松下優也&有澤樟太郎、同郷の2人がWキャストで名作に挑む 帝劇で上演ッ! ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険』

  インパクト満点のポーズや世界中のファンから愛される荒木飛呂彦の名作『ジョジョの奇妙な冒険』が、帝国劇場にて初のミュージカル化。原作は第9部まで展開しているが、今回は19世紀末のイギリスを舞台にした第1部「ファントムブラッド」より、主人公のジョナサン・ジョースター(通称“ジョジョ”)と、ジョースター家に養子として迎え入れられたディオ・ブランドーが、血塗られた伝説を持つ〈謎の石仮面〉に影響され数奇な運命をたどる物語が描かれる。人気声優・俳優の宮野真守が演じるディオと対峙するジョナサン役に選ばれたのは、松下優也と有澤樟太郎。奇しくも同郷だという2人がWキャストで挑む注目作。稽古を控えた2人の心境をインタビューした。

―――作品への意気込みはいかがですか?

松下「“初”のミュージカル化ということでやる気しかないです。自分は前例がないものが好きなので。何でも“初”っていいですよね」

有澤「知らない人がいないくらいの超名作……。原作ファンの方からしたら待望のミュージカル化ではないでしょうか。その中で自分がジョナサンを演じさせていただくということで、やる気は勿論、楽しみな気持ちでいっぱいです」

―――第1部のジョナサン・ジョースターの人物像をどう捉えていますか? ミュージカル版としてどう表現したいですか?

松下「80年代から連載が始まって今もなお続いている作品の始祖ということで、本当に壮大な世界観の中心人物だなと思いますが、見れば見るほど可愛く思えてきて、好きになっています。可愛いが突き抜けて格好いいというか。 ミュージカル化ということで、どう表現していくんだろうというのは僕らにとってもまだ謎な部分です。演出家の長谷川寧さん次第ですが、ただの肉弾戦のアクションだけにはならないだろうなと思っています……。‟波紋“の表し方など想像を超えて来るのではないかと。指を少し動かすだけで凄い‟波紋“が現れたりして(笑)。ぜひ劇場で観るのを楽しみにしていただけたら」

有澤「“ジョジョ”というとアクション、第3部からは“スタンド”に注目が集まりますが、第1部はジョナサン・ジョースターの突き抜けた正義感、真っ直ぐさ、そこから滲み出る人間らしさがフィーチャーされた物語だと思います。帝国劇場という歴史ある劇場で、周りの人に助けていただきながら、自分がどう演じることができるか楽しみです。
 長谷川さんは『死刑執行中脱獄進行中』で一度、荒木飛呂彦先生の作品を演出されている信頼感があるし、クリエイター陣の方々の“ジョジョ”愛が溢れているので、その中でしっかり自分の役割を全うしたいと思います」

―――ジョナサンの役作りにあたって“紳士的なふるまい”はどう学んでいこうと思っていますか?

松下「1800年代後半を題材にした舞台って比較的多いですよね。何なら僕はジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)と出くわすのが、これで3回目なんですよ(笑)。そういう意味で世界観にはやりづらさを感じていないんですけど、有澤くんが言っていたように、とにかく他作品よりも突き抜けているという点では尋常じゃないので、そこをどう表現していくか、自分の中で未知な部分はあります。表面的に紳士的に振る舞えばいいというわけではないと思うので……」

有澤「父のジョースター卿を演じる別所哲也さんや、それこそ何度もこういった年代の作品に出演されている松下さんたちから学んでいけたらと思っています。ジョナサンの内面の魅力をどれだけお伝えできるか、台本を読みながら日々考えています」

―――Wキャストで演じる楽しさや醍醐味は?

松下「Wキャストの経験はそこまで多いわけではないのですが、初めてWキャストで出演することになった作品の時は正直、どうなるのかなって不安だったんです。仲良くできるのか、ライバルになってしまうのか。でも今となっては、Wキャストって心強さしかない。1人でやるよりも少なくとも1.5倍以上はよくなると思います。自分が見逃している部分を気づかせてもらえたり、自分が自然にやっていることが相手にとってはヒントになったり……。
 僕らは役を与えていただいて、その役に対するプロフェッショナルになれるように努力しますが、単純に自分の役のプロフェッショナルが2人いるということ。それでいて、同じことをやっていても絶対に全く同じにはならないので、他のキャストさんとそれぞれのジョナサン・ジョースターとの化学反応も、お客さまにも楽しんでもらえると思います」

有澤「僕は1人だといっぱいいっぱいになりやすくて、Wキャストだと自分の役を客観的に見ることができるのでありがたいです。松下さんは僕と同じ兵庫県出身で、同郷の先輩とこうしてご一緒できることがとても頼もしいです」

松下「兵庫公演あるしね!」

有澤「はい! 偶然にも大千穐楽が兵庫なので、嬉しく思います」

―――お互いの印象はいかがですか?

松下「会う前の印象は“デカい人”、会って思ったのは“デカい人”(笑)。あと凄く爽やかだよね。僕がこの年齢のときは他人を信じていなかったので(笑)。こんな爽やかさはなかったと思います。デカくて爽やか、まさにジョナサンです」

有澤「僕は同郷出身の先輩として存じていたので、お会いできることをずっと熱望していました。実は先日出演した別の作品の稽古場が同じ建物内だったんですが、逆に今ここでバッタリ会うにはもったいないな、ちゃんと“ジョジョ”の現場で会いたいなってドキドキしていました。カリスマ性に溢れていて、真ん中に立つのが似合う方だなと思っています」

松下「カリスマ性しかないんですよ(笑)」

有澤「(笑)。松下さんが言うと全く鼻につく感じがないんです!」

―――帝国劇場で主演を演じることについて、いかがですか? 松下さんは初の帝国劇場で、さらに主演ということになりますが……。

松下「ワクワクしています。ついに来たか!という気持ちです。観客としては何度も通っている劇場ですが、ジョナサンとしてステージ上から見える景色が楽しみです。ただ考えすぎないようにもしています。歴史ある素晴らしい劇場ですが、どんな劇場であれ僕らのやることは変わらないので、気張り過ぎずいつも通りに舞台に立てればと思います」

―――有澤さんは『キングダム』で仲のいい俳優さんたちが座長として立っている姿も見ていましたが、いかがでしょう?

有澤「やっぱり帝国劇場って特別な劇場なんだなと感じました。カーテンコールで挨拶をしている座長の後ろ姿を見て、僕らとは少し違う世界も見えているのだろうなと思っていたので、自分がそこに立ったらどんな景色が見られるのか楽しみです。歴史ある劇場に、建替え前に主演として立たせていただけるというのは本当にありがたいと思っていて……。親にも観に来てほしいなと思います(笑)」

―――座長として考えていることは?

松下「作品を引っ張るのは大前提なので……。差し入れのことばかり考えちゃいます(笑)。何回くらい差し入れしたらいいんだ? お弁当は何を入れようかな、主演に相応しいお弁当って何だ?って」

有澤「僕は楽屋がどんな感じなのか気になっています」

松下「主演になったからって、そんなに楽屋は変わらないんじゃない?(笑)」

有澤「テレビで『帝国劇場の主演の楽屋に密着!』みたいなのを観たことがあって……(笑)。神聖な場所みたいな印象があります」

松下「じゃあ誰かが気軽に入ってきたら怒る?」

有澤「いやいや全然! むしろウェルカムです(笑)。今回のカンパニーには役者の方だけではなくて、バンドの方やラッパーの方など多ジャンルなみなさんがいるのですが、それが一堂に会するのがこの作品には凄く合っているなと思います。座長という立場ではありますが、色々なことを吸収して学ばせていただけたらと思います」

―――“ジョジョ”に出演することが決まった時の反響は?

有澤「ミュージカル『のだめカンタービレ』でご一緒したなだぎ武さんが“ジョジョ”の大ファンで、稽古場に“石仮面”のTシャツとか、どこで買ってきたんだろうっていうような“ジョジョ”のTシャツを着てきていたんです! “のだめ“の本番が始まったあたりで、僕がジョナサン役だと知ってくれたみたいで、『樟太郎! お前ジョナサンやるらしいな! 凄いな、めっちゃ嬉しいわ~!』って話しかけてくださって……。千穐楽の日に大事にされていたジョナサンのフィギュアをくださったんです。そんななだぎさんをはじめ、やっぱり熱烈なファンの方が多い作品だなと感じています。これまでの出演作の中でも反響はダントツでしたね」

松下「僕は友達の友達が観に行きたいって言っているんだけど……って連絡が来ました。友達の友達って知らない人やん!っていう(笑)。普段から応援してくれている友達だけでなく、そんな遠い関係性のところからも連絡が来るんだ!?ってビックリしました。“ジョジョ”のファンがどれだけたくさんいて、どれだけ根強い人気がある作品なのかということが伺えましたね」

―――ジョナサン・ジョースターとの共通点は? また、改めて作品の魅力は?

松下「正義感に溢れていて、ピュアで真面目で……似ていないところを探す方が難しいですね(笑)。作品の魅力は第1部『ファントムブラッド』に関して言うと“表裏一体”であること。ジョナサンの存在がないと、ディオの存在も成立しない、逆もまた然りですよね。同じような台詞がクライマックスに出てきますけど、そこが凄く魅力的だなと思いましたし、生身の人間が演じるからこそ、ディオが“ただの敵ではない”というところは大切にしたいです」

有澤「僕は20代前半の頃に独特のポーズの立ち姿が似合いそうって言われたのがきっかけで初めて作品を読みました。その頃は今よりもっと体型がガリガリだったので、そんなに似てるかな!?と思ったのですが、こうして巡り巡ってジョナサン役をやらせていただけることになったので、寄せていきたいなと思っています。台詞回しや漫画のコマ使いが本当に特徴的というかキャッチーで面白くて、コアなファンの方々は細かいところまで覚えていると思うので、そういった原作の魅力を舞台で届けられたらと思います」

―――有澤さんは性格面でジョナサンと似ているところはありますか?

有澤「えー……何だろう……」

松下「やっぱり、正義感に溢れていて、ピュアで真面目なところじゃないですか?」

有澤「(笑)。そうですかね?」

松下「我々2人とも、そこを基準に選ばれたと思うので(笑)」

―――ディオ・ブランドー役の宮野真守さんの印象は?

松下「10年以上前ですが、僕がとあるアニメの主題歌を担当させていただいた時に、宮野さんが声優として出演されていて、イベントで1度だけご一緒はしています。印象としては面白い方だなって……僕の“ツボ”です(笑)。ディオをどういう風に表現されるのか凄く楽しみなんですけど、慣れないと笑っちゃいそうです」

有澤「僕は出演させていただいていたドラマの劇場版のゲストとして、宮野さんが出演してくださって。一緒にお芝居をするシーンはなかったのですがご挨拶だけさせていただきました。声優としてのイメージが強かったんですが、俳優としてもやっぱり凄くて、自由だけれど枠を越えすぎないアドリブで、こんなに引き出しがある人がいるんだ……って。僕もたくさん“ツボ”ってしまいました。シングルキャストでディオを演じるって相当タフですよね……!」

―――ビジュアル撮影のポージング指導から関わっているという演出の長谷川寧さんですが、どんなコミュニケーションをとっていますか?

松下「カメラの横に立って細かくポージング指導をつけてくださっていました。稽古はこれからですが、今回の舞台に向けてのワークショップがすでに始まっています」

有澤「ゾンビになったり、水になったり……。箱の中に入って、自分が水になったつもりで全部の枠を触ってください、みたいな。脳を使ったワークショップをたくさん経験して、2時間くらいで足がガクガクになってしまいました……」

松下「演出家さんなので当然なのかもしれませんが、(長谷川)寧さんは凄くアート脳なんですよね。自分も幼少期からダンスをやってはいたのですが、動きに対するアプローチが入口から違うので、そこが凄く興味深かったです。勝手な印象として初めは打ち解けられるか不安だったんですけど、凄く気さくで、ディスカッションしながら作品作りができそうなので楽しみです」

―――台本は現在、準備稿とのことですが、ミュージカル版ならではの面白さや魅力は?

松下「ひとつの舞台として一体どう表現するのだろうかと思っていたのですが、想像以上にまとまっていました。そう思わない?」

有澤「思います。余すことなく魅力が伝わっているかと思います」

松下「その反面、これは……(演じる側は)大変だと思いましたね(笑)」

有澤「まだ1幕!っていうボリューム感でした」

松下「ただ舞台化というだけではなく、ミュージカルというのも楽しみな部分です」

有澤「原作を知らない初見の方も楽しめる内容になっているかと思いますし、原作ファンの方は、ミュージカルなので『この台詞が歌になるんだ!』という楽しみ方も出来るかと思います。
 あとは普段から舞台のお仕事をしている方だけでなく、ファッションデザイナーなど、舞台業界以外で活躍している方も関わってくださっていて、セット案から衣裳まで、クリエイター陣のこだわりが凄いですね」

松下「船とかどうするんだろう?って気になるよね。台本に全部が書かれているわけではないので……。書いてあるト書きはどう表現するんだ……?っていう部分もまだまだたくさんありますよ。落ちながら戦っているところとか、帝劇といえど寸法が足りなくないか?って(笑)」

有澤「火が出てくるシーンも多いので、どうなるか楽しみですね。寧さんの演出だから、きっとそこも納得させちゃうのかもしれませんが!」

―――他ならぬ『ジョジョ』をミュージカル化するにあたって、特に意識していることは?

有澤「メインビジュアルもガチガチに原作に寄せているわけではなく、ファンタジーだけれど生身の人間が見せるファンタジーとして表現されているなと思います。寧さんの考えるテーマ性が伝わるような、納得させられるものに仕上げたいと思います」

松下「現実離れしている部分を、生身の人間が表現するので、千穐楽にぶっ倒れるペース配分で頑張りたいです。漫画・アニメも観た上で、大前提として参考にはするし寄せていく部分もあると思いますが、ただ寄せるのではなくて、自然と寄るように作っていきたいです。漫画のコマとコマの間、アニメでは映っていない部分を、よりシームレスに表現できるのがミュージカル版としての魅力になるのではないかと思います。楽しみにしていてください」

(取材・文:通崎千穂 撮影:岩田えり)

※2月号(2024年1月発行)では、別カットを使用したインタビューを掲載予定! ぜひ本誌も手にとってお楽しみください。

プロフィール

松下優也(まつした・ゆうや)
1990年5月24日生まれ、兵庫県出身。主な出演作は、新感線☆ RS『メタルマクベス』disc1、舞台『黒白珠』、『パンドラの鐘』、ミュージカル『サンセット大通り』、『ハウ・トゥ・サクシード』、『ジャック・ザ・リッパー』、『るろうに剣心 京都編』、『バイ・バイ・バーディー』、『太平洋序曲』、NHK 連続ドラマ小説『べっぴんさん』、ドラマ『アシガール』、『インハンド』など。2020年からは「YOUYA」名義での音楽活動を開始し、音楽アーティストとしても精力的に活動している。

有澤樟太郎(ありさわ・しょうたろう)
1995年生まれ、兵庫県出身。2015年より俳優活動開始。翌年出演したミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、和泉守兼定役で人気を博し、以後、舞台、海外ミュージカルなどを中心に幅広く活躍中。近年の主な出演作はミュージカル『ジャージー・ボーイズ』、舞台『キングダム』、ミュージカル『のだめカンタービレ』など。

公演情報

ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』

日:2024年2月6日(火)~28日(水)
場:帝国劇場
料金:【平日】
   S席16,000円 A席10,000円 B席5,000円
   【土日祝・千穐楽】
   S席17,000円 A席11,000円 B席6,000円
   (全席指定・税込)
HP:https://www.tohostage.com/jojo/index.html
問:東宝テレザーブ tel.03-3201-7777

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