俳優・劇作家・演出家の森下知香が主宰の演劇企画イロトリドリノハナが、舞台作品『Airswimming エアスイミング 2026』を2024年の初演に続き、2月5日(水)~シアター風姿花伝にて再演する。
この『エアスイミング』はシャーロット・ジョーンズの戯曲で、1920年代のイギリスで望まない妊娠や素行不良を理由に精神病院へ送られ、50年間も幽閉された二人の実在の女性をモデルに書かれたとされる。近年世界各地で上演され、再脚光を浴びている女性の二人芝居だ。
家族にも見捨てられ、監禁生活で極限の状態に追い込まれた彼女たちが、もがきながら「面白おかしく」生き抜いていく姿を描いていく。
「自分らしく生きようとしただけの人間にレッテルを貼り、孤立を強いる社会」「人間の尊厳」に疑問を問いかける本作は、一見すると悲劇に感じるが、実はシュールでシニカルな「笑い」を含み、多くの演劇人を刺激しているという。出演は、森下知香と神月叶のteam森と、ましろうみと室田百恵のteam海の2チーム4名。本番直前、怒涛の会話劇に挑んでいる稽古の模様をレポートする。
到着すると、映像と音楽、動きのタイミングを合わせている最中だった。2チーム制となり、映像演出が加わったことが今回の見どころポイントのひとつ。カウントを決め、歌いはじめをそれぞれ身体に入れていく。確認が終わるとすぐにteam森の通し稽古が始まった。
先に監禁生活をおくっていたのはドーラ(森下)、過度に男性的にふるまった罪で閉じ込められた彼女は、決められたスケジュールを日々淡々とこなしているようだ。そこに望まれぬ子を産んだことで社会的不適合とされたペルセポーネ(神月)がやってきた。何かの間違いだから、父親がすぐに迎えに来ると長居をする気はない様子。世間知らずのお嬢様を神月氏は少し早口のぶりっ子調に表現、悪い子ではないんだけどね感がいじらしい。
いっぽう森下氏が演じるドーラは、ここから出られない事を悟っているようで、悲しみと哀れみを含んだ視線が胸に刺さる。そして男っぽい口調ではあるがペルセポーネに姉のように世話をやく姿が優しく映った。チグハグで嚙み合わない二人だったが、いつしか正気を保つために奇妙な「ごっこ遊び」に没頭し始める。ある時は歴史家、スター女優、見えないプールで泳ぐ練習をしたり、最初は反発し合う二人が、狭い世界の中で独自の絆を築いていく。これはコメディ作品だった?と思わせるシーンもしばしば、この感覚が本作の魅力なのだろう。そして長い年月が過ぎ、いつしか二人の関係性に変化が起きて…。
およそ120分の会話劇は膨大な熱量で進んでいた。さらに今回のステージ美術の工夫として前方を
「現実」、奥を「夢」と区分し、初めて触れる観客にも優しい作りになっている。置かれた小道具の数々からも完成形が楽しみだ。2チームそれぞれが演じるキャラクターの個性の違いもぜひ劇場で確かめてほしい。
稽古終わりに、作品を主宰の森下氏に話を聞くことができた。
本作との出会いは、プロットを一目見た瞬間に「これはやりたい」と直感したことが始まり。
「私たちの団体は、ごく普通の人間が生きていく上で生きる意味みたいなものを考えていこうがコンセプト。この作品はもちろん人生がすごく詰まっていたのと、二人のキャラクターが全く違うこと、そして時代性や女性の自立、職業、病気に対する偏見であったり社会状況が色々詰まっているところに魅力を感じました」
――初演と再演の違いをお聞かせください。
「初演では私はペルセポーネをやりまして、相手のドーラをもう一つのグループの室田百恵が演じましたが、その時は無我夢中でした。ナチュラルに二人で会話することはできたのかもしれませんが、それをお客様に伝えることについてはまだ考える余裕がなかったんです。今回は映像を入れ、ステージを“現実”と“夢”に分けることで前回わかりづらかった部分、二人がまず精神病院にいること、内容や作品の持っているテーマを丁寧に伝えたいと思っています。
このお芝居のラストシーン、シャーロット・ジョーンズの戯曲では、この施設から出られたかどうかは、はっきりと描かず、読者の想像力にゆだねられているんです。
今回は、私なりの解釈に基づいて、ラストシーンを演じました。はたして彼女たちはどうなってしまったのか……。それは、ぜひ劇場にいらして、皆様ご自身の目で確かめていただきたいです。
そうして“本当の幸せ”について、私たちと一緒に考えてくださったら幸いです」
――2チーム制になったことで、2チームならではのポイントは?
「両チーム全然違いますね。年代的にも私たちがちょっと人生経験豊富というところもありまして、私たちの方は、はっきりと表現する側に近く、もう一つのチームは、ほんとに純粋にこの役に取り組んでいて、役の人生を一生懸命生きてフレッシュで、とても好感が持てるし私も大好きですね」
――二人芝居の醍醐味とは?
「やはり二人の掛け合いの楽しさ、丁々発止でしょうか。こうしようねって決めても、その時に湧き上がってくる感情を大事にやりたいと思っています。この作品と関わって、かれこれ4年ほどやってまいりました。やってもやってもすごく奥が深くて、まだまだやりきれないとこところがたくさんあります。
皆さんもぜひ一度は観てほしいです。劇場でお待ちしております」
取材:谷中理音
公演概要
演劇企画イロトリドリノハナvol.6
『Airswimming エアスイミング 2026』
作:シャーロット・ジョーンズ
翻訳:小川 公代(幻戯書房)
演出:森下 知香
■出演者
<Team森> 森下 知香・神月 叶
<Team海>ましろ うみ・室田 百恵
■スタッフ
舞台美術・舞台監督:入倉 津 照明:榊原 大輔 音響:余田 崇徳
ダンス振付・指導:濵谷 美奈子 ヘアメイク:緒方 加代子 写真撮影:Hikaru
動画撮影:青春組立式キット
フライヤー絵画:画家 大河原 愛 フライヤー製作:有限会社アナログエンジン
制作協力:J-Stage Navi 企画製作:演劇企画イロトリドリノハナ
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【東京ライブ・ステージ応援助成】
■上演期間
2026年2月5日(木)~8日(日)
5日(木) 森14:00 / 海19:00
6日(金) 海14:00 / 森19:00
7日(土) 森14:00 / 海19:00
8日(日) 海12:00 / 森16:00
※受付開始は開演の45分前 開場は開演の30分前
※開演時間を過ぎてのご来場は指定のお席にご案内できない場合があります。
■劇場
シアター風姿花伝(東京都新宿区中落合2-1-10)
アクセス https://www.fuusikaden.com/access.html
■チケット料金(全席指定)
前売(一般):4,500円 学生(前売当日共):3,500円
※学生、演劇関係専門学校含む ご来場時に受付にて身分証提示
森⇔海 通し券(前売当日共):7,000円
※Team森・Team海チームを1回ずつご覧いただけます。ご予約はJ-Stage Naviのみ
リピーター:2,500円
※再度ご予約の上、ご来場時に受付にて半券提示
当日(一般):4,800円
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
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