業界の中にいる者たちがナンセンスに“裏事情炸裂”をする、ハードボイルドコメディ『ハザマDD ~ハザマ the Dimensional Detective~』。脚本の伊勢直弘、演出を手がける磯貝龍乎、主演を務める富田翔に、公演の内容を明かせる範囲で聞きつつ、2022年の振り返りや2023年の抱負などを聞いた。
―――ハードボイルドコメディ『ハザマDD』。どんな作品になりそうですか?
伊勢「特定の業界に中指を立てるような、かなり際どい作品に見えると思いますが、実はパロディやリスペクトをふんだんに盛り込んでいる娯楽作品です。『2.5次元』というジャンルを知らない人たちにも楽しんでいただきたいし、知っている人たちには『あるあるネタ』で楽しんでもらえたらと思っています。
特に今回は、主演が富田翔くん。きっちり計算され尽くしたコメディよりも、自由度の高いところでどんどん遊んでもらった方が、勝手に面白くしてくれる人なので、そういったコンセプトで進めさせてもらっています」
磯貝「役者が思っていることをふんだんに伊勢さんに書いていただきました。役者あるあるをどううまくお客さんに伝えるか。どういう描写でいくかというのは、僕の課題であり……人生ですね(笑)」
伊勢「確かにどう見せるかは重要ですね。ディスっているようにも聞こえるけど、お客さんも『だよね〜』『分かる分かる』と楽しんでもらえたら、1番平和になると思いますから」
―――現状の演出プランは?
磯貝「全部決まっています! この時点でミザンス(※役者の立ち位置)も全て決めました!」
富田「自由度ないじゃない(笑)!」
磯貝「僕、アドリブ好きではないので(笑)。……昔からお世話になっている富田翔さんが主演、伊勢さんの脚本ということで、とても楽しみにしています。
翔さんには『撃弾ハンサム』のときからずっとお世話になっていて、正直気をつかいますが(笑)、翔さんのアグレシッブさとセンスの良さにあやかりながら、僕もテンポよく、演出を組み合わせて行けたらいいなと思っております」
―――富田さんは出演にあたって、今、どんなお気持ちですか?
富田「伊勢さんとは『炎の蜃気楼』という巨大で重い作品を、4年間で5作品、一緒にやらせてもらって。僕の中で伊勢さんは先輩ですけど、戦友というか、一緒に戦ってきた方だと思っています。一方、龍乎は、イベントや自分のユニット含めて、30代で一番共演した俳優なんです。
その2人と組めると聞いて、めちゃくちゃやりたいなと思いましたね。お客さんにも楽しんでもらえる舞台にしたいと思います」
―――お互いの印象について伺いたいと思います。伊勢さんについてはどう思いますか?
磯貝「伊勢さんは常に名前を見る存在ですよね」
富田「うん、伊勢さんって、4人いると思っています(笑)。いろいろな舞台のお知らせをいただきますが、演出か脚本のどちらかに伊勢さんのお名前がある。
伊勢さんは何事も仕事が早いんです。とにかくきっちりとしていて、早め早めだから、これだけお仕事が来るんでしょうね。早めに脚本や演出が整っていると、みんなが準備をできるので、神様みたいな存在ですよ。龍乎とはまるで真逆の……(笑)」
磯貝「そうですね、本当、僕は遅刻している場合じゃないです(笑)。翔さんの言った通り、伊勢さんは僕と真逆で、仕事が早くて、AIなのかなと思うぐらいです(笑)」
伊勢「早め早めは意識はしています。天才と言われる人と同じ土俵にいるためには、せめて天才が苦手な『締め切りを守る』ことで勝負しようと思って……」
―――富田さんについてはどうですか?
伊勢「さっき富翔(※富田翔の愛称)も言ってくれたんですけど、戦友ですね。一緒に取り組んできたのが、重くて暗い題材で、お互いの人となりが垣間見えるようなやりとりをしてきたので、そう言った意味で絶対的な信頼があります。
役者としてもストイックで、一切稽古場でも妥協しない。かと思えば『ここで笑わせられるんだ』というフレキシブルさもある。芯はしっかりしているんだけど、エキセントリックな振り幅もある存在だなと思っています」
磯貝「センスの塊で……嫌なんですよ、一緒に仕事するのが。僕が霞むから(笑)。先頭にきちんと立って、みんなを引っ張ってくれるリーダー的要素もあるし、セリフを覚えるなど、役者としてしっかりしている部分もあるし、みんなの相談役になるという包容力もある。さぞモテてきたんでしょうね〜(笑)。信頼されている人物だと思います」
―――磯貝さんについては?
伊勢「役者の龍乎に関しては、ハイリスク・ハイリターンでしかないです(笑)。勝負師で、日替わりゲストで出てくれたりすると、とんでもない爆弾を落として帰っていく。ただ、絶対外さない。お客さんは喜んでくれるので、せめて事前に相談して(笑)。
ある時、大きい紙袋を持って入ってきたから『(それ)なに?』と聞いたら、『個人的な買い物です』と言われたことがあって。でも全部、日替わりのために仕込んでいた小道具だったことがありました(笑)」
磯貝「ギャラ以上の小道具を買っていきました」
伊勢「それぐらい遊び心があって、お客様を楽しませたいという気持ちにあふれている。それでいて人に優しい。道化を演じている部分があるんだろうなと思うので、今回はその道化の部分を存分にお借りしてやれればいいなと感じています」
富田「ここ数年でいろいろな話をするようになりました。2人でご飯に行ったり、未来を語ったりする仲間です。龍乎の演出を受けるのは初めてなので、龍乎の色に乗りながら、自分の色も少し出せるようにしたいですね。楽しみです」
―――2022年はどんな1年でしたか? 2023年の抱負もあわせて教えてください。
伊勢「コロナの影響から業界も少しずつ、本当に少しずつですけど、元気が戻ってきて。そういった意味ではすごく充実していたなと思います。
客席にお客さんが座っている姿を見るのが、僕らにとって何よりも原動力なので、ここまできたかと。正直まだまだではあるんですけど、少し立ち返ることができて、充実していたなと思います。2023年は健康でいようと思います。元気があれば何でもできるから」
富田「僕としては、独立して、新たな一歩を踏み出した年でした。一歩踏み出したんですが、デビュー20周年でしたし、過去に出会ってきた方々との縁が再びつながったりして、立ち返ることも多くて。忘れられない1年でしたね。
2023年は『爆竜戦隊アバレンジャー』20周年の映画があります。また一段と縁に恵まれて、助けられています」
磯貝「2022年上半期はずっと演出をやっていました。そのうち役者が体調不良になってしまい、代役として舞台に立つこともありましたね。そこから自分プロデュースの舞台をやり、下半期は役者もやりました。
どれもすごく楽しかったです。役者は役者で楽しい部分もあるし、演出家は演出家でつらいことも多いんですけど、楽しい。2023年もうまい具合に役者も演出もミックスした活動ができたらいいなと思います」
―――最後に観劇を楽しみにされている皆さんに一言お願いします!
磯貝「お客さんと役者さん、演出家。それぞれが思っていることを『あるある』として共感してくれたら、嬉しいなと思っております。あ、役者あるあるが1つ反映されていなかった。それは、サプリに頼りがち……」
富田「それは磯貝龍乎あるあるやろ(笑)」
磯貝「(笑)。みなさんに共感していただくことが1番だと思うので、それを中心におきながら、ところどころ遊びをいれて……心が疲れた時に観たら、本当に楽しい気分になって、ルンルン気分で帰っていけるような舞台にしたいと思います。よろしくお願いします!」
伊勢「作品を演出家に託した段階になっているので、あとは応援するだけです。お客様には、切なかったり、心動かされたり、考えさせられたり、そういった要素が一切ない『娯楽』として気楽に楽しんでいただけたら。
『こういうお芝居があっても良いじゃん』ということができればいいのかなと思っていますので、楽しみしていただければと思います!」
富田「1月で41歳になるんですけど、41歳ではじめての作品です。本当にこれでいいのかと思いながら(笑)、思い出となる舞台になればいいなと。
ストレートでオリジナルでコメディで、やってみるまでどうなるか分からない。お客様も観るまで分からないだろうし、僕らも今想像しているものとは違う反応がくる可能性もありますよ。伊勢さんは『気軽にただ楽しんでもらえる』と言っていたけど、いろいろな感情が浮かんで、泣いちゃう人もいるかもしれないし、感動する人もいるかもしれない。
いろいろな可能性がつまった作品だと思うし、あまり広くない劇場の中ですから、一体感を楽しんでもらえればなと思います」
(取材・文&撮影:五月女菜穂)
プロフィール
富田 翔(とみた・しょう)
1982年1月7日生まれ、東京都出身。2002年にテレビドラマ『ごくせん』で俳優デビューし、2003年にスーパー戦隊シリーズ『爆竜戦隊アバレンジャー』にアバレブルー役で出演。以後、テレビや舞台などで活動している。
伊勢直弘(いせ・なおひろ)
1972年3月21日生まれ、北海道出身。脚本家・演出家・俳優・MC。2006年~2013年までハイブリット・アミューズメント・ショウ「bpm」のリーダーを務める。2009年には、演出作品『ひこうき雲 -KAMIKAZE-』をロサンゼルスにて上演、海外デビューを果たす。2013年からは城西国際大学メディア学部講師に就任し、アクティングや演出等で後進の育成を担う。
磯貝龍乎(いそがい・りゅうこ)
1987年3月14日生まれ、北海道出身。旧芸名は、磯貝龍虎。2008年、ミュージカル『テニスの王子様』The Treasure Match 四天宝寺 feat.氷帝 でデビュー。以後、俳優として様々な舞台に出演。2016年に、オムニバス舞台『上手』の一編『ヘルニア』で初の脚本・演出を担当する。その後俳優活動を続ける中、多くの舞台制作に携わり、2022年6月には本人初プロデュースとなる舞台『SHAPE』を上演し、チケットSOLD OUTの大盛況で幕を閉じた。
公演情報
GORIZO STAGE Vol.6『ハザマDD ~ハザマ the Dimensional Detective~』
日:2023年2月15日(水)~23日(木・祝)
場:浅草九劇
料:特典付き指定席[前方席3列]8,800円
一般指定席6,600円(税込)
HP:http://www.gorizo.co.jp/hazamadd
問:GORIZO STAGE制作部
mail:info@gorizo.co.jp