東京バレエ団が、この秋『かぐや姫』第1幕を世界初演。金森穣演出・振付による全3幕のグランド・バレエで、かぐや姫役には団内オーディションで足立真里亜が選ばれている。
「振付を何種類か渡されその場で覚えましたが、コンテンポラリーはあまり馴染みがなく、踊り切るのに必死で手応えを感じるどころではなくて。それに私自身ようやくソリストの役を頂くようになったところだったので、配役された時は〝本当に自分でいいの⁉〞という心境でした」
日本最古の物語文学を題材に、金森自ら台本を書きバレエ化した本作。今回上演する第1幕では、かぐや姫の誕生から宮廷への旅立ちまでがドビュッシーの楽曲にのせ描かれる。
「1幕のかぐや姫はまだ幼く、お転婆な少女から初恋を経験して少しずつ成長していく心情の変化を表現しなければなりません。振付は古典の優雅さを残しつつ型にはまらない新しさが混ざり合った動きになっていて、東京バレエ団の良さを生かして下さっているように感じます。最初にドビュッシーの曲を使うと聞いた時はなかなかイメージが湧かなかったけど、実際に振付が加わると和のテイストに聴こえてきて。作曲家も天才なら振付家も天才で、凄い場面に立ち会っているんだなと感じます」
かぐや姫の初恋相手となるのがストリートチルドレンの道児。本作のオリジナルキャラクターで、プリンシパルの秋元康臣とペアを組む。
「入団した頃〝こんなに綺麗で上手な男性ダンサーが日本にいるんだ!〞と驚いて、まさか一緒に踊れるとは思ってもみませんでした。どんな時もしっかりサポートして下さるので安心感があり凄く頼りにしています」
入団して6年目。初主演は今年8月の『ねむれる森の美女』で、『かぐや姫』を経て12月には『くるみ割り人形』の全幕主演が控えている。飛躍が続くが、「もともと大きな夢を目指すより目の前の課題に一つひとつ取り組んでいくタイプ。今はまず『かぐや姫』という目標をクリアしなければ」と堅実に前を見据える。
「慣れない動きも多く、まだ課題は沢山あって。まずはそれらを消化して、そのうえでかぐや姫の存在感を表現したい。無邪気でありつつ気品を備えた、金森さんが思い描くかぐや姫を体現できたらと思っています」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)
足立真里亜さん
「ハロウィンのクラスレッスンで、バレエ学校の男の子のコスプレをしました! バレエ団の男性に学生時代のレッスン着を借りて……。ややウケでした!!」
プロフィール
足立真里亜(あだち・まりあ)
千葉県出身。3 歳よりバレエを始める。2015 年、東京バレエ団に入団。同年6 月、『ラ・バヤデール』で初舞台を踏む。主なレパートリーに、子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』(オーロラ姫/フロリナ王女)、ブルメイステル版『白鳥の湖』四羽の白鳥、『ドン・キホーテ』(キューピッド/4 人のドリアード)、『ラ・バヤデール』パ・ダクシオン、『影の王国』第1 ヴァリエーション、『ラ・シルフィード』3 人のシルフィード、『ドン・キホーテの夢』(キューピッド/ キトリの友人)、『真夏の夜の夢』カラシナの精など。バレエ団初演作品に、『パリの炎』パ・ド・ドゥ(2017 年)、バランシン『セレナーデ』(2018 年)、『アルレキナーダ』パ・ド・ドゥ(2018 年)、『くるみ割り人形』フランス(2019 年)がある。
公演情報
東京バレエ団 『かぐや姫』・『中国の不思議な役人』・『ドリーム・タイム』
日:2021年11月6日(土)・7日(日)14:00開演(13:00開場)
場:東京文化会館 大ホール
料:S席13,000円 A席11,000円 B席9,000円
※他、各種席種あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp/
問:NBSチケットセンター
tel.03-3791-8888(平日10:00~16:00/土日祝休)