飛切り強烈で個性的な役者5人が集った秘密兵器。ずっと夏の公演としてコント×芝居を主体とした舞台を続けてきたが、それに加えて昨年末からは新宿シアタートップスで一本芝居を創るようになった。いつものメンバーに客演を迎えての年末公演は好評となり、迫り来る2022年の年末、第2弾が決定した。
今回も客演として、数多くの舞台に出演する南翔太。ハロプロエッグから歌手としてソロデビュー、現在では舞台女優としても活躍する吉川友。そしてAKB48のメンバーとして活動するほか、舞台への出演も多い川原美咲など達者な役者が集結した。メンバーで主宰・演出・出演も手がける岩田有弘に加えて客演の南、吉川、川原に話を聞いた。
―――2年目の年末公演。そして2回目のシアタートップスです。
岩田「昨年、秘密兵器での新しいことをやりたいと思い、秘密兵器にしかできない一本芝居を(シアター)トップスでやりました。それがご好評をいただいて、さらに劇場さんからもお声がかかり、第2弾が実現しました。今回も演劇色が強い、そこに今まで培ってきた笑いやエンタメを盛り込んだ作品になります。
大きなテーマとしては世界から見た日本。その美しさや見え方、さらに日本人の良さに焦点を当てて、わびさびを派手に効かせた作品にしたいです。そしてメンバーや客演の方が持っているキャラクターの良さも引き出し、皆さんに羽ばたいてもらいたいと思っています」
―――演出は岩田さんですが、脚本はメンバーの五十嵐さんですね。
岩田「そうです。五十嵐さんは僕には到底書けない面白い脚本を書いてくれます。まず僕が原案を提示して、脚本にしてもらっています。今頃一生懸命書いている頃でしょう」
―――気持ち悪いぐらい仲がいいといわれている秘密兵器メンバー。そこに南さん、川原さん、吉川さんは客演されるわけですね。
南「僕は秘密兵器メンバーの何人かとは別の作品でご一緒していますし、彼らの舞台も10年以上前から観ているんです。観る度に不思議なエネルギーをもらいますね。舞台でオジサンが全力で頑張っているのに感動するんです。しかも“全力を越えてくる全力”で迫って来ますから。そんな馬鹿馬鹿しさの後に感動が来る。それにいくつも耳に残るフレーズがあるし最後はスワンをつけて出てくるし(笑)。オファーの段階でスワンがあるけど大丈夫ですか?と聞かれましたね」
岩田「スワンね(笑)。今回はまだわかりませんけどね」
南「そうですか。まあ大丈夫だと答えておきました(笑)。そんなお付き合いでずっと観てきたけれどまさか一緒に舞台に立つとは思っていなかったです。だから岩田さんから声がかかって嬉しかったです。今や僕も充分オジサンですから全力で頑張りたいです」
川原「今まで経験してきたのは同世代がいっぱいいる舞台がほとんどでした。でもこの作品は私以外、とても大人の方が集まって……」
岩田「オジサンって言って良いですよ(笑)」
川原「(笑)。その、オジサンが集まっているので。撮影の時に初対面でしたから緊張して伺ったら、会場に入るなり女装したオジサンが出てきて(笑)。準備の間も別室から笑い声が聞こえてきて、温かい家族のような皆さんで安心しました」
吉川「同じ事務所のメンバーがよく出演していて、愉快なオジサンの噂はいろいろ聞いていました。
撮影でお目にかかったら、皆さん心が若いというか、生命力に溢れているんです。明日死んでも悔いがなさそうな(笑)、そんな印象でした。会場も和室だったので親戚の集まりに行ったみたいでしたね。私自身はとても人見知りなんですが、それでもグイグイ来てくれるので助かります」
―――岩田さん、皆さんを客演に迎えた理由を聞かせてもらえますか?
岩田「南さんは10年来の知り合いで、昔から目標に突き進む力を持っている方です。今もその力を残しつつ、色々な経験から人間としても役者としても太くなっています。話していても心地よいし、いつか一緒にやりたいといつも頭にありました。最近はクリエイティヴとして力を発揮されていて、今作品でも一緒に創り合えればいいなと思いました。
川原さんは以前創った作品でご一緒した、AKB48のチーム8さんとのご縁から彼女の名前が挙がったのですが、今回は“和”を意識していたところ、着物を着せたら超似合いそうな和風美人の彼女にはピッタリだと思いました。さらに年相応のお茶目さも持ちつつしっかりした部分もあって、演って欲しい役がピンときたんです。僕は直感を信じるほうですが、彼女については2回くらいビビッときました(笑)。
吉川さんは前から知ってはいて手の届かない存在だと思っていました。でも僕の作品を観てくれていましたし、実際にお目にかかったらオーラを感じて、やはり演じて欲しい役がピンときました。それに彼女のSNSが独特で面白いのですが、まだそういった魅力が出ている人間性のお芝居は観ていないんです。まさに正統派女優さんなので、そこを秘密兵器が崩して楽しめたらなと思いました」
―――今回の劇場、シアタートップスは昨年復活した小劇場です。劇場についての印象や想い入れはありませんか。
南「トップスは1度閉めている訳ですが、閉館前にモンダスマーズとか和田憲明さんの舞台を何本か観ていました。小劇場の中でもレベルの高い良作をやっていたので、閉館の時は残念でした。だからこそ復活したトップスの舞台に立てるのは楽しみです」
川原「名前を聴く機会が多い劇場ですし、その舞台に出ている人もまわりにもいます。私のファンからも、トップスに出るんだって?と言われて嬉しかったです。でも大規模なコンサートはともかく、普段出ているAKB48劇場も小さいですから、そういった劇場だからこそ伝わる熱量はわかっています」
吉川「私も初めてなんですが、この前新宿を歩いていたら、ここかな?と思うところがあって。ゴジラの方面ですか?」
岩田「いや、ゴジラではない(笑)」
吉川「あれれ。映画館の近くですよね。だったら通りました(ドヤ顔)。そうなんだ。何の予定もなく歩いていたのに前を通るとはねぇ。運命感じています(笑)」
岩田「トップスさんから今年もどうですか?と声をかけてもらったのは嬉しかったですね。昔のトップスはもっと使いにくかったらしいですが、再開にあたってだいぶ改装されています。でも楽屋の上が舞台なのは変わりません」
吉川「え? じゃあ楽屋でうるさくできないんだ。私は我慢できるけど、岩田さんとか声が通るから(笑)」
岩田「オジサンたちは騒がしいしね。でも我慢しますよ。基本的に僕たちネガティブなんです(笑)。皆がいるから頑張っちゃうだけだから(笑)。ともかく使いやすくなっている上に、トップスならではの(舞台の)使い方ができるかなと思ってます。前回はまだ完全には使いこなしてなかった気がしていますから」
―――それでは皆さんからのメッセージをお願いします。
南「僕自身が秘密兵器のファンですが、何も考えなくても楽しめるくせに実は綿密に計算されているのが凄いですね。1年の疲れを笑ったり泣いたりして流せると思うので、それを期待しておいで下さい」
川原「オジさまやお姉様方に負けないように……」
岩田「そこ、オバサンでもいいですよね(笑)?」
吉川「え? 引っかかるなあ(笑)」
川原「いや、それは(笑)。ともあれ皆さんに負けないよう、全力でついていきたいです」
吉川「今回が初めてのことは多いですが、2022年最後の締めくくりとなる舞台なので、明るく元気に努めたいです。本当に笑って良い1年の締めくくりになりそうです」
岩田「明日死んじゃうかも知れないとか、秘密兵器が生きがいだと思っている我々ですが、今回の出会いに感謝してまずやれることを思いきり100%出して、さらには皆さんの力もたくさん借りて、今までない化学反応を期待します。年末に心の奥から暖まるエンタメを観て楽しんで貰いたいです」
(取材・文&撮影:渡部晋也)
プロフィール
岩田有弘(いわた・ありひろ)
東京都出身。東京農業大学在学中の2002年に、演劇ユニット「秘密兵器」を結成。主宰として活躍し、昨年は20周年記念公演として2作品を発表。下北沢を中心に定期公演を続け「下北沢小劇場の申し子」の異名を得る。さらに2013年には劇団「大人の麦茶」にも入団。2015年には舞台プロデュースユニット「銀岩塩」を結成し代表に。俳優だけでなく『牙狼<GARO>』初舞台化をプロデュースするなど、活躍の場を広げている。
南 翔太(みなみ・しょうた)
愛知県出身。大学生のときに沢木耕太郎の『深夜特急』に刺激され、海外を放浪。旅先で出会った人々に笑顔を届けたい、という気持ちから俳優を志す。2003年に『11ぴきのねこ』で舞台デビューし、2007年には『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』の主演となる。その後舞台を中心に活動の幅を拡げ、2020年には映画制作会社「㈱Shibuya Cinema Tokyo」設立する。
吉川 友(きっかわ・ゆう)
茨城県出身。ハロー!プロジェクトの研修生・ハロプロエッグとしての活動を経て、2011年に歌手としてソロデビューを果たす。その後シングルのリリースや、ソロコンサートである「きっかフェス」を催すなど歌手としての活動の一方、テレビのバラエティやドラマ、映画に出演。さらに舞台作品にも数多く出演している。
川原美咲(かわはら・みさき)
佐賀県出身。2017年8月にAKB48チーム8の佐賀県代表として加入を発表。同年12月にはチームBの兼任となる。子供の頃からヒップホップなどのダンスに親しんできたが、AKB48に加入した後に、周りのレベルに刺激を受けてさらに腕を磨いた。2021年にチーム再編成に伴いチーム4兼任メンバーとなることが発表された。舞台の出演も増えている。
公演情報
エンターテインメント風集団秘密兵器
MISSION IN POSITIVE Gorgeous Attack
『おちゃのま』
日:2022年12月27日(火)~30日(金)
場:新宿シアタートップス
料:前売5,500円 当日6,000円
学割2,700円 ※要学生証提示
(全席指定・税込)
HP:https://www.himitsuheiki.com
問:エンターテインメント風集団 秘密兵器
mail:himitsuheiki.swp@gmail.com