悪い芝居の第30回公演は逃避奇行譚! 「自分が逃げるとき、どこかで誰かも逃げている」

 2004 年に路上パフォーマンスで旗揚げ。以降、文学性とポップカルチャーが共存した唯一無二の作風で熱狂的な支持を集めてきた「悪い芝居」。記念すべき第30回公演は“逃げること”が大きなテーマとなっている。

山崎「ポジティブな逃亡劇を描きたいなと思ったのがきっかけです。いつも架空の集団を妄想して描くことが多いんですけど、今回登場する“逃避奇行クラブ”は一度も出会ったことがない人間同士の集団にしたいと思っています。今自分が逃げているときに、どこかで誰かも逃げていることだけはわかっている人達の話。様々なものから逃げている人達が、観念で繋がっていくんです」

中西「悪い芝居はよく、周りからちょっとおかしな目で見られる人達が登場するんです。でもみんなにそういうところはあると思っていて、そこに“逃げる”という部分がリンクすることで、凄く面白い人間模様が見えてくると思います」

東「僕はいつも明け方にSNSで『おやすみなさい』ってつぶやくようにしているのですが、それを見た人から『寝れないことに罪悪感を抱えていたけど、起きていていいんだと思えた』と言われたことがあります。同じシチュエーションを共有するということをみんな欲している気がしますね」

 また、今回は30回目公演ということで、なんと30個ものキャンペーンを展開しているとのこと。

山崎「お客さんにもしっかり公演に巻き込まれてほしいと思ってやっています。コロナで公演中止になるかもしれない中、いつも通りにやるのが馬鹿馬鹿しくて。未来がどうなるかわからないなら、やれること全部やっちゃいたいなって」

 “エキセントリップロードムービー”とも銘打たれている逃避奇行クラブの旅路。面白いものを貪欲に追求してきた悪い芝居から繰り出される全力の逃避に注目だ。

中西「悪い芝居を観ることで、この世界も悪くないなと心が軽くなったり、明日から生きるのが楽しくなってもらえたら最高だなって思っています」

東「いつもお客さんに対して『これはあなたの物話ですよ』と伝えたいと強く思っています。客席には何人もの人がいるけど、公演はあなたひとりのために存在している。自分の物語を体験しに来てほしいと思っています」

山崎「観に来てくださいということに尽きます。20年近く続けてきましたが、とにかく観て良かったと思ってもらえるものを創るという思いだけで劇場にいます。損したとは思わせない確信はあります」

取材・文:いつか床子 撮影:山本一人(平賀スクエア)

プロフィール

山崎 彬(やまざき・あきら)
1982年生まれ、奈良県出身。劇団「悪い芝居」代表。2004年12月24日、路上パフォーマンスにて悪い芝居を旗揚げ。すべての劇団本公演で脚本・演出を担当。外部でも精力的に活躍し、2023年には舞台『リコリス・リコイル』(演出)、『HUNTER×HUNTER』THE STAGE(脚本・演出)、泊まれる演劇『ホテル・インディゴ』(脚本・演出)の上演をひかえている。

中西柚貴(なかにし・ゆき)
1996年生まれ、京都府出身。2014年『スーパーふぃクション』で悪い芝居に初出演し、翌年入団。映像作品にも多数出演しており、近作に『恋せぬふたり』、『エルピス』など。

東 直輝(あずま・なおき)
1993年生まれ、東京都出身。2016年に悪い芝居に入団、翌年『罠々』で悪い芝居に初出演。外部公演への出演も多く、果報プロデュース『ナイゲン』では、佐藤佐吉賞2019 最優秀助演男優賞を受賞。

公演情報

悪い芝居 vol.30 めもりある『逃避奇行クラブ』

日:2023年1月29日(日)~2月5日(日)
場:下北沢 本多劇場
料:一般6,900円 ※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://waruishibai.jp/eccentripclub/
問:悪い芝居 mail:eccentrip@waruishibai.jp

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