ワキ方中心の演目を現代に継承する異色能楽会が定期公演 希少な金春流『鳥追舟』両ワキの丁々発止に注目!

ワキ方中心の演目を現代に継承する異色能楽会が定期公演 希少な金春流『鳥追舟』両ワキの丁々発止に注目!

 下掛宝生流能楽師ワキ方の野口敦弘が主催し、ワキ方からみた番組立てを毎年企画している華宝會。令和4年度の公演では大蔵流の狂言『狐塚』に、能楽では10年以上演じられていない金春流『鳥追舟』が上演される。同作では金春流能楽師の山井綱雄(シテ方)に加え、華宝會の野口能弘、琢弘兄弟が両ワキを演じるという珍しい構図が見どころの1つ。3人に公演への意気込みを聞いた。

野口能弘「華宝會はシテ方が主役となる演目が多い能楽において、あまりスポットが当たらなかったワキ方中心の演目に再着目し、現代において伝承をおこなっています。『鳥追舟』は薩摩国の有力者、日暮殿を担います。訴訟の為に10年余り在京している間に、家臣の左近尉(野口琢弘)が下人の仕事である鳥追いを日暮殿の妻(山井)と子にやらせたことにより、帰郷した日暮殿に不忠のとがめを受けて斬られそうになる。それを日暮殿の妻になだめられ赦されるというお話です。日暮殿と左近尉が両ワキに立つ珍しい形で両者の会話劇が見どころと言えます」

野口琢弘「シテ方が中心の演目は神様などが登場する歌舞劇の要素が強いですが、ワキ方が活躍する舞台は現世の人間を描くことが多いので、会話劇としての色が強い。あまり能に馴染みがない方でも台詞が入ってきやすいと思います。前半は山井さん演じるシテ方が雰囲気のある場面を創って、後半はワキ同士の丁々発止の掛け合いなど落差がある公演です。台詞一つひとつのやりとりに固執することなく、物語全体を通して心でも感じて頂けたらと思います」

山井「左近尉のおこないは当時の主従関係であれば即手打ちということになります。しかし日暮殿にも非があるという妻の仲裁は、各々の正義を主張するがあまり、争いへとつながる現代の私達に大事なメッセージを投げかけるものだと感じます。白黒はっきりさせるのではなく、敢えてグレーという中庸を認める姿勢は日本ならではの文化ですよね。
 また能は想像力が大切です。舞台となる日暮の里は自然豊かで日本の原風景と言える場所ですが、舞台には照明も大道具もなく、舟が1つあるだけ。その周囲の余白に皆様の心の中にあるそれぞれの田園風景を描いて欲しいのです。能はとても自由でおおらかな芸術。可視化できない世界を全力で描こうとする能楽師の熱量を、どうか舞台で感じとって頂ければと思います」

(取材・文:小笠原大介 撮影:山本一人(平賀スクエア))

祝日が1日もない6月。好きな祝日を作れるとしたら、“何の日“を作りますか?

山井綱雄さん
「梅雨空で天気が気になり、中々外に出向くことが疎くなるこの6月。『晴れの日』というのがあったら、この日は出来るだけ外に出て楽しく過ごそう。そんな日があっても良いのでは? ステイホームが続いてきた今の世の中。敢えて外に出てアウトドアを推奨する休日があっても良いのではないでしょうか!」

野口能弘さん
「ちょうど梅雨真っ盛りですので、雨の日。皆で雨の恵みに感謝してゆっくり体を休めましょう」

野口琢弘さん
「6月31日 雨の日
6月は公演シーズンで皆さん忙しいので、6月は1日追加して梅雨の一日をのんびり過ごしたいです」

プロフィール

山井綱雄(やまい・つなお)
1973年生まれ。シテ方金春流能楽師、重要無形文化財(総合指定)保持者。日本国内での能楽公演、初心者の為の能ワークショップ・能講演、若者への普及学校公演を多数開催。海外公演や、他ジャンル芸術家との共演・創作作品多数。能楽の新たな可能性にも挑む。

野口能弘(のぐち・やすひろ)
1975年生まれ。下掛宝生流ワキ方。野口敦弘の長男。東京藝術大学音楽学部卒、能楽協会会員。故・宝生閑及び父・敦弘に師事。4歳で初舞台を踏む。ベルギー・オランダ・オーストラリア・ドイツ・ポーランドなど海外公演にも参加。

野口琢弘(のぐち・たくひろ)
1977年生まれ。下掛宝生流ワキ方。野口敦弘の次男、父・敦弘に師事。主に東京を中心に公演活動を行う。出演作に『乱』、『張良』など

公演情報

華宝會

日:2022年7月10日(日)14:00開演(13:30開場)
場:宝生能楽堂
料:S席8,000円 A席7,000円 B席6,000円 C席5,000円
  D学生席4,000円(全席指定・税込)
HP:https://kahoukai.blogspot.com/
問:華宝会事務所 tel.042-430-5206

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