朗読劇ではなく、朗「毒」劇!DVD化もしません! 脚本・磯貝龍乎×演出・古谷大和が、朗読劇の概念を壊す⁉︎

「どこかで聞いたことある……これって、もしかしてアレ?」
磯貝龍乎が脚本を手がけ、古谷大和が演出を担う『M・A・D朗毒』は、ただの朗読劇ではなく、朗「毒」劇。ネタバレ厳禁のため、作品の全貌はほとんどつかめないけれど、磯貝と古谷のタッグ、そして出演者の面々を見れば、きっと面白くて新しいものになるはず。磯貝と古谷に、作品に対する思いを聞いた。


―――明かせない部分が多いと思うのですが、企画の発端を教えてください。

古谷「プロデューサーの『面白いものをつくりたい』ということが発端ですかね(笑)。最初から“DVD化しない作品”という方向で企画を詰めていて。だからこそ生の演劇で何ができるか、生なら何が面白いかというところを着眼点としてみんな持っていたかなと思いますね。DVDにできないことを強みにした演劇です」

―――ストーリーが数種類あるそうですね?

磯貝「当初は3種類の予定だったのですが、よりストーリーを色濃くするために、2種類になりそうです」

古谷「今回は「朗読」ということもあって、1回に立つキャストが少ない。でも、ストーリーが2通りあったり、キャラクターが何人もでてきて、演じ分ける必要があったりするので、観る方もやる方も面白いと思います」

―――主な登場人物は、3人。

磯貝「はい、3人ですね。各回3人の役者が出ますが、それぞれの個性が出る作品にしたいなと思っています。役者さんが持っているものを存分に引き出して……!」

古谷「役者としては、ハードルが高いオーダーですよ。それがやりがいでもあるんですが、いろいろな個性を出していかないと、この脚本には勝てない(笑)」

―――演出家として、役者の個性をどう引き出していきたいですか?

古谷「すでによく知っている役者なら、その強みを生かしつつ、まだあまり見せたことのない新たな一面を引き出したいですよね。
 一方で、今回初めましてのキャストなら、なるべく稽古の早い段階で、その人がどういう人か、どういうお芝居をするのかを見て、素敵だなと思ったところが舞台上に出るようにしたいです」

―――それはつまり、アニメや漫画を彷彿とさせるような場面もありつつも、ある意味役者の「素」が出ていくようなことですか?

古谷「いや、素というか、クリエイティブな部分を出してほしいという意味です。出せるものは全部出して、お客さんに楽しんでほしいですね」

磯貝「あらすじに書いてある通り、設定は高校生男子。でも、出演者の方々の半分は、“おじん”……」

古谷「優しい言葉で言ったけど、“おじさん”と(笑)。でも、本当にすごいメンバーが揃いました。僕らがどれだけ遊んでも、恐らくコケないだろうというレベルの方々で。それは、キャストのみならず、スタッフさんもみなさん強力なメンバー。もう心配ないですね。ほぼ出来ました、これで。集めていただいた時点で、ほぼ完成です(笑)」

―――朗読劇ではありますが、結構動く予定ですか?

古谷「まぁ完成した脚本を読まないことには何とも言えないですけど、基本的に視覚的にも面白いものにしたいなと思っています。役者さんが動いていた方が楽しかったら動くし、歌っている方が楽しかったら歌うし。本人が楽しんでいる瞬間がお客さんに伝わると良いなと思うので、僕としては好きなように動いてほしいですね」

―――脚本は執筆途中ということですが、構想は見えていますか?

磯貝「はい。ばっちり構想は見えています(笑)。今回、「朗毒」としているように、朗読劇という枠を外して、書いています」

―――前作の『Another lenz』も何というか、斬新でした。

磯貝「ありがとうございます。他の演出家さんたちが『演劇とはこういうものだ』と考えているようなものをぶち壊したくて、『Another lenz』を書きました。だから今回も、朗読という枠にとらわれない、新たな作品・カテゴリーを作っていきたいなと思っております」

―――ところで、磯貝さんと古谷さんはお互いをどう見ていらっしゃるのですか?

磯貝「信用しています。目の力が半端ないです。」

古谷「いろいろなところから予々お話は聞いていましたが、実際にお会いして、とても優しい方だなと思います。この穏やかな雰囲気で、あの物語とかお芝居とか演劇を生むのかと、にわかには信じがたいんですけど(笑)、これぞ本物の役者さんだなと思うところはありますね。
 普段は何も包み隠さないラフな雰囲気ですけど、作品では衝撃を与えてくれる。いつか本を書いた上で、作品にも出てくれないかなと密かに思っています」

磯貝「DVDにならない作品って、僕ら的には合っていると思っていて。前回の『ハンサム落語』という作品で、NGワードを出しすぎて、DVDを撮り直すという事件が起きたんです(笑)。そのことはすごく反省しているんですけど、今回はそういうことを考えなくていいんだと思うと、よりいろいろアイディアが湧いてきて。書いていて楽しいですね」

古谷「うん、ぴったりですよね。DVD化されないから、現地に来るしかない。世の中まだまだ油断できない状況ですけど、こういう時期に、こういう世界観のものをやる意味を考えると、“MAD”も“毒”も、ネガティブな意味ではなくて、ポジティブに働く作品にしたいと思っています」

―――演出家として、どう作品と向き合いたいですか?

古谷「普段から役者も演出家さんも志や思いは同じと思っているんです。ただ、やっている作業が違うだけで。役者だから演出家が考えているようなことを考えなくていいとは思っていないですし、役者をやっている時も、作品で何を描きたいかを共有したいし、自分の引き出しを出したい。
 今回は、演出家という立場で、自分は演技しないですけど、そんなに大差はないんですよ。もちろんやることはたくさんあるし、演出家の仕事を舐めているわけではないんですけど。初めての演出ということで、自分自身が舞台をやっていることは強みとしていきたいですね。役者の気持ちを考えながら演出していきたいです」

―――脚本家としては、どうですか? やはり、役者の気持ちを考えるものですか?

磯貝「いや、考えていないです(笑)。『こういう会話があったな』とか『人って、こう返されたら、こう切り返すよな』とか、すべて自分の経験から生まれています。物語というよりかは、リアルに書きたいんですよね。それで共感してもらえたら勝ち。とにかく共感してもらえたら、嬉しいです」

―――その思いを演出家に託すわけですね。

磯貝「はい、よろしくお願いします」

古谷「いや、頭が上がらないですよ! プレッシャーがすごいですよ! すごいメンバーに集まってもらって、龍乎さんに本を書いてもらって……すごい舞台を用意してもらっている。
 果たさなくてはいけない責任はたくさんあるんですけど、それをクリアしていこうというよりかは、その思いを背負って、みんなと作品を作りたいという気持ちが強いですね」

―――ちなみに、どんな方におすすめの作品ですか。アニメや小説にあまり詳しくなくても大丈夫ですかね?

磯貝「はい。ベースとなっている作品は、年齢が高めの方から若い方まで、誰もが知っている作品だと思いますよ」


古谷「どこかには必ず共感できるでしょうね。予習の必要ないと思います!」

―――気軽な気持ちで観に行って大丈夫ということですね!

古谷「もちろん!」

磯貝「鼻くそほじりながらでも……(笑)」

古谷「ほじらなくてもいいですし(笑)。今の世の中だからということ関係なく、人って常に何かを欲している部分があると思います。その中で、“毒”って、手を伸ばしたくなるようなものだと思うんですよ。悪い作用が働く毒ばかりではないと思うし。この“毒”が、お客さんにとって前向きになれるような“りんご”だったらいいなと思いますね」

―――最後にお客様に向けて一言お願いします!

古谷「きっとどんな舞台なんだろう? どんな朗読なんだろう?と、期待と不安でいっぱいな人もいると思うんですけど、それは僕も同じような状況です(笑)。ただ確かに言えるのは、今までにないような世界が広がっているということ。この機会を逃すとDVD化されないですから! ぜひ期待と不安を抱いたまま、横浜に足を運んでくれると嬉しいです。劇場でお待ちしています!」

磯貝「この作品を観て、『正解は1本道じゃないんだぞ、おい!』というのをね、みなさまに伝えられたらなと思います。もう若手という歳でもないんですけど、まだまだ浅い経験の人たちが新しいことをして、成功して、こういうものができたよということを知ってもらって。『私たちも面白いこと、楽しいことできるんじゃないか?』とお客さんに思ってもらえる作品になったら素晴らしいと思います」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

磯貝龍乎(いそがい・りゅうこ)
1987年3月14日生まれ、北海道出身。
旧芸名は、磯貝龍虎。2008年、ミュージカル『テニスの王子様』でデビュー、以後、俳優として様々な舞台に出演。AD×STAGE『Another lenz』では、脚本と演出を担当し、生配信と生観劇を掛け合わせた別次元舞台を作り上げ、話題を呼んだ。最近の健康法は「サプリを飲むこと」。

古谷大和(ふるや・やまと)
1991年5月4日生まれ、東京都出身。俳優。
近作に、MANKAI STAGE『A3!』、ミュージカル『黒執事』〜寄宿学校の秘密〜、『KING OF PRISM』、『おとぎ裁判』、舞台『チャージマン研』など。好きなことは、ファスティング。

公演情報

朗読劇『M・A・D朗毒』

日:2021年11月19日(金)~28日(日)
場:横浜赤レンガ倉庫 1号館3Fホール
料:Poisonシート[前方エリア・非売品グッズ付]8,900円
  一般席6,900円(全席指定・税込)
HP:https://www.lol-w.com/MADpoison/
問:株式会社Lol 
  mail:info@lol-w.com(平日11時~18時)

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