴びていただけるので、チケット代が安く感じられるくらいの満足感があると思います」

若杉「キャストさんは日替わりだし生演奏だし、全てが生です。全公演違う『星今宵』を感じていただけると思いますね。
 今回キャスト3名のみの空間で物語が運ばれるので、メンバーが違えば違う方向に伸びていくだろうということは脚本を書いていても感じます。『このキャストさんのこのシーンがすごく響いた』、『この日の自分にはこのセリフが刺さった』というのを見つけていただけたら嬉しいです」

新「私としては、全セクションが主役の朗読劇だと思っています。キャストはもちろん、このキャパシティでヴァイオリンの生演奏を聴けることって中々ない。同じく『このキャパでこの衣装を創るんだ』という魅せ方をしたいです。
 若杉が言ったように、その人の心情や状況で感じ方も変わると思います。全セクションが主役として魅せるつもりで臨める作品です。谷くんが言ったように自由にやる責任を背負って創れる作品だと思うので、観る人にはどこに注目してもらってもいいです。
 私たちは打ち合わせの時点ですごく感動してしまっているので、お客様にも自由に受け取って欲しいなと。お客様が感じたことが全てなので、お客様も含めてみんなが主役の作品になると思います」

―――今回のキャストさんは、どういった部分でオファーを決めたんでしょう。

谷「新さんと僕が『この人にやってほしい』という方々です。素朴に純粋に生きてもらえたらいいなというのがあって、男性陣はちょっと不器用・無骨なイメージがある方に声をかけました」

新「女性陣は私に任せていただきました。他の作品で関わってきた子達、それぞれ儚い織姫や強い織姫、芯のある織姫になりそうだなというストーリーが見える。組み合わせによって物語全体の印象も変わるので、全公演違うものになると思いますね」

―――若杉さんは今回2作目の朗読劇です。朗読劇を書くときの難しさ、意識したことなどはありますか。

若杉「ドラマや映像だとト書きや情景を豊富に書けるんですが、朗読劇はできるだけ物語を区切りたくないという思いがあります。
 今回は映像も『家のシーンで窓が出てくる』というものではなく、物語にリンクしたある種の効果のような形になっています。役者さんの声と音楽でどこまで皆さんに物語を届けられるのか。どこまでナレーションを入れるかなど、バランスを考えながら書いています」

―――谷さんと新さんは台本を読んでどう感じましたか?

谷「僕が想像していたものの何百倍もいい脚本を仕上げていただきました。僕が出した色々なアイデアをこんなに綺麗にまとめていただけるんだという感動がまずありました。伏線回収もあり、純愛の良さと物語としての良さも、いい塩梅でまとまっている。早くみんなが演じているのを見たいです」

新「いろんな年代の方に響くお話だと感じました。50席しかないのでチケット争奪戦になりそうですが、キャストファンの方はもちろん若い方から大人世代まで、たくさんの方に見てほしい脚本になったなと。簡単に愛というよりは、人間としての物語でもあるのかなと思いました」

―――ちなみに、新さんが「打ち合わせ中に出てきたアイデアを宝箱にストックしている」というお話をされていましたが、今後の構想もあるんでしょうか。

谷「あります」

新「違うことの打ち合わせで集まっているのに、やりたいことが溢れてくる。今後も続いていく、って言っちゃっていいのかな」

谷「いいです(笑)」

―――インタビューが掲載される頃にはチケットが完売してしまっているかもしれませんが、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

新「チケットを取れなかった方も作品に触れるチャンスを作りたいと思っています。劇場に来ていただく方には生の臨場感を味わっていただきたいですが、来られなかった方にも何か感じてほしいし伝えたい。チケットが取れなかった方も続報を待っていてほしいです」

谷「仕掛けだらけですよね。ずっと続く物語というか」

新「舞台の中身も外側も。なので、七夕みたいな気持ちで待っていてほしいです。『なぜこの時期に七夕なのか』という部分も含めて仕掛けだらけです」

若杉「色々な年代の人が集まって創っている物語です。七夕が来て自分の年齢が上がるたびに見え方が変わる作品になってくれたらいいと思うし、受け取ってくださる方の心に『星今宵』のスペースを作ってもらえたら嬉しいです。この作品から受け取るものが、自分の成長とともに変わっていくといいと思うので、色々な意味で楽しみにしていただけたら嬉しいです」

新「あとはハンカチをお忘れなくという感じです!(笑)」

(取材・文&撮影::吉田沙奈)

プロフィール

谷 佳樹(たに・よしき)
1987年6月8日生まれ、大阪府出身。2013年に演劇ユニット「ACTI☆N!」旗揚げ公演『婚活の達人』へ出演以降、舞台を中心に活動中。2016年から2018年にかけて、2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』ステージ【ツキステ。】シリーズで長月夜役を好演し、注目を集めた。2023年には自身初となるオリジナルブランド「taniCo.」の立ち上げ、初の個展「Co.re 2023 ~芯~」の開催など、活躍の場を広げている。代表作に、舞台『信長の野望・大志』シリーズ 明智光秀役、『文豪とアルケミスト』シリーズ 志賀直哉役、『DARKNESS HEELS ~THE LIVE~』ジャグラスジャグラー役など。

新 朋子(あたらし・ともこ)
1972年2月5日生まれ。舞台やライブ・MV・テレビ番組などの衣装デザイン・製作や、若手アーティストのマネジメントを手掛ける。2023年からは10年ぶりにフィギュアスケート選手のコスチューム製作を再開。衣装を手掛けた舞台作品に、狂音文奏楽『文豪メランコリー』、ミュージカル『ヘタリア』シリーズ、舞台『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(LIVE衣装)など。

若杉栞南(わかすぎ・かんな)
2000年7月21日生まれ。2022年、日本大学芸術学部在学中に『拝啓、奇妙なお隣さま』で第22回テレビ朝日新人シナリオ大賞 大賞を受賞。主な作品に、テレビ朝日土曜ナイトドラマ『ハレーションラブ』、朗読・短編映画『翠雨にあらわれて』、朗読劇『ours』など。

公演情報

朗読劇『星今宵』

日:2024年3月13日(水)~17日(日)
場:APOCシアター
料:前方席10,000円 一般席8,000円
  (全席指定・税込)
HP:https://www.hoshikoyoi.com
問:パラレルキングダム
  mail:info@hoshikoyoi.com

インタビューカテゴリの最新記事