牧阿佐美追悼公演『飛鳥 ASUKA』全幕上演 先生に『良かったわよ』と言ってもらえる舞台を

 1957年初演、『飛鳥物語』をもとに、牧阿佐美 改定演出・振付により2016年に誕生した『飛鳥 ASUKA』。いにしえの都・飛鳥を舞台に描く全幕バレエで、昨年10月に逝去した牧阿佐美の追悼公演として再演を行う。

 「初演は海外ゲストが主演で、私はパ・ド・ドゥの創作にモデルとして参加しています。阿佐美先生は何時間もかけて創作し、それでいて翌日また一から作り直すようなことも多々あって、より良いものを目指そうとする姿に圧倒されたのを覚えています」と語るのは、ファーストソリストの中川郁。自身2019年のウラジオストク公演で主演の春日野すがる乙女を踊っている。

 「すがる乙女は人身御供で、村のために犠牲になろうとする。その責任感や緊張感は、覚悟を決めて舞台に出て行く時の自分自身の心境とリンクする部分があって。役との境界線が曖昧なまま舞台に立ち、すがる乙女の人生を少し体験できたような不思議な感覚になりました。終演後、阿佐美先生に『一幕はリハーサルより少し良かった』と言って頂きました。先生に褒められることはまずないので、“少し”でも本当に嬉しかったです(笑)」

 バレエ学校時代からプロになるまで、牧の下で過ごした時間は長く、想い出は数えきれない。

 「阿佐美先生は私のささいな変化にすぐ気づいてくださった。『自分で考えなさい』と言いつつ、迷ったときはいつも正しい道へ導いてくださいました。橘バレヱ学校、日本ジュニアバレヱ、A.M.ステューデンツ、新国立劇場バレエ研修所と、ずっと先生に教わってきて、たくさん叱られたし、たくさんのことを学んできました。だから先生がいらっしゃらないのが未だに信じられなくて」

 偉大な師がこの世を去って1年。その最後の大作であり代表作の舞台に、主演として立つ。

 「ウラジオストク公演の時は本当につきっきりでリハーサルをみてくださったので、曲を聴くだけで当時のことを思い出してしまいます。今回はパートナーも初役の水井さんなので、表現も変わるはずだし、そこは私も楽しみです。前回の映像を見ていると、先生はもっとこうしたかったのかなと、改めて色々気づかされます。一度踊ってわかったこともあるし、新たな課題もたくさん出てきました。この追悼公演は前回よりもっといい舞台にしたい。そして先生に『良かったわよ』と言ってもらえるような踊りができたらと思っています」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)

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「夏バテしやすいので、今年はたんぱく質とビタミン、ミネラルを意識して取り、体を冷やしすぎないように気をつけます」

プロフィール

中川 郁(なかがわ・いく)
東京都出身。橘バレヱ学校、日本ジュニアバレヱ、A.M.ステューデンツ(第26期生)、ハンガリー国立バレエ学校、新国立劇場バレエ研修所(第6期生)で学ぶ。2011年、牧阿佐美バレヱ団に入団。これまでの主な出演作品に、『リーズの結婚~ラ・フィーユ・マル・ガルデ~』リーズ、『くるみ割り人形』金平糖の精、『眠れる森の美女』オーロラ姫、『飛鳥 ASUKA』春日野すがる乙女、『時の彼方に~ア・ビアント~』カナヤ、『三銃士』ミレディなど。

公演情報

牧阿佐美バレヱ団 牧阿佐美追悼公演 飛鳥 ASUKA 全幕

日:2022年9月3日(土)・4日(日)15:00開演(14:15開場) 
場:東京文化会館 大ホール
料:S席14,000円 A席11,000円 B席8,000円 C席5,000円 D席2,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.ambt.jp/
問:牧阿佐美バレヱ団 tel.03-3360-8251(10:00~18:00/土日祝休)

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