即興でメロディを紡ぎ出す、バイオリンとギターのデュオ・ユニット パリの街にそよぐ風を、そのまま詰め込んだような音楽を「パリ祭」で!

 7月14日はフランスの革命記念日。パリ祭と呼ばれ親しまれているこの日は、パリを中心に盛大なお祝いが催されるが、日本での「パリ祭」といえばシャンソンを歌う歌手達が一堂に会したシャンソンの祭典だ。1963年に我が国に於けるシャンソンの草分け 石井好子を中心に開催されてから、今回で60回という節目となる今年の「パリ祭」。毎年掲げられているテーマは「パリの異邦人」。シャンソンを、そしてフランスを愛する歌手達が集まる日本の「パリ祭」のなかで、異邦人的な存在といえばバイオリニストの南野梓とギタリストの谷村武彦によるデュオ、アズールヴェールだ。

南野「私がフランスに留学していたときに、街中で演奏する大道芸人を見聞きしてそれに憧れ、谷村さんを誘って始めたんです」

 南野は武蔵野音楽大学で大学院まで進んでクラシックのバイオリンを極めるが、その後フリージャズに傾倒。即興音楽にのめり込んだという異色の経歴。谷村も子供の頃からクラシック・ギターを学び、現代曲にも積極的に取り組み、さらにインドのシタールも弾きこなすという多才さだ。

谷村「南野さんの影響を受けてフリージャズや即興の世界に踏み入ったんです」

南野「結成してすぐにパリに乗り込みました。当時は今ほど厳しくなくて、街中で演奏しても大丈夫なところがありました。それでも演奏中にお巡りさんが来て追いかけられたり(笑)」

 フランス、パリという繋がりはあるものの、シャンソン歌手の伴奏をするわけでもない2人が「パリ祭」に初参加したのは2010年。今ではもはや常連メンバーと言うべき存在になっている。

谷村「名古屋で活動していた私達が東京に出てきたとき、戸川昌子さんがやっていた伝説のシャンソニエ、“青い部屋”で最後のオーディションがあって、それに受かったんです。それがきっかけで『パリ祭』へも戸川先生にご紹介頂きました」

 ギターとバイオリンによる美しいメロディは、数小節のモチーフだけを決めて後は即興だという2人。つまりそのステージでしか対面できない音楽を常に生み出しているというわけだ。

南野「皆さんの応援を受けて培ってきた歴史あるパリ祭。それを未来に繋ぎたいという気持ちで参加しています。日本の宝ともいえる催しですから、大切にしていきたいですね」

(取材・文:渡部晋也 撮影:山本一人(平賀スクエア))

プロフィール

南野 梓(みなみの・あずさ)
武蔵野音楽大学・同大学院でクラシックのバイオリンを学ぶ。芸術学修士。在学中よりクラシック・民俗音楽・フリーミュージック等の演奏活動を、東京・名古屋・京都などで行う。フリー・バイオリニストとして活動。美術・舞踏・演劇との共演も意欲的に行う。谷村武彦と結成した「アズールヴェール」でフランスへの演奏旅行を敢行。その後戸川昌子のシャンソニエ「青い部屋」にレギュラー出演を果たす。そのパワフルな即興演奏から、「ロックなヴァイオリニスト」と呼ばれている。

谷村武彦(たにむら・たけひこ)
愛知県出身。13才よりギターを始め、1981年よりソロリサイタルを開催。ギターを酒井康雄、芳志戸幹雄、各氏に師事。その後、グレゴリア聖歌をジャン・メルオー氏に、インド音楽(シタール)をアミット・ロイ氏に学ぶ。クラシックギタリストとして活発に演奏活動を行う中で、日本初演を含む現代音楽中心のプログラムにも取り組んでいる。さらに前田美波里をはじめとする数多くのアーティストとも共演する。

公演情報

シャンソンの祭典 第60回パリ祭 パリの異邦人

日:2022年7月6日(水)・7日(木)17:00開演(16:15開場)
場:Bunkamura オーチャードホール
料:S席10,000円 A席7,000円 B席4,000円 学生席1,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.paris-sai.com/
問:ジェイステージナビ tel.03-6672-2421(平日12:00〜18:00)

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