家族を守るために完全犯罪を目論む高校生を描いた貴志祐介の『青の炎』が舞台化される。本作は上質な倒叙ミステリーであるとともに、主人公・秀一の心理やその破滅を繊細に綴った青春小説としても名高い。
「秀一は感情の振れ幅が大きく、葛藤に満ちたキャラクターです。個人的にも、人間の黒い感情や内面の葛藤が垣間見える役どころは凄く演じがいがあります。プレッシャーもありますが、楽しみですね」と秀一役の北村諒は語る。
母・妹と平和に暮らしていた秀一だが、10年前に母と離婚した元養父・曾根が家に居座り始めたことから状況は一変。酒に溺れ、暴力を振るう曽根から2人を守りたくても、法律や警察はあてにならない。やがて秀一は、曽根を殺害するための完全犯罪を1人で計画していく。
「うちは家族の仲が良く、妹もいるので、感情移入しやすかったところもあります。秀一は凄く頭が良いんですけど、10代らしい心の未熟さも持ちあわせているところが印象的です。自己犠牲的で、ちょっと中二病のようなところもありますね。とは言え、もし完全犯罪のトリックを思いついても、大抵は実行になんて移せないじゃないですか。
でも秀一はそれが出来るほどに追い込まれてしまった。たぶん、手はめちゃくちゃ震えると思うんです。曽根への憎しみと、殺人を犯す恐怖のバランスみたいなところにドキドキします」
両親役の村田洋二郎・田中良子について尋ねると。
「知った時は笑いました。『お父さんとお母さんだ!』と思って。田中良子さんは違う作品でも親子役で、プライベートでも“村田中夫婦”の息子として可愛がってもらっています。今回は舞台上でも親子で共演出来るのが凄く楽しみですね。洋二郎さんも、きっとお父さんをイヤ〜に演じてくれるんだろうな(笑)」
舞台は、秀一の心情をより際立たせる演出を予定しているとのこと。彼の計画と葛藤のゆく末を見届けたい。
「原作が発表されたのは1999年なので、今だったらすぐにバレてしまうようなトリックも使われています。でも、当時のノスタルジックな空気感も含めて楽しんでもらえたらと思っています。自分を秀一に置き換えた時にどう感じるかも考えてもらえたら嬉しいですね。秀一には他にもっと選択肢があったはず。特に今の時代には当時以上に調べられる情報や頼れる人も増えて、可能性が広がっていますから」
(取材・文:いつか床子)
プロフィール
北村 諒(きたむら・りょう)
1991年1月25日生まれ、東京都出身。大学時代からモデルとして活動し、2012年『闇の皇太子』で舞台デビュー。以後、2.5次元舞台を中心に話題作へ多数出演。主な出演作に、舞台『弱虫ペダル』シリーズ、舞台『刀剣乱舞』シリーズ、『おそ松さん on STAGE』シリーズ、『僕のヒーローアカデミア』The “Ultra” Stage シリーズ、舞台『憂国のモリアーティ』シリーズなど。『あんさんぶるスターズ』シリーズでは鳴上嵐として、舞台だけではなく原作ゲームの声優も務めるなど、活躍は多岐にわたる。
公演情報
舞台『青の炎』
日:2022年10月28日(金)~11月6日(日)
場:こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
料:S席[特典付]9,800円 S席[サイド席]9,800円 A席7,800円(全席指定・税込)
HP:https://officeendless.com/sp/aonohonoo_stage/
問:Office ENDLESS mail:info@officeendless.com