それぞれに異なる輝きが!ミュージカル『ジェイミー』Wキャストレポート!

▼三浦宏規 ほか別キャストのレポートはこちら
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ドラァグクイーンを夢見る高校生の、差別や偏見と闘いながら自分らしく生きていく姿がやがて周囲の価値観までも変えていく様を描き、2021年の日本初演で大きな感動を届けたミュージカル『ジェイミー』再演の舞台が、東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で上演中だ(27日まで。のち8月1日~3日大阪・新歌舞伎座、8月9日~11日愛知・愛知県芸術劇場 大ホールで上演)。

主人公ジェイミーをはじめ、主要な役柄がWキャストになっていることもこの舞台の大きな興趣のひとつ。ここでは主演の髙橋颯をはじめ、そのWキャストの面々の活躍を記していきたい。

ジェイミーの髙橋颯は、初演に続きジェイミー役を続投して務めているが、この4年間の間に髙橋が獲得してきた舞台で演じることの蓄積が、ジェイミー役に大きく作用していて、泣き笑いとも言いたい表情のなかにジェイミーの心情が刻々と変化していることがよく伝わってくる。それでいて、初演時に感じさせた「あぁ、ジェイミーがいる」という、実際にジェイミーってこういう子だったんだろうな、とスッと胸に落ちる感覚も健在。根本的にピュアで、葛藤が大きかったからこそ自信が前のめりになる瞬間もある若さなど、ジェイミーという役柄が髙橋の個性にどまんなかストレートなことを改めて実感させるジェイミー像を体現。高音の歌唱もよく伸びて、幸せになって欲しいと素直に応援できるジェイミーだった。

そのジェイミーの親友プリティの遥海は音圧を感じさせる常の力強さが魅力の歌唱ではなく、静かに美しい発声に徹して、とても頭がよく決して暗い訳ではないが、率先して同世代の女子たちに交わることをさほど好まないプリティをよく表現している。遥海にとって新境地と言える演じぶりが素晴らしいし、終盤ずっと自分を揶揄してきたクラスメイトの攻撃を颯爽と切り返す様にも、自分は着ないと思うけれども、あなたには似あっていると互いのドレスを褒め合える余裕にも、プリティとしての軸がブレないのも好印象だった。

ジェイミー、そしてプリティに対して高圧的な態度を取り続けるディーンの吉高志音は、ディーン自身にも、深いトラウマや心の闇があるのだろうと感じさせる役作りで、この役柄自体を新しく見せている。クラスの頂点にいて意気揚々としているはずの舞台がはじまったばかりの時点でも、ジェイミーをじっと見つめる視線が意味深長で、誰かを攻撃しなければ自分を保っていられない、人を威嚇し続けている針ねずみのようにも感じるディーンの心根を知りたいと思わせる在り方が強く印象に残る造形になった。

彼らのクラス担任ミス・ヘッジは、女性役のアンダースタディも務める栗山絵美が、抜群のプロポーションとシャープな動きで、教師というのはあくまでも仕事であり、しかも自ら言葉にするように、決して望んで就いた仕事でもないという、ミス・ヘッジのドライさを強く表現している。校則をきちんと守らせ、クラスの秩序をはかるというヘッジの立場には一定の理解はできるが、さすがにこれは指導を越えていると思える理不尽な厳しさを十分に出した一方で、ヘッジのプライベートが唯一垣間見える留守電を入れるシーンの不器用さが、この人にもこうなる理由があるのだろう、と思わせるのが終幕につながっていく。いつもながら力のある人が、こうして大きな役柄に起用されていることが嬉しい。

そんなキャストの個性で、作品がまるで違うものに見えてくるし、ジェイミーの母マーガレットの安蘭けいや、その親友レイの保坂知寿、ヒューゴ/ロコ・シャネルの石川禅など関わる人たちの芝居の間合いも当然ながら変化していくのが面白く、一人ひとり、みんなが違っていることを肯定している作品に相応しい競演を、是非リピートして欲しいと思える舞台だった。


また、初日を前にジェイミーの三浦宏規と髙橋颯、マーガレットの安蘭けい、ミス・ヘッジのかなで、ヒューゴ/ロコ・シャネルの石川禅による囲み取材も行われた。


三浦はゲネプロの前に通し稽古がなんと8回もできたという、稽古のスピード感について言及し、通し稽古がなかなかできない舞台もままあるなかで「これだけの回数通し稽古をしたのにこんなに不安なんだ。どんなに稽古を積んでも初日前は不安になることを学びました」と笑いを交えて語りつつ「カンパニーとしての絆の強さを稽古中からずっと感じていたので、例えなにが起きても、絶対に誰かがカバーしてくれると思えるんです。周りのみなさんを信じて進んでいけば怖くない」と力強く続けた。

髙橋は再演での成長を問われ、石川が「本人は言いづらいだろうけど、パワーアップしています。4年分の成長があります」と引き取って語る展開に。「こいつのことですか?」とはにかんで自分を指し示した髙橋は「自分比では前回より余裕を持って、周りを見て取り組めていると感じています。お芝居の楽しさ、みんなで一緒に楽曲を届けることの素晴らしさやそれに対するやりがいも感じています」と続け、「僕もパワーアップしました!」と言い切り、「4年前はこんなこと言えなかったんです」と石川がまた言葉を添えてくれた。

安蘭は二人の息子の違いを訊かれると「それ難しいです」と言いつつ「はっきりと言えることは、二人が全然違います。Wキャストだと観に来るお客様からも『どっちがおすすめ?』と訊かれるのですが、『どっちも観てほしい』と答えています。本当にそれぞれの良さがあるんです」と愛おしそうに二人の息子を語ってくれた。

石川は、ドラァグクイーン役は現時点では後にも先にもこの作品だけだそうで「めったにできないお役ですし、この格好をすると自然に振舞いがこうなるんです」との言葉通り、フォトセッション時にも、カメラに向かって美しいポーズを次々に決めてくれていた。
また初ミュージカルの手応えを訊かれたかなでは「会見に先立って行われた場面披露が、自分にとって初めて舞台姿を観ていただく機会だったので、緊張した」と心境を吐露しつつ、客席にも聞こえてきた「みんなで円陣を組んで『Go! ジェイミー!』と掛け声をかけたとき泣きそうになった」と、感動の発言も。また「稽古場では全然バレエトークができなかったんですけど、実は10年ほどバレエの経験が」と打ち明けると驚いた三浦が「言ってくださいよ!ボケなのかと思ってつっこんでしまうところでした」と心底驚いた表情を見せて、会見は笑いに包まれた。
石川から「作品に向かう姿勢が本当に素敵です。大好きです」との讃辞を贈られたかなでは、お笑い芸人の先達が多くミュージカル界で活躍している後に続くことができれば、と控えめながらも意欲をにじませていた。

また、口が回らなくなった瞬間、自分で自分の頬を叩いた髙橋を見た三浦が、そんな叩かなくても…と言いたげに頬に手を伸ばし、髙橋が嬉し気に微笑むなど、カンパニーの絆が伝わってくる会見は最後に髙橋の「みなさんが楽しみに待ってくださっているのがSNSなどからも伝わってきます。期待を裏切らないようにしたいという思いと、お客様と一緒に楽しみながらこの『ジェイミー』という作品を作っていきたいという思いがあります。皆様にお会いできることを、僕もすごく楽しみにしています」
三浦の「素晴らしい仲間と『ジェイミー』を作ってきました。ここからは皆様にそれを届け、どう受け取っていただくかはこちらが決めることではありませんので、皆様が感じたことを周りの人に伝えたり、発信したりして、どうか一緒にこの作品を盛り上げていただけたらうれしいです」という挨拶で締めくくられた。
舞台の盛り上がりに期待が高まる時間となっていた。

取材・文・撮影/橘涼香

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開催日:7月19日(土)13:30公演 終演後
登壇者 :福田響志(翻訳・訳詞)
インタビューアー:橘涼香(ライター)

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公演概要

ミュージカル『ジェイミー』

■東京公演
期間:2025年7月9日(水)~7月27日(日)
会場:東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

■大阪公演
期間:2025年8月1日(金)~3日(日)
会場:新歌舞伎座

■愛知公演
期間:2025年8月9日(土)~11日(月祝)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール

ジェイミー・ニュー:三浦宏規/髙橋颯(WATWING)
マーガレット・ニュー:安蘭けい
プリティ:唯月ふうか/遥海
ディーン・パクストン:神里優希/吉高志音

ベックス:小向なる
サイード:里中将道
ファティマ:澤田真里愛
ミッキー:東間一貴
サイ:星野勇太
リーバイ:MAOTO
ベッカ:元榮菜摘
ヴィッキー:リコ(HUNNY BEE)
(五十音順)

ライカ・バージン:泉見洋平
トレイ・ソフィスティケイ:渡辺大輔
ミス・ヘッジ:かなで(3時のヒロイン)
ミス・ヘッジ(女性役U/S):栗山絵美

ジェイミーの父/サンドラ:岸祐二
レイ:保坂知寿
ヒューゴ/ロコ・シャネル:石川禅

学生スウィング:山村菜海、増山海里

※ミス・ヘッジ役のかなで(3時のヒロイン)が出演しない回がございます。該当回はアンダースタディの栗山絵美がミス・ヘッジ役で出演いたします。

■スタッフ:
音楽:ダン・ギレスピー・セルズ
作:トム・マックレー

日本版演出・振付:ジェフリー・ペイジ
翻訳・訳詞:福田響志
音楽監督:前嶋康明
美術:石原 敬
照明:奥野友康
音響:山本浩一
映像:石田 肇
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:宮内宏明
歌唱指導:吉田純也
演出補:元吉庸泰
稽古ピアノ:太田裕子
演出助手:宗田梁市
振付助手:隈元梨乃
舞台監督:幸光順平/瀬戸元哲

企画制作:ホリプロ

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