大学生、そして大人たちの青春群像劇! 総勢21名のキャストが贈る、懐かしくて、眩しくて、切なくて、温かい物語

 脚本家で演出家の春陽漁介が2012年に旗揚げした劇団5454(ランドリー)。人間の心理的な部分から作られるヒューマンコメディーを得意としている劇団で、2022年からプロデュース公演形態での作品作りをスタートさせた。
 2022年秋公演にお届けするのは、『ビギナー♀』。本作は、バドミントンサークルに所属する女子大生の青春と、町内会のバドミントンクラブに所属する大人の女性たちの青春を描く群像劇だ。
 どんな作品になるのか。出演する神田莉緒香、岡元あつこ(浅井企画)、樋口みどりこ(つぼみ大革命)、そして主宰の春陽に話を聞いた。

―――第14回公演『カタロゴス~「青」についての短編集~』という短編作品集の中の1つの作品を長編に書き換えられるそうですが、どういうお話か教えてください。

春陽「短編のときは、バドミントンサークルに所属する女子大生たちの青春群像劇になっていましたが、今回の長編では大人たちの青春も描きたいと思っています。
 大学生チームの主人公を神田莉緒香さんに、大人たちの青春を岡元(あつこ)さんと(樋口)みどりこさんを中心に描こうかなと思っております。テーマは、変わらず“青春”です。
 学生の青春は、時間制限がある青春、というか時間制限があるものが“青春”と呼ばれがちだなと感じていて。一方、大人はいつでも何でも始められるんですけど、辞めるタイミングが意外とないと気づいたんです。
 自分から離れなければならないと感じ始めたときに、町内会で集まっているバドミントンチームが青春であったことに気づく。そんな大人の青春の考え方みたいなものをプラスアルファで描けたらなと思っています」

―――出演者の皆さまにお伺いします。出演が決まったときのお気持ちや、あらすじを聞いたときの思いをお聞かせください。

神田「私は短編の『ビギナー♀』を観ていて、泣くほど笑ったことを覚えています。その後、縁あって、オーディションの話をいただいて、出演させていただくとなったときに、これは責任重大だなと。
 自分で見て泣くほど笑った作品で、それがさらにパワーアップしていく中で、自分がどう役割を全うできるか。ドキドキしているところもありますけど、出演が決まって、すごく嬉しいなというのが素直な感想でした」

―――泣くほど笑ったというポイントは?

神田「大学生たちのやりとりが描かれているんですけど、ストレートな悪口を言い合って、喧嘩して、泣いて、ミュージカルシーンがあって…… 自分が想像している5454(ランドリー)の世界観を逸脱していたんですよね。
 なんというかマッチしているようで、マッチしていない。それが、個人的にはツボでした。眩しくて、面白くて、泣くほど笑いましたね」

―――岡元さんはいかがですか?

岡元「私は最初にオーディションを受けたのが一昨年かな?」

春陽「そうなんです。実は『ビギナー♀』は2年前に企画して、一部のオーディションもやっていたのですが、コロナ禍で敢なく中断したという経緯がありまして。そのときから岡元さんはオーディションに参加してくださいました。
 その縁もあって、5454(ランドリー)の作品ではないものの、僕が和歌山で地元の歴史を扱った演劇を作ったときに、お母さん役をやってもらったこともあって」

岡元「そうなんです。いろいろを経ての今回なので、やっと5454(ランドリー)としてご一緒できる喜びが大きいですね。
 当時、私の友人が出演していて、短編の『ビギナー♀』は拝見しています。私、彼女に触発された部分があって。ものすごく売れっ子さんなのに、もっと自分の世界を広げたいとチャレンジをしている子だったんです。私はそういう感覚が自分の中で足りていなかったなと感じて、それが縁で5454(ランドリー)さんのオーディションを受けさせていただいた。
 先ほど春陽さんは『大人はいつでも何でも始められるんですけど、辞めるタイミングが意外とない』と仰ったけれど、何かを始めようという意気込むこともなかなか難しいんですよね。照れもあるのかな。その辺りの思いを舞台でも表現できたらいいなと思います。

―――樋口さんはいかがですか?

樋口「私は初めて出演させていただきます。先日、今回の出演者のみなさんとのワークショップがあったんですけど、自分が今までお芝居をしてきた経験上、こんなに深掘りして考えることなかったなと思うぐらい、濃密な時間を過ごさせてもらいました。だから既に今回、自分がものすごく成長できるんじゃないかなと感じています。
 もちろんこれまでの作品を見させてもらっていますし、出演できて本当に嬉しいです。関西演劇祭などでも話題になっていますからね。もっともっと自分もステップアップして、皆さんに負けないように頑張りたいなと思っております!」

―――皆さんが思う5454(ランドリー)の魅力や、そもそもの出会いを教えてください。

神田「もともと友人が客演していたことがきっかけで観に行きました。私は普段、自分で曲を書くソングライターをやっているんですけど、5454(ランドリー)さんの作品って、なんか曲が書きたくなる。そういう衝動に駆られるんですよね。
 一人ひとりの人間が無駄な物語じゃない。誰を見ていても楽しくて、そこが大好きです」

春陽「なんだか照れますね(笑)。
 僕もまだ莉緒香さんとの交流がないときから、彼女の曲を好きで聞いていました。そうしたらよく5454(ランドリー)に出演している俳優が莉緒香さんとつながっていると言って、芝居も観に来てくれるようになって。しかも芝居やる意欲もあるというので、オーディションを受けてもらう流れになりました。ミュージカルでアーティストがいるのは心強いので、これほど嬉しいことはないです」

岡元「えっと、この作品はミュージカルなんですね(笑)?」

春陽「ミュージカルのシーンもあります。でも岡元さんは多分歌います(笑)」

岡元「5454(ランドリー)さんの作品を今まで何作か観させていただいていますが、それぞれの作品が同じ色じゃないんですよね。どういう頭で、本を書いているんだろうなって、春陽さん自身に興味があります(笑)。
 1番最初に見たのは『ト音』だったんですが、『これってどういう意味なんだろう』と哲学的なところがあって、みんなが考えるきっかけをくれる作品でした。今回の『ビギナー♀』では、どういう課題が出てくるのかなとすごく楽しみです」

樋口「作品もそうなんですけど、まず本当に第一印象が『おしゃれすぎひん?』と思って(笑)。私もおしゃれじゃないといけないなと思っています(笑)。
 ……それから恥ずかしい話なんですけど、過去公演で『嫌い』という作品を見させていただいたときに、客席で開演を待っていたんですけど、チケットの座席番号を間違って、全然違うところに座っていて、すみません!という思いをした思い出がありました」

春陽「全然大した話じゃないですね(笑)。でも開演前に恥ずかしかったことって、引きずりますよね(笑)」

―――テーマが“青春”ということで、皆さんの青春エピソードを教えてください。

春陽「僕は日本大学芸術学部出身なのですが、当時は毎日が青春でした。学生たちで集まって、夜な夜なパフォーマンスをして。『授業で眠くなってもしらん! 夜に俺らは創作するんだ!』と。そういう日々が青春だったなと思います。
 恥ずかしい話なんですけど、僕は3大欲求にプラスして青春欲求があるということを豪語していて。寝なくてもいい、彼女なんて要らない、食事も要らない。それだけで満たされている時間があると。 ……だからめちゃくちゃ痩せていたんですよ、食べないから(笑)」

一同「(笑)」

春陽「それぐらい青春で満たされた時間でした(笑)」

神田「私の青春は専門学校時代。同じような夢を持った10代の学生たちが、遊びなのか本気なのかも分からない中で、好きなことを一緒にやる。それが本当に青春だったなと思っています。
 当時、学校の校歌を作らせてもらって。今も学生たちがその校歌を歌ってくれているんですよ。卒業した後も、後輩たちの青春に携われているというのはすごく嬉しい話ですね」

岡元「私がお芝居の世界に入ったのが、高校生のとき。その時から大人の世界にいたので、いわゆる学生の青春みたいなものを一切経験せずに『もっと早く大人になりたい』と思って来ちゃったんですよね。
 思い返すと、テレ朝で『トゥナイト2』をやっていたころが多分私の青春時代。同世代のレポーターたちが集まって、お兄ちゃんの存在ぐらいのディレクターたちと『次作る? 何ネタにする?』『数字がいくつだった! やったー! 飲みいくぞ!』みたいなね。毎日毎日作ったものが、その日評価を受けて、みんなでそれを喜んで。あの時代が青春ですね。
 今でもあの時のメンバーとは仲良くしているし、いまだに家族ぐるみの付き合いが続いています。学生時代にできなかったこと、全部やったなぁって」

樋口「青春いっぱいあるんですけど、1番今が青春だなと思っています! 『今日が1番若い』と言うじゃないですか。私は普段、吉本の9人アイドルユニットで活動していまして、歌ったり踊ったり、コントをしたり、『THE W』の決勝に行ったりして……。
 メンバーやファンの皆さんと分かち合う時間が最高に“青春”です。舞台上から見えるサイリウムのキラキラした感じとか、みんなが笑っているところとか、本当にわーって思うんです。私はいつか死ぬときに、走馬灯のように思い出すんだろうなと(笑)」

岡元「すごくよく分かります。学生のときは知らないうちに“青春”だったけれど、年をとると“青春”に対して貪欲になる気がします。「今、これはきっと青春に違いない!」みたいな(笑)。
 『この瞬間を忘れないようにしよう、最後かもしれないから』という貪欲さが出てくるかもしれないですね」

―――最後に、楽しみにされているお客様に一言お願いします。

樋口「これから皆さんと1から作り上げていきます。全員と初共演なので、まず皆さんのことを知れるのが楽しみですし、作品を作り上げていく段階が楽しくてワクワクする。絶対にいいお芝居にしようと心の中でメラメラしているので、たくさんの方に観ていただけたらと思っております!」

岡元「コロナ禍でまだ劇場に足を運ぶことを躊躇っている方もいるかもしれません。でも観に来てくださった皆さんに『良いもの観た!』と思ってもらえるような時間と空間を提供したい。そのためにお稽古を頑張っていきたいと思います」

神田「絶対に『青春だったな』とか『楽しかったな』とか『笑ったな』とか思って帰っていただけると、今から確信しています。どうぞ期待して、劇場に来ていただければと思います。青春をぜひ感じて欲しいです!」

春陽「コロナ禍になって、劇場でお客さんが笑い声を出すことにハードルがあった時期がありました。でも演劇やっている意味って、目の前のお客さんがリアクションをとってくることの喜びでしかないですし、今回の『ビギナー♀』は、ミュージカルでもあり、コメディでもあり、人間ドラマでもあるという、エンタメのいいとこどりをしたような作品にしたいなと思っています。

 こんなにも素晴らしいキャラクターたちが集まってつくる作品が、今から本当に楽しみです。必ず笑えて、じんわり泣けて、いろいろな感情を持ち帰ってもらえると思います。演劇になかなか戻れないお客様にも『やっぱり演劇を観続けたい』と思ってもらえるよう、エネルギーある作品にしたいと思っていますし、できると思っています。ぜひ観ていただきたいです」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

神田莉緒香(かんだ・りおか)
1992年3月26日生まれ、千葉県出身。シンガーソングライター・ラジオパーソナリティ。ストレートで等身大な歌詞は世代を超えた人たちから熱い支持を受けている。直近では、ORESKABANDとのコラボレーション楽曲『SURVIVOR/up&down my heart』をリリースした。

岡元あつこ(おかもと・あつこ)
1973年10月6日生まれ、東京都出身。高校在学中から芸能活動をスタートさせ、大学在学中に情報バラエティ番組「トゥナイト2」(テレビ朝日)のリポーターとして活動したことで人気を博した。近作は、東京マハロ公演『あの日わたしをはだかにして』など。映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』(太宰治原作、近藤明男監督)が今秋公開。

樋口みどりこ(ひぐち・みどりこ)
1993年1月18日生まれ、兵庫県出身。よしもと発めっちゃオモロいアイドル「つぼみ大革命」のメンバー。キャッチコピーは「つぼみの爽やか担当」。2019年には、つぼみ大革命として「女芸人No.1決定戦 THE W」(日本テレビ)決勝戦に出場した。近作に、藤山寛美 三十三回忌追善 喜劇特別公演『大阪ぎらい物語』(2022)、MousePieced-ree 20周年記念興業第一弾『CAT TOWER』(2022)など。

春陽漁介(しゅんよう・りょうすけ)
1987年6月2日生まれ。脚本家・演出家。2012年に劇団5454(ランドリー)を旗揚げ。イキウメ前川知大氏に師事し脚本を学び、劇団5454 第2回公演『ト音』が劇作家新人戯曲賞の最終選考に残る。多数の商業演劇のほか、沖縄国際映画祭出品作品である映画『じしょう米子』の脚本、Every Little Thingの20周年アルバム豪華版にて、持田香織の歌詞を物語にする「リリックストーリーブック」を執筆するなど、舞台に限らず活動中。
2022年8月には小説『プロパガンダゲーム』の舞台化にあたり脚本・演出を担当し、そのエンタメ性と濃密な会話表現が反響を呼んでいる。

公演情報

劇団5454 2022年秋公演『ビギナー♀』

日:2022年11月9日(水)~13日(日)
場:あうるすぽっと
料:SS席[最前列]7,000円 S席6,500円
  A席6,000円 車椅子席6,000円
  (全席指定・税込)
HP:https://5454.tokyo
問:劇団5454
  mail:beginner2022@5454.tokyo

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