極上のポジティブを届ける夏の風物詩! エンターテインメント風集団 秘密兵器、下北沢進出20周年の公演テーマは“家族愛”

 2001年旗揚げから【MISSION IN POSITIVE】を掲げ、公演を続けるエンターテインメント風集団 秘密兵器が、今年の夏も下北沢にやってくる! 今回は『「MoM」~親の顔が見たい~』というタイトルで、まさに親世代から子世代まで、年齢層の幅広いキャストが揃った。主宰の岩田有弘、看板スターの新實啓介、そして客演で出演する拓郎、工藤菫に話を聞いた。

―――8月の下北沢といえば“秘密兵器”、ということで、今回はどのような作品を上演されるのでしょうか。

岩田「そうですね、ありがたいことに下北沢の夏の風物詩として毎年公演させていただいてきましたが、実は僕ら“秘密兵器”が下北沢に進出して、今年で20周年になるんです。20年もあれば僕らの人生も変わってきて、メンバーの脱退もあれば、育児休業もあれば、好きなことだけをやっていけるわけでもなく……それでも継続は力なりで、ここまで続けてきました。
 そんな中で、20年間ずっと一緒にやってきたメンバーの新實啓介について、ふとどういう家庭環境で育ったのか、どういう経緯でこの唯一無二のファンタジスタが生まれたのか、ルーツを知らないなと思ったんです」

新實「はっはっは! いや、照れますねぇ。恐縮です!!」

拓郎・工藤「(笑)」

岩田「“秘密兵器”はその名の通り、それぞれのキャストが自分の武器を持って戦っていこう!という団体なのですが、この通り、新實くんは本当に愉快な人なんですよ(笑)。
 初期からいるメンバーは少なくなってきた中、だからこそ20周年を目一杯盛り上げてやろう!という逆転の発想から、この明るくて面白い新實くんのルーツをたどるようなストーリーを上演することにしました」

新實「焼き鳥屋で飲みながら、僕の半生を語りましたよ(笑)」

岩田「色々な話を聞きましたが、新實くんがこういう明るい人間になったのは、生来持ち合わせた性質もあるのでしょうけど、お母様が凄く明るい方だそうで。家庭環境ってやっぱり人格形成にすごく影響があるんだなって。
 加えて僕ら“秘密兵器”のメンバーも40代、50代になってきて、子供がいる人もいる。親の最期を意識する。子供を通して自分の親をより意識する年代で、子から自身の親のありがたみを感じられることがより沢山あるだろう……。そういうメッセージが込められた作品に仕上がっています」

―――新實さんの半生がテーマとのことですが、ドキュメンタリー、あるいはノンフィクション作品というのとも違うのでしょうか?

岩田「違います! あくまでフィクションです。ただ新實くんから聞いたエピソードに刺激を受けた作品ではあって、実際に新實くんには娘さんがいるのですが、娘とのやり取りを通じて、自分の母のことを思い出すなど、『家族って繋がっているんだな』というのを感じられるアットホームな作品になっています。工藤菫さんには新實くんの娘役を演じてもらいます」

新實「よろしくお願いします!!!」

工藤「こちらこそよろしくお願いします……!」

岩田「熱量に引いちゃってるじゃない(笑)。『MoM』というタイトルは勿論“母”という意味なのですが、ひっくり返すと『WoW』になるので……」

新實「Wow‼(勢いよく)」

岩田・拓郎・工藤「(笑)」

岩田「実はそんなところもシャレがきいているんです。明るく楽しい作品になると思います。
 あと、“秘密兵器”では、本編の前に3本ほど、短編喜劇を上演します。本編とはちょっと違った特殊な環境下で、本編に登場する人物としてショートストーリーを演じるというもので……」

―――本編の前にそれぞれのキャラクターがどんなパーソナリティを持っているのかが垣間見えるのですね。

岩田「そうなんです」

新實「本編のストーリーはまだ2~3割しか知らない状態で、役名と役柄だけを与えられて、まずは短編の稽古が始まっています。これが“秘密兵器”スタイルなんです!」

岩田「例えば、拓郎くんは僕の息子の役なのですが、『告白』という特別なシチュエーションに置かれたらどうなるか、という笑けてくるお芝居をやってもらいます」

―――短編芝居を通じて、役に対する解像度が高まった状態で本編の稽古に入ることができるのですね。

岩田「そうなんです! 役者ってそれぞれ自分が演じるキャラクターを担って舞台上に立ちますが、台本上にない部分、舞台上にいない時間も含めると、本来は演じているキャラクターたちってもっと多面的なはずだと思っていて。
 例えば親といる時の自分と、友達といる時の自分って違うじゃないですか。色々なシチュエーションを役として経験することで、それを掴んでもらいたいなと思ってやっています」

―――“秘密兵器”ならではの特殊な作品だなと思いますが、拓郎さんと工藤さんは“秘密兵器”の稽古を経験してみて、いかがですか?

拓郎「“秘密兵器”の皆さんは勿論、客演で集まった皆さんも含めて、温かいカンパニーの皆さんだな~!というのをまず感じています。僕はまだ舞台経験は浅いのですが、今、稽古している短編の1シーン1シーンにも、なんというか……人間味? ぬくもりを感じます」

岩田「僕がすごく細かい演出をしても芝居に血を通わせてくれるんですよね」

拓郎「それです! 血が通っている! 演じる役と僕とでは実際の家族構成は違うのですが、それでも何故かどこか懐かしいような、体験したことがあるような感覚になりながらお芝居をしています」

工藤「私は3月までアイドル活動をしていて、映像作品でのお芝居の方が多かったので、舞台でのお芝居は高校生ぶりくらいになります。岩田さんが本当に些細なところまで相談に乗って、演出をつけてくださるので、それを自分の中でどう落とし込もうかを日々考えながら稽古に臨んでいますね」

新實「自分でちゃんと落とし込もう、消化しようって考えられるのが凄いよね」

岩田「本当にしっかりされているんですよ」

工藤「岩田さんは私の卒業ライブも観に来てくださっていて、私という人間と向き合った上で演出をしてくださるので、それがとても嬉しくて。人を分析するのがすごく上手いですよね……! 私自身も分かっていない部分を鋭く指摘していただくことも多々あります」

―――キャスティングも岩田さんがされているんですか?

岩田「そうですね。“秘密兵器”メンバーの誰をどう生かした構成にするか、どういう作品の方向性にするかを決めて、それに合わせてどんなキャストが必要かを考えてオファーさせていただいています。
 今作では新實くんをベースにしつつ、拓郎くん、工藤さんには物語の主軸となる子世代の役として出演していただくことになりました。芝居経験だけではなくて、人間性を大事にしているつもりで、おふたりのいいところを存分に引き出せる素敵な脚本をメンバーの五十嵐(和弘)くんに書いてもらっているので、ファンの皆様もぜひ楽しみにしていただけたら!」

―――今回の物語のモチーフとなった新實さんは、実際に娘さんがいらっしゃるとのことですが……。

新實「そうなんです。2人の娘がいて、5歳と9歳です!」

―――そうなると、工藤さんが娘役ということで少しご自身の未来を見ているような感覚でしょうか?

新實「今は正直まだそこまでの実感はないのですが、稽古を重ねていくうちにそういう気持ちにもなってしまうかもしれませんね。切なくなるようなシーンもあるのですが、“秘密兵器”のテーマは“MISSION IN POSITIVE”なので、物凄くポジティブで、エネルギーに満ちあふれた舞台をいつもお届けしているんです! 今作も沢山のハッピーとパワーをお届けできると思いますので、ぜひ楽しみにしていただけたら!」

工藤「すごいパワーです。負けないように頑張らないといけないと思っています(笑)」

新實「五十嵐さんが愛のある脚本を書いてくれて、岩田さんも愛のある演出をつけてくれるので……。そしてとにかく皆さん人間が素晴らしいんです! きっと全キャスト好きになっていただけると思っています。それも“秘密兵器”の良さです! ……想像しただけで僕は泣けて……(目頭を押さえ涙)」

岩田・拓郎・工藤「早い早い(笑)!」

新實「そうですか!? あとはそれぞれ色々な人生を経験してきたキャストたちが、色々な背景を持つキャラクターを演じるのも見所です」

―――目力が強いですね(笑)。色々な人生を経験してきた、とのことで、今回のルーツにもなった新實さんのお母様とのエピソードをお聞かせいただけますか?

岩田「イメージ通りといえばイメージ通りだったんですが……ハイカラなお母様ですよ。髪の毛が紫だったんでしょ?」

新實「そう、紫だったり緑だったり。僕にとってはそれが普通だから、それが奇抜だって気づいたのはだいぶ後でしたけどね。
 僕は演劇をやる前に、就職して転勤で東京に出てきたのですが、長期休暇で地元の名古屋に帰る時に、地元が近い会社の先輩が車を出してくれて、出迎えてくれた母を見て『おめぇの母ちゃん凄ぇな』って言われました(笑)」

岩田「あと僕が話を聞いた印象では、すごく平等な人だなって感じましたね。息子にも、息子の友達にも、悪いことをしたら同じように怒る」

新實「“秘密兵器”の一員でもある三浦文太郎は僕の中学の同級生で、毎朝僕の家まで迎えに来てくれてたんですけど、彼曰く、同級生のヤンキー女子に『あんたそんな短いスカート履いて!』とか『こんな時間にこんなところにいちゃいかん! 学校行かなあかんよ!』とか平気で話しかけていたらしいんですよね。僕は知らなかったんですが……。世話焼きな人だったんですよね」

岩田「そういう優しさや平等さは新實くんにも受け継がれているのよ」

新實「そうかなぁ? そうだと嬉しいね」

―――ちなみに工藤さん、拓郎さん、岩田さんの親御さんはどのような方ですか?

工藤『私の両親は勉強ができなくても、テストで悪い点を採っても怒られることはなかったのですが、好きなこと、自分がやるって決めたことは最後までやり通しなさいっていうタイプでした」

新實「いい親御さんだね!」

―――10代の頃からアイドル活動をされていた工藤さんですが、ご家族は特に反対することはなかったのでしょうか?

工藤「なかったです! 家族みんなで応援してくれました。特に母はなかなか豪快な人で……高校生になった時に実家の兵庫から母と2人で東京に出てきたんですが、私から言い出したわけではなくて母の方から『行っちゃおうぜ!』って言い出した感じで、上京してきちゃいました。今思えば、母も東京に行きたかったんだと思います(笑)。
 でもそれがなかったら、芸能活動も続けられなかったかもしれないし、今、私はここにいなかったかもしれないので、とても感謝しています」

拓郎「僕の両親も工藤さんのご両親と似ているタイプかもしれないです。僕もテストの点数が悪くて怒られたりはすることはなかったのですが、ただ何事も“中途半端”だと怒られました。全力で勉強してもいい点が取れなければ、それはもう仕方ない、という感じで。
 小さい頃から『子供なんだから』『学生なんだから』といった肩書きで褒められたり怒られたりすることはなくて、両親ともに1人の人間として育ててくれたなと思っています。『ありがとう』と『ごめんなさい』、この2つの言葉が1番大事だって教わりました。

工藤「あ、我が家もです!!」

岩田「ヤンチャして怒られることとかはあったの?」

拓郎「中学生くらいまでは結構ありました(笑)。小さいことで怒るのは母で、ここぞという時にだけ父が怒る……という感じで、母は身長が171cmあって、物理的にも強かったです(笑)」

新實「モデルみたいなお母様だね!!」

―――岩田さんはいかがですか?

岩田『僕の母はクールでしたね。基本的には自分の力で頑張りなさい、っていう感じでしたが、本当に困っている時は力になってくれて。
 僕の前では僕の活動にも興味がなさそうなフリをするんですが、僕のいないところでは結構チェックしてくれたり、褒めてくれていたり、泣いてくれたりしているらしいです。心の中には熱い愛を持っている人です」

―――ありがとうございます。それぞれのルーツにまつわる素敵なお話が沢山聞けました。
 それでは、最後に観に来てくださるお客様に一言ずつお願いします!

工藤「“秘密兵器”の舞台にはアップアップガールズ(仮)の先輩方も過去に出演していて、今回私の出演が解禁された時にも『すーちゃん良かったね!』『岩田さんにお世話になってね!』と声をかけてくださったり、“秘密兵器”のTシャツを着て現場にきてくださったり、すごく楽しみにしてくださって、凄く嬉しかったです。
 アイドルを卒業してから、本格的な舞台出演は初になるので、来てくださるファンの方々は、演じる役を通じて、初めて観る工藤菫の姿を楽しみにしてくれればと思います。私は季節の中で夏が1番大好きなので、下北沢で一緒に熱い夏が過ごしましょう!」

拓郎「僕は出演中のtvk『猫のひたいほどワイド』と岩田さんがやられている“銀岩塩”のコラボで行われた朗読劇がご縁で今回、“秘密兵器”にも出演させていただけることにもなりました。そのおかげで新實さんたちともご一緒することができ、こうして新しいご縁が繋がっていくことは本当にありがたいことだと日々感じています。
 初対面のビジュアル撮影の時から笑いが絶えない、本当に温かい一座で……初めは舞台経験の少なさから不安の方が最初は大きかったですが、今は本番がとても楽しみになっています。家族をテーマにした作品ということで、ご覧いただいた皆様もどこか懐かしいような、優しい気持ちになっていただける作品になると思いますので、ぜひ温かい気持ちを共有できたらと思います」

新實「とにかくより多くの方に観ていただきたいという思いがあります。この記事を読んでくださった貴方はもう運命だと思って、下北沢に来てください(笑)! 絶対に後悔させない作品になります。
 本当は僕たち、ネガティブな人間なのですが、あえて“MISSION IN POSITIVE”という指針を掲げて公演をしています。下北沢で公演し始めて20周年ということですが、以前、飛び込みで劇場に来て僕らの芝居を観てくださった方が、公演アンケートに『自殺を考えていましたが辞めます』と書いてくださったことがあって……そのくらい、僕らの芝居って“ポジティブ”なんですよ。
 『ザ・ドリフターズ』のような短編喜劇スタイルから始まって、『日曜劇場』のような本編が始まり、『ザ・ベストテン』か『俺たちひょうきん族』のようなエンディングが待っているという……あっという間の2時間強です。老若男女誰もが楽しめるエンターテインメントをお届けしますので、ぜひお待ちしています!

―――Z世代のお2人が終盤ちょっとポカンとしていましたが(笑)。

拓郎・工藤「(笑)」

岩田「分からないよね(笑)」

新實「そうだよね!! 老若男女と言いつつ、昭和ネタで例えちゃった(笑)。要はお茶の間で見ていたTV番組の面白さが舞台でも沢山楽しめるということです!」

岩田「そうだね。言いたいことはほとんど3人が言ってくれましたが、観に来てくださるお客様は気軽に見られるTVとは違って、それなりのお金を払ってチケットを買って観に来てくださるわけなので、限られた時間をいかにして楽しんでもらうか、きちんと考えながら稽古をしていかないといけないなとは思うんです。
 “秘密兵器”らしさとしては、エンディングのパフォーマンスも見所です。笑って、泣いて、心から楽しめる作品を観ていただいた後で、あえて余韻をぶっ壊していくという(笑)。そんなところも含めて“エンターテインメント風集団 秘密兵器”という中毒性の高い僕らの芸風になります。
 今回は少し例年より公演数が少なめで、全部で8ステになりますが、ぜひ2度3度と楽しんでいただけたら嬉しいです。ぜひ濃密な夏を一緒に過ごしましょう!」

(取材・文&撮影:通崎千穂(SrotaStage))

プロフィール

岩田有弘(いわた・ありひろ)
1979年10月30日生まれ、東京都出身。エンターテインメント風集団 秘密兵器の主宰をはじめ、舞台プロデュースユニット 銀岩塩の代表、劇団大人の麦茶の劇団員でもある。これまで下北沢 本多グループで500ステージ以上の舞台出演と制作をおこない、「下北沢小劇場の申し子」と異名を得る。近年の主な出演作品に、TVドラマ『神ノ牙-JINGA-』、YouTube初特撮ドラマ『華衛士F8ABA6ジサリス』、大人の麦茶 第30杯目公演『I was today years old.』など。

新實啓介(にいみ・けいすけ)
1974年7月9日生まれ、愛知県出身。TVドラマ、映画、CMなどに出演する傍ら、「“秘密兵器”の看板スター」として同劇団で活動。歴史上の英雄達が魔界という異空間で戦うハイブリットエンターテインメント、ファイティングミュージカル『魔界』安倍晴明役としても知られる。

拓郎(たくろう)
1999年1月1日生まれ、岡山県出身。身長180cm、端正な顔立ちで今後が期待される若手タレント。tvk『猫のひたいほどワイド』猫の手も借り隊として活躍中。

工藤 菫(くどう・すみれ)
2001年1月15日生まれ、兵庫県出身。アップアップガールズ(仮)のメンバーとして活躍し、2023年3月にグループを卒業。主な出演作品に、ギュウ農シネマ『IDOL NEVER DiES』、ABEMA BOATRACE CRUISE『クロちゃんとクルーちゃん』など。

公演情報

エンターテインメント風集団 秘密兵器
MISSION IN POSITIVE 29th Attack
『「MoM」 ~親の顔が見たい~

日:2023年8月9日(水)〜13日(日)
場:下北沢 「劇」小劇場
料:前売4,500円 当日5,000円
  学割2,500円 ※要学生証提示
  (全席自由・税込)
HP:https://www.himitsuheiki.com
問:エンターテインメント風集団 秘密兵器
  mail:himitsuheiki.swp@gmail.com

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