春の“おぶちゃ”は、あるホステルで巻き起こる出会いと別れの物語 フレッシュな魅力を放つ2人を主演に迎えて、春風が新たな扉を押し開く!

 俳優としてだけでなく、劇作・演出でも手腕を振るう大部恭平が主宰する“おぶちゃ”。大部の他にはデザインや制作に携わるメンバーが名を連ねており、クリエイティヴ・チームというべきユニットだ。
 昨年5周年を迎えた“おぶちゃ”の次回公演は、個性的な旅人が集まったとあるホステルを舞台にしたコメディ。主演に舞台を中心に活躍する堀田怜央と、アイドルグループBiSから2022年に脱退し、その後シンガーソングライターなどフリーで活動している未菜を迎えたメンバーで、春ならではの“出会いと別れの物語”を送り出す。大部、堀田、未菜の3人に今の気持ちを聞いた。

―――この作品、再演だそうですね。

大部「僕が主宰していた別団体で初演して6年振りになります。でも実は2020年にさらに別の団体で上演予定だったのが中止となってます。
 もともとは新生活、新たな気持ちの季節である春にふさわしい作品として作りました。コロナ禍で僕達も3年間闘ってきて、昨年の終わりくらいにようやく先が見え始めたとき、あらためて自分がやりたいことを考えてきづいたのが、新たな人とやりたいということでした。それも自信作で新たな人と、と思ったらこの作品がピッタリでした」

―――おぶちゃは劇団員がいない、大部さんとクリエイティヴなメンバーによるプロデュースユニットなんですね。

大部「劇団に10年以上関わってきて、いろいろな課題が見えてきました。その結果、劇団員を抱えるのは自分にマッチしない、むしろクリエイトチームにできると素敵だなと思いました。集まってくる人たちが安心して作品を作れる場所にしたいと思ってます」

―――主演の堀田怜央さん、未菜さんとは初顔合わせですか。

3人「初めましてです」

未菜「私は舞台自体も初めて。初舞台なんです」

―――まさにフレッシュな2人を選んだ理由を聞かせてください。

大部「怜央くんは僕の仲閒がやっている舞台に出演していて、それを観た時に好感を持って気にしていました。周囲の推薦もあり、真摯に作品に取り組む人だと思ってオファーしました。
 未菜さんは、7月に上演した公演『Satorare~キミに届く、心の声~』を観に来てくれて、その時に『もうお手伝いでも何でもします!』から舞台をやりたいと(笑)。まあそこからのお付き合いです。今回のキャスティングを考えたときに、ふと頭に浮かんで面白いかもしれないと思ってオファーしたら、彼女もチャレンジしてみたいと言ってくれました」

―――おふたりはどうでしょう。

堀田「初めてのカンパニーからお話をいただくのは凄く嬉しかったのですが、まさかの主演で、責任を感じています。タイトルにある“LALL”って『互いに許し合って生きていこう』という意味ですが、素敵だなあと思います。台本を読んでテーマとキャストの素敵な部分が伝われば良いなと思います」

未菜「本当にビックリでした。アイドルを辞めてソロになってから、何回か舞台のお誘いをいただいたんですが、役柄やストーリーに慎重になり一歩踏み出せずにいました。なんだか元アイドルという下地を使った内容が多くて悩んでいたんです。
 でもこの作品は素敵だし経験豊富な大部さんは頼れる、信頼できると思い、一緒にやりたいと思いました」

大部「おぶちゃの作品は会話劇です。実は堀田君、もの凄く殺陣や歌が上手いのに、この作品ではそれをやらせませんからそれを期待するなら今からお詫びしておきます(笑)。
 役者の生き様は舞台の上に乗ると思っているので、いろいろできる方に対してそこを制限すると凄い力が出ると思っているんです」

―――タイトルにある“LALL”とはどんな意味でしょうか。

大部「『Live and let live』の頭文字ですが、互いに許し合うというプラスのニュアンスと、人は人自分は自分という割り切ったニュアンスの両方があります。コロナ禍で“人は人……”という風潮がより強まりましたが、それを自分は突っぱねるか受け入れるのかを考えたら、昔そんなことを採り上げた作品があったなあ、と想い出したんです」

―――物語はホステルという場所で進みます。今で言えばシェアハウスでしょうか。

大部「出会いと別れの象徴でもありますね。僕自身、東京のシェアハウスで暮らしていた頃がありました。ジャマイカ人とイギリス人に挟まれて、住人皆が英語ができて、毎日日本語じゃあない会話が溢れていて、宴会をしているという(笑)。日常に紛れ込んだ非日常でしたね。でもそこで人間同士がつながることを学んだ気がします」

堀田「僕はホステルという言葉自身知りませんでした。まだ1人で泊まる決心はつきませんね(笑)」

未菜「丁度この前の沖縄ライブの日にホステルを予約したんです。ちょっと到着が遅れて怒られて(笑)。出会いはなかったですけど、そこにいらっしゃる方が凄く慣れているのに感心しました」

大部「ホステルには人に対しての優しさがありますよね。いまはバーとかを併設しているところもあるんです」

―――他のキャストもオファーを掛けて集められましたか?

大部「オーディションでも1名選びました。新しい人達とやるのがコンセプトですが、これまではそこに“新しいこと”がついていました。若い頃はそれで押し切れたのですが、それだとだんだんゆとりがなくなってきて、せっかく招いた人を放っておいていたかもしれない。それで再演にしたこともあります」

―――ではそれぞれからメッセージをいただきましょう。

堀田「コメディ作品ですが、ヒューマンドラマ・恋愛ドラマの要素もあるので、観て頂いて笑うだけでなく、生きていく上での大切なものが見つかる気がします。登場するキャラクターは超個性的ですし。自分のいいところを再発見するきっかけになれば良いと思います」

未菜「私は初舞台を楽しみにしていますが、ファンの皆さんは不安に思っているかも知れません。ポンコツで知られている出来損ないの私なんで(笑)。でも本気でやっていることを見せられるように頑張ります」

大部「忙しい中、みんなが集まって僕の作品に付き合ってくれるのは凄く嬉しいです。新しい人と作ることを楽しみにしているのですが、このために台本にも手を入れます。お客様にどう伝わるかがとても楽しみです」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

堀田怜央(ほった・れお)
栃木県出身。代々木アニメーション学院声優タレントコース在学中に、ミュージカル『ちっちゃな英雄(ちっちゃなヒーロー)』で舞台デビュー。その後、様々なスタイルによる数多くの舞台に出演する。2017年には舞台『モデラート』で初主演。さらに同年、映画『お前はまだグンマを知らない』で映画デビューを果たす。近年は声優としても活動の幅を広げており、Nintendo Switch『滄海天記』やスマートフォン向けアプリゲーム『Food Fantasy-フードファンタジー』などに出演。

未菜(みな)
福岡県出身。2019に第3期BiSのオリジナルメンバーとして加入。2022年7月に脱退後は「未菜」という名前で女優、シンガーソングライターとしての活動を開始する。これまでに「New Acoustic Camp 2022」や、ヒダカトオル(THE STARBEMS)とのツーマンライブ「Blue Weekend」に出演する。女優としてNOMELON NOLEMONの楽曲「線香金魚」のMVに出演するが、舞台は今回が初体験となる。

大部恭平(おおぶ・きょうへい)
神奈川県出身。脚本家・演出家・俳優。おぶちゃ主宰。2022年はおぶちゃ5周年記念として「9ヶ月連続企画」に挑戦。また、おぶちゃの全作品で作演出を担当。他、キミに贈る朗読会『ほむら先生はたぶんモテない』(演出)、『今夜、きみの声が聴こえる』(作・演出)、『サトラレ the reading』シリーズ(作・演出)など。作風としてリズム感のある台詞回し、人間味、温かみのある雰囲気、空間づくりの演出には定評がある。

公演情報

おぶちゃpresents
『LALL HOSTEL(エルエーエルエル ホステル)』

日:2023年3月29日(水)~4月2日(日)
場:MsmileBox渋谷
料:特典席[特典付]8,000円
  通常席4,800円(全席自由・税込)
HP:https://ofcha.biz/
問:おぶちゃ mail:info@ofcha.biz

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