クリスマス前日。淡々とグラスを傾けながらポーカーに興じる5人の男たち。圧倒的な台詞の応酬で紡がれていくのが、アイルランド演劇界を代表する劇作家 コナー・マクファーソンの出世作『海をゆく者』。日本では14年前の2009年に初演され、2014年に再演。そして今年再々演を迎えるが、そこに挑むのは小日向文世、平田満、浅野和之、大谷亮介という古希を目前にした俳優たちだ。その中から小日向が作品について語ってくれた。
「稽古中に平田さんが古希を迎えます。次が僕で、浅野くん、大谷くんと続くんです。私が劇団に入った頃には、自分の身近に70歳の役者さんは1人もいませんでした。70代の仲間と舞台に立つイメージがないので、実感が全くありません」
同世代であり、全員が小劇場ブームの中で活躍してきた。そんなメンバーでこの作品に取り組むことができる喜びをこう話す。
「(再々演の話を聞いて)嬉しかったんです。こんな古希目前のメンバーで同じ舞台に立てるわけですから。でも、再演の時に話してあったのですが、もしも再び上演の機会があっても、1日に2回公演を組むのはやめてほしいとお願いしたんです。大変ですから。それなのに今回しっかり2回公演が組まれているし(笑)」
そして演出の栗山民也もまた、小日向たちと同世代。初演から作品に関わる仲間といえるだろう。
「栗山さんは圧倒的に脚本を読み込んで、プランがしっかりできているので迷いなく指示を与えてくれます。だから僕たちも全部委ねていますし、安心感がありますね」
今回、リチャード役として吉田鋼太郎に替わり初参加となるのが高橋克実。小日向たちの少し年下だが、ほぼ同世代といってもいい年齢だろう。
「なにしろ吉田くんと見た目からして正反対ですから(笑)。それだけに新鮮で新しいリチャードに出会えるのではないでしょうか。でもあの役は冒頭からテンション高く話し続けるから、もう大変だと思います。まぁ僕らは3回目ですから、きっと楽しく本番を迎えられると思います」
初演から14年を経て、リアルに歳を重ねてきてきた彼らが演じるからこそ生まれるリアリズムもまた、この作品の味わいの1つになるだろう。
「みんな芝居を始めてから40数年。売れない時期も含めて、 同じ時代を歩いてきた信頼感があるメンバーによる舞台は、あまりないと思いますよ」
(取材・文:渡部晋也 撮影:山本一人(平賀スクエア))
プロフィール
小日向文世(こひなた・ふみよ)
北海道出身。東京写真専門学校を卒業後、1977年にオンシアター自由劇場に入団。1996年の解散まで『上海バンスキング』、『もっと泣いてよ、フラッパー』、『クスコ・愛の叛乱』など、数々の舞台で活躍。解散後数年は仕事も少なく苦労するが、2001年、三谷幸喜作・演出のミュージカル『オケピ!』でプロデューサーの目に留まり、映像作品へ一気に活動の場を広げる。現在はドラマ・映画に欠かせない俳優として数多くの作品に出演。舞台へも継続的に出演しており、近作では舞台『ART』、『アンナ・カレーニナ』などに出演。
公演情報
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『海をゆく者』 The seafarer by Conor McPherson
日:2023年12月7日(木)~27日(水)
場:PARCO劇場
料:10,000円
※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://stage.parco.jp/program/seafarer2023
問:【チケットお問合せ窓口】
サンライズプロモーション東京
tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)
【公演お問合せ窓口】
パルコステージ tel.03-3477-5858