命を狙われた男の子を助けたのは異世界から現れた女の子だった WキャストとW演出で魅せるダークファンタジー

命を狙われた男の子を助けたのは異世界から現れた女の子だった WキャストとW演出で魅せるダークファンタジー

まだ色濃く染まっていない原石たちがダンスやアクションのある舞台演劇を届ける若手クリエイティブ集団「劇団ぱすてるからっと」。この夏の最新作は昨年惜しくも延期となった舞台『murderHolic』をリスタートする。作品を代表して、W主演の河津未来と足利至、そして美月まりもに話を聞いた。


お芝居だけではなくパフォーマンスにもこだわります

今作は同じ脚本を2チームで演じ、各チームの演出も主宰の佐藤颯と脚本のくま、それぞれが行うWキャスト・W演出制度が特徴だ。敢えて同じ演出をしない個性を生かしたものづくりに期待が膨らむ。

―――美月さんは、ぱすてるからっと作品に多数出演されていらっしゃいますが、この劇団の魅力とは?

 美月「ぱすてるからっと作品は2.8次元作品と謳っていて、演劇に加え歌とダンスを取り入れつつ照明にも拘ってて、今回はプロジェクションマッピングが入り、お芝居だけではなくてパフォーマンスにも拘るところが強みであり魅力の劇団です」

―――稽古はいかがですか?

美月「主宰の(佐藤)颯さんが和やかで優しい現場です。キャストがやりたいことを持ってきて現場で一緒に作っていく感じで、同世代が多くキャスト間も仲が良くて、今はコロナの関係で終わった後ご飯には行けないですが、それでもコミュニケーションは積極的に和気藹々とやっていますね。
脚本のくまさんとは何度か共演させて頂いていますが、会う度に髪型も色も変わっているようなちょっと変わっていて(笑)、でもお芝居に対しては真面目で、よくお芝居についてお話させていただいています」

足利「僕はくまさんとは面識がありまして宇宙人だと思いました(笑)。これからの稽古でもっとよく知りたいと思います」

河津「僕は、ぱすてるからっとは3回目、3年半ぶりの出演になります。まだお芝居をやり始めたばかりの頃に颯さんと出会って、その時に自分の強みを初めて教えていただきました。颯さんは強みを一緒に探して引っ張り出してくださる演出をしてくれるイメージがあります。本当に現場は楽しくて、でもやる時は一生懸命気を引き締めてやる、そんな素敵な劇団だと思います」

―――あらすじを拝見しますと殺陣とアクションがモリモリありそうですね。台本を読んだ感想や印象、惹かれた所など教えてください。

河津「まずダンスが心配です(笑)。今から気合を入れないと。台本を初めて読んだ時の印象は、僕と足利くんが演じる雪村楓役はどこにでもいそうな青年です。非現実の世界に入っていきますが、いろんな困難が待ち受けていて、でも現実世界でも大なり小なり困難はあるので、ぶつかりながら成長していく姿がとても印象的でした」

足利「今回初の主演作になります。ファンタジーな世界観で、実は僕が大好きな世界で嬉しくて。全体的にバトルシーンが多いと思いますが、楓の立ち位置としてそんなに戦うことがなく、どちらかと言うと巻き込まれて狼狽えているようなキャラクターです。それでも感情の起伏が激しいので、その部分は頑張りたいと思います。日常にいそうなボケというよりツッコミの世話好きの主人公で、自分と共通するところがちょっとあり、その部分を活かして演じていけたら」

―――そして美月さん演じる、るみ.com役はとても可愛い役になりそうですね

美月「台本を初めて読んだ時、普通に過ごしている日常にいろんなキャラクターが出てきて色々な事件が起こる……そんな印象を受けました。とても可愛いアイドルの役どころで、物語を掻き乱すスパイスの様な存在なのかな。実際アイドルをやっていたのは2年半ほど前のことで、その頃の記憶を思い出しながら頑張りたいなと(笑)。最近演じていた役が落ち着いているか、元気キャラが多かったので、正統派アイドルの方向に自分を持っていけるように頑張ります」

―――演じる上で何を意識しようと?

美月「可愛いと思っていたら可愛くなれると何かに書いてありました! 自分の意識は大事だと思うので、そう思い込んで自信を持って意識して振る舞おうと思っています」

河津「僕も自分に重なる部分があるので、自分が持っているものを上手く擦り合わせつつ、感情の起伏は過去自分が経験したことを絡めて、すぐ出せるようにそのトレーニングは今から意識していこうと思っています。自分で言うのもなんですが、普段はのほほんとした性格で、でも何かあるとぐわっと上がるので、テンションの上げ下げがお芝居に活かせそうです」

足利「楓が凄く絶望するシーンがあるのですが、人生経験でそんなに深く絶望したことがあまりなくて、そういう部分を意識してアウトプットできたらと思います」

同じ台本なのに全く違う作品に!?

―――Wキャストでチームが複数ある時、お互いの班は気になりますか?

足利「ある程度ライバル意識みたいなものはあるかもしれないです。その手があったかとか、でも真似しようとは思わないです。逆に僕はこうしようとか、切磋琢磨していけたら」

河津「そうですね、自分たちの班を信じつつ新しい刺激を貰い、どちらの班も魅力的になれたらいいですよね。でも気にはなりますよね(笑)」

足利「お互いの良さが出たらいいなって思います。違っていいと思うんです」

美月「今回、演出家として脚本のくまさんと颯さんが演出する班があり、そもそも演出が違うからそういう意味でも全然違うものになるのではと思っています。ぱすてるからっとはダブルキャスト制が多いのですが、演じる役者が全然似ていない子や男女逆転もあり、それぞれの班で個性が生きています。同じ台本なのに違うものになっていくところが良さであり、今回はよりはっきりと違いが出てくるんじゃないかなと。いらっしゃる方はぜひ両方観て欲しいなって思いますね」

―――では稽古も別々になりそうですね。

美月「そうですね、逆班には全然会えないと思います。お互いの芝居を観るのはもしかしたら劇場かもしれないですね。それでも逆班の稽古は気になりますね(笑)」

プロジェクションマッピングとの融合

魔法を使うダークな世界観がプロジェクションマッピングでどう表現されるのか、そして過去作『starmarmalade』とのリンクもあるという。

―――それぞれの見どころや観て欲しいところについて教えてください。

美月「この2月にプロジェクションマッピングを導入した作品がありまして、振付を担当して客観的に見ていましたが、照明だけだったところにマッピングが入ることによって全然違うものになり世界観が目で見てわかって、その世界に自分が入っているような感覚にもなれました。それがマッピングの良さですよね。殺陣やアクションも見やすくなり、今回自分がそこに出演するのでとても楽しみな気持ちでいっぱいですし、ぜひ観て欲しいところです」

河津「僕自身プロジェクションマッピングとお芝居の組み合わせは初めてで楽しみです。そして出てくるキャラクターがとても個性豊かで、そのキャラクターたちに出会いながら困難を克服していく、そんな葛藤する姿をお見せできたらと思います」

足利「プロジェクションマッピングを使ったダンスは経験がないので、凄く楽しみですね。マッピングは舞台側に立っている自分たちは画として合っているのか分からないので、後からモニターや映像を見て確認します。こちらは大変ですが表現の幅がとても広がると思うので、そこは是非観て欲しいです。この作品は去年の5月に上演予定だった延期公演です。その時は稽古が1日しかできなくてダンスまでできていなくて。僕はダンスが得意なので誰よりもかっこよく踊れるように頑張りたいです」

―――楽しみにしていることは?

 足利「僕はくまさん演出班になります。前回は脚本家ということでアドバイスを貰っていましたが、そのくまさんが今回演出なので更に根掘り葉掘り聞いたり、考えてきたプランがあった時は相談していきたいです。とても面白そうですし楽しみです」

河津「3年半前の作品でまりもさんが別の班で、その時観たお芝居が素敵でいつか共演したいという想いがあって、それが今回同じ班になるのでとても楽しみです。そして3年半、お芝居を経験して戻ってきた僕の成長を颯さんに見ていただきたいです」

美月「嬉しいです! 頑張ります! 今作は私も出演していた2年程前の作品『starmarmalade』という舞台の精神的続編という位置づけでもある作品です。去年『murderHolic』が延期でなかったら出演できなかったのですが、今回出演が叶いました。本当は出られなった作品なのにまた関わらせていただけるご縁が嬉しいです。今回ぱすてるからっとに初めて触れる方はもちろん、『starmarmalade』を観ていただいたお客様もより楽しめる作品になっています」

足利「この世界観と伝えたいメッセージをお客様に届けられるように、稽古を重ねて頑張ります。このご時世なので声を大にしていらしてくださいと言いづらいですが、だからこそ1人でも多くのお客様に観ていただけたら嬉しいです」

河津「大変な1年があってまだまだ続いていますが、お芝居ができることにまずは感謝と嬉しさを噛み締めています。この作品をキャストやスタッフ、たくさんの方と紡いでいき、お客様にしっかり届けられるように。そして観た方が少しでも元気になれるように取り組んでいきます。劇場でお会いしましょう」

美月「こんな時期ですが、まずスタートラインに立てることが感謝の気持ちでいっぱいです。私は今回出演のほかに制作スタッフの立場でもあるので、みんなをサポートしていきます。実際にこのコロナ禍でも(他の)舞台公演を実現してきました。その経験を活かしてお客様には安心して来て頂ける準備を整えております。感染対策には気をつけて、元気で千秋楽を迎えられるように頑張りたいです」


(取材・文&撮影:谷中理音)


プロフィール

河津未来 (かわず・みらい)
1996年5月17日生まれ、神奈川県出身。
舞台や映画、CMなどで活躍中。代表作に劇団ぱすてるからっと『夢追い少女は凍らない』、劇団狼煙組『皮肉にも天使』主演、RISU PRODUCE『イキザマ3』、映画『帝一の國』、映画『賭ケグルイ』など。

足利 至 (あしかが・いたる)
1995年1月18日生まれ、北海道出身。
役者の他、ボーイズユニット「EMBLEM」のメンバーとしても活動中。主な出演作に舞台『魔術士オーフェン -牙の塔-』、舞台『家庭教師ヒットマンREBORN! -隠し弾-』、歴史バラエティ「戦国炒飯」などがある。

美月まりも(みずき・まりも)
1996年2月21日生まれ、東京都出身。
女優ほか、振付師としても活動中。近作にぱすてるからっと『夢追い少女は凍らない』主演、未来演劇部『ドレミの歌』主演、STRAYDOG『竜二 〜お父さんの遺した映画〜』などがある。


公演情報

ぱすてるからっとproduce
舞台『murderHolic』

日:2021年7月22日 (木・祝) ~25日 (日) 
場:シアターグリーン BOX in BOX THEATER
料:S席6,000円 A席5,000円
  車椅子席5,000円
 (全席指定・税込)
HP:http://pastelcarat.web.fc2.com/index-next.html
問:ぱすてるからっと
  mail:pastelcarat_info@yahoo.co.jp

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