6C待望の延期公演が決定! “12人の私”が共生するタップダンサーと少女の心の軌跡を描くヒューマンストーリー

 主演・樋口靖洋の怪我により、昨秋より公演が延期となっていた劇団6番シードの新作『12人の私と路地裏のセナ』が待望の上演となる。脚本・松本陽一による完全新作は、“12人の私”と共生するタップダンサーと、路地裏の少女・セナの心の軌跡を描く感動のヒューマンストーリー。松本が「今までにない新しい手法」と語る展開と、6番シードが誇る個性派俳優・樋口の7年ぶりの主演はどんなケミストリーを生み出すのか? 2人に本作への意気込みを聞いた。

6番シードの中でもチャレンジングな作品

―――待望の新作がアクシデントを乗り越えて上演となります。多重人格を持ったタップダンサーの物語ですが、どこから着想を得たのでしょうか?

松本「通し稽古を終えてあと数日で劇場入りという所で樋口の骨折が判明しました。
 1つのものを沢山の人間が関わって創り上げたものをお見せできないのは金銭面以上に気持ちの面でこたえましたね。なので、出来るだけ早く前に向けるようにすぐに劇場とキャストの日程を押さえて、同じメンバーで公演ができることになりました。リベンジ公演として是非成功させたいです。
 樋口が2018年で西部劇『TRUSH!』でタップダンスをするシーンがあって、そこからコツコツと練習していたのでタップダンサーのひとり芝居をしたら面白いのではないかと思っていました。また1人の人間に何人もの人格がある解離性同一性障害を扱った作品はありますが、それの逆の視点から観て、『何人かの役者が1人の人間を演じたらどうなるのか?』というアイデアはずっと持っていて、それは映像よりも舞台の方が生きるのではと感じていました。
 ただ、そういう中年男性を描くだけだと、重くなってしまう。ヒューマンドラマにも仕立て上げたかったので、少し海外のような雰囲気も入れた架空の世界を意識しました。作中では12人の人格を“人格者”と呼んでいて、それぞれ“麗しの君”“通りすがりのヤクザくん”といった風変りな名前をつけていて、そこに樋口が醸し出す独特の可笑しみや哀愁が加わって、チャップリンのような雰囲気と言ったらいいのでしょうか、とにかくこれまで手掛けた作品の中でも思い切りチャレンジングな作品になると思います」

過去作でのタップダンスがうまくできなくて

―――樋口さんにとっても怪我を乗り越えての上演、気持ちもひとしおだと思います。

樋口「本公演での主演は2014年の『Dear Friends』以来ですが、脚本を読んだ印象では、僕一人が引っ張っていくというよりも、人格者12人を含めて全員でストーリーを紡いでいく印象を受けました。『Dear Friends』では漫画家、本作ではタップダンサーという同じく専門的な職業であり、松本さんが得意とする群像劇の要素が生きていると感じました。舞台上でどの様にして人格が入れ替わるのかは是非、注目して頂きたいポイントです。
 正直、『TRUSH!』ではあまりタップダンスがうまくできなかったこともあり、悔しくて公演後も練習を続けていたことが松本さんの目に留まって今回につながっています。技術はまだまだですが、練習をする度に楽しくなりました。ダンスにも色んなジャンルがありますが、タップは練習を重ねればその分だけ上手くなると言われているので、才能よりも日々の努力が大事なんだと実感しています。
 その甲斐もあって全治3か月の怪我でしたが、療養中も動かせる足だけでステップを踏んだりしていたので、あまり技術が衰えることなく今回に至っています。あと少し練習すれば去年のレベルには戻せる自信があるので、また怪我しないように筋トレやお酒も控えるようになってかなり生活が変わりました。そういう意味では大変な目には遭いましたが、骨折が良い転機にもなったんじゃないかと(笑)」

1つのシーンに時間をかけた

―――物語だけでなく、心情の表現方法など6番シードの新境地を拓く作品になりそうです。

松本「稽古場ではチャレンジの連続でしたね。独特な脚本ですが、信頼できる役者さんに揃ってもらったので、1つのシーンにじっくり時間をかける余裕をもらえました。役者同士がそれぞれの人格を掘り下げていくときに、車座で話あって解釈をつけてくれたりしてすごく刺激的で面白い現場になりました。これをお客さんがどう評価するか、幕が開いてみないと分かりませんが、新境地に続く扉は開くのかな? と期待をしています。
 当然、1年前よりは稽古時間は少なくなりますが、もう一度改めて全員で世界観を磨き上げてさらに良い作品に仕上げたいです」

―――読者にメッセージをお願い致します。

樋口「正直、復帰できるか不安でしたが、怪我を通じて肝っ玉が据わったというか、怖がらずにぶつかってやるぞと強い気持ちになりました。僕のタップダンスも他のキャストもパワーアップしていますので、是非ご期待ください!」

松本「本作は6番シードの作品の中でもちょっと新しい作風であり、これぞ演劇という作品なので、幅広い世代の方に楽しんでもらえると思います。劇団としては、コロナ禍からの復興というか、劇場にもう一度足を運んでもらえれば、演劇をお腹一杯楽しんでもらえる体験を発信し続けていきますので、是非劇場に足を運んで頂ければと思います」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

樋口靖洋(ひぐち・やすひろ)
1980年12月5日生まれ。三重県出身。2006年、劇団6番シードに入団。同年『かりすま』でデビュー。「樋口ワールド」と呼ばれるオンリーワンの演技で数多くのコメディ作品で異彩を放つ。安定のコメディリリーフは勿論のこと、中年男性の悲哀などを醸し出す役も得意。ピザが好き。

松本陽一(まつもと・よういち)
1974年9月18日生まれ。広島県出身。脚本家・演出家・劇作家。劇団6番シード代表。スピード感あふれるノンストップコメディを中心に、これまで50作品以上の脚本・演出を担当。映画『Deep logic』『夜明けの記憶』『パニック4rooms』などの映像作品の脚本のほか、数多くの演劇ワークショップを開催。舞台『独房のルージュ』池袋演劇祭豊島区長賞受賞。

公演情報

劇団6番シード 第74回公演
『12人の私と路地裏のセナ

日:2022年8月10日(水)~16日(火)
場:中野 テアトルBONBON
料:7,500円(全席指定・税込)
HP:http://www.6banceed.com/
問:劇団6番シード
  mail:web@6banceed.com

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