ゴミ拾い学生ボランティア団体SEAHOPEとジェイジャーニー合同会社によるコラボ企画 ゴミの声が聞こえる主人公・慶太が届けるメッセージとは

 女優やモデル、通訳ほか幅広く活躍中のジェイジャーニー主宰・小池樹里杏が脚本・演出を務める新作舞台『テムとゴミの声』が12月に上演される。身近な環境問題を舞台作品で問いかける活動として第1弾のテーマは『ゴミ』。SDGsの“つくる責任、つかう責任”“海の豊かさを守ろう”を盛り込み、歌やダンス、パフォーマンスを交えて呼びかける。作品を代表して、衣裳とジュエル役・平山空、ダンチョ役・植田慎一郎、イラスト担当の柿田ゆかりに話を聞いた。

ファンタジーだけど現実に近い物語

―――本作は環境問題を呼びかけるために始動した企画とのことですが、平山さんは企画段階から参加されていらっしゃいます。今回の企画の意図についてお聞かせください。

平山「1年ぐらい前に作・演出の小池と出会ったことがきっかけです。当時小池がジェイジャーニー作品の衣裳さんを探しているということで、出演もする松本稽古が小池と仕事をしていた関係で私を繋いでもらい、最初は衣裳という立場でしたが意気投合しまして、小池の行動力にとてもひかれまして何か一緒にやろうとスタートしました。
 その松本は普段から役者と振り付けをやっていまして、私も衣裳と役者、小池も作・演出、モデルや通訳などでも活躍しており、そこから二刀流でしっかり活躍している俳優たちを集めて何か企画をしようじゃないかと。そこからいろいろ発展して、今回はイラストレーターの柿田ゆかりさんが参加され、どんどん膨らんでいった結果このメンバーで実現することができました」

―――脚本についてお尋ねします。みなさん立場は違いますが、最初に読んだ印象や感想をお聞かせください。

植田「役者としてまずは“ワクワクする!”が第一印象です。なかなか文字だけワクワクすることって少ないんです。稽古をへて肉付けもあって納得することはありますけど、今回はワクワクしました。
 おもちゃの声が聞こえる登場人物が出てきますが、子供たちはごっこ遊びなどで人形の声を想像していて信じていますよね。この本にはそういうことが詰まっていて、あらためて大人になった自分も再確認することができ、しかも今度は僕がそのおもちゃ目線で演じられる。子供の頃におもちゃと遊んでいた僕が、今度はおもちゃを演じて子供たちと遊ぶなんて最高ですよね。今回はおもちゃとして子供に対してどういう想いを抱くのだろうと今から楽しみです」

―――小さい頃は何かを集めていましたか?

植田「僕は恐竜や昆虫だったり、ヒーローの人形よりは動物の人形ばかり集めていました。自分の中では壮大なジュラ紀の世界が広がっていましたね」

―――柿田さんはイラストレーターとして脚本の印象はいかがでしょうか。

柿田「私は最初に小池さんからお話をいただいた時はまだ設定だけでした。役者さんと同じでなくていいので、絵は絵として私のイメージで描いてくださいと言ってくださって、あらどうしましょう責任重大だわと(笑)。少しずつ脚本と同時進行で小池さんと相談しながら描いて、作品の製作過程を見せていただいたような気持ちです。
 実は私はこれからもっと絵を描かなきゃいけなくて、いろいろ展開をしていきます。(チラシビジュアル用に)一度キャラクターを作ってしまったので、いま脚本を読みますと、もうちょっとこうだったかな?と思ったりもしますね(笑)」

平山「衣装を作る過程とイラストがわりと同時進行だったんです。私の中で大まかなイメージを作って、小池から『この役はもうちょっとこういう感じで』と作っていた時に、イラストも少しづつ送っていただいたりしたので、ここのこのアイディアは良い!とお互いにすごくいい影響を受けることができたと感じていました」

柿田「私も写真を見せていただいて、なるほど!と」

平山「先にイラストがあると、それに沿って衣装を作らなきゃいけなかったり、衣装があるとそれに沿って絵を描かなくてはいけないですが、小池の考えとしてはそれぞれでイラストはイラスト、舞台は舞台で別のもので進んでよいと。あとは全く相談してないのに一致したこともあって、個人的にすごく感動しましたね」

―――感性が一致すると嬉しいですよね。平山さんの役者としての脚本の印象は?

平山「役者でもあるので、脚本やストーリーに関してはあまり口を出さずに小池を信じて任せていました。俳優って、子供心を忘れられずにいる方が多いと思うんですよね。その感覚がこの物語にすごく詰まっていて、本当にワクワクやキラキラしている何かをとても感じる脚本だと思いました。
 小池は1番最初に、現代の世界で起きている色んな問題、今回のテーマはゴミですがそれらを織り交ぜて、ファンタジーだけどすごく現実に近い話を作りたいと言っていました。そこは全くブレずにしっかり脚本になっていたので本番が楽しみですね」

大人になっても捨てられない宝物

―――本作のキーワードに「宝物」がございますが、小さい頃から大切にしている物や宝物はありますか?

植田「いま着けているこの指輪が宝物ですね。おばあちゃんの形見なんですけど、アクセサリーが好きで、僕ら3兄弟にひとつずつアクセサリーを残してくれて、ずっと身に着けています。僕は家族が大好きなので、これもいつか僕に家族や子供ができたらあげるのかな、とか思っていますね」

柿田「私はこのお話を読んで思い出したのですが、いま手元にはないんですけど、私も3人姉妹でして子供の頃に母が毛糸で手編みの女の子の人形をそれぞれに作ってくれまして、それぞれ違う髪の色で名前をつけてかわいがって遊んでいたので、あれをちゃんととっておけばよかったと。実家を探ればどこかにあるのかも知れないけれど心の宝物ですね。
 実は最近編み物にハマりだしまして、何か継いでいるのかなと思うところもありますね」

平山「私は女の子にありがちですが、ずっと持っているぬいぐるみがあります。いつから持っていたかも忘れましたが、元々ウサギの耳だけ付いたクッションみたいなもので、触りすぎてめっちゃ汚いんですよ(笑)。それに母が新しい鼻を付けたり目や耳を付けてくれて、どんどん新しくはなるんですけどやはり汚くて。でも何故か大人になっても捨てられず、実家の子供の頃に書いた絵や卒業アルバムが入ったケースに眠っています」

―――この作品を観た方も自分の宝物を思い出して優しい気持ちになれそうです。そして本作は手元に宝物として置ける絵本のリリースも展開されると聞きました。

平山「舞台の脚本と絵本でこの物語を盛り上げていけたらと思っています」

柿田「まだこれからですが、物を大切にしましょうとか、一言でゴミと言ってもいろいろな物があるんだよと、舞台のテーマと近いお話になっていくと思います。
 小池さんの中で最初から絵本と一緒に作っていきたいと思われて私にお話があったので、彼女の想いについていき、私も色々な絵本を作っているので何かお役に立てるところがあるといいなと思っております」

誰が見てもゴミですが私には宝物に見えました

―――植田さんが演じるダンチョ役は、サーカス団の団長で明るいリーダーとのことですが、役作りはいかがでしょうか。

植田「サーカス団なのでサーカスのシーンやパフォーマンスがあると聞いています。ダンチョはリーダーなので、みんなの個性をこれから知って引き立てていきたいですね。
 ダンチョはお客様に直接語りかけたり、お客様を参加させるという意味ではお客様と1番やり取りが多い役どころだと思いますので、楽しんでもらえるように客席とステージをうまく繋げることができたらと思っています」

―――ビジュアル撮影はいかがでしたか?

植田「楽しかったです! 撮影をしながら装飾が増えたり、その場のアイディアでネクタイが2つになったりして、とても活気のある撮影でした。あと杖の代わりにビニール傘を持ったり、本番をお楽しみにしていてください」

平山「私の衣裳の作り方が決めていく時もあるんですけど、ファンタジーや初めてお会いする方の場合は、写真だけでは伝わらないその人の雰囲気とか体型だったりを見ながら、その場でみんなで作っていくのが好きでこうなりました。
 ダンチョさんのポイントはハットです。今回、ゴミ拾いの学生ボランティア団体『SEAHOPE』とのコラボ企画になっておりますが、日替わりゲストで出演する近藤杏海さんが海で拾ったマイクロプラスチックが団長のイメージでもあるこのハットにたくさんちりばめられています」

―――それぞれ皆さんの衣裳にもそういったゴミであってゴミではないものが使われていてテーマに繋がっているのですね。

植田「お写真でお会いしただけなので、こだわりの衣裳でみんなが大集合した姿をはやく見たい気持ちが大きいです。それぞれのキャラクターもすごく個性的なので、僕のことを団長として認めてくれるかちょっと心配です(笑)。頑張ります!」

―――平山さんのジュエル役もめちゃめちゃ元気そうです。

平山「この写真はとっても元気ですね(笑)。私が演じるジュエルは、みんなをキラキラと宝石のように輝かせるという意味があるそうです。普段はおとなしいけれど衣裳のことになった途端にめちゃくちゃ力を発揮すると解釈しています」

―――衣裳担当の平山さんそのままですね! では最後に意気込みやメッセージをお願いします。

平山「今回のテーマの中に“使い続けられるもの”があり、このコンテンツ自体も使い続けてどんどん形を変えて進化させていきたいという想いも込められています。舞台セット、舞台衣装はいろんなゴミを使って無駄をなくすことをテーマに作っているので、そこが1番の見どころです」

―――観た子供たちが自分で作れるかもと刺激を受けそうです。

平山「1番最初の衣裳のオーダーが、真似したくなる衣裳でした。子供たちがゴミを使ってダンチョの帽子が作れるかもしれないとか、そう思ってもらえたら嬉しいです」

柿田「私は出演しませんが、絵の仕事をずっとしてきて舞台とのコラボレーションは初めてで、小池さんから新しい世界を見せていただいている気持ちでおります。これから新しくいろいろ広がっていくので楽しみです。みなさんに刺激をいただきながらチャレンジしていきたいです」

植田「環境問題を組み込んで作っていますが、それを意識せず観てもらいたいです。物語に自然と盛り込まれているので作品を観た後、日常に溢れている様々な問題を考える1つのきっかけになればいいなと思っています。
 そして身近に子供がいる方はこの作品を観たら絶対に子供と遊びたくなって、しかも遊び方が増えるんじゃないかなと。僕はこの本を読んだ時、甥っ子たちと本気で遊びたいって思いました。色んなきっかけを作れるように全力で頑張ります!」

(取材・文&撮影:谷中理音)

プロフィール

平山 空(ひらやま・そら)
1988年1月26日生まれ、神奈川県出身。舞台出演を中心に、CMモデルとしても活動。企画演劇集団ボクラ団義の第1期メンバーとして立ち上げに参加、2007年〜2022年まで全ての舞台公演に出演した。役者の傍ら衣装製作・スタイリストとして多くの舞台衣装・映像衣装を手がけている。近作に、舞台『DARKNESS HEELS~THE LIVE~2022』、企画演劇集団ボクラ団義 暫定最終公演『耳があるなら蒼に聞け~龍馬と十四人の志士~』・『ハンズアップ2022』などがある。

植田慎一郎(うえだ・しんいちろう)
1993年10月1日生まれ、兵庫県出身。俳優・声優、ゲーム実況、服飾デザインなど幅広く活躍中。代表作に【TV】アニメ『惡の華』、アニメ『蟲師 続章』、アニメ『EVIL OR LIVE』、Eテレ「ロンリのちから」、【映画】劇場版『SOARA』、【舞台】ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』油女シノ/我愛羅役、舞台『弱虫ペダル』シリーズ 段竹竜包役などがある。

柿田ゆかり(かきた ゆかり)
7月8日生まれ、埼玉県出身。絵本作家・イラストレーター。日本デザイン専門学校卒業後、アシスタントを経てフリーに。主な作品に、『ゴートンさんのじゃがいも』、『なつやさいの なつやすみ』、『ふゆやさいのふゆやすみ』、『あきやさいの あきわっしょい!』、『はるやさいのはるやすみ』など多数。

公演情報

J-journey × ビーチクリーン学生団体SEAHOPE
『テムとゴミの声』

日:2022年12月21日(水)~25日(日)
場:下北沢 小劇場 楽園
料:応援チケット[特典付]7,800円
  一般4,000円 学生3,500円
  (全席指定・税込)
HP:https://temtogomi.hp.peraichi.com/temtogomi
  https://twitter.com/temtogominokoe
問:ジェイジャーニー合同会社
  mail:info@j-journey.tokyo
後援:朝日新聞社

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