老若男女すべての人が楽しめるバリアフリーの舞台を目指して 2122年の世界を舞台にしたSFヒューマンドラマを2チームで上演!

 小出侑門が主宰するProjectKは、子どもからおじいちゃんやおばあちゃん、小さなお子さんと一緒に観劇したいお母さんお父さん、舞台を観たいけどお金がない学生さん、そして、生きることに介助が必要な障害者の方など、老若男女すべての人が楽しめるバリアフリーの舞台創りを目指す団体だ。
 今回は、2122年の世界を舞台にしたSFヒューマンドラマ『KIKAI』を2チームで上演する。作・演出の小出、主人公を演じる木村葉月、田中音江に意気込みなどを聞いた。

 ―――まず、本作がどういうお話なのか教えてください。

小出「ロボットの女の子が主人公で、今から100年後の未来の話です。現代より科学技術が進み、地球の環境も悪くなっていってしまった世界。これまで科学技術が進めば、文明も高まっていくと信じていましたが、いつかは限界が来ると思うようになったことが着想のきっかけです。
 限界を迎えた時、世界は荒れ果て、人々は争いを起こす。機械が文明を壊していったり、独り占めしていくような国が出てきてしまったりするのではないか。そのときに思う、本当の人間らしさとは何か。ロボットの女の子を主人公にしていますが“ロボットの方が人間らしいのでは?”といったことがテーマです。
 今の世界情勢などを見ていても、人間は愚かだなと思う部分があります。その辺りを考えてみませんかと投げかけられたらいいなと思っています」

 ―――木村さんと田中さんはそのロボットのマリア役を演じられます。脚本を読まれた印象や役について思うことは?

木村「私が初めて読んだ時に、ロボットというものを身近でも作品でもあまり見たことがなかったので、すごい新鮮に感じました。人間ではない役を人が演じることがすごく難しそうだなと思っていました。
 でも、徐々に読み進めていくうちに、私が思っていたロボットとマリアは違う部分があるなという風にも感じて。ロボットだけど、もっと人間味があるんですよね。その微妙なところを伝えられるかがポイントになりそうです。ただのロボットと思ってかかると、痛い目を見てしまいそうですが(笑)、普通の人間が訴えるよりも、なんか説得力があるのではないかなと思います。頑張ります」

田中「『人間らしさって何?』とか『生きるっていうのを知りたい』とか、そういうセリフがあるんですけど、普段私が考えていることと近い部分があるんです。マリアもそう思いながら成長していくはず。自分と重なる部分をうまく生かして、マリアとして生きれたらなと思います」

 ―――最初にオファーされた時のお気持ちを教えてください。

木村「最初お話をいただいた時は、舞台の概要をいただいて、面白そうな作品だなと思ったことが第一印象でした。私、Wキャストを初めてやるんですよ。シングルキャストばかりだったので、Wキャストに対する不安みたいなのはちょっとありました。
 どうやって進めていくものなのかも分からなくて。自分の色を出したいという思いはもちろんありますが、逆も見てみたいなという気持ちもある。でも、そこに引っ張られすぎてしまうのではという不安も最初はありましたね」

田中「私はすごく嬉しかったですね。あらすじ読んで、めっちゃやりたいと思いました。相手役がいるのも初めてですし、SFやAIといった世界観も好きで。自分が妄想してきた世界で生きられるかもと思ったら“ぜひ出させてください!”という感じでした」

 ―――木村さんと田中さんをキャスティングされた理由は? おふたりにどんなことを期待されていますか。

小出「おふたりが出ている舞台を観たことがあって、いい具合に人間らしくなかったんですよね。見た目も綺麗な感じで、いい意味で人間臭さがあんまりなかった。そこでAI感をまず感じました。そこにチャーミングな部分だったり、臭くない人間らしさがプラスされたら、すごく魅力的になるだろうなと思って、オファーしました」

 ―――Wキャストにされたのは?

小出「おふたりに限らず、チームによって全然違う毛色の俳優さんたちをキャスティングさせてもらったので、別作品になるぐらいの雰囲気を作りたいなと思っています。見た目のイメージで言うと、田中さんの方がクールなイメージで、木村さんの方が柔らかいイメージ。それぞれがどう感情を持っていくのか。マリアによって、チームのカラーがどんどん変わっていくと思っています。お二人には全然違う魅力を僕は感じているので、そこがすごく楽しみです」

 ―――木村さんと田中さんは今日が初対面ということですが、ぜひお互いの印象を教えてください。

木村「ほんわかされていて可愛らしいなという印象です。私は個人的に黒髪ロングが大好きなので、可愛いなと思っています。あと1つ、びっくりしたことがあって。スマホに絆創膏を貼っているんですよ(笑)。ケースが割れてしまっていて“怪我するから”(笑)。絆創膏は本来、指に貼るものなのに、スマホに貼っていて、ちょっと天然なところもあるのかな?と思っています」

田中「実は取材が始まる前、駅でお見かけしていて。すごく目を引かれて、綺麗な方だなと。“絶対この人だ!”と思っていました。写真の印象ではギャルっぽくて、話しかけづらい方なのかなと思っていたんですけど(笑)、実際お話しすると、すごく話しやすくて。この人と同じ作品で同じ役でできるんだって、嬉しくなりました」

 ―――今回は、話している言葉をリアルタイムで字幕に表示する演出をされるそうですね。

小出「はい。株式会社ジャパンディスプレイ様と筑波大学デジタルネイチャー研究室様のご協力のもと実現できそうです。舞台の醍醐味って、やはり生というところだと思うんです。そこで生の声をそのまま文字に起こせるのは、すごい技術ですよね。そして、うちの団体のコンセプトとしても、バリアフリーを目指してるので、それにすごくマッチしているんです。今回の舞台の大目玉です」

 ―――さらに、生バンドと生歌によるオープニング、エンディングの演出も考えられている。

小出「はい。メロディが出来上がってきていて、そこにロボットダンスが合わさります。生演奏だからこそのセッションを楽しみたいですね」

 ―――キャストも多く、賑やかになりそうです。

小出「はい。年齢幅も広くて、下は10歳から上は80歳ぐらいで、幅広い年齢層の方が出演している点も推しポイントです。2020年の旗あげの時に思っていたことなんですけど、舞台を観に行ったときに、共感できる人を舞台上に出現させたいと思っています。自分と同世代の人が頑張っていたり、息子さんや娘さんと同じぐらいの年齢の子が頑張っている姿を見て、多くの人に共感してもらいたいです」

 ―――最後に楽しみにされているお客様に、一言お願いします!

田中「マリアが成長していく姿を見せたいと思います。また、チームごとではなくて、全体で世界観を作っていきたいなと思っています。お客さんをその世界観に巻き込みたいという気持ちで、頑張りたいと思います」

木村「今のコロナウイルスだったり、現在起きている世界情勢に深く関わっている気がします。こんなご時世だからこそ、感じてもらえることがあるんじゃないかと思う作品。しっかりと向き合って、みんなが感情移入したり、深く入り込めるような作品をお届けできるように頑張りたいなと思います」

小出「暗いニュースが多いので、前向きなポジティブな作品として届けられるようにしたいなと思っています。一生懸命作るので、ぜひ観に来てほしいなと思います」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

小出侑門(こいで・ゆうと)
1986年11月22日生まれ、愛知県出身。ProjeckK主宰。大学卒業後、みずほ銀行に入社するも、俳優を志して退社。『仮面ライダー』シリーズや『科捜研の女』で有名な田崎竜太監督、ジャパンアクションエンタープライズ 西本良次郎氏などの演出で主演を務め、NHK大河ドラマにも出演。代表作は『どうしても、妻が死ぬ。』(2019)など。

木村葉月(きむら・はづき)
2000年8月11日生まれ、茨城県出身。2007年にジュニアアイドルとして芸能界デビュー。その後は子役として活動し、2015年に2代目の少女隊としてデビュー。2017年に卒業。現在はドラマや舞台で活動している。

田中音江(たなか・おとえ)
2001年8月19日生まれ、大阪府出身。2018年ファッションショー「ジャパンモデルズ」への出演をきっかけにスカウト。2019年エイベックス・アスナロ・カンパニーのタレント候補生として芸能界入りし、2021年劇団4ドル50セントに2期生として加入。舞台を中心に活動している。

公演情報

ProjectK『KIKAI』~キカイ~

日:2022年5月25日(水)~29日(日)
場:中目黒キンケロ・シアター
料:S席6,000円 A席5,000円
  ※当日券は各+1,000円(全席指定・税込)
HP:https://projectkofficial.jp/
問:ProjectK mail:project-k@yutokoide.com


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