まさに”疾走”という言葉がふさわしい活躍を見せる才能、石橋直也 新たに自己のプロデュース公演で、次の扉を開く

まさに”疾走”という言葉がふさわしい活躍を見せる才能、石橋直也 新たに自己のプロデュース公演で、次の扉を開く

 商業演劇から歌舞伎、ミュージカル、そして小劇場で多彩な舞台活動を展開してきた石橋直也。自身の企画による「直也の会」を12年続け、その間に培った信頼と仲間達と共に劇団「玄狐」を結成し主宰してきたが、今回更に自身のプロデュース公演を企画した。第34回池袋演劇祭への参加作品でもあるこの『わが家 ある作家とその妻そして女中の記』は金沢を舞台に、失踪した作家の住まいで展開する物語。
 この数年、”疾走”という言葉がふさわしい石橋が見せる新展開。本人にどういった経緯でそこにたどり着いたかを訊いてみた。

―――今回は「NAOYA PRODUCE」名義での公演ですね。主宰されている劇団、玄狐とはまた違うユニットになりますか?

「玄狐を立ち上げてからは、メンバーで力を出し合い舞台を創っています。それ以前に続けてきた自主公演、直也の会の1回目は助けてくれる仲間もおらず、ほんとに身一つで創り上げました。その当時の精神やパッションを忘れてはいけないとも思い、再び1人で舞台を創り上げようと思ったんです。これは自分自身への挑戦でもあります」

―――「直也の会」「玄狐」と形こそ違いますが、石橋さんの芝居に対する熱い姿勢はブレていない感じがします。

「演劇を作る上でのブレはありません。1つの場所に留まっているのが好きではないんです。ずっと直也の会を続けてきましたが、7回辺りからメンバーが固定化されてきて、それで家を作るような思いで玄狐を立ち上げました。でも自分の原点を忘れないためにも、1人で作ることは続けたいんです」

―――今回のキャスティングはどういった方が集まりましたか。

「今まで共演経験のある方もいるし新しい方もいらっしゃいますが、ともかく芝居好きなメンバーが集まりました。主役となる小柳美李さんは、女優であり日本舞踊の師範でもあります。8年くらい前にいつか一緒にやりたいねと話していて、今回ようやく共演が叶いました。新派の幹部俳優でもある鴫原桂さん、長谷川かずきさん、野村知広さん、おのまさしさん、皆さん玄狐にも出演されていますが、今回は意外な役柄という方もいらっしゃいますね」

―――作品の方向性はどうでしょう。

「玄狐は”大人の童話”を掲げていまして、どこか懐かしさを感じるような芝居を目指して創っていますが、NAOYA PRODUCEでは割と日常を切りとって、そこにある人間の心を見つめるような作品を考えています。また、いままでに創ったことのないジャンルにチャレンジする場でもあります」

―――戦後すぐの金沢を舞台にした物語だそうですね。

「行方不明となったある作家さんのお宅で、奥さんも亡くなって空き家となった家が舞台です。その旧家を残すためにファンが集まったところで、家に仕えていた女中さんが語りだすという静かな感じの作品です。派手な演出やドラマチックな展開に頼らず、静かに心に染みわたるような作品にしたいと思っています。いままでの自分の作品はドラマチックな作品が多かったので、演出も含めて僕にとっては挑戦です。それにこの作品で初めてワンシチュエーションに挑むんです」

―――初めて、ですか?

「そうです。いつもはコロコロシーンが替わり、場面がスイッチしますが、今回はワンシチュエーション。僕に書けるのか?というところです。ワンシチュエーションはいままでどうも抵抗感があったのですが、今回は自分が書いたことがないものにトライしようと思って。書いてみたら結構難しいと思い知りましたけど」

―――劇場はシアターグリーンのBOX in BOX Theaterを選ばれていますが、特別な理由はありますか?

「大好きな劇場です。まず広さがいいし、お客さんとの距離感もいい。さらに20歳で上京してきたとき、初めての公演を打ったのがBOX in BOXでした。右も左もわからない状況でやった場所ですから凄く思い入れがあります」

―――ホームグラウンドみたいな場所でしょうか。

「そう言ってしまうと劇場さんに申し訳ないですが、僕にとってはそうですね。身が引き締まる感じがします」

―――色々と挑戦が多い作品になりそうですが、演劇祭への参加作品でもありますね。

「今回初めて参加しますので、それも緊張するところです。だいぶ悩みましたが普段私の作品を観ている人だけで無く、初めて観る方々の意見も反映されるとのことだったので参加を決めました。ともかく今回は静かだし、ケレン味もないし、ワンシチュエーションだし、色々といつもと違うのが怖いですね。それにこの作品はコロナ禍の影響で前に予定していた作品が中止になったことを受けて、3週間で書きましたから、僕の心理状況が滲み出ていると思います」

―――最後に皆さんへのメッセージをお願いします。

「やはり生の演劇をお客さまに届けたいという気持ちが強いです。人と人との繋がり、家族の形、寄り合って強くなっていく。そんな繋がりのようなものを、こんな時代だからこそ繋がりがあることが幸せだと思えるような芝居をご覧に入れたいですね」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

石橋直也(いしばし・なおや)
九州を拠点に子供の頃から役者として活躍。20歳で上京。自身の主宰による「直也の会」を10回公演まで開催。2019年3月に最終公演を終え、「玄狐」を旗揚げする。その他、蜷川幸雄や野田秀樹、宮藤官九郎、G2等による演出作品に出演。ストレートプレイのみならず歌舞伎・ミュージカル作品にも出演する。『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』ではチョッパー/ダズボーネスの2役を演じた。

公演情報

NAOYA PRODUCE Vol.2
『わが家 或る作家とその妻そして女中の記』

日:2022年9月7日(水)〜11日(日)
場:シアターグリーン BOX in BOX THEATER
料:前売4,000円 当日4,500円
  (全席指定・税込)
HP:https://ameblo.jp/naoto-ishibashi/
問:NAOYA PRODUCE
  mail:naoyanokai@goo.jp

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