ある家族をめぐる、笑って泣けるハートフル“お葬式”コメディ 俳優としての道を選んだから、舞台にも根を張っていく

 石野真子主演のハートフル“お葬式”コメディ『きっとこれもリハーサル』は、ある4人家族がお葬式のリハーサルをすることになる物語。鈴木福はその一家の長男という役どころだ。これまで主に映像で活躍し、ミュージカルなどいくつかの舞台に立ってきたが、本格的な会話劇は今回が初めて。ちょうど「舞台もしっかりやっていこう」と決めた矢先での舞台出演に意気込む鈴木に、俳優としての現在地を聞いた。


俳優として生きていくと決めたから、もっと舞台に立ちたい

―――映像を中心に出演されていますが、鈴木さんにとって舞台はどんな場所ですか?

 「“実力派”として活躍される多くの俳優さんの通り道でありながら、ホームという印象があります。僕はずっと映像のお仕事を中心にやってきたので、舞台にもしっかり足をつけられるような俳優になりたいです。ストレートプレイだけでなくミュージカルもすごく好きなので、もっともっと色んな舞台に立っていきたいですね」

―――物心つく頃から活動されてきて、俳優になりたいと具体的に思ったのはいつ頃なんでしょう?

 「実は最近なんです。一昨年くらいかな、監督さんに『子役じゃないんだから』と言わせてしまって、『あ、このままではダメだ』と。そこで『俳優としてやっていきたい』とはっきり自覚しました。俳優として一生続けていくなら、映像だけでなく舞台もやっていきたい。そう思ったところに今回の舞台出演のお話をいただけたので、『チャンスだ!』と嬉しかったです。俳優としての一歩だと思ってしっかりやりたいです」

―――俳優として大きな転機だったんですね。15年以上のキャリアの中で、俳優として影響を受けたことは?

 「僕は小さな頃から『仮面ライダー』が好きなんですよ。だから昨年、映画『スーパーヒーロー戦記』に出演させていただいて『頑張ってきて良かった~!』と思いました。俳優として大きなポイントでしたね。将来目指すところは“変身”なので、そこに向けてより頑張ろうと燃えています(笑)」

―――俳優としての目標は“変身” いいですね! 鈴木さんにとって理想の俳優像はありますか?

 「評価される俳優じゃなかったら出続けられない。すごく大変なお仕事だけど、ずっと出続けられることは重要だと思います。僕はとてもありがたいことに幼稚園の頃からずっと映画やドラマに出演させていただいているので、これからもお声がけいただける俳優でいたい。そして『良い俳優さんだね』と言ってもらえる俳優になりたいです」

―――“良い俳優”とは?

 「難しいですね(笑)。たくさんの人から好きになってもらえる俳優さんかな。見てくださった方に『この人の演技を見たい』と思われるだけじゃなく、スタッフさんたちから『一緒に仕事をしたい』と言ってもらえるような俳優。まわりの人たちに『この人がいたら安心だね』と思ってもらえて、お客さんには『見たいな』と求められる俳優さんになれたらベストですね」

笑って、楽しく、お葬式を身近に感じられるお芝居に

―――台本を読んで、第一印象はいかがでしたか?

 「最初からゲラゲラ笑っちゃった! 冒頭の(石野)真子さんとしゅはま(はるみ)さんの会話が目に浮かぶようで、あまりに面白くて。僕の役については、ボケというよりはツッコミ。楽しそうだけど、難しそうですね」

―――石野真子さんが一家の明るいお母さんを演じられます。お父さん役が羽場裕一さん、長女役が川島海荷さん、鈴木さんは弟役、という4人家族ですね。どんな家族になるのか楽しみです。

 「うちとはまったく違う家族なんですよ。うちの家族は仲が良い。秘密もほぼなくて、逆に言わなかった方が怒られるくらい。親も僕のことをすごく応援してくれています。真逆ですね」

―――その一家がお葬式のリハーサルをする……という物語ですね。

 「そうなんです。お葬式を芝居にする、と言うと驚く人もいるだろうけど、お葬式ってすごく大事なことですよね。一通りの流れやマナーとかもちゃんと知っておかなきゃいけない。亡くなった人によっては、静かに送ってほしい人もいれば、笑って送ってほしい人もいるかもしれない。その場に応じたお葬式をするためにも、作品を通して、基本的なお葬式のことを、一通り学ぶことはいいなと思いました。
 僕は親戚のお葬式などにも出たことはありますけれど、幸いなことに祖父母も元気なので、両親が喪主をしているところを見たことがないんです。僕もいつか喪主をやらなければいけない時がくるかもしれないけれど、やり方なんてわからない。だからこうやってお芝居を通して、お葬式をより身近に感じられる機会があることは面白いですね。
 しかもお葬式ってすぐに準備をしなきゃいけないじゃないですか。ご遺体をなるべく綺麗な形で保つために時間が限られてるからこそ、その事前準備が早ければより良いお葬式ができるかもしれない。準備というのはすごく重要だから、説教臭くない演劇でお葬式について知ることはすごく面白いなと思います。なにより、楽しい作品ですから、お芝居としてももちろん笑っていただきたいです」

―――台本を読んで印象的なシーンや、楽しみなところは?

 「誰の、とは言いませんが、コンテンポラリーダンスのシーンがどうなるのか楽しみですね(笑)。物語としてはお葬式のリハーサルをするというお話なので、お葬式のシーンをどう演じるのかも楽しみです。あと、みんなの格好に期待ですね。お姉ちゃん(川島海荷)なんて出てくるだけで面白いんじゃないかなぁ(笑)。
 僕の役については、わりと普通の男の子なんです。今までの舞台は『ビッグ・フィッシュ』も『イッツショータイム!!』もキャラクターの色が濃かったんです。でも今回のように普通の男の子だと、俳優としての実力が出るだろうからすごく楽しみです」

―――演出の土田英生さんとは初めてですが、一緒に創作することへの期待は?

 「ずっと演劇をされている方だからこその、僕を見てくれる視点です。土田さんは『鈴木福だからこの役、というイメージじゃなくて、この役をやっていたのが鈴木福だった……というふうにしたい』と言ってくださった。だから僕は、1から俳優としてしっかりスタートを踏んでいこうと思えました。まだまだ未熟なところは教えていただきながら、みなさんと一緒に楽しく作っていきたいです」

―――課題や、俳優として乗り越えたいことは?

 「声ですね。舞台と映像では声のトーンや出し方が全然違うので、そのギャップには苦労しています。映像は聞こえない声でしゃべってもマイクが拾ってくれるけど、舞台は伝えないと伝わらない。あまりやったことのない声の使い方なので、頑張らないといけないなと思っています。そこをどれだけ本番までに、100%……いや120%に持っていけるか、0に近い状態から学んでいくつもりです。
 でも声以外にも課題ばかりなので、もうすべてが勉強ですね。ゴールがないから『もっともっと』と思っています。そこがお芝居の良いところなんでしょうね。これから俳優としてやっていくには、もっと実力を高めていかなきゃいけない。そのためにはみっちりと鍛えていただける場所が必要なので、今回、お客さんの反応を直接いただける舞台にお声がけいただけて、僕にとっても大きな一歩になる作品になりそうです」

(取材・文:河野桃子 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

鈴木 福(すずき・ふく)
2004年6月17日生まれ、東京都出身。2011年、ドラマ『マルモのおきて』に出演し、人気を博す。以降、映画・ドラマ・舞台・CMなど多岐にわたり活躍。主な舞台出演に、舞台FOCUS『イッツショータイム!!』、朗読劇『青空』、ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』など。最近はニュースなどの情報番組やラジオ・ナレーションと仕事の幅を広げている。

公演情報

きっとこれもリハーサル

場:新国立劇場 小劇場
料:SS席[非売品グッズ付き・客席前方ブロック]13,000円 SS席[客席前方ブロック]11,000円 S席[非売品グッズ付き]10,900円 S席8,900円(全席指定・税込) ※非売品グッズ付きチケットは先行販売のみ
HP:https://koreriha.com/
問:公演事務局 https://supportform.jp/event(平日10:00~17:00)

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